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小説・クロスステッチ第1部 <完>
第9章 染まる染まらない~第15章 許されざる者許す者


クロスステッチ 第1部第13章 流れのままに 第1回

2010.03.25  *Edit 

 翌朝、理子は約束の時間の10分前に家を出て、自転車で駅前の
ファミレスへと向かった。店の前で、ちょうど枝本と一緒になった
ので、そのまま二人で店内へ入った。時間が時間だけに、店は空いていた。
 「ごめん、急に呼び出して」
 「ううん・・・」
 二人は向き合って座った。こんな風に会うのは初めてのような気がする。
映画の時に一緒に食事はしたが、それとはまた違っている。変な感じだ。
ドリンクバーを注文し、枝本が理子の分まで取ってきてくれた。
それを前に、暫し雑談する。
 「今日は午前中ならOKってあったけど、午後からは用事があるの?」
 枝本がコーヒーに入れた砂糖を掻きまわしながら言った。
 「うん、そうなの。だから昼前には帰りたいんだけど」
 「そうか、わかった。じゃぁ、お昼を一緒には食べれないんだね。
ファミレスだから良かったら一緒にどうかと思ってたんだけど、無理だね」
 「ごめんね」
 「もしかして、デート、とか?」
 枝本が遠慮勝ちに訊いてきた。
 「うん・・・、まぁね・・・」
 理子が赤くなった。
 「前に言ってた人?大人の?」
 「そうなの。あれからね、両思いになったんだ」
 「彼女がいるって言ってなかったっけ?その人と別れたのかな」
 「ううん。彼女がいると思ったのは私の勘違いで、彼女じゃなかったの」
 「そうなんだ。じゃぁ、良かったじゃん」
 枝本はそう言うと笑った。だがその笑顔は、どこか寂しげだった。
 「ところで、その・・・」
 理子は肝心な用件を促した。時間に余裕があるわけでは無い。
 「ああ、そうだった。実は小泉の事で最上さんから電話を貰ってさ。
その事については、理子も知ってるよね?理子に相談したら、男の
気持ちはわからないから、俺に相談してみたらって言ったんだよね?」
 「うん。ゆきちゃんには色々と話したけど、彼女なりに感じる
所もあるみたいで・・・」
 「俺もさ。まぁ、同じ男として共感できる部分もあるにはあるんだけど、
やっぱり個人差あるからさ。ちょうど、一昨日、小泉んちへ行ったんで、
ちょっと話しを聞いてきたんだ」
 「本人から直接訊いてきたの?話してくれた?」
 肝心な事は話さないって友人の村田が言っていた。普段も無口な方だ。
 「話してくれた」
 枝本にはよく話すんだな、と理子はちょっと不思議に思った。中学の
時から仲の良い村田達には、あまり話さないようなのに。
 「まず結論から言うと、最上さんとは暫く距離を置きたいって」
 「距離?それって、どういう意味?」
 多分、そんなところだろうと予測はしていたが。
 「距離は距離。受験が終わるまでは、これまでのようには会えないって事」
 「それは、ゆきちゃん自身も言われた事だよね。ゆきちゃんが一番
気にしているのは、小泉君の気持ちでしょ?そこはどうなの?」
 理子の言葉を受けて、枝本は厳しい顔をした。その顔を見て、不安が
浮かんできた。やっぱり、ゆきが感じた通りだったのか?
