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小説・散 華
1.夢の通い路 壱 1~30


散 華  1.夢の通い路 28

2011.05.12  *Edit 

 丸い顔にぱっちりとした二重の目。鼻と口は小さく、
全体的に肉付きの良い体付き。色白ではない肌も相俟って、
誰が見ても健康で丈夫そうだ。たおやかだった晴香とは
対極にあるような娘の姿に、文緒は驚いた。
「……晴香の喪も明けたので、来月、寛は祝言を挙げる事と
なった。今日は、その相手である久恵が挨拶をしたいと言う事で、
この席に呼んだ。彼女は寛の亡き母の妹の嫁ぎ先の末娘で……」
 念頭の挨拶をした大殿が、寛の来月の祝言の話しを始めた。
寛の隣に見知らぬ若い娘が座ったのを見て多くの人間が驚き、
不思議そうに見ていたのだが、大殿の話しを聞いて誰もが
目を見張って驚いていた。
「まだ祝言も挙げてはいないのに、堂々と上座に座っている」と、
佳香が憎々しげに呟いた。隣でそれを聞いた文緒も、
若い娘にしては図々しい印象だと感じていた。
 後妻に入る久恵は、初対面で多くの人間の好奇の視線を
浴びながらも、恥入る風でもなく堂々と座っていた。
怖れを知らない若さ故か。
 大殿の紹介の後、久恵は晴れ晴れとした笑顔を浮かべて、
「久恵でございます。宜しくお願い致します」
 と、手をついてお辞儀をした。
 初めて聞くその声は、若い娘らしくない低い声だった。
寛は隣で頷いているだけだ。その顔は無表情で、何を
思っているのか皆目、窺い知れない。
 各人の新年の挨拶が始まった。
 末席から順に、年賀の品を当主の前に置いての挨拶だった。
外戚の最後に、藤村裕也が息子と共に挨拶をした。
寛は僅かに苦い表情を浮かべながらも黙って頷いた。
 幼馴染であり、今後も華陽院家を支えてゆく頼もしき
相手であるのに、幼き頃からの裕也に対する複雑な思いが
未だに燻ぶっているようで、その思いがどうしても表情に
出てしまうのだろう。
 だが、蔑ろにはできない相手である事は、さすがの寛も
重々承知している為、表だって相手に不愉快な思いを
させるような態度は取らないのだった。
 そうして最後の最後に、樹の番がやってきた。
 文緒と共に立ち上がる。
 文緒は樹の手を取らずに傍に付き添いながら、一人で歩かせた。
 満三歳を迎える前に、なんとか一人で歩けるようになった。
去年、一人で歩けない樹に激怒していた寛である。一人で
歩けるようになった様を見て、少しは心を動かすのではないか。
 だが、文緒の思いは儚くも簡単に踏みつぶされた。
 覚束ない足取りで、真っすぐには歩けずに左右にふらつく
樹を見て、寛は舌打ちしたのだった。
 父の前までやってきて、正座をすると、畳に両手をついた。
「あ……、あけまいて……、おめれとう……、こ、こ、こ、
……さいましゅ……」
 呂律の回らぬ口調で懸命に挨拶をしたが、そんな息子に
対して寛はあからさまに嫌悪の表情を浮かべた。隣に
座る久恵は、初めて見る継子の姿に驚いていた。
 寛は心配げに見ている文緒に向かい、さっさと去るように
顎で合図した。文緒は一礼しながら、樹に対し返礼しない
寛の仕打ちに怒りを覚えたのだった。
 樹を促して元の席に戻り、そっと上座を窺うと、寛は
眉間に小さい縦皺を浮かべており、久恵は嫌悪の表情で
樹を見ていた。文緒の中に冷たい風が吹き抜ける。
 この親子の様子に、周囲は僅かにざわめいていた。
 最早、華陽院本家の長子が普通ではない事は周知の
事実だった。それだけに、今回の寝耳に水の再婚話に、
多くの人間が内心では喜んでいた。
 元々、血の近い者同士の婚姻を快く思っていなかった者達は、
樹を近親婚の申し子と称して、益々近親婚を忌み嫌うように
なっていた。畏れ多くも歴代の帝のお子様方の中にも、
近親婚の申し子が少なくない事を皆知っている。だからこそ、
偉大な先祖は近親婚を禁じたのだ。
 それを破ったのだから、当然の報いだ。
 そんな周囲の囁きが文緒の耳に入ってきて、文緒は憤った。
 例え近親婚が原因だったとしても、だからと言って子供に
何の罪があろうか。責任があるとしたら、それは親の方に
であって、親を選べない子供には何の科(とが)も無い筈だ。
 周囲の心無い囁きと、実父である寛の不機嫌な顔と、
仮にも母になる久恵の嫌悪感を露わにした冷たい眼差しに、
心の中の闇が大きく広がってゆくのをどうにもできない
文緒だった。


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~ Comment ~

Re: NoTitle>lime様 

limeさん♪

寛は早々と再婚してしまいましたね。
まぁ、いつまでも独りでいるわけにも
いかない立場ではあるのですが……。

この家での樹の立場はとても厳しくて、
今後の人格形成と生きざまに大きな
影響を及ぼしていきます。
そして、今作のメインの主人公である
澪の人生にも……。

NoTitle 

新しい奥さんが加わり、また雲行きがあやしくなてきましたね。
なんだか好きになれない~、この人も。
樹のこれから先が、とても気になるところですが・・・。
文緒一家が健全で温かいことが、読む方にも、とっても救いです。
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