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小説・クロスステッチ第1部 <完>
第1章 花が咲く~第8章 刻印


クロスステッチ 第1部第2章ふれあい 第2回

2010.02.20  *Edit 

 「どうしてって、うーん・・・、面白いから、でしょうか」
 「どういう所を面白いと思うんだ?」
 「そうですねぇ。よくわからないですけど、過去の人間の営みに
凄く心惹かれるんですよね」
 「過去だから?」
 増山の問いかけは難しい。どう答えたら良いものか。
 「過去だから、と言うよりも、今へと連綿と繋がってる事だから、
かな。最初は歴史上の人物に魅力を感じて、そこから色々本を読んだり
してたんですけど、あれこれと読んでいるうちに、歴史はずっと
続いてるものなんだ、って思うようになって」
 歴史ものを読んでいると、どうしてそうなったのか、その原因は
どこにあるのか、と興味を持ち、原因探しに時代を遡る。
そうすると、前の時代に原因たる要素を見つけるのだが、その要素は
どうやら、まだ前の時代に遡れそうなのがわかる。そうやって、どんどん
遡って行くうちに、結果としての事象の原因が、単純では
ない事に気づくのだ。連綿と続く時間の中で、色んな要素が複雑に
絡み合って色々な事象を引き起こしている。政治的事件も、文化も、
どれも同じことが言える。
 そんな風にして、いつの間にか、多くの時代を渡り歩く事と
なったのである。そんな話を理子は増山にした。
 「なるほど。だから理子は、色々な事を知ってるんだな。
いつも授業で感心してるんだ」
 「えっ、本当ですか?」