 「あいつが言うには、最近最上さんの事を重たく感じるように
なったんだそうだ」
 「重たい?」
 「うん。最上さんって、いかにも弱弱しくて儚げで頼りなさそうじゃ
ないか。実際に付き合ってみても、その通りだったって小泉は言ってる。
でもって、そういう所が好きになったわけなんだけど・・・」
 成る程、そうだろう。ある意味、言葉は悪いが、あれがウリ
みたいなものだ。
 「何ていうか、主体性が無さ過ぎて、付き合っているうちに
疲れてきたって言うんだよ」
 「主体性が無さ過ぎて疲れたぁ?」
 理子が呆れ顔でそう言った。
 「何でも全てお任せなんだそうだ。何処へ行きたいか尋ねても、
何を食べたいか尋ねても、全部小泉任せらしい。たまには自分をもう
少し主張してくれてもいいのにってアイツが言うんだけど、それは
俺にもわかる気がするんだ」
 「それは、小泉君が好きだからじゃない。女の子なら、大抵は
そうだと思うよ」
 「理子もそうなの?」
 「あたしは・・・、半分そうで半分違うかな・・・」
 「俺は最初から、最上さんのようなタイプは苦手だから、話を
聞いたら、ちょっと付き合えないなぁって思ったけど、小泉は、
そういう女の子が好みなわけじゃんか。それを今さらとは俺も思うんだけど」
 「そうでしょう?小泉君の言い分は、虫が良過ぎると思う」
 理子は憤った。
 「まぁね・・・。だけど、女の子の君にこう言うのもなんだけど、
男って、そういう身勝手な部分を持ってるから」
 「枝本君も?」
 「多分ね。ずるい部分はあると思うよ。男って結構、気が弱いんだよ」
 そんな事を言われても、理子にはわからなかった。
 「それにさ。これも言いにくいけど、小泉と最上さん、エッチしてる
よね?って、その件に関しては最上さんからも聞いてるよね?」
 「うん、一応・・・」
 「理子も付き合ってる男性がいるから言っとくけど、簡単に 
許しちゃ駄目だ」
「えっ?」
 枝本の言葉に理子は驚いた。憮然とした様子だ。
 「男ってさ、エッチするまでは異常なくらい燃えるんだよ。手に
入れたい欲求に突き動かされる。勿論、好きだからってのもあるけどね。
好きだから知りたい。全部知りたい、そう思って突き進む。でも、
全部知ったら鎮火する」
 「それって、経験者として言ってるの?」
 「えっ?」
 理子の問いに、枝本は黙った。目を瞬かせて逡巡している様子だ。
 理子は恐る恐る訊いてみた。
 「枝本君って、既に知ってるんでしょ、女の子。中1の時に、
黒田さんと・・・」
 「何で君がそんな事を知ってるんだ?」
 枝本は思わず強い口調で言った。理子が知っている事に、枝本は
驚きと同時に怒っているように見えた。
 「ごめんなさい。私が知ってるのは、中1の初夏頃、まだ小松さんと
渕田君が付き合ってて、彼らと黒田さんと菊ちゃんが、枝本君の
部屋へ遊びに行った時に有った事だけなの」
 「菊ちゃんって、菊川さんの事?」
 菊川恵理子は、理子が仲良くしていた友達だったが、同時に彼女は
黒田とその親友の小松とも、とても仲が良かった。当時、小松は
渕田と付き合っていた。渕田は小松と付き合う前は黒田と付き合って
いたのだが、黒田と渕田はすぐに別れて、それぞれ別の相手と
付き合うようになっていた。
 小松は黒田の親友なので、ダブルデートをよくしていたのだった。
その、カップルの中に、何故か菊川がよく混ざっていて、その時の
様子を理子に話してくるのだった。理子が枝本を好きだと言う事を、
菊川はその時は知らなかったと言う事もあるが、見て来た事をよく
喋るので理子はその度に傷ついていた。
 「菊ちゃんから聞いたの。枝本君の部屋で、それぞれカップル同士、
際どい所までいってたって。だから、きっと、その先へも進んだんじゃ
ないかって思っていただけなんだけど、当たっちゃったみたいね」
 「あの、お喋りめっ」
 枝本のその怒った言い方が、まるで当時のようで懐かしく思った。
あの頃は、こんな感じだった。
 「菊ちゃんのお喋りには、私も随分、振り回された。黒田さんと
付き合ってる頃は、私の気持ちを菊ちゃんは知らなかったって事も
あるんだけど、自分が目撃した事を逐一話してくるもんだから、
その度に傷ついたし、同じ班になってからは、ヴァレンタインの時に、
本当に参っちゃった」
 「あの、ヴァレンタインかぁ・・・」
