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小説・クロスステッチ第1部 <完>
第9章 染まる染まらない~第15章 許されざる者許す者


クロスステッチ 第1部第13章 流れのままに 第4回

2010.03.28  *Edit 

 「全く、お前ってやつは・・・。で、どうなんだ?俺が聞きたい
のは嫌じゃないのか?って事だ」
 この人は、嫌だと言ったら、止めるのだろうか?また妙なやり
取りに発展しそうな気がしたので、それは聞かないでおくことにした。
 「嫌じゃありません。最初はちょっと驚いたけど、やっぱり、
呑むしかないじゃないですか。でないと、溢れちゃいそうだし・・・。
その事については、何の問題もありませんよ。汚いものじゃないし、
そんなの気にしてたらキス自体できないじゃないですか」
 「ウブなお前のセリフとは思えないな」
 「どうしてですか?先生がくれるものを私が拒否できるわけないのに。
きっと、先生がそうして欲しいんだろうと思ったから喜んで呑み
込んでるのに、違うの?」
 増山は優しく笑った。
 「いや、違わない。お前の言う通りだ。お前にそうして欲しかった。
だが、そういうのを嫌がる女もいるだろうし、自分でしておきながら、
本当のところ理子がどう思ってるのか、知りたくなったんだ。
無理してるんじゃないかと思ってな」
 「昨日、言ったじゃないですか。愛してるから平気だって。あなたが
私にしてくれる事は、みんな愛の証しだから、歓び以外の感情なんて
無いです。だから、したいようにしてくれて構わないんですよ。
それとも、こんな私、嫌ですか?」
 「馬鹿な事は言わないでくれ。嫌なわけが無いだろう。恋人が、
自分の全てを受け入れてくれる事の他に、嬉しい事なんてあるか」
 「先生。愛って不思議ですね。私、本を沢山読むから、男女の
こういうセックスシーンも数多く読んできました。知識だけは豊富
です。私これで意外と潔癖症な所があるんです。だから色んなシーン
を読んで眉を寄せるような事とかもあるんですけど、実際に先生のを
受けて、私、全然平気だった。むしろ、呑み込むことが嬉しかった。
先生の全てを呑み込みたい、もっともっと欲しいって・・・。
愛してると、色んな事を喜んで受け入れられるんですね」
 こんなにも他人を愛するようになるとは、理子も思っていなかった。
増山の全てが好きだ。
 増山は理子の言葉に心が震えた。誰も愛せなかった自分が、唯一人、
愛することができる女性。その彼女が、こんなにも自分の全てを受け
入れてくれている。受け入れる事に歓びを感じている。そんな理子を
狂おしいほど愛おしく思うのだった。早く結婚したい。その思いが
更に強くなる。
 増山は理子の隣に横たわると、理子の手を取った。指と指を絡める。
 「先生・・・?」
 「ん?」
 二人は顔を横に向けて互いを見つめた。
 「少しはクールダウンしました?」
 「そうでもない。こうしてないと、ヤバそうだ」
 「なんだか私達、浮いたり沈んだり欲情したり、忙しいですね」
 理子の言葉に増山が吹きだした。
 「確かに、そうだな。なんでこう、感情の波が激しいんだろうな」
 「先生が情熱家だからですよ」
 「俺は、お前を好きになる前までは、クールで落ち着いた男で
通ってたんだけどな」
 「今だって、他の人の前では、そうなんじゃないですか?」
 「そうだな。お前がいなきゃ、俺はいつだって冷静なんだ」
 「それって、私のせいにしてませんか?ちょっと酷くないですか?」
 「ふっ、お前のせいには違いない。だが酷くなんかないぞ。俺の心を
揺さぶれるのは、お前だけって事なんだから、栄誉な事じゃないか」
 「栄誉って・・・。じゃぁ、赦しを請わずにはいられない程、
揺さぶってあげましょうか?」
 「俺は構わないぞ。だが、その揺り返しの大きさも考えるようにな」
 二人は顔を見合わせて笑った。互いに、ついつい張り合ってしまう。
 「先生・・・」