 「ああ。お前の歴史観は、俺の歴史観と同じだ。その若さで、
よくそこに気づいたな」
 褒められて理子は嬉しくなった。
 「そう言ってもらえると、嬉しいです」
 「俺の作ったテストで満点を取る生徒がいるなんて思って
なかったからな。驚いた」
 「私もまさか満点だとは思ってませんでした。先生の問題、難しかったし」
 増山の問題は、難しかった。だが、授業をしっかり聞いて、
増山の意図する所を汲んでしっかり勉強すれば、回答できる問題でもあった。
 「従来のような暗記オンリー的なテストにはしたくなかったから、
随分と工夫した。内容をしっかり勉強していれば、そこそこ点は取れるが、
暗記的にしか覚えてない者は点が伸びない。だから結果も明暗分かれた
感じだったな」
 「そうですね。歴史が好きな人にとっては、解き甲斐のある
問題だったと思います」
 「そうか。喜んで貰えてなによりだ」
 増山は満悦そうな顔で言ったが、なんかその台詞(せりふ)って、
ちょっと違うような気がする、と理子は思った。
 「それで、好きな人物とか、いるか?」
 「はい。沢山いて迷っちゃいます」
 「沢山いて迷うって、誰か選べと言われてるわけじゃないだろう」
 増山があきれ顔で言った。
 「そうなんですけど、魅力的な人物多いですよねー」
 「で、因みに?」
 「まず、聖徳太子。謎が多いから、すっごく興味が湧きます。
それから、真田信之・雪村兄弟。真田は一族として魅力を感じます。
あと、新撰組の土方歳三。彼は最高ですね。新撰組は他に斎藤一も好きです。
それと、同時代の会津の天才知将・山川大蔵。あとは、日本史じゃないけど、
三国志の諸葛亮孔明。すっごく好きです」
 言っているうちに、興奮して顔が赤らんでくるのが自分でわかった。
なんだか恥ずかしくなってきた。
 「古代から戦国へ一挙に時代が飛ぶんだな。その間はいないのか?」
 増山が興味深そうな顔で言った。
 「そうですねぇ。興味を覚える人物はいます。平将門、阿倍清明、
藤原道長、後醍醐天皇、足利義満、あたりかな」
 「鎌倉はいないんだな」
 「鎌倉は今のところは駄目です。今の私には肌に合わないと言うか、
いまひとつ興味が湧きません」
 「面白くないってことか」
 「そういう事になるんでしょうか。北条政権はイマイチですね。
動乱期が好きと言うわけではないんですが、考えてみると江戸時代も
いま一つな感じです。ただ、幕末への流れの過程には興味があるので、
これからってところでしょうか」
 そんな話をしているうちに、歴史話に花が咲き、いつの間にか
時間が過ぎていた。
 話をしている中で、理子は、増山はなかなか面白い人物だと感じた。
なんだかとっても気が合う。まさに意気投合した。色んな部分で見方、
感じ方、考え方が似ていると思った。同じような感性の持ち主のような
気がしてならない。一緒にいて楽しい。おまけに、いい男でタイプだ。
 目が合う度に、ドキッとする。眼鏡をかけた顔は知的で魅力的だし、
その眼鏡の奥にある目が時々妖しく見える。その視線に捕まったら、
蜘蛛の巣に掛った蝶のように逃げられなくなってしまうような気が
してくるから不思議だ。
 多分、女子の多くは、この視線に捕らえられてしまったのだろう。要注意だ。
 増山が、目が疲れたのか眼鏡を外して目を擦(こす)った。それから暫く
目の運動を繰り返し、再び眼鏡を掛けた。眼鏡を外した増山の顔は、
掛けていない時よりもセクシーな感じがした。左目の下、頬骨との
中間辺りに黒子がある。割りとしっかりした黒子だったが、眼鏡を掛けて
いると、あまり目立たない。頬骨上にも黒子がある。右頬にも、3つ程、
星座の冬の大三角形を喚起させるような黒子があった。
 「先生って、眼鏡の方がカッコイイですね」
 思わず言ってしまった。
 増山は怪訝(けげん)そうな顔をしたので、これで邪険に扱われる
のかと思ったら違った。
 「そんな事を言われたのは初めてだ。誰もが素顔の方がいいと
言うんだけどな」
 「そうなんですか。でも、眼鏡の方が素敵って女子も少なからず
いると思いますよ」
 「そうか。じゃぁ、明日、試してみよう」
 増山が笑って言った。
 「試すって、どうやって?」
 「明日の朝のホームルームで、俺が今みたいに眼鏡を外す。
その時の女子の反応がどう出るか」
 「ええー?本気ですかぁ?」
 「本気」
 嘘―、何考えてるのー?普段冷たく女子を突き放している癖に、
そんな事をするかぁ?
 「で、俺は圧倒的に素顔の方がウケる方に賭ける」
 ニヤっと増山は笑った。
 「賭けるって、教師が賭けてどうするんです?」
 「まぁ、そう言わずに」
 なんて人だ。外見のイメージと中身にギャップを感じる。
 「何を賭けるかなぁ~」
 その言葉に耳を疑う。賭けるって、実際に何かを賭けるつもりなのか。
 「先生、本当に本気?」
 恐る恐る訊いてみた。
 「当たり前だろうがぁ。判定は、どう見ても圧倒的多数だったら
俺の勝ち。怪しいぞ、って要素が少しでもあれば、お前の勝ち」
 判定が曖昧な気がする。
 「俺が勝ったら。そうだなぁ・・・、お前を、・・・どうするかなぁ」
 妖しい目で見られたので、胸が急に締め付けられた。凄くドキドキする。
 「先生、止めて下さい。困ります」
 理子は焦った。何を言われても困る気がした。
 「なんだよ、まだ何も言ってないのに」
 「だって・・・」
 つい、切なそうな声が出てしまった。
 それを聞いて増山は一瞬怯(ひる)んだ。
 「わかった。じゃぁ、俺が勝ったら、俺が貸す本を読んで、
感想レポートを提出する事」
 あっさりと言った。
 「えっ?それでいいんですか?」
 なんだか拍子抜けだ。
 「お前、いっつも本を読んでるだろう。去年の担任の熊田先生に
聞いたが、かなりの読書家なんだってな。世界史も好きみたいだから、
今回は世界史系の小説を貸す。なかなか読み応えのある面白い本だ。
それを最低3回は読むこと。読む度に感想が変わると思う。
それを全て書いて出せ」
 「何てタイトルの本ですか?」
 「『バビロンの夕陽』と言う。まだ読んでないだろう?」
 理子はタイトルを聞いて、胸が高鳴った。面白そう。興味が湧いてくる。
 「嬉しそうな顔だな」
 「はい。嬉しいです。凄く、読みたいです」
 「これじゃぁ、賭けにならないなぁ」
 と、増山がぼやいた。
 「そうですね。これじゃぁ、私が負けた方がいいわけですから」
 理子が微笑んだ。
 「読むだけじゃないんだぞ。レポートだぞ。3回読んで、
それぞれの感想を書くんだぞ」
 増山は念を押すように言った。
 「わかってますって。面白い本だったら、感想なんて屁でも無いです」
 「で、お前が勝ったら、どうする?」
 増山が訊いてきた。
 そうだ。どうしよう?
 「うーーん、何も思い浮かびません・・・」
 「なんだ、欲の無いヤツだな」
 本当はたくさん有るのだが、どれも言っても無理そうな事ばかりだった。
 そんな話をしていたら、いきなり廊下の電気が消えたので、二人して驚いた。
 「えっ、何?」
 顔を見合わせた。だがすぐに増山が納得した顔になって、
 「ああ、もう、最終下校時刻も過ぎて、事務員さんが帰る時間なんだ」
 と言った。

