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小説・散 華
1.夢の通い路 壱 1~30


散 華  1.夢の通い路 04

2011.02.04  *Edit 

 藤村家からの丁重なる断りの返事を聞き、寛は激怒し
晴香は悲嘆にくれた。
「一体、あいつは自分を何様だと思ってるんだ。本家の当主の
願いを断るなんて事が許される訳が無かろうに」
 華陽院家の嫡子は、結婚と同時に家を継ぐのが習わしと
なっている。父親は若い当主を支えて家の継続に力を入れる。
だから寛は華陽院本家の若き当主となっていた。
 藤村裕也より二歳下の寛は、裕也に対して常日頃から快い
感情を持っていない。歳が近い為に、何かにつけて比べられて
きたからだ。勿論、本家の若様と従家の嫡男を表だって
比較する者は誰もいない。
 だが、そういった周囲の空気は自然と感じられる。
 裕也は優秀だった。小さい時から利発で、そして勤勉だった。
小学校は地元の尋常小学校へ通ったが、神童の誉れ高く、
一中、一高を経て帝大へと入ったのだった。
 それに比べて寛は生来、呑気な性質で、勉学が嫌いだった。
頭が悪い訳ではないものの、努力するのが苦手だ。
 裕也が就学するまでは、寛の遊び相手として華陽院家へ頻繁に
出入りしていたが、小さいながらに相性が合わないのを感じていた。
奔放な性質の寛にとって、真面目過ぎる裕也と一緒にいても
少しも楽しくないのだった。
 しかも、遊んでばかりいる寛に対し、周囲は少しは裕也を
見習うようにと、やんわりとだが言葉にしてくる。遊びたい
盛りの子供にとって、裕也の存在は段々と重たく感じられる
ようになった。
 あいつは僕より二歳上じゃないか。
 僕よりできて当たり前だ。
 そう自分を慰めてきた。
 だが、慰めるばかりで、一向に努力はしない。だから当然、
その開きは年を追うごとに大きくなっていった。
 華族の子息子女が当たり前のように学習院初等科へ進学する中、
寛はそれを拒否して地元の尋常小学校へ入学した。ここに居れば、
華陽院本家のおぼっちゃまとして、ちやほやされて自由だ。
それに、晴香の傍にもいられる。
 だがそれも、小学校を卒業するまでだ。
 さすがに華陽院本家の嫡子が地元の尋常高等小学校へ入学する
わけにもいかない。裕也のように一中へ進学するだけの頭脳も
持ち合わせていない。
 寛も馬鹿ではない。自分の立場は弁えている。晴香と
離れるのは寂しいが、こればかりは仕方がない。
 そうして、学習院へ入学したのだった。
 入学してみると、これまでの世界とは全く違う世界である事に
衝撃を受けた。地元では華族様、御本家とちやほやされてきた
寛だったが、ここへ来て見ると、自分の存在の小ささを
思い知らされた。
 この特殊な世界における特殊な匂いを敏感に感じ取った彼は、
暫くは周囲の様子を窺い、この世界で自分がどう行動すれば
上手くやっていけるのかを見極める事にした。
 勉強は出来ないが、空気を読み、周囲の動向を的確に掴み、
それに応じた行動を取る、つまり世渡りに長けていると言う
才能を彼は持っていた。
 その上、見栄えが良い。男女どちらにも受け入れられやすい
風貌をしている。要するに人当たりが良いのである。
彼が上品ににっこりと笑うと、女子は頬を染めてうっとりとし、
男子は憎めない奴と思って大抵の事は許してしまうのだった。
 寛はその自分の魅力を早くから知っていた。だからこそ、
それを大いに活用し、すぐに人気者になったのだった。
 この学習院時代は、寛にとっては天国だった。周囲に気を
配りながら適当に勉強し適当に遊んで過ごした。そして、
特権階級にある自分の身分に満足していた。
 華族の子息は、余程の事が無い限り基本的に帝大への
入学資格を持っていた。それを利用して、当然の如く、
帝大へ入学した。
 帝大へ入学してみると、裕也が聳え立っていた。
 華族と言う特権を行使して、ろくに勉強せずに入って来た
寛を裕也は見下していると感じた。だが実際は、それは寛の
勘違いだった。確かに裕也は、努力しないで遊んでばかりいる
寛に好意を抱いてはいなかった。
だがそれも身分の差だ。仕方が無い。そう割り切っていたのだが、
裕也に対し、幼少から劣等感を抱いている寛にとっては、
見下しているとしか感じられないのだった。
 いくら年上とは言っても、我が家に仕える家系の息子だ。
それなのに、何故あんなに偉そうなんだ。
 帝大でも優秀で周囲から一目置かれている裕也に対し、
屈折した思いが湧き、積もっていった。
 二年後に裕也が卒業し、ホッとしたものの、自分もその二年後に
卒業し、葉山へ戻ってみると、裕也と文緒の婚礼だった。
悉く先を行かれている事に悔しさが募る。
 あいつは着実に自分の足元を固めている。
 それに比べて自分はどうだ。
 好き勝手にやってきたようで、本当に自分の望むものは
手にしていない。
 自分が最も望んでいるもの。
 それは晴香だ。
 再会して、燻ぶっていた想いが一挙に弾けた。
 そうして彼女は自分の子供を身ごもり、念願叶って婚姻を
結ぶ事ができた。
 生まれた子供は男児だ。これ程喜ばしい事は無い。
これで華陽院本家も安泰だ。自分の成すべき最大の使命を
果たす事ができた。
 だが、体の弱い晴香の乳の出が悪く、この喜ばしき我が子が
瀕死の状況に晒されようとしている。
 本家の危機に際し、一族がこぞって協力するのは当たり前の事だ。
しかも、後継ぎの養育まで出来る栄誉な事でもあるのに、
何故断るのか。寛には理解できない。



