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Book レビュー


村薫 「神の火」

2011.07.08  *Edit 

(文庫上巻裏表紙より)

 原発技術者だったかつて、極秘情報をソヴィエトに流していた島田。
 謀略の日々に訣別し、全てを捨て平穏な日々を選んだ彼は、
 己れをスパイに仕立てた男と再会した時から、幼馴染みの日野と共に、
 謎に包まれた原発襲撃プラン<トロイ計画>を巡る、苛烈な諜報戦に
 巻き込まれることになった・・・。国際政治の激流に翻弄される
 男達の熱いドラマ。



すごーく、重かったです。

ソヴィエトのスパイだった元原発技術者、島田浩二。
スパイも原研も辞めて、離婚もして、大阪の小さな科学雑誌を扱う
書店で働いていて。
けれど、過去のツケを払わざるを得ない状況になり、
どんどん追い込まれていく様が、なんだかとっても悲しくて切なくて。

他の登場人物達も、みんな心に空虚を抱えていて、
事態は悪い方へと進んで行くし、島田の心の様が
読んでいる方に重くのしかかってきて、同じような苦痛を
受けているような、そんな感じがしました。
ずっと、重苦しい中で話しが進んで行って、
なんかこっちも辛かった。

話しの筋はとても面白いのだけれど、なんと言っても
原発に関する専門表記は、もう難しいのなんの。
ただ、3.11の震災後の原発の事件で、少し知識が
ついたせいか、ああ、あれの事なんだな、と思う箇所も
結構、ありました。

それにしても、原発に関する問題は、これを読んで
つくづく、恐ろしいなと思いましたね。
絶対に安全と言う事は有り得ない。
そうなんですよねぇ。本当は、そうと分かっているのに、
なんか、クリーンだとか安全だとか、良い方に捉えて
本質を誤魔化してきたような気がしてなりませんでした。

神が作った火は神に返す。
人が扱うものじゃない。

これを読んで真っ先に浮かんだのが、浜田省吾の
「彼と彼女と週末に」って曲。
『宇宙の力を悪魔に変えた』って歌詞があるんです。
唯一の被爆国であり、原子力の恐ろしさを分かっている筈なのに、
何故、こんなにも原発に頼っているんでしょうね。
日本は火山国家地震国家で、安全な場所なんて
どこにも無いのに。

それにしても、村薫は凄い。
毎回毎回、異なったテーマを背景に、物凄い作品を書いてて、
読む度に唸っちゃうんだけど、なんて言うか、魅力ある登場人物達に
とても惹きつけられてしまって。

自分的には、主人公の島田浩二が、やっぱり一番好きだったりする。
村作品の主役は、いつも悩める男前ですね。
良もとっても好きだけど、私は意外と良との関係に
胸はときめきませんでした。
物語の前半は、謎が多くて、島田以外の人間に対しては、
よく分からなくて少々ジレンマ的な感じで読んでました。
良は死期の近い病気に侵されているのであろう事は、
冒頭を読んですぐに分かっていただけに、時間の経過が
心許なかった。
良との触れあいで、島田は人間らしい当たり前の感情を
自然と得ていたような気がしましたが、後半の日野草介との
絡みは、迫力が増してきて凄かった。

草介に関しても、何故こんなにも関わって来るのか、
いつも疑問に思いながら読んでいて、よく分からない
キャラだなぁと思っていたのに、段々とその存在感が
増してきて、二人の関係にドキドキするようになってしまい……。

いや~、とってもハードだったし、専門的な記述が多くて
読みにくくて時間がかかってしまったけれど、
男達の世界が苦しくて、そして魅惑的でした。
後半は、話しの展開がある程度予想できたので、
この世界を終わらせてしまうのが惜しくて、
読み澱んでしまいました。
読みたくなくなっちゃったのです。

何て言うか、良作に出会うと、その世界に
ずっと浸っていたくて読み終わるのが惜しい気持ちに
なるのですが、今回はそれとは微妙に違いまして。
読み終わるのが惜しいのではなく、物語を進めたくない、
この世界を終わらせたくない、そんな気持ちだったんです。
決着をつけたら、平穏な日々になるのかと言ったら、
ならない事は、それまで読んできて十分過ぎるほど、
分かってるんです。
ハッピーエンドにはならない。
自分の中で島田浩二を死なせたくない。
そんな思いが、読む気力を失くさせたんです。