 「そう。あれ。本人からそれを聞いたのは、ヴァレンタインから
一週間も経ってからだったんだよ。私、そんな事は一言も言って
ないのに。開いた口が塞がらなかった。それに、ああまでお喋りなら、
その事を翌日に言って欲しかった。そうしたら、すぐに用意して、
渡したのに・・・」
 「本当に?」
 枝本の顔が心なしか明るく見えた。
 「うん。本当。そうしたら、もっと早くに両思いになれてたよね」
 理子は、ヴァレンタインの日、風邪を引いて休んだのだった。三学期に
なってから枝本と急接近し、日々、二人で交わす会話が増えて親しく
なっていく事を嬉しく思いながらも、枝本の気持ちを推測しては不安な
日々でもあったのだ。
 理子は何かにつけて枝本と会話できるようなきっかけを作って
いたのだが、それと同じような事を枝本もしているような気が
していた。教科書を忘れては、向かいの男子では無く、理子に
見せてくれるように頼む。美術で水入れを忘れては、理子の水入れを
一緒に使わせてくれと頼んでくる。黒板の字がよく見えないと
言っては、理子に尋ねる。
 そういう事が日常茶飯事だった。だから、まさかもしかして?と
思わずにはいられなかった。しかし、その一方で、枝本は毎日のように
帰りのホームルームで、元カノの黒田の校則違反を攻め立てていた
のだった。その攻撃は凄まじかった。その様を見て、理子は枝本の
黒田に対する執着を感じて、自分の存在なんて小さい物だと思わず
にはいられなかった。
 自分に興味を持ってくれているみたいだとは思ったが、それ以上の
感情があるとは思えなかった。自分に自信が無かった事も大きい。
だから、ヴァレンタインにチョコをあげるか否か、物凄く悩み、結局、
渡したら二人の良い関係が壊れてしまうかもしれないとの思いが強くて、
チョコを用意していなかったのだ。
 風邪を引いて休んだのは、理子にとってみれば好都合でもあった。
そのまま、何気なく過ぎ去ってくれれば助かると思った。
 ところが、普段から理子の気持ちを知っている菊川が、てっきり
理子はチョコを渡すものと思い込んでいて、休んで渡せなくなったのが
可哀そうだと思い、枝本本人に、『理子が、チョコをあげるって
言ってたよ』と言ったのだ。それを聞いた枝本が、目を輝かせながら、
凄く嬉しそうな顔をして、『いつくれるの?』と言っていたと、
ヴァレンタインの一週間後に菊川から聞いた時は、驚いて心臓が
止まるかと思ったほどだった。その言葉を、翌日に聞いていたら、
勇気が出て、渡していたかもしれない。
 だが、既に一週間も経っていては、それ用のチョコだって売ってないし、
あまりにも遅すぎる。自分の知らない所で、そんな事を言った彼女を
恨めしく思ったものだった。
 理子は枝本を見た。心が僅かだがときめいている。やっぱり理子に
とっては、彼は忘れられない特別な人だと思う。
 「彼女は、お喋りで軽率なんだよな。人はいいんだけど」
 枝本が懐かしそうに言った。理子は話しを戻す。
 「それで、さ。枝本君、どうなの?自分も、そういう経験が
あるからなの?」
 理子の言葉に枝本は真顔になった。
 「そうさ。俺の場合は、別に欲求が高まってやったわけじゃない。
アイツの方から誘ってきたからさ。当時はまだ12歳だったんだぜ?
体も小さかったし。興味はあったけど、抵抗されたら諦めたさ。
だけど、アイツは簡単に許した。自分から誘ってきたんだから、
当然だけどな。まぁ、まだ子供だったから、こんなもんなのかって
思ったのが正直な感想。話しのついでに言うけど、南中時代も、
それから名古屋の高校時代も、一人ずつ経験してる」
その言葉に、ドキリとした。枝本は、既に3人も知ってるのか。
じゃぁ、十分に男なのだろうか。そう考えて理子は赤くなって
しまった。赤くなった理子を見て、枝本が言った。
 「理子はやっぱり、純だな。なら尚更、気を付けないと。簡単に
許す女は、簡単に飽きられる。そう思っておいた方がいい」
 枝本の真剣な眼差しに理子は複雑な思いに駆られた。私は先生に
簡単に許してしまったんだろうか?簡単と言えば、そうなのかも
しれない。抵抗したが、強く拒否することができなかった。増山は
会う度に求めてくる。しかも、事に及べば一度では済まない。
そのうちに、飽きられるのだろうか?急に不安になってきた。
 「そういうものなの?」
