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小説・クロスステッチ第1部 <完>
第9章 染まる染まらない~第15章 許されざる者許す者


クロスステッチ 第1部第15章 許されざる者許す者 第2回

2010.04.03  *Edit 

 期末テストが終わり、三者面談に入った。
 あれから特に問題もなく日々が過ぎて行った。
 茂木はよく休み時間に理子の所へ来てはお喋りをしていくように
なった。そのせいか、岩崎と茂木は親しくなって、時々、本を読む
理子のそばで、二人で喋っていたりした。
 渕田は、あれから一切関わって来なくなった。怪我はまだ完全に
治っていないが、部活の練習には出られるようになったようだ。
3年生なのに、部活には熱心だ。時々、すれ違うが、理子を完全に
無視していた。
 補習クラスは、私立大希望の生徒の半分が脱落した。ハードさに
付いていけなくなったのだ。理子も去年から勉強に本腰を入れてき
て思うのだが、最終的にはやりきると言う強い心だと思った。どう
したって、わからなくて躓く所、幾ら時間をかけても思うように進
まない所は出てくる。それをどこまで頑張れるかが勝負の分かれ
目だと思った。諦めたら、そこで終わりだ。増山が言った通りだ。
わからなかったら、とことん聞く。要はやりきれるかどうかだ。
 これから、受験が近くなればなる程、精神的に追い込まれて
ゆくだろう。既に、それの戦いは始まっている。まだ半年あると
思う気持ちと、もう半年しかないと思う気持ち。その思いのせめぎ
合いである。期末が終わってから、増山から毎日メールが来る。
励ましや、勉強の細かい指示だ。そのメールが心強い。
 自分ばかりが、こんなに応援してもらっていて良いのだろうか。
先生を独占している気分だ。だが増山は補習クラスの時にも、
いつも同じように皆を励ましていた。迷わずに、このまま自信を
持って勉強できるよう、いつも言葉がけをしている。東大出の先生
から自信たっぷりに指導されるのだから、生徒達にも安心感が生ま
れるのだった。この先生の言う通りにやれば間違いは無い、
そう思わせる。
 増山とは、期末テストの前の週に、増山の家で会った。
 「先生がボクシングをされてるなんて、初めて知りました」
 細身の増山だが、裸になるとその上半身は逞しい。薄そうに
見える胸板も意外と厚いし、肩や腕にも筋肉が付いている。肩幅
も広い。初めてその姿を見た時には、本当に意外に思ったもの
だったが、その秘密がボクシングにあったとは、これもまた意外だった。
 「まぁな。歴史オタクだもんな。見た目も強そうには見えないし」
 そう言って笑った。
 「あいつの様子はどうだ?俺から見た限りでは大人しくして
いるようだが」
 「無視されてます」
 「そうか。それは良かった。相当、堪(こた)えてくれたようだな」
 「だけど先生、随分、酷く痛めつけたんですね。腕を折るまで
しなくても良かったんじゃ?」
 「何を言う。当然の報いだ。あいつはテニスに打ち込んでるからな。
ああしてやるのが、一番堪えるだろうと思ったんだ。ただ痛めつける
だけじゃ、気が治まらない。本当なら、学校から追い出してやりたい
くらいさ。ただ、目の届かない所へやっても、それはそれで心配だしな。
もし、お前がレイプされてたら、殺してたかもしれない」
 「そんな・・・・」
 理子は増山の激しさに驚いた。
 「こんな俺を怖いと思うか?」
 そう言う増山は厳しい顔をしていた。まだ心の中で憤っているのが
感じられる。
 理子は頭を振った。
 「やられたら、やり返す。それが俺だ」
 「なんか、うちの母と似てます」
 「お前のお母さんか。前にも似てるって言ってたな」
 「子供の時、苛めに遭うといつも言われてました。やられたら
やり返せって。しかも何倍にもして。でも、私には、それが出来ない
から。できるなら苛められることもなかったでしょ?」
 「何倍にもしてやり返すって言う点では似ていると言うより同じ