でも、彼の魂は、最後の最後に自由になった。
江口によって決められてしまったような人生だったけど、
本当は自ら選んだ道だったんだと悟った。
そうせずにはいられない物を内面に抱えて生きて来た彼が、
やっと全てから解放された。
普通の人が当たり前に得られる幸せを得る事が
できなかったし、これからもできなんだけど、
でも…………。

あ~、なんかやっぱり、切ないです。
悲しいです。
生き延びてくれないかなぁ……、なんて思いながら
本を閉じました。

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~ Comment ~

Re: NoTitle>lime様 

limeさん♪

読み終えました……。
本当におっしゃる通り、感想が難しい。
手放しで「面白い!」って一言で済むような作品じゃないんですよね。
読んでて登場人物たちの苦しさが、そのまま伝播してきて、
こっちも辛いんですよ。どっぷりと作品世界の中に
入っちゃってるからなんでしょうね。

読み終わってすぐには、感想なんて何も浮かばない。
時間の経過と共に色んな感情が浮かんでくるんだけど、
まとまらないんですよ。とりとめもなく浮かんでくる。
だから、感想として文章にまとめるのが凄く難しくて。
なもんで、少々おざなりな感じの感想となってしまいました。

初版と大きく違うのは知ってましたが、初版の方が
ハードで好きって方もいらっしゃるんですよね。
ちょっと興味わいちゃいます。

島田の仕事してる日常の様子や、ミナミを歩きまわってたシーン、
私も好きです。ミナミのシーンは、ちょっと微笑ましい部分も
ありましたよね。段々追い込まれて行く姿には胸が痛かったですが。
日常の、会社の人達とのシーンは、ホッとできるシーンでした。
このまま、この生活が続いてくれたらいいのにと、祈るような
思いで読んでました。

島田って不器用ですよねぇ。もっと上手く立ちまわれたのに。
こんなんで、よくスパイ活動できたな、なんて思ったりもして。
最後の方でベティさんに「こんな馬鹿なスパイなんていない」みたいな
事を言われてましたよね。同感だ、って思いましたよ。

語れば尽きない「神の火」ですね。
その思いを上手に文章にしてお伝えできない
自分自身の不甲斐なさったらないです。

高村作品は、どの作品も、時間の経過と共に自分の中に
どっかりと居すわったまま、その世界の存在がいつまでも
生きてる感じがします。これだけ人の心の中に入り込んでくる
作品って、他の作家ではそうそう無い気がします。
本当に凄いです、高村先生は。

さて、暫く他の作家の作品を読んだ後、「照柿」を読みたいと思います。
女に惚れちゃう合田刑事の滑稽な姿、イライラしちゃうかも~。(^_^;)
彼に女は似合わない!

NoTitle 

narinariさん、読み終わったんですね!

私もね、この物語を読む間ずっと、「死なないで」って願いました。
けっこう悲劇的な展開が好きな私ですが、
この物語の登場人物はもう、ほんとうに私の中で生きてて、みんな愛おしい存在で。

良のときも、ほんとうにずっと「死なないで!」って願ってたもんだから、泣けて泣けて。
島田の悲しみがダイレクトに伝わってきたせいで・・・。

この物語、諜報部を扱ってるぶん派手な展開も多いけど、島田が仕事をしてる姿や、島田がミナミでひたすら歩かされたり、水カレイたべたり・・・(あげたらきりがない)どんな場面も本当にぞっこんで・・・。

良とのシーンもね・・・・涙
きっと良が、私の作品の中の「陽」に、雰囲気や生き方が似ていたからだと思うんです。
だから、息子のような感覚だったわけで。

後半、島田と草介が落ちてゆく闇のような世界。
狂気とも激情ともカタルシスともとれる結末は、実は思っていなかった方向だったので、もう、読み終わったあとは放心でした。
narinariさんとおなじ。
なかなか抜け出せない、抜け出したくない・・・・。

ああ、物語って、終わりがあるのがつらいですよね。

実は、初版本の「神の火」は全くラストが違うんです。
もう、「え~~~、」って言うほど。
高村先生、改訂して正解でした!!^^。

さて、神の火は語りだしたら止まらないので、このへんで・・・。
感想、たのしく読ませてもらいました。
narinariさんの視点にも、激しく共感!しました。

しかし、高村先生の作品って、感想難しいですよね。
表現しつくせない。
・・・私は『照柿』あきらめました。
『レディ・ジョーカー』は、書けるかなあああ。
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