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~ Comment ~

Re: NoTitle>秋沙様 

秋沙さん♪

昔は理不尽な事がまかり通っていた時代でしたので、
当時の方々の苦労が偲ばれます。

風邪は快方に向かいつつも、痰が切れずに咳、の症状だけは
まだ治らないんです。夜中に目が覚めて咳き込むんです。
毎晩……。それ以外は、昼間は比較的楽に過ごせて
いるんですけどねぇ。。。
ミラーはちょっとショックでしたが、まさに怪我の功名で、
ボーっとしていた頭がハッとして、以降、かなり注意して
運転したので、却って良かったのかもしれません。
ミラー無事だし(^_^;)
ご心配ありがとうございます。

Re: う~ん・・>千菊丸様 

千菊丸さん♪

はじめまして。向こうではすみません。コメント頂きながら、
気づいたのが遥かに時間が経ってからだったので、
お返事を差し上げる事もなく、失礼いたしました。

昔のおぼっちゃまって、傲慢で自己中ですよね。
世界は自分中心に回っていると勘違いしているものと
思われます。つくづく現代に生まれて良かったと
思うばかりでございます。

まぁ誰がなるにせよ、乳飲み子を抱えている事情は
同じなわけなので、迷惑な話ですよね。

NoTitle 

仕様のないぼんぼんですねぇ・・・タメイキ。

でも、なんだか、華族様などの上流階級によくありそうなお話・・・。

こんな過去の因縁がしずくさんのところまでどうつながっていくのか、とってもとぉっても楽しみです(^^)

ところで・・・
風邪のほうはいいかがですか?
車のミラー・・・ミラーだけで済んで良かったと言っていいのかどうかわかりませんが、(^^; とにかくお怪我がなくて良かったです。
なんだか、今年の風邪は、インフルエンザよりも長引くような気がします。
喉を乾燥させないようにして、ご自愛くださいませ・・・。

う~ん・・ 

narinari 様、こちらでは初めまして。

寛ですが、本家の御曹司だからっていつも自分の思い通りになるわけじゃないのに・・裕也にだって子どもが居ることくらいわかるだろうに、文緒を我が子と引き離してまで、自分の子を優先する神経がわかりません。
別に乳母は文緒以外の女性でもいいのに・・全く、寛の自己中心的な考えに呆れてしまいました。
いくら本家の者といえども、理不尽な要求は通りませんよ。
彼が諦めてくれるといいのですが。
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