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小説・月と星の間<完>
1.帰国


月と星の間 1.帰国 ①

2014.10.29  *Edit 

 お彼岸が過ぎ、東京の桜も咲き始めた三月下旬、下の娘である蘇芳の帰国の
連絡を受けて五條家は急に慌ただしくなった。
「帰って来るなら来るで、お彼岸のお墓参りまでに帰って来て欲しかったわ」
 母である真弓が落ち着かない手つきで料理を盛り付けていた。
「確かにな。そしたら、じいさんばあさんの墓前で報告もできたんだし」
 父親の広志は冷蔵庫を開けて何やらキョロキョロしている。
「ちょっとお父さん、冷蔵庫の中身を物色しないで下さいよ」
「いや、シャンパンやビールの準備が大丈夫か確認しようと思ってな」
「ちゃんと用意してありますよ。冷えた状態でね」
「氷はどうなってる?」
「そちらも大丈夫です」
 そんな両親の様子を気にする風でもなく、五條家の長女である蕗子は、テーブルの隅で
花を活けていた。細長いグラスのような花器にガーベラとチューリップを中心にして、
垂れさがる植物も交え、花嫁のブーケをイメージしてみた。結婚した妹への祝福の意味を込めて。
「あら、ステキ」
「そうでしょう?」
 手によりをかけた料理を手早く並べながらも、視界の隅に映ったのだろう。
惚れ惚れするように目を輝かせていた。それでも手は休んではいない。
母の称賛に、蕗子も目を輝かす。
「それにしても、相変わらずのトラブルメーカーだな、蘇芳は」
 蕗子は笑みを浮かべつつ、黙々と手を動かす。内心では同意している。
 四つ離れた妹が突然ニューヨークへ留学すると言い出したのは、大学を卒業する
寸前だった。学生時代、ダンスサークルに入っていた蘇芳は、毎年行われる
ダンスコンクールで優勝を争うほどの実力者だった。だが、所詮趣味だと家族はみんな
思っていた。英文科でそれなりに優秀だった蘇芳は、外資系の会社に就職も決まっていた。
それにも関わらず、卒業間際になって、就職せずにニューヨークへダンス留学すると
言い出した。当然の事ながら、家族は誰もが反対した。
 だが、その反対を押し切って、一人でさっさと旅立ってしまった。それからの三年間と言うもの、
一度も帰国しては来なかった。時折来る便りには、厳しいレッスンを続けて日々が
充実している事や、バックダンサーとして舞台に出始めた事などを知らせてくるのみ。
 ここまで来ると、親は半ば諦めていた。昔から意志が強くて頑固で行動派だった。
気が強く、押しも強い。首に縄を付けた所で、引きちぎってでも飛び出していくような性質だ。
どうしようもない。いずれ諦めて自ら戻ってくるか、もしくは華のある娘だから案外大成して
帰ってくるかもしれない。
 そんな蘇芳が、いきなり帰国すると電話をしてきたのはつい二日前の事だった。
「明後日の日曜日に帰国する事になったの」
 三年もの間、一度も帰国しなかったのに、一体どういう事か。こちらでダンスの何かが
あるのだろうか?それにしても急だ。しかし、その後に続いた言葉に両親も姉も仰天した。
「あたし、結婚したのよ。それで彼が四月から日本で仕事をする事になったんで、
一緒に帰国する事にしたの」
 驚かすにも程がある。
 寝耳に水だった。交際している相手がいる事すら誰も知らなかった。華やかで綺麗な
娘だからボーイフレンドがいても可笑しくはない。だが、ダンスに心血を注いでいただけに、
結婚なんて全く考えていないと思っていた。まだ二十六歳でもある。
 相手は三十五歳の画家だと言う。四月から某私大の教養学部で美術史を教える事に
なった為、活動拠点を日本に移す事にした。それを機に、蘇芳も日本に戻る事に決めたそうだ。
「勝手過ぎるわよね、蘇芳は」
 両親とも、どうやら納得いかないようだ。それもそうだろう。了解を得るどころか、
全て事後承諾だ。留学の時もそうだった。折角の就職を棒に振ったのである。そして結婚だ。
どうしてこうも、重要な事ですら何も話さず、何の前触れも無く勝手に決めて行動してしまうのか、
姉である蕗子にも理解不能だった。
 いや、昔から勝手ちゃんではあった。だから、蘇芳のやりそうな事だとは思う。
ただ、ここまで勝手になれる神経が理解できない。
「留学の時も驚いたが、今回はさすがになぁ。……結婚したなんてな」
 ダイニングテーブルに頬杖をついて、広志は気難しそうな顔をした。やり手の
銀行マンとして日本や世界を駆けまわり、難しい仕事もこなしてきた男が、
もうそうそう難しい事は無いだろうと思われる年齢になったのに、今まで出会った
どの難問よりも難しい、と思っているように感じられる。
「お前の教育が悪いからだ、なんて言わないで下さいよ」
 真弓が先回りするかのように言った。
「そんな酷い事、俺が言うかよ」
 広志は避難の目を向ける。
 母の言葉は冗談だろう。ドラマや小説では、こういう時にお決まりのような亭主の
言葉なんだろうが、五條広志がそんな人物で無い事は妻も娘も重々承知している。
それなのに、何故そんな事を言ったのかと言えば、母も動転しているからに違いない。
「あのこは、ほんとに型にはまらない子だわ。私たちきっと、長生きできないわね」
 尤もな言い分だと蕗子は思った。蕗子自身も、彼女に何度も煮え湯を飲まされている。
あれだけ自由気ままで勝手に生きれたら、ストレスも溜まらないだろうし、きっと長生き
するだろう。そして、すぐ近くにいる家族は、その反動を受けて早死にするに違いない。


