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小説・散 華
1.夢の通い路 壱 1~30


散 華  1.夢の通い路 06

2011.02.11  *Edit 

「ふぅちゃん……、会いたかった……。よく来てくれたわね」
 布団の中で体を起こし、寝巻の上にカーディガンを羽織った
晴香は、酷く儚げで今にも消えてしまいそうな、蜻蛉のような
印象だった。
 文緒は胸が一杯になって、何も言えなかった。
言葉がひとつも出て来ない。
 一緒に遊んだ時は、もう少し元気だったのに……。
 その当時から、消え入りそうな印象だった。
 抜けるように白いその肌は、昔おばあさまからこっそり
見せて貰った、ラブラドライトとか言う蒼い宝石が体の中から
淡い光を放っているのではないか、と思えるような青白さだった。
 あの宝石はとても綺麗だったけれど、晴香の肌は健康的には
見えない。けれども、色素の薄いグレーがかった瞳と相まって、
とても神秘的な雰囲気を湛えていた。
 健康的とは言えなかった青白い肌だったが、それが今では
更に蒼さを増している。その姿を見て胸が痛む文緒だった。
「ふぅちゃん……」
 晴香が切なげに文緒を見て、肉が殆どついていない
痛々しい腕を伸ばしてきた。
「おねえちゃま……」
 文緒は慌てて彼女の手を取った。強く握ると折れそうだった。
それを感じて涙が湧いてくるのをどうすることもできなかった。
「ふぅちゃんが、羨ましい……。とっても、健康そうで」
 晴香のその言葉に胸が衝かれた。
 晴香の言葉に戸惑っていると、女中が小さい赤ん坊を
連れて来た。その赤子を見て、愕然とする。まるで、
病人のような今の晴香とそっくりだ。生命力が弱く、
今にも命の灯が消えそうな、そんな印象を受けた。
 晴香は自分の寝巻の胸元をそっと開いた。肋骨がくっきりと
浮いている様が痛々しい。そして、現れた乳房は貧相だった。
どう見ても乳が出る胸ではない。
 晴香は女中の手から赤子を引き取ると、自分の乳房を
赤子の口許へ当てた。赤子はそれに反応し、血色の悪い
小さな唇を開いてそっと口に含んだが、すぐに口を離して
泣きだしたのだった。だがその泣き声はか細くて弱々しかった。
「ちっとも飲んでくれないの……。出ないんだから、
しょうがないけれど。山羊のお乳ですら、僅かしか
飲まないのよ?お腹が空いてる筈なのに……」
 晴香の瞳から涙の雫がこぼれ落ちた。
「ふぅちゃん、お願い。私達を助けて?このままじゃ、
この子は死んでしまう。この子が死んだら、あの方に
申し訳無くて私も生きてはいけない。だから……」
 文緒は黙って晴香の手から赤子を抱き取った。
そうして、自分の胸元を開き、豊かな乳房を赤子の口に含ませた。
 赤子は最初は戸惑って、口を弱々しくモグモグさせていたが、
やがてゆっくりと、けれどもしっかりと、文緒の乳を
吸いだしたのだった。
 その様子を見て、晴香も女中も目を剥いて驚いた。
 脱脂綿に山羊の乳を含ませて、晴香の乳首に付けた後、
脱脂綿の乳を吸うようにと工夫を重ねて来たにも関わらず、
飲むのは最初の僅かだけで、殆ど飲まなかったのに、
今は満足そうな表情を浮かべて文緒の乳を一生懸命吸っている。
「たぁちゃんが、お乳を飲んでる……」
 晴香は口を両手で押さえた。
 これで、この子の命は救われる……。
 文緒はそんな晴香と、自分の乳を一生懸命吸っている
赤子を見て、この二人の力になろうと思ったのだった。


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~ Comment ~

Re: なんだか複雑な展開になりそうですね。>千菊丸様 

千菊丸さん♪

コメント、ありがとうございます。
母乳が出ない辛さ、昔の人は切実だったと思います。
母乳の出って、ほんと個人差あるんですよね。
今は良質の粉ミルクがあるので、出ないからって深刻になる
必要も無いとは思います。
お子さんを殺害されてしまった方は、深刻に思い悩んで
しまったんでしょうね。
妊娠出産時期は普段とホルモンの働きが違うので、
鬱になりやすいんですよね。
私は殆ど出無くても、全然深刻にはならなかったし、
深刻になってしまう方の気持ちも理解できな女ですね(^_^;)
ただ、いちいちミルクの支度をするのが、ちょっと億劫でした。
母乳の人はすぐにお乳をあげれるから便利でいいなぁ、なんて
思ったりもしましたが、出過ぎて絞ってる方なんかを見ると、
そういう苦労が無くて良かったかも……なんて思ったり。。。
最初の頃は、3時間おきにあげるのが目安なので、夜中眠いのに
ミルクの支度をするの、大変だったんです。
哺乳瓶も、消毒したりとかしないといけないので、
粉ミルクだと、余計な仕事が多くて大変でした。特にうちは
2月生まれだったので、夜中は寒くって……。
産むのも大変だけど、育てる方がもっと大変。
だから、母乳は出ないわ、体は丈夫じゃないわで、晴香さんは
さぞや辛い思いをしてたんでしょうね。