 理子は平静を保ちながら、そう質問した。
 「まぁ、大体が。特に理子の相手は大人なんだから、余計に用心
した方がいいかもな。大体、理子には悪いけど、大の大人が
女子高生相手に恋愛ってのも、信じられないって言うか・・・。
まさか、騙されてるわけじゃないよな?」
 「そんなわけないじゃない」
 理子は強く否定した。
 「まぁ、そうだよな。当人はそう思うわけ無いもんな」
 「もう、私の事なんかより、小泉君とゆきちゃんの事を
話してるんじゃない」
 「そうそう。それでさ。小泉が言うには、彼女が許してくれたんで、
最初は凄く嬉しかったらしいんだけど、何ていうか、段々、
楽しくなくなってきたって言うんだよ」
 枝本が目を逸らしながら、そう言った。
 「楽しくなくなってきた?それって、どういう意味なの?」
 「うーん、経験の無い理子には、実感が湧かないと思うけど、
小泉の話しを聞いて、俺には何となくわかったって言うか・・・」
 理子はまだ経験が無いと枝本は思っているようだ。それはそれで
良かった。だが、実際には経験している。それも一回や二回じゃない。
それでも、枝本が言っている意味はわからなかった。
 「それって、経験云々よりも、男女の差じゃないの?」
 と、理子は指摘した。
 「そうかもしれない。これはやっぱり、男だからなのかな。されるが
ままの彼女に飽きたんだ。簡単に言えば。彼女を知って、興味が半減した。
全ての事において、依存してきて主体性が無い事で、段々彼女に
興味を持てなくなってきたみたいだな」
 「ひどい・・・!」
 「そんな、俺を睨まないでくれよ。俺じゃないんだから。
小泉の事なんだからさ」
 枝本はタジタジになった。
 何て勝手なんだろう。あんなに可愛いゆきちゃんを弄ぶなんて。
彼女のどこが重たいって言うんだ。守ってあげたくなるのが
当たり前だろうし、だからこそ、しっかり守ってやるべきなのに。
最初から、そこが好きで付き合いだした筈なのに、どうして?
そう思わずにはいられなかった。しかも、飽きただなんて。
 「好きだから、依存するんでしょ。儚げな彼女を守ってあげたくて
好きになったんじゃないの?」
 「俺にそう言われてもなぁ・・・。理子の言う事はわかるよ。
だけど、人の気持ちはどうにもならないだろう?小泉に幾ら諭した
ところで、気持ちは変わるのかな」
 「枝本君は、そうやってただ、小泉君の言い分を聞いてあげた
だけなの?責めなかったの?」
 理子が鋭い視線を枝本に浴びせた。
 「責めたさ。俺だって、理子と同じ事を言った。だって、そういう
彼女が好みだったわけなんだし。ただ、受験に追われ始めたせいで、
ゆっくりじっくり考える余裕が無いんだ。彼女の事はまだ好きだけど、
とにかく今は、あまり深く考えたくないって言うんだ。それについては、
俺も理解できる。ただ、最上さんに、どう話したらいいのかわからなくて。
それで君にこうして話してるわけなんだ」
 こんなことを正直には話せない。話したら、どんなにショックを
受けるか。彼女だって受験生だ。それこそ、彼女の受験に響くだろう。
きっと、相当落ち込んで、浮上するのにどれだけの時間を要すか見当が
つかない程だ。
 「小泉君は、受験が終わったら、ゆきちゃんの事をちゃんと
考えるのかしら?」
 枝本は、理子のその言葉に即答はせず、暫く考えたのちに
「わからない」と答えた。
 きっと、同じ事を思っているのだろう。距離を置いたら、きっと
このまま、その状況に慣れてゆき、結局は、一緒にいない事が
平気になり、そのまま関係は解消されてゆくのだろう。
 その時、思いもかけない人物が二人の間に入って来た。
 「あれー?二人してどうしたの?まさか、デート?」
 見上げると、渕田が立っていた。理子は驚いた。
 「そっちこそ、どうしたの?」
 「俺は今日、朝いちで試合だったんだ。ストレート勝ちで早く
終わったんで、ここでみんなとメシ喰おうと思ってさ」
 店内を見回したら、少し離れた所に、テニス部の部員達が座っていた。
 「枝本、久しぶりだよな。もしかして、二人は付き合ってるの?
去年ちょっと噂になったみたいだけど、再会して、また復活したとかぁ?」
 ニヤニヤと笑っている。
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