ChaoS

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit TB(-) | CO(-) 

小説・散 華
序章


散 華  序章 07

2011.01.15  *Edit 

 二人は華陽院家の人々が遺骨を持って去るのを物陰から
見送った後、街へ出て小じんまりとした山小屋風の
喫茶店に入った。
 国道134号線から少し中へ入った所で、窓から
ほんの少し海が見えるだけの、眺望はそう良くない
場所だった。目立たない場所にある為か、客は自分達の
他にはいなかった。
 カウンターの中にいる若い女性が、澪の姿を見て明るく
微笑んだ。その様を見て、航平は驚いて澪を見ると
彼女もまた微笑んでいる。
「二階、貸してもらえる?」
 彼女の口から出た言葉に、航平の頭は混乱した。
 カウンターの中の女性は「どうぞ」と笑顔で言うと、
航平の方を見て軽く会釈をした。
「あ、あの…澪さん…、これは一体…」
 状況が分からず、どう問うたら良いのかも分からず
戸惑っている航平に澪は優しく微笑むと、黙って
奥にある階段へと歩き出した。航平はただ付いて
行くしかない。
 階段を昇りきると、小さい玄関のようになっていて
下駄箱が設置されていた。その脇にスリッパ掛けがあり、
澪は靴を脱ぐとスリッパに履き替え、航平の前に
スリッパを置いた。
「さぁ、どうぞ。上がって?」
 航平は言われたまま、スリッパに履き替えた。
そして歩き出した澪の後に従う。澪は斜め右にある部屋の
ドアを開けて中へと入った。彼女に続いて中へ入ると、
そこはまるでホテルの一室のような趣の部屋だった。
 小さい部屋ではあるが、シングルベッドが二つあり、
窓際には一人掛けのソファが小さなテーブルを挟んで
二つ、置いてある。
二階の方が遥かに眺望が良く、美しく輝く海面が見渡せた。
港は見えないのでヨットは望めない。
 澪は壁面に設(しつら)えてあるクローゼットを開けると、
コートを脱いでハンガーに掛けた。そして航平の方を向いた。
その視線を受けて、航平もコートを脱ぐ。
そして自分の方へ差し出された彼女の手にコートを渡した。
 航平のコートをハンガーに掛けている澪の姿を見て、
時間が一挙に二十五年前に遡ったような感覚に襲われる。
だがそれは錯覚だ。錯覚ではあるが、彼女は確かに
目の前にいる。
 何度夢見た事だろう。
 夢を見て、そして彼女のいない現実に打ちのめされる。
 そんな毎日だった。
 伏せられていた瞳が開いた。航平を見て一瞬戸惑った
ような表情を見せた後、すぐに笑みが浮かんだ。
その笑みを見て心が幾ばくか和んだ。
「航平さん。混乱されてるわね。無理もないわ。
まずは座りましょう?」
 二十五年前と変わらぬ美しい声で、彼女は航平を
促し窓際のソファへと腰を下ろした。
 彼女がどうして、この場所へ航平を連れて来たのかは
分からないが、落ち着いた場所で二人の時間を
持てるのは確かなようだ。折角逢えたのに、すぐに別れを
告げられるのではないかとタクシーの中で不安な思いに
駆られていたが、そうでは無かった事にひとまず安堵した。
 航平が澪の前のソファに腰を下ろした時、ドアを
ノックする音が聞こえた。ビクリとしてドアへ顔を向ける。
「どうぞ」と澪がノックに応えると、静かにドアが開き、
先ほど下で会った若い女性がコーヒーを乗せた
トレイを持って入って来た。
 いったい何者なのだろう。
 改めてよく観察してみると、面差しがどことなく
澪と似ているように感じられる。年の頃は二十代半ば
過ぎと言ったところか。
「ありがとう。悪いわね。暫くここ、大丈夫かしら?」
「はい。大丈夫です。幾らでもお好きに使って下さい。
何かあったらいつでも申しつけて下さって構いませんから」
 二人は笑顔で頷き合い、若い女性はテーブルの上に
コーヒーを置き、航平に会釈して、立ち去って行った。
「不思議そうな顔をされてるわね」
 澪の言葉に、慌てて彼女の方へと視線をやる。
「あの子は、私の兄の孫娘なの」
「ええっ?」
 思いもよらない言葉に愕然とした。
「あ、兄って、幸也さん?」
 驚く航平の姿に、澪はクスリと笑って「そうよ」
と答えた。
「私に兄は一人しかいないの、ご存じでしょうに」
 そうだ。彼女には兄がいた。十四歳年上の、
華陽院樹と同級生の兄が。
 名前は藤村幸也(ゆきなり)。樹の乳兄弟である。


スポンサーサイト



*Edit TB(0) | CO(4)

~ Comment ~

Re: NoTitle>lime様 

limeさん♪

ちょっと長い前置きになってしまいましたね。。。
この序章も、あと2回で終了し、いよいよ本編へ突入します。
序章で謎に満ちた感を与えて読者の興味を引きつけておいて、
ショボイ本編になったら、どうしよう?と不安一杯のnarinariです……(^_^;)

NoTitle 

やはり澪さん、雰囲気からして謎に満ちていますね。
澪さんを取り巻く人々と、この二人の恋は、どう関係して行くんでしょう。
・・・って訊くより、続きを楽しみに待っています。♪

Re: NoTitle>秋沙様 

秋沙さん♪

まだまだ謎だらけの感じですね^^
今後の展開、私も待ち遠しいです。
お楽しみに……。

(なんて、期待を持たせていいのか?……自問自答)

NoTitle 

つ、続きを・・・(^^;

どんなことが語られるんでしょう。
あぁぁぁ待ち遠しいです。
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
 ◆Home  ◆Novel List  ◆All  ◆通常ブログ画面  ▲PageTop 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。