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~ Comment ~

Re: こんばんは>limeさんへ 

limeさん♪

お久しぶりです。コメント、ありがとうございます<(_ _)>

ほんとにご無沙汰してしまって。。
久しぶりで、あちらこちらへとお邪魔させてもらってますが、
limeさんがおっしゃる通り、閉鎖されてたり休止されてたりの
方が多くて、ちょっと驚きました。
ブログを続けていくって、結構、大変ですもんね。
特に創作系は……

日常に関してはアメブロの方でずっと続けてました。
なんか、アメブロの方が更新しやすくて……(^_^;)

今回、再びの創作意欲が復活してきたので、小説をアップするのは、
やはり、こちらが一番やりやすいので戻って参りました。。。

とは言え、久しぶり過ぎて、やり方、イマイチ忘れちゃって
随分戸惑っていますが……

読んで下さって嬉しいです。忙しいのに……。
私も、読んでからコメしようと思ってたので、全然、大丈夫です。


> もうこのお話は書きあがっているのでしょうか。
> 姉妹が主役かな? テンポのいい出だしで、とても読みやすいです。
> どんな展開になるのか、楽しみながら読ませていただきますね^^

今回は、最後まで書き上がっています。
アップの度に、読み直してチェックしてますが。
そうそう。姉妹ねー。今更、姉妹で描いても良かったのかなーと
思うんですが、あまり長くしたくなかったので、姉の方だけとなりました。。。

全11章です。Bye by Blueより少しだけ長いくらいの量です。

3章から、物語が大きく展開していきます。
出だしの印象と随分と変わっていくと思います。

以前の読者の方々も、気付いてくれるかなぁ?読んでほしいなぁ……と
思ってますが、長い時間、お休みしてましたからねぇ。

全部アップするまでの間に、新作ができたらと思っていますが。
今の作品から、まだ抜けきれずにいます……(^_^;)

今後もよろしくお願いします<(_ _)>

こんばんは 

お帰りなさい♪・・って、言うのがすごく遅くなってしまいました。
更新分を読んでから来ようと思っていたんですが。
(相変わらずノロくてごめんなさい><)
そして何より、またブログ復活されてうれしいです。
一度ブログを離れると、そのままの方がほとんどなので。
当初のブログ友達も、今は半分以下に減ってしまいました。(涙

narinariさんは、新作も着々とUPされているのですね。
もうこのお話は書きあがっているのでしょうか。
姉妹が主役かな? テンポのいい出だしで、とても読みやすいです。
どんな展開になるのか、楽しみながら読ませていただきますね^^
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