ChaoS

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit TB(-) | CO(-) 

小説・散 華
2.あまりてなどか 壱 1~


散 華  2.あまりてなどか 11

2011.11.25  *Edit 

 店から出て来たこの男に目星を付けた時から、樹の中で予感が
あった。感じるものがあったのだ。幼い頃から周囲の人間達を
観察し続けてきた自分の、人を見る目には自信がある。だから、
このリチャードを見た時にコイツだと直感が働いた。
 だが相手は外国人だし、少し遠目だ。だから不安はあった。
しかし、ドアから出て来た相手をひと目見て、自分の直感は
正しかったと確信した。だから正攻法でいこうと決めた。
 相手は困惑気に顔を歪めると、「僕は君を呼んでいないよ」と言った。
私も呼ばれていません。誰にも
 樹の言葉を受けて、相手は改めて樹の上から下までを、
その大きな瞳でジロリと眺めまわした。
あなたはどこの国の人ですか?日本人にしては、髪も瞳も肌の
色も薄いし……、英語もお上手だ。けれど、だからと言って
西洋人には見えない。それに……随分と若そうだ

 相手が若い女と思っているからだろうか。不思議そうな顔を
しながらも警戒している様子はまるで感じられなかった。
 樹はそんな相手ににっこりと上品に微笑んで「私は日本人です
と答えた後、間髪入れずに「あなたにお願いがあってやって
来たんです。良かったら中へ入れて貰えませんか
」と言った。
 目の前の男の頬に僅かな赤みが差した後、首を横に振った。
私は女性を買うつもりは無いです。他の家を当たって下さい
 厳しい顔つきでそう言ってドアを閉じようとしたので、
樹は慌てて扉に足を差し入れて、閉じかかったドアの間から
中へと体を滑り込ませた。
「Oh,no!!」
 全身で驚いているアメリカ人をよそに、樹は勝手に中へ入り、
目の前にあったソファーに座った。
ちょ、ちょっと君!なんなんだ
 慌てて後を追いかけてきたリチャードは、怒りに満ちたように
顔を真っ赤にさせていた。そんな彼をジッと見据えた後、
樹は目を伏せて顔に憂いを浮かべた。そして呟くように
ごめんなさい」と言った。
こうでもしないと、追い返されそうだったから……」
 しおらしげにして見せる。
 伏せた眼の下には、赤い絨毯が見えた。靴を脱がない
習慣は無いのに自然とドカドカと土足で入って来た事になる。
こういう時、靴を脱ぎ履きしないで済むっていうのは便利だな、
と妙に関心した。そして、自然と土足で入って来れたのは、
そもそも段差が無くて靴を脱がねばならない場所が無いからなんだ、
とまで思いが及び、こんな時にそんな事を思っている自分が
可笑しくなって、思わず笑みがこぼれそうになり慌てた。
 男が溜息みたいなものを洩らした気配がした。そして
ゆっくりと傍に歩いてきた。それでも樹が俯いたままでいると、
男は樹の隣にそっと座り、「僕はリチャード。君の名は?」
 低くて深い声が響いた。柔らかい声音だ。どうやら少しは
観念したらしい。
 そっと顔を上げ、相手を見つめる。心細そうな表情を作って。
リチャードは、そんな樹の内心を探るように瞳を僅かに
揺らしていた。だが警戒している様子は無い。謎めいた
若い女の正体と目的を知りたい好奇心と、いきなり自分の懐に
飛び込んで来た可愛い小さな小鳥をどう扱ったら良いのかの
戸惑いと、美しいものを見る時の憧憬が、薄いグレーの瞳の中に浮かんでいた。
「My name is Tateru ……」
「タツェル?」
 プッと思わず吹きだした。
 自分でも言い難い発音で、気を抜けばそうなるからだ。
「タ・テ・ル」
 と一音一音はっきりと発音しなおしたが、リチャードは
上手く言えないようで何度も「タツェ……、タ……チェ?」と
繰り返す。その様子が可笑しくて笑わずにはいられない。
 そんな樹の様子にリチャードの表情は前よりも柔らかくなり、
君の笑顔は素敵だね」と言ったのだった。その言葉にハタと
なった樹だったが、二人の間には打ち解けたような空気が
流れている事に気付いた。
日本女性の名前は、みんなハナコとかアキコとか、コが
付くんじゃないのかい
?」
 笑いをおさめた樹に、穏やかな瞳でリチャードは訊ねて来た。
樹は上品な笑みを浮かべる。
コが付くのは、高貴な女性の名をあやかっての事です。
昔から皇族や貴族の女性の名にはコが付くんです。それに
倣(なら)わない名付けも当然ながら存在します。そちらの方が
多いんじゃないかと

オー、なるほど。そう言えば、ミカドのワイフは確かナガコと
言う名だったような

よく、ご存じですね
 樹は目を見張った。
 驚いている樹に、リチャードは自慢げな顔をしてみせた。
実は僕は、日本には深い興味があって、昔から色々勉強
してたんだよ。戦争する事になった時には悲しかった。
だから今は、占領とは言っても復興の役にたてる立場に
なった事を嬉しく思っているんだ

 戦勝国の兵隊から、そんな言葉を聞くとは思っていなかった。


スポンサーサイト



*Edit TB(0) | CO(4)

~ Comment ~

Re: NoTitle>lime様 

limeさん♪

大胆ですよねぇ。つくづくそう思います。まだ少年なのに。

樹に不可能な事はあるかもしれませんが、
怖いものは、どうなのでしょうか。
あるのかなぁ~?ないのかなぁ~?
個人的には、無いような気がしますが……(^_^;)
それはまぁ、今後のお楽しみと言うことで。

Re: NoTitle>秋沙様 

秋沙さん♪

そうそう。鬼畜米英とは言っても、個人個人のレベルでは色々なのです。
国家同士の戦争において、個人の思いはまた別の所にあったりします。
でもつい、百羽ひとからげで同じように見てしまいがちですけどね。

樹はついてましたね。
「人を見る目」もあったんでしょうが、矢張りついていたのでは
ないかと思います。なんせ相手は外国人だし。

英語訛り、わかりマース!
先日、中華料理の店で店員さんが中国語訛りだったものですから、
こちらもついついうつってしまい、それっぽい言い方になって
しまいました。簡単にうつっちゃうのは、何故なんでしょうねぇ(^_^;)

NoTitle 

なんとも、大胆で冷静な樹。
これはもう、大物になる素質を充分に秘めていますね。
ものを見定める目も持ってるし。

いったい、樹に怖いものや、不可能はあるんでしょうか。
(意外にも幸也が弱点だったり・・・しないかな)

このあとも樹視点の話、楽しみです。

NoTitle 

オーウ!昨日の敵は今日の友。
鬼畜米英と言えどもやはり人間!

って、そんなこと言ってる場合じゃないですねぇ(^^;

それにしても、運が良かったのか、それともやはり、樹の「人を見る目」が養われていたためなのか、どうやらいい人をつかまえたみたいですね。

妖艶ともいえるくらいの樹が、このあとどうやって「物々交換」にまで話を進めるのか、楽しみデース!(なぜ英語訛り)
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
 ◆Home  ◆Novel List  ◆All  ◆通常ブログ画面  ▲PageTop 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。