 「なんだ?」
 「実は私、ちょっと寝不足気味なんです・・・」
 「どうした?まさか遅くまで勉強してたわけじゃないだろう?」
 「勉強じゃないです。一昨日の晩は、先生の事が気になって、
昨夜はゆきちゃんの事が気になって・・・」
 「そうか。一昨日は悪かったな。本当に大人げなかった・・・」
 「いえ、もういいんです。それより、何かとっても眠くなって
きちゃって。このまま少し眠ってもいいですか?折角の先生との時間が
勿体ないんですけど、疲れちゃったみたい。何もしてないのに・・・」
 増山は優しく理子の髪を撫でた。
 「興奮して疲れたんだろう。少し眠るといい。そばにいるから・・・」
 増山の魅力的な低音が眠気を更に誘い、理子は眠りへと落ちて行った。
 眠りに落ちた理子の寝顔を増山は見つめる。可愛い寝顔だった。
まだ幼さが残っているように感じられる。その寝顔を見て思う。
急ぎ過ぎているのではないかと。一年前と比べると、随分と遠い場所へ
連れて来てしまったような気がするのだった。まだ少女なのだから、
もっと大きな気持ちで暖かく包んでやるべきなのに、激情の嵐に強引に
巻き込んでしまった。だが、引き返す事はできない。
 もっと冷静にならなければ。そうしないと、理子も受験に集中できない。そ
うなれば、結婚も先延ばしになる。大人の自分がリードしないでどうする。
くだらない事でいちいち嫉妬しているのは時間の無駄だ。増山は、
気持ち良さそうに眠っている理子の頬に、そっとキスをした。

 連休最終日、二人は落ち着いた気持ちで過ごしていた。連日行楽日和
だったが、出かける事はできない。最後の日は、花見の時のように
お昼を庭で食べた。庭の木々は、新緑が美しかった。所々に花木が
植えてあって、色を添えていた。
 「明日からまた、学校ですねぇ。しかも、テスト・・・」
 「そうだな。こんな風に連日二人きりで過ごせるのも、もう
結婚するまでは無いのかな」
 理子は増山を見た。ほのぼのとした様子だ。連休が始まった頃とは、
随分と雰囲気が違う。
 「どうした?」
 増山が頬にエクボを作って、明るい笑顔を理子に見せた。
 「先生のエクボ、つついてもいいですか?」
 理子の言葉に、増山から笑顔が消えた。
 「なんで、つつきたいの?」
 「なんでって、つついてみたいんだもん。つつかれた事、無いですか?」
 「無い。まぁ、小さい時はお袋がよくつついていたみたいだが」
 憮然と答える。
 「私、エクボのある人に会うの、先生が初めて。なんか、とっても
可愛くて、つつきたくなっちゃうんです。ねっ、いいでしょう?
つつかせて下さいよー」
 「男としては、エクボはあまり嬉しくないんだけどな」
 「もしかして、気にしてるんですか?」
 「まぁ、な。子供っぽいだろうが。そうやって、可愛いとか
言われるしな」
 「変な事を気にするんですね。クールで知的な雰囲気とは
全く違う、そのギャップがまた素敵なのに」
 「そうか?」
 理子にそう言われて、何となく気を良くした様子を示した。
それがまた、可愛かった。
 「ねっ?いいでしょ?お願い」
 理子の懇願に、「仕方ないなぁ」と言って、顔を突き出し、笑顔を
作った。理子は人差し指で、その頬の窪みをつっついた。
 「わ~い、なんか、嬉しい!楽しい!」
 そう言いながら、何度もつつく。
 「おい、いい加減にしてくれないか。しつこいぞ」
 増山がエクボを作ったままの状態で、そう言うので、潰れたような
声になり、それが可笑しくて理子は爆笑した。
 楽しいひと時だった。こんな、ほのぼのとした自然な時間を持てて、
理子は嬉しかった。いつも、息苦しいくらいに熱く濃厚な
時間だったから余計だ。
 「今日はさ。理子に渡す物が有るんだ」
 増山はそう言うと、リボンのかかった小箱を差し出した。
 理子は驚いて、その顔を見上げた。
 「明後日、誕生日だろう。ちょっと早いが、当日渡せないからな」
 受け取る理子の手が震えた。自分の誕生日の事なんて忘れていた。
