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小説・散 華
1.夢の通い路 壱 1~30


散 華  1.夢の通い路 10

2011.02.25  *Edit 

 昭和七年、世情は緊迫していた。
 昨年、樹が生まれるひと月前の九月、大陸で鉄道爆破事件が
起きた。世に言う柳条溝事件(満州事変)である。この事件を
発端に、この後、関東軍による大陸支配へと繋がって行くが、
まだこの時点では不気味な闇が大きな口を開けて待っているような、
そんな漠然とした未来への不安な予感を漂わせているのみだった。
 そして、その満州事変により、大陸内での抗日運動が
激しくなり、翌昭和七年一月に、上海で武力衝突が
勃発(上海事変)。大規模な戦争が繰り広げられ、
停戦締結したのが先月五月だった。この上海における
日中両軍の戦闘の間に、満州では日本軍がハルビンを
二月に占領し、三月一日には満州国を樹立させている。
 そして、先月、五月十五日、五.一五事件が起きた。
 世界恐慌に端を発した大不況により、企業倒産が相次ぎ、
農村部の窮状は凄まじさを増し、社会不安が世の中を覆っていた。
こんな状況にありながら、政府は満足な手段を講ずる事が
できず、国民の生活は脅かされる一方だった。
士官学校は授業料が無料だった事もあり、多くの貧困農村部の
子弟が集まっており、農村部の窮乏は彼らにとっては
他人事ではなく、政党政治の腐敗に憤った青年将校らが、
首相官邸などを襲撃した。そして犬飼毅首相が射殺された。
 軍隊では、天皇は絶対的な存在として教育される。
だが実際に政治を取り行っているのは政府だ。汚職と政争に
明け暮れている政府を潰せば世の中が良くなると信じたのだろう。
 おまけに、第一次世界大戦以来、軍縮の傾向にあり、
軍人は肩身の狭い思いもしていた。特に昭和五年にロンドン
海軍軍縮条約を締結した若槻禮次郎前首相に対して強い
不満を持っていて、彼らの本来の標的は若槻禮次郎で
あったのだが、若槻が属する立憲民政党が選挙で大敗し、
若槻内閣は解散。
 その後を受けた犬飼首相が、襲撃される事となったのである。
 犬飼は満州事変に対して黙認した事もあり、陸軍との
中は悪くなかった。だが元々、孫文を始めとする中国の
要人と親しい間柄で、大陸進出には反対の姿勢を持っており、
また軍縮派でもあった。
 その犬飼が射殺され、その結果、軍人内閣が発足した。
国政は軍縮とは反対の方向へと進みだしたと言える。
「御上は、今回の事件に大変胸を痛められてらっしゃる」
 綱紀は眉根を寄せてそう言った。苦悶しているように見えた。
「去年からの一連の事件で、疲れてらっしゃる。ほんの
束の間ではあるが、葉山御用邸にご養生にいらしてるんだよ」
 年の初めに、自身も襲撃されていた。さぞやお疲れの
事なのだろう。それに、天皇は大陸への武力進出には
反対の意思を持っていた。だが国家元首であり、大日本帝国軍の
大元帥たる自身の立場から、自分の子供にも等しい存在の軍に
対して強い態度に出れないのだった。
 葉山御用邸は、父である大正の帝が身罷られた場所であり、
今上は父帝を見取られたあと、その場で即位されたのだった。
大正の帝はこの地を愛され、頻繁にここを訪問されている。
だから、今上にとっても深い思いのある場所だった。
「政治が混迷をきたしている今、束の間の休養で御心を
立て直されるおつもりだろう。明日には御帰京されるから、
本当に束の間だ」
 政治の事はよく分からない。けれども兄の話しを聞くと、
主上の心の痛みが伝わって来るのだった。
「それで、お兄様はどうして……」
「ここにいるのか?だったね。前置きが長くなって
すまなかった。実は僕は、この春から近衛家に
出入りするようになってね」
「えっ?近衛家に?」
 兄の言葉に、文緒は驚愕した。

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~ Comment ~

Re: NoTitle>秋沙様 

秋沙さん♪

私も結構、忘れてます、近代史……(^_^;)
概要は覚えてはいるものの、詳細では忘れている部分が多く。。。
だから、そんな尊敬されるようなものじゃないんです。

たまたま選んだ背景が、この時代になってしまっただけ
なんですが、お陰で苦労を余分に背負ってしまったような。
でも歴史好きなだけに、そういう部分の方が書いてて
楽しいような……あははは^^;

三浦半島はいいですよね~。
私も昔はよく走りました。葉山御用邸も何度も行って
観覧してますし。書いていて、私もまた行きたくなりました。

今書いている個所は、まだ前哨戦みたいな部分かな。
多分、皆さんが漠然と想像しているのとは
違う展開のお話になるかと思いますが、お楽しみに^^

NoTitle 

うおおおお。
ほとんど忘れていた近代史、勉強になりました~~~。

こういうふうに、実際の歴史を絡ませながらすすめる物語が、私本当に大好きなんです。
いつかこういうの書いてみたいなぁ・・・でも歴史をきちんと勉強していない私には、あまりにも壮大で遠い夢・・・。
narinariさん、尊敬しちゃいます!

葉山の御用邸のあたりはよくドライブしたので、実際の景色が目に浮かんで、また行きたくなりました~。


まだまだ、これからの展開が読めないところが、余計にわくわくさせられます!
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