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小説・散 華
    〃     弐 31~60


散 華  1.夢の通い路 45

2011.07.01  *Edit 

 殺伐とした世相の中、未来への夢を抱けない中で集った秀英たち。
夢や希望が無くても、一縷の望みを抱いてやってきた中学に、
思いもかけず現れた華やかな存在は、複雑な世相と思春期の
微妙な精神と肉体の揺れとが相まって、隠微な空気を産んだ。
 幸也は、通い始めて暫く後、周囲に漂う異様な雰囲気に
気がついた。男ばかりの世界の中で、少女のように美しい樹が
恋の対象者として見られるであろう事は、幸也にも分かってはいた。
 初日から、恋文が毎日のようにやってきた。
鞄に忍んでいる事もあれば、下駄箱に入っている事もあり、
直接手渡される事もあった。手渡しされた際、樹は上品に
にっこりと笑って受け取る。その様子を見て、
幸也は不思議に思う。相手は同性なのに、気持ち悪いとか
思わないのだろうか。
 その事について本人に訊ねたら、「別に」と素っ気ない
答えが返って来た。
「まさか、樹は、男が好きとか?」
 幸也の問いに、樹は呆れたように笑った。
「そんな訳ないじゃないか」
「じゃぁ、何故、気持ち悪いって思わない?自分を
女のように見られて不愉快じゃないのか?」
 樹は「ふっ」と笑った後、「女顔なんだから、仕方ない」
と言った。
「男子校だしね。昔から男子校じゃぁ、女性的な男は
そういう標的にされると決まってる」
 まるで他人事のような口調に幸也は得心がいかない。
「心配しなくてもいい。僕は大丈夫だから」
「大丈夫って、そりゃぁ、僕がそばにいる時は誰にも
手出しなんてさせやしないけど……」
 四六時中一緒にいるせいか、幸也の事を、姫君を守る
騎士とか従者と噂している者がいる。幸也はそう言われる事は
別段どうとも思わない。実際、自分は樹を守るべき存在だと
自負している。
 そうして周囲に目を光らせてはいるが、時によっては、
離れる場合もあるかもしれない。そうなった時の事が心配だ。
多くは、高嶺の花のように敬い奉っている様子だが、中には
可憐な花を手折って自己の所有物としたい欲求を露わに
匂わせている輩も見受けられる。
 もし万が一にも、そんな事になったら、この繊細な花は
どうなってしまうのか。幸也の頭の中に、汚らしい男達に
穢されそうになっている樹の映像が浮かび、体が熱くなって
くるのを感じて、思わず頭を振った。
 一体、自分は何を考えているのか。いけない事を
妄想してしまった自分を恥じた。
「ユキ、どうした?」
 自分の隣で頭を振っている幸也を不思議に思ったのだろう。
幸也は慌てた。
「いや……、何でも無いよ。ただ、樹が心配なだけさ」
「だから、心配いらないって言ってるじゃないか」
 あまりにも明るい顔で言うので、幸也の中に怒りの感情が
湧いてきた。
「なんで、そんなに呑気でいられるんだよ。女顔って事は、
女として扱われるかもしれないって事だろ?襲われたら
どうするんだよ」
 そんな体で……、と言う言葉は呑み込んだ。
 幸也の言葉に樹は目を丸くした後、にっこりと笑った。
邪気の全くない笑顔を向けられて、幸也の心臓がドキリと跳ねた。
「ユキは……、そんな心配をしてたんだ」
「あ、当たり前だろっ」
 顔が赤くなってるのが分かって、目を合わせるのが
気恥ずかしくなり、顔を背けた。
「心配してくれて、ありがとう。でも、本当に心配は
いらないんだ」
 穏やかな声音に再び樹へ目をやると、その顔は優しい
笑みを湛え、薄い瞳は金色に光っていた。
「自分の身は自分で守れる。その術は自分なりに
身につけてるつもりだし」
 意味が分からなかった。自分の身を守る術とは、
一体どんな事なのだろう?
「不思議そうな顔をしてる」
 樹の指摘に、「それはそうだろう」と幸也は答えた。
「ユキは……、僕の全てを知ってるつもりだろうけど、
それは間違いだよ」
 思わぬ言葉に、幸也は目を剥いた。
「そ、そんな事を言われるなんて、心外だ」
 憮然とそう答える。
 樹の生後間もない頃から、ずっと傍で共に育ってきて、
自分は樹の何もかもを知り、分かっていると自負していた。
勿論、違う人間だから、その内面において完全には
理解できない部分がある事は分かっている。それでも、
凡そは分かっているつもりだ。自分の知らない事があるなんて、
鼻から考えた事も無かった。
 それに、もしあったとしても、こうして言われる事自体に
腹が立つ。二人の間に見えない壁を作られたような、否、
元からあった壁の存在を改めて知らしめられたのか、
いずれにしても「兄弟のようなもの」と言っていたのに、
二人は他人なんだと引導を渡されたような気持ちになるのだった。


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~ Comment ~

Re: NoTitle>lime様 

limeさん♪

二人も成長してきて、微妙なお年頃になってきました。
ずっと一緒に育ってきて、当たり前のようにそばにいる
存在でしたが、少しずつ大人の階段を上り始めたようですね。

ちょっとネタバレになりますが、幸也は今後、
樹に振りまわされる人生を送る事になるっぽいです……(^_^;)

NoTitle 

樹の毅然とした態度に戸惑う幸也の気持ちがわかりますね。
幸也には、俺がついてなきゃ、という気持ちがあるだろうに。
樹には一体どんな考えがあるのか。
謎めいてて、いいキャラです^^
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