況してや、増山が覚えているなんて全くの想定外だった。
 「先生、ありがとう。私、教えて無いけど、また調べたんですね」
 「そういう事。お前、早いんだな。去年は、調べたらとっくに
過ぎてたからガッカリしたよ」
 「そうなんです。4月、5月は、貰い損ねる事が多いんです。
でも先生、ズルい。私は先生の誕生日を知りません。先生は私の
色んな事を調べて御存じなのに、フェアーじゃないですよね」
 「そう言われれば、そうだな。誰にも言ってないし。でもお前は
彼女なんだから、知る権利はあるな。じゃぁ、教えてあげよう。
俺の誕生日は2月6日だ。血液型はO型。身長180センチ、
体重66キロ・・・だったかな。足のサイズは27センチだ。
他に、何があったかな・・・」
 「あっ、もういいです。また何かあれば、おいおいお伺いしますから」
 やっぱり、180センチあるんだな、と理子は思った。
足も27センチもあるのか。背が高いのだから当たり前かもしれないが。
血液型も、予想通りだった。この激しくて独占欲の強い性格からして、
多分O型だろうと思っていた。理子の母と同じだ。
 「ところで、開けてくれないの?」
 「あっ、すみません。開けさせてもらいます」
 増山に促されて、理子はプレゼントを開けた。中にはバレッタが
入っていた。明るくて綺麗な薄いオレンジ色と僅かな白がマーブルに
なった石のような素材で、ハートの中に可愛い模様がレリーフに
なっていた。見た事のない、個性的で素敵なデザインだった。
 「わぁ~、凄く可愛くて素敵・・・」
 理子は目を輝かせて、増山を見た。その理子の様子に、増山は満足
 そうに笑っていた。エクボを作って。
 「気に入ってくれたかな」
 「はい。とっても」
 理子は他人と同じ格好をしたり同じような物を持つのが好きでは無く、
ちょっと他人とは違った、個性的でセンスのいいものが好きだった。
だから流行の物はあまり買わない。買わないと言っても、小遣いが
かなり少ないので殆ど買えないのだが、その中で、自分の好みと
予算に合ったものを見つけている。
 髪はロングなので、そのままにしていると顔に髪がかかる。神経質
なので顔に髪が掛るのが苦手で、かと言ってまとめるのも好みではなく、
その為、大抵いつもバレッタで一部を留めている。だが、なかなか気に
入った、個性的で可愛い物が見つからない。アクセサリーを身に纏うと、
どうも邪魔に感じられるので、唯一お洒落として楽しめるのがバレッタ
だった。だから、増山のプレゼントは、とても嬉しい物だった。 
 「いつも、バレッタで髪を留めてるだろう。だから、バレッタにした。
身に付けて貰えるからな」
 そう言う増山の優しい顔を見て、理子の胸は熱くなった。
 さっそく、貰ったバレッタを付けてみた。バレッタの悲しい所は、
自分では見れないところだ。付けたところを増山に見せると、
「とても似合う」と喜んでくれた。理子はとても嬉しかった。
 増山は理子の長い髪を手に取ると、口づけた。それだけで、胸の奥が疼く。
「俺は、髪の長さに好みとかは別に無いんだが、理子のロングヘアーは
好きだな。よく似合ってる」
 「そう言って貰えると嬉しいです」
 理子が赤くなって俯いた。
 「いつから伸ばしてるの?」
 「高校へ入ってからです」
 「じゃぁ、それまではショート?」
 増山がちょっと不思議そうな顔をした。
 「想像つきませんか?」
 理子が笑って尋ねると、「全然、つかない」と答えが返って来た。
 「中学の時は、校則が厳しかったから。伸び掛けの中途半端な
長さの時って、結ぶと変なんですよね。私、髪を結ぶのって似合わない
みたいで。だから今でも結ぶ事って滅多にしないんですけど」
 「そうか。そう言われると、見てみたい気もするが、まぁ、
いつかは見れるかな」
 そう言って増山は笑った。
 「ところで、夏休みに入ったらさ。理子のお父さんに会いに
行こうかと思ってるんだが、どう思う?」
 増山が唐突に言った。
 「えっ?それって?」
 もしかして、結婚の話し?
