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小説・散 華
    〃     弐 31~60


散 華  1.夢の通い路 48

2011.07.11  *Edit 

 悔しくてたまらない。
 一体あいつに僕達の何が分かるって言うんだ。
 悔し涙が溢れだす。
 男だろっ、しっかりしろ!何泣いてるんだ!
 そう自分に言い聞かせるものの、止まる気配はない。
途中、学友の何人かに声を掛けられたが、泣いてる姿なんて
見せられるものじゃない、無視して玄関まで走り抜けた。
 そうして、誰もいない筈の玄関まで辿り着いた時、
奥の方で人の声が聞こえて来た事にハッとした。林のように
立ち並ぶ下駄箱の、湿っぽい土の臭いが充満した中で、
確かに声が聞こえてくる。
 幸也は慌てて手で目を擦って涙を拭うと、そっと声の
する方へと近づいた。物音を立てないように、足を忍ばせ、
恐る恐る影から顔を覗かせると、隅の方に男子学生が二人、
立っていた。そして、その一方の顔を見て、思わず声を
上げそうになった。
(樹……!)
 樹は背の高い男子に、今にも抱きしめられそうな様子で
向きあっていた。その背の高い男子は三年生で、いつも
物欲しげに樹を見つめている生徒だった。
 幸也の動悸が激しくなった。酷く妖しげな雰囲気だ。
三年生は舌舐めずりでもしそうな程の厭らしい笑みを
浮かべている。それなのに樹ときたら、口の辺に薄笑いを
浮かべて、その瞳は赤らんでいた。
 あの色は嘲笑の色だ。この状況を楽しんでいるのか。
 大きな男の腕の中にすっぽりと納まりそうな状況で、
抱きすくめられでもしたら身動きできないだろう。
それなのに、恐怖の色は微塵も感じられない。まさか、
相手の意思に応える気なのか?
 幸也はおぞましい物を見てしまった時のような、
妙なザワザワした不快なものを背中に感じた。
 三年生の右手が樹の顔に触れようとした時、樹がその手首を
掴んで捻じあげた。そして次の瞬間、三年生は床に転がった。
幸也は何が起こったのかすぐには理解できなかった。
「その汚らわしい手で、僕に触れるんじゃない」
 転がり唖然としている相手に向かって、樹がそう言った。
その声音はとても落ち着いていた。
「女顔で弱々しい腰付きだからと言って、弱いとは限らないんだ。
こんな腰付きだからこそ、人一倍鍛えてる。女顔だから
チヤホヤされるのは仕方ないけど、男に触れられるのは
真っ平ごめんなんだ。相手が先輩であっても許せない。
また同じような事をしようとしたら、今度はただじゃ
おかないからね」
 樹はそう言うと踵を返してこちらへ向かってきた。
 幸也は慌てて身を翻して下駄箱に張り付いたが、
当然の事ながら樹に気付かれたのだった。
「見てたのか……」
 樹は横目でちらりと幸也へ視線を飛ばしただけで、
そのままスタスタと幸也の前を通り過ぎた。
「おい、待てよ」
 幸也は慌てて追いかけた。
「一体あれは、どういう事なんだ?」
「見てたんだろ」
 樹は冷めた顔をしている。
「見てたって言っても、全部見てたわけじゃない」
「……どうして、あそこにいた?」
 樹の問いに言葉が詰まった。
 二人はそのまま無言で教室へ向かった。
 教室へ入った途端、皆の視線を一斉に浴びた。幸也は思わず
足が止まり動揺したが、樹の歩調は変わらず、自席へと
歩いていく。皆の視線は足が止まった幸也の上に数秒留まった後、
樹へと移り、その顔に笑顔が浮かんだ。
「樹、おかえり。どうだった?あの三年生は」
 周囲のその言葉に、幸也は愕然とした。
 一体、どういう事なんだ。みんなは知っていたのか?
それなのに、幸也が樹の行方を聞いた時には言わなかった。
激しい疎外感に襲われた。足が震えて先へ動かない。
まるで強力な糊が足の裏に塗られたみたいだ。
 昼休みが終わって授業の為にやってきた教師に、
後を押されるようにしてやっと重い足が動いて席へ着けたが、
その後もずっと上の空だった。
 こんな事は初めてだった。
 学校で自分だけが除け者にされるなんて。
 何が何だか分からないまま授業が終わり、休み時間になって、
ふと気付くと、樹の周囲には級友たちの多くが集まって
楽しげに話しに興じていた。どうやら、さっきの三年生の
話しのようだった。
 幸也の耳には何も入って来なかった。ただ、みんなが
面白可笑しげに笑い転げている映像だけが瞳に映ったのだった。


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~ Comment ~

Re: タイトルなし>オスカー様 

オスカーさん♪

こんばんは^^ こちらこそ、わざわざお越し頂き、
コメントまで……。ありがとうございます。<m(__)m>

恥ずかしながら、趣味で書いておりますが……。
お暇な時にでも、ご覧いただけたら嬉しいです。
また遊びに行きますね。
これからも、宜しくお願いします(^^)

 

こんばんは。ブログにコメントありがとうございました。小説書かれているのですね!!私も昔はカキカキしていましたが、今は全くです。落ち着いた時間を見つけて、ゆっくり読ませて頂きますね。
暑い毎日です。お身体大切になさって下さいませ。

Re: NoTitle>lime様 

limeさん♪

本当に、幸也ったら可哀想ですね。
一本気で真面目で、そして純粋なだけに、
余計に痛手は大きいようで……。

樹は周囲が思う以上に複雑で色々な思いを
抱えていますが、それらはこれから
小出しな感じで少しずつ出て来るものの、
まだまだ謎が多いと思っていて下さい。

樹の理解しがたい行動に、周囲が悩み
振りまわされる構図は、この後の物語でも
度々出て来ますので、お楽しみに。

NoTitle 

幸也がもう、なんだか可哀想になってきました・・・。
あんなに樹と、つかず離れす育ってきたのに。
ずっと見守って、大事にしてきたのに。
樹の聡明さと頑固さが、幸也には辛い形で出てきましたね。

とはいうものの、美しい小悪魔に変貌した樹からも目が離せません。いったい、本心では何を思っているのか。
どこへ向かおうとしてるのか。
また、なにか危なっかしいことしてくれるのか。

ますます、ワクワクしてきました!
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