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~ Comment ~

Re: NoTitle 

コメント、ありがとうございます<m(__)m>

聖徳太子は謎だらけだし、そもそも実存したの?みたいな疑惑もあるし、
色んな太子像が巷に溢れてますよね。
自分的には、立派な「聖徳太子」よりも、人間臭い「厩戸皇子」が好きなので、
駄目駄目でも全然オッケーです(^^)

幸村名はねぇ。表記する時迷うんですよね。歴史小説なら迷わず「信繁」で
表記するんですけどね。なんせ一応恋愛ものだし・・・(^_^;)
実際、当人は「幸村」とは呼ばれてないわけですし。徳川を憚って隠語じゃないけど、
それで「幸村」と呼ばれるようになったとか、色々説はありますよね。
その辺まで突っ込んで書いちゃうと、読み手は引いちゃうかな、と思いまして。。。
でも、そうですね。敢えて「信繁」と言わすって手もアリですよね。ふむふむ・・・( ..)φメモメモ

真田が一応歴史の表舞台に出て来るのは幸隆さんからですよね。
なんて言うか、知略・謀略に長けてると言うか、幸隆さんも、息子の昌幸さんも、
名将です。息子たちもその血を引いてるなぁ~って感心します。
兄の信之(ホントは弟なのか?)は影が薄いですけど、私は信之が一番好きだったりします。
兄弟親子が袂を別つのは、かつての源氏みたいですけど、源氏とは違う
情の濃さが感じられてホント好きです(^^)

NoTitle 

 私も聖徳太子好きですが、どうしても「ギャグマンガ日和」に出てくるあのダメな聖徳太子を連想してしまいます(汗)

 ちなみに真田幸村っていう名前は後世の創作で、本名は信繁って言うそうですね。歴史の先生相手なら本名で言ってあげた方がいいのではないかと個人的に思います。

 そういえば真田の一族は優秀な人が多いですよね。幸村(信繁)のことしか真田を知らない人が多い中で、よくご存じだなあと感服します。
 とくに幸村(信繁)の祖父である真田幸隆はかの武田信玄が二度も攻略に失敗した戸石城を一晩で落としたという逸話は有名なはずなんですがなんで人に知れ渡っていないのだろうと……
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