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小説・散 華
    〃     弐 31~60


散 華  1.夢の通い路 49

2011.07.14  *Edit 

 樹に肩を叩かれて、ハッと我に返った。
 もう最後の授業も終わっていて、帰る時刻になっていた。
「何をぼんやりしてるんだ?遠いんだから、さっさと帰るぞ」
「う、うん……」
 樹に促されて、荷物を持って立ち上がった。
 一体僕はどうしたと言うんだろう。
 酷く打ちのめされた気分だった。
 ずっと、当たり前のように樹の傍にいた自分の存在に
疑問が湧いてくる。
 二人は無言のまま、帰途に着いた。一言も言葉を交わす事も
なく家まで帰ったのは、これが初めてだった。樹が何も
話し掛けて来ない事が、幸也の心に更に追い打ちを掛けた。
「幸也……、どうしたの?なんだか元気が無いわね?」
 食事の時に、母が心配げに幸也の顔を見ていた。
「……今日はちょっと、色々あって、少し疲れたんだ」
 幸也の言葉に、樹が怪訝そうな顔をした。その表情に
文緒が目聡く気付いて、「二人の間に、何かあった?」と
問いかけて来た。そんな文緒の心配を払拭するかのように
樹は朗らかな笑顔を浮かべた。
「僕達の間には、何もないよ。僕もずっと元気のないユキを
心配してたんだ。中学へ入ってから、一緒にいる時間も
減ったからさ。僕の知らない所で何かあったのかな?って……」
「そうなの。二人とも、もう子供ではないんですものね。
でも、乳兄弟なんだし、お互いに助け合っていって頂戴ね」
「勿論だよ。な?ユキ」
「うん。勿論だよ」
 幸也は力なく笑った。
 その晩、就寝時間の少し前に、幸也の部屋に樹がやってきた。
 中学に入ってから三人は別々の部屋に寝ていた。
「おい!なんなんだよ、その無様な格好は」
 入って来るなり、ぶっきら棒に樹はそう言った。
「無様って、なんだよ」
 大体、誰のせいで、こんなになったと思ってるんだ。
幸也は腹が立ってきた。
「いつまで拗ねてるんだ、って事だよ。学校での事を
いつまでも尾を引いて、家にまで持ち込んで。
ふぅに心配かけるんじゃない」
「な、なんだよっ、元はと言えば、みんな若が悪いんじゃないか。
僕の知らない所で、三年生と会って、おまけに、その事を
皆は知ってるのに僕には教えてくれなかった。なんでだよ!
なんで僕だけ除け者なんだよ。僕はずっと、若が心配で……、
ずっと守ってきたのに……、誰よりずっと、……そばにいたのに……。
僕は一体、なんなんだよ。何者なんだよ……」
 いつの間にか頬に涙が伝わっていた。それが悔しくて拳で拭う。
 樹が大きく溜息を吐いて「ユキ、ごめん……」と言った。
「三年生と会う事をユキには言わないでくれって、
僕が皆に頼んだんだ」
「ど、どうして…」
「余計な心配を掛けたく無かったからさ」
「そんなの……」
「ユキを大事に思ってるからだよ」
 その言葉に、幸也は顔を上げた。燃料不足の為、
灯りは小さく灯している。ほの暗い中で、切なげな表情を
している樹が見えた。
「ユキは僕の大事な兄弟なんだ。だから、余計な心配は
掛けたくないんだよ。ユキだって、それは同じだろ?」
「それは、そうだけど……、でもなんだか、水くさいじゃないか」
「自分の力でどうにもできない時には、ユキを頼るよ。
でも、そうじゃないのに余計な心配は掛けたくない」
「自分の力って……」
「見てただろ?」
 幸也は昼間の光景を思い出した。あっと言う間の事で、
何が起きたのか実際のところはよく分からなかった。
「みんな、僕を弱いと思ってる。それはユキも同じだ。
だから僕は言ったろ?ユキだって僕の全てを知ってる
わけじゃないって」
 樹はそう言うと、寝巻のもろ肌を脱いだ。僅かな灯りの
中に浮かんだ真っ白な体は、意外にも筋肉質だった。
引きしまった細い体に筋肉だけが隆々としている。
弱々しげで細い見た目の下に、こんなにも逞しい体が
潜んでいたとは思わなかった。
 驚いて目を丸くしている幸也に、樹は恥ずかしそうに
微笑んだ後、袖に腕を通して前を直した。
「驚いただろう?」
 幸也は黙って頷く。
 最後に樹の裸を見たのはいつだっただろう?確か、
小学校へ上がる前だったように思う。小学生になってからは、
共に風呂に入る事が無くなった。立場の違いを明確にする為の
文緒の配慮だった。
「ユキが学校へ通うようになってから、ユキは昼間の
僕の様子は全く知らないだろう?勉強漬けだったわけじゃない。
昼間は何より、訓練が主だった。それに、こんな体を慮って、
体が小さくても自分の身を守れるようにって、
ふぅが護身術を教えてくれてたんだ」
「お母さんが?」
 初耳だった。


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