なんだか複雑な展開になりそうですね。 

narinari様、お久しぶりです。
文緒の母乳を吸う我が子を見ている晴香の複雑な心中がわかります。
独身のわたしは母乳が出ない辛さなどはまだ実感していないのでわかりませんが、この前母乳が出ずに産後うつとなり、我が子を風呂桶に沈めた悲しい事件を思い出してしまいました。
わたしからすれば、「母乳ごときでそんなこと・・」と思ってしまいましたが、母親である女性は、ほんの些細なことでも傷ついてしまうものなのですね・・。
文緒が本家の乳母となり、これから様々な人間模様が繰り広げられるのですね。
序章とこれからどう繋がるのか、楽しみです。

Re: NoTitle>lime様 

limeさん♪

乳母もねぇ。今の時代じゃぁ、ピンと来ないですよね。
乳が出る出ないに関わらず、身分の高い家では
母親が直接母乳で育てる事は無くて、それは終戦くらいまで
続いていた家もあったんですよね。
まぁ、その代表が皇室ですが。近代に入ってからは
皇室も変わってきてますが、古くからの慣習を守らない事に、
周囲の批判が強かったり……。今でもその風潮ありますものね。

今回のケースは、矢張り何より晴香の健康面がネックですね。
授乳期の女性じゃなきゃ勤まらない事だけに、どこの家でも
嬉しくないお話です。
親戚一族の集合体ですから、自分の所でどうにかしろ、
と言う訳にもいきませんし。。。
その苦境ぶりを目の当たりにしたら、尚更断れないでしょうね。

この後、お話はどう展開するのでしょうか。
作者も悩んでいる今後の展開(^_^;)

NoTitle 

最初は、乳母なんて・・・と思ってましたが、この展開では、文緒が自ら乳母を買って出る気持ちがわかりました。
丁寧に書きこまれる描写が、すごい!

まだまだ、どんなふうに話が展開して行くのか、誰と誰の恋愛劇なのか、想像もつきませんが、ゆっくり楽しませていただきますね♪

Re: NoTitle>秋沙様 

秋沙さん♪

この頃は粉ミルク、あったのかなぁ。。。
あっても、脱脂粉乳とかじゃないかな。
栄養素が低いんですよね。
現代の粉ミルクは改良に改良を重ねて良質ですが、
昔は母乳に勝る物は無かったですね。

牛乳も既に飲まれていましたが、乳児が飲むには
向いてません。
ヤギは都市部は分かりませんが、民家で飼っている家が
少なく無く、母乳の補足として利用されたりしてました。
ヤギは飼うには手ごろだったのです。
絞ってすぐに新鮮な物を飲ませられますし。
ウチのダンナもヤギの乳、飲んでたそうです(^_^;)

私も母乳、全然出無くてですね。
結局、殆ど粉ミルクでした。
マッサージ頑張って出してた人もいましたね~。
あれ、すごく痛いんですよね。女性は本当に大変です。
粉ミルクは随分と良くなりましたが、免疫力の高さと言う
点においては、母乳にはかなわないと思います。
特に初乳には、相当高い免疫力と栄養があるそうですね。
母親が持っている免疫を母乳から受け継ぐので、
粉ミルクが随分改良されたとは言っても、できれば母乳と
言われる所以なのではないかと。。。

我が子が他人のお乳を懸命に吸っている姿、矢張り
どこか胸の奥に痛むものがあるんじゃないかと……。
背に腹は代えられない状況ではあっても。
だからこそ、文緒にこだわったのかもしれません。
せめて、はとこで、子供の時に一緒に遊んだ
お気に入りの彼女なら、まだ許せる、みたいな……。
お乳をやるだけでもないので、自身が信頼できる女性じゃないと
矢張り嫌だんじゃないのでしょうか。
逆に知らない人の方がいいと思う場合もあるかもしれませんが。
きっと、複雑な思いを抱えてるんでしょうね。

さて。
全てのお話は、ここから始まると言ってもいいかもしれません。
文緒が樹の乳母になった。
その事が、澪の人生を大きく左右させる最大の出来ごととなります。
あぁ~、でも、なかなか思うように書けなくて、
私はジレンマの毎日です……orz

NoTitle 

粉ミルクがない時代は、山羊のお乳を飲ませていたんですか?
そうか、この時代は牛乳なんて手に入らないのか・・・。

それにしても微妙ですね・・・。
私が娘に授乳をしていたとき、最初から母乳と粉ミルクと混合にしていたので、あまり出なくても気にしていませんでした。
母乳が良い、とは思っていたけれど、母乳オンリーじゃなきゃだめとも思ってなかったわけで。両方飲んでくれれば外出時などに困らないから・・・と軽い気持ちで。

でも、同時期に出産したママ友さんは母乳だけで育てようとがんばっていて、マッサージに行ったりしてましてね。おかげでずいぶん出るようになったと言って・・・
ある時、うちの娘にも飲ませてくれたんです。なんでそんなことになったんだっけなぁ。
その頃には粉ミルクの割合が増えていて、母乳はそんなに飲まなくなったよっていう話をしてたんだったかなぁ・・・。

でも、我が子が他の人のおっぱいを無心に飲んでる姿を見るのは、母としてはとっても複雑な心境でした。
しかし、晴香にとっては、「ここで飲んでくれなかったら我が子が死んでしまう」というところまで来ているのだから、嬉しいのかなぁ・・・。

なんてことを思いながら読んでいました。
これが、どんなふうにその後のおはなしにつながっていくのか、楽しみです。
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