だな。ただ俺なら、やり返せないお前の代わりにやり返してやる。
これから先だって、お前に何かあったらただじゃおかない。お前の
事は俺が命懸けで守るからな」
 増山はそう言うと、理子を抱きしめた。理子は増山の言葉に胸が
熱くなった。
 「夏休みに入ったら、できれば7月中に理子のお父さんに会い
たいんだが、段取りしてもらえないか?」
 理子を抱きしめながら増山が言った。
 「父に、何て話したらいいんでしょう?ただ先生が会いたいと
言ってるって言うのも変ですよね。付き合ってる人が会いたがって
いるって言うのが妥当なのかな・・・」
 「そうだなぁ・・・」
 二人は考える。きっと、どんな相手か聞いてくるだろう。その時に
担任だと話したら、どう反応するだろう。怒って会う事を拒否
される可能性もある。
 「その辺は、理子に任せるよ」
 「ええーっ?」
 「お父さんの反応を見ながら話すしかないだろう?会ってからの
お楽しみ~で通せればいいけど、それじゃぁ通らなければ話すしか
ない。ただ、どこまで話すかは、やっぱり様子を見ながらって事に
なるから、理子に任せるしかないじゃないか。もしそこで失敗したら、
その時は俺が後始末するから心配するな」
 「後始末って?」
 「それは俺が考える。何としてもお父さんと会って、俺の
誠意を伝えるよ」
 「わかりました。じゃぁ、私から話して、いつ会えるか相談しますね」
 少し気が重かったが、母に話すよりは父の方が断然話しやすい。
 「その前に、三者面談があるよなぁ~。今度はお母さん、
何を言ってくるかな」
 「受験の話しなんですから、大丈夫だと思いますよ。最近は
機嫌悪くないし」
 理子の母は過干渉なので、食事の時などに、その日にあった事
とかをしきりに訊いてくる。当たり障りの無い事を理子は話す。
うっかりして立ち入った事を話すと後が大変だ。子供の事を気に
して、色々訊いてくるのは親としては当然の事だとは思う。だが、
困るのはあれこれと指図する事だ。ああしろ、こうしろ、お母さん
ならこうすると、いちいち煩い。アドバイスならまだいい。だが、
アドバイスと称して、その通りにしないと怒るから始末に負えない。
 「理子のお母さんの前だと、何だか緊張するなぁ」
 「そう言えば、去年の三者面談の時に、先生、緊張されてましたよね」
 理子は笑った。
 「わかったか?もう、結婚しようって言ってた時だからな。
将来のお姑さんだろ?緊張するじゃないか」
 増山は照れくさそうに笑った。
 「あの日の帰り、うちのお母さん、先生の事を『イケメンの素敵な
先生ねぇ』って言ってたんですよ」
 「おっ、本当か?」
 増山は明るい顔になった。
 「うちの母、結構、面食いなんですよ。4,5年後だったら、
結婚相手として紹介したら大喜びするんじゃないのかなぁ」
 「4,5年後か・・・・」
 ガッカリした様子に、理子は笑う。いちいち反応する様が面白い。
 「理子のお母さん、美人だよな」
 「そうですか?若い時はそれなりに綺麗だったみたいですけど」
 「今だって美人だよ。ふくよかだけど品があって優しそうで」
 「優しそうに見えるからって、優しいとは限りません」
 「そうは言うが、決して冷たいわけじゃないだろう。熱過ぎる
だけだと俺は思うが」
 確かにそれは言えている。本来は優しい人だと思う。情が深いから、
いちいち干渉してくるのだ。どうでもいい相手に対しては、
どこまでも冷たい人だ。
 「理子はお母さんと雰囲気は似てるが、目鼻立ちはちょっと違うな」
 「両親を知ってる人達からは、母に似てるって言われます。
でも自分が思うには、どちらにも似て無いし、どちらにも似てるしって
感じです。両方が混ざって別ものになったって自分では思うんですけど、
雰囲気から母似って判断される事が多いんですよね」
 「そうか。じゃぁ、お父さんに会ったら、その辺の事はもっとわかるかもな」
 増山は大いに興味が湧くのだった。
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