 「やっぱり、事前に話しておいた方がいいんじゃないかと思ってな。
お母さんは無理そうだから、お父さんだけでも理解しておいてもら
おうかと。そうすれば、3月にお母さんに報告した時に、少しは
楽かと思うんだ。お父さんが味方をしてくれれば」
 増山に言われて、考えてみる。確かに、母よりは父の方が遥かに
理解はあると思う。だが、まだ在学中なのに、担任と恋愛し、
卒業後すぐに結婚するなんて話しを聞いて、父はどう思うだろうか。
理子の父は、割と淡泊だ。理子の淡泊な所は父に似たんだと思う。
とは言え・・・。
 「この間、理子に言われたろ?結婚式の時期の事を。俺も、やっぱり
3月は早過ぎると思ったんで、式はゴールデンウィークにしたらどうか
と思うんだ。その時期も混む時期だから、予約は夏休みのうちにやって
おきたい。だから、その前にお父さんだけでも話しておいた方が、
後々の為にもいいんじゃないのかなぁ」
 「ゴールデンウィークに挙式ですか。じゃぁ、それまでは?」
 「勿論、3月の末に入籍して一緒に住むさ。そうでないと、大学へ
通うのが大変だろう?」
 「そうですね。だけど、そうなると、卒業後は慌ただしいですね」
 「そうだ。だからこそ、先に出来る事はやっておかないと」
 理子は増山を見た。増山は自信ありげに微笑んでいる。この人の
言う通りにしていれば、問題無さそうに思えてくるから不思議だった。
 「家も、早めに決めておかないとな。家財道具を用意しないと
いけないし、自分達の荷物もある程度は運び込んでおかないと。
これは、受験の時期にぶつかるから厳しいぞ」
 「あの・・・」
 家の話しが出て、かねてからの疑問が浮上した。
 「先生は簡単に、式や家の事を話されますけど、資金の方は大丈夫
なんでしょうか?ゴールデンウィークなんて高そうだし、マンション
だって買うっておっしゃってましたよね?賃貸じゃなくて」
「その事に関しては、理子は何も心配する必要は無いから」
 増山はきっぱりと言った。
 「でも、こう言ってはなんですけど、先生は県立高校の教師ですよ?
高収入で無い事はわかってます。しかも、まだ2年目なのに」
 「まだ高校生なのに、やっぱり女って現実的なんだな」
 増山はそう言って笑った。
 「当たり前じゃないですか。結婚って、現実ですよ?」
 「わかった、わかった。まぁ、いずれはわかる事だからな。実は
俺は株で随分儲けていてな」
 「株?先生、株式に投資をされてるんですか?」
 理子は思いも寄らない増山の言葉にとても驚いた。高校生の理子に
とっては、非現実的な感じがする。それと、とても堅実な母の元で
育ったせいか、投資に対して懐疑的でもあった。
 「大学生の時に、親が長年俺の為に貯めておいてくれたお金と、
バイトで稼いだお金で株を買った。勿論、かなり研究してな。自分で
言うのも何だが、どうも才能があるようで、何倍にもなって帰って来た。
正直なところ、それで得た利益の利子も大きくてな。あまり使わない
から貯まる一方だ。最近は不景気で金利もかなり低くなったから、
利子収入は激減したけどな」
 そんな話しをされても、理子にはピンとこない。
 「生活に関しては、今の収入で十分やっていける筈だ。必要以上に
贅沢をするつもりはない。だが、折角稼いだ金は有意義に使いたい。
二人の通学と通勤に便利な所に住みたいし、ローンを組まずに買える
だけの資金はあるんだから、別に構わないだろう。結婚式だが、
時期に関しては、これはしょうがないだろう?俺も仕事上、休日
じゃないと無理だしな。だからゴールデンウィークに挙式はするが、
披露宴はこじんまりとやるつもりだ。たくさんは呼ばない。だから、
心配するな」
 増山が、これだけ自信たっぷりに言うのだから、本当に心配は
いらないのだろう。だが、一体、どれくらいの額を持っているのだろうか?
 「投資に関しても、心配はいらない。今は殆ど換金してあって、
持ち株はそんなに多くない。株で損をしないコツは、大きく儲け
ようと思わない事だ。欲張ると損をする。将来的に、損益が出る
心配はないから、お前は不安に思う必要はないからな」
 「わかりました」
 理子は、そう言うしかなかった。自分にとっては全くの未知の世界だ。
口の出しようもない。だが、ひとつだけ思うところがある。
 「ただ先生。何かの時には、必ず私にも話して下さいね。自分一人
で抱え込んだりしないで下さい。人生の伴侶になるんですから、
ただ守られるだけの存在でいるのは嫌です」
 「わかった。そうするよ」
 増山は優しく微笑むと理子を抱き寄せた。
 「こういう話しをしていると、結婚も現実味を帯びてくるな」
 理子は増山の腕の中で黙って頷いた。
 「それで、お父さんの件だけど、いいか?話しても」
 「はい。まぁ、父が了解してくれたところで、母への影響力は
無いですけどね。逆に、自分だけが知らされて無かったと更に
激怒するかもしれませんけど、それでも、二人して急に知らせる
よりはいいのかな、とは思います」
 「お母さんが、何があっても反対されたら、どうする?」
 増山が心配そうに訊いてきた。
 「父が賛成してくれてたら、反対を押し切ってでも結婚します」
 理子のその言葉を聞くと、増山は 
「ありがとう」
 と言って、理子を優しく抱きしめたのだった。
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