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小説・散 華
    〃     弐 31~60


散 華  1.夢の通い路 47

2011.07.07  *Edit 

 周囲の人間に樹の事を問うたら、「なんか、ちょっと用事がある、
とか言って出てったぜ」との言葉が返って来た。
「用事って?」
「聞いたけど、言わなかった」
 なんだ、用事って……。
「ご不浄では、ないようだった」
「なんだよ、『ご不浄』とは!」
 『ご不浄』とは便所を婉曲に言った言葉だが、主に女性が
使う言葉だった。それを敢えて使った相手に対し、
幸也は憤りを感じた。
「いや、ほら、姫だからさ」
 慌てて笑顔を作る相手を幸也は睨みつける。
「樹は姫じゃないぞ。若様なんだぞっ!」
「なんだよ、ムキになって。そんな事は誰だって
分かってる事だろう?明日をも知れない時代なのは、
お前だって十分承知してるだろうが。そんな希望の無い生活に、
樹の存在は潤いを与えてくれてるんだよ。
お前は生真面目過ぎて無粋なんだな」
「そ、それは分からないでもないけど、だけど、
樹はどうなんだよ。男なのに、姫扱いされて。可哀想じゃないか」
 幸也の言葉に、相手は嘲笑うように鼻を鳴らした。
「お前もつくづく御めでたい奴だな。樹自身はそんな事は
全く気にしてないのに。それに、『可哀想』ってのは何だよ。
『若様』とか言って、足の悪い樹を守って、その実は
見下してるんじゃないのか?」
 相手の言葉にカッとなり、幸也は思わず拳を振り上げた。
「本当の事を言われて、殴るのかよ」
 唇が戦慄き、拳が震えた。
 喧嘩をしたら負けだ。
『賢者は愚者を相手にしてはならない』
 祖父の言葉を思い起こした。
 あれ以来、幸也は一度も喧嘩をした事が無かった。
どんなに悔しくても、拳を振り挙げずにきた。それなのに、
今は無意識のうちに拳が振り上がっていた。
 視界がぼやけてきた。幸也は振り上げた拳を下げると、
急いで踵を返して教室を飛び出した。


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