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小説・散 華
序章


散 華  序章 06

2011.01.12  *Edit 

 航平は驚愕した。
 きっと、いるに違いないと思っていたのに、ひと気の無い
奥まった場所で一人泣いている女性を彼女だとは思わなかった。
藤村澪が失踪したのは四十一歳の時だ。それから二十五年が
経っているのだから、現在は六十六歳である。
 泣いている女性の後ろ姿は、六十六歳の年配女性とは思えない
様子だった。だから、それが澪だとは露も思わなかったのである。
「澪さん…」
 航平の口から出た言葉を受けて、彼女はビクリと体を大きく
震わせた。そして、静かに立ち上がると後ずさり始めた。
「澪さん、僕だ!航平だ。牧村航平だ!」
 思わず叫ぶ。
 澪は足を止めて、驚いたように目を見張った。
 航平は少しずつ歩を進めて澪へと近づいて行った。
澪は探るような目で航平を見つめていたが、近づいてくる
航平に気付いたのか再び後ずさり始めた。
「澪さん…、頼む、お願いだ。行かないでくれ。僕は、
僕はずっとあなたを探し続けていたんだ。やっと、
こうして逢えたのに…」
「航平さん?…航平さんなの?」
 澪の言葉に航平は自分の姿を顧みた。二十五年の歳月は、
確実に航平を変えた。二十九歳だった航平は、
今や五十四歳の冴えない中年男だ。無精ひげは綺麗に
剃り落とし、ボサボサだった頭もさっぱりと整えた。
それでも老いは隠せない。
 それに引きかえ彼女の姿には驚愕する。とても
六十六歳には見えない。別れた時も四十一歳には
見えなかった。この人は老いると言う事が無いのだろうか。
目の前にいる女性は、確かに二十五年前よりは老いては
見えるが、それでも四十歳前後にしか見えないのだった。
自分よりもひと回り年上だと言うのに、自分より
ひと回り年下に見える。
 そうだ。
 出会った時も、自分より年下に見えた。
 艶やかな花は、一向に衰えることもなく、
今も昔も咲いていた。
 信じられないと言った顔で航平を見つめている
澪のそばへ、航平は震える足を静かに動かしながら、
やっと辿り着いた。
 自分を見つめる、濡れて揺れている瞳は間違いなく
澪のものだ。
 濃い睫毛に縁どられた黒目勝ちの魅力的な瞳。
濡れた黒曜石は、時に様々な虹彩を放つ。玲瓏たる
その瞳は、彼女の特徴だ。揺れる瞳は虹色の光彩を
僅かに放っていた。
「澪さん…。やっと逢えた。やっと…」
 航平は自分の頬に涙が伝うのを感じた。その頬に、
澪の手が伸びて来て、そっと頬に触れたのだった。
「航平さん…なのね」
 自分を航平だと認識した彼女の瞳が優しい色に
変化したのを見て、これまでの想いが涙と共に
一挙に込み上げてくる。
 航平は彼女を抱きしめずにはいられなかった。


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~ Comment ~

Re: 同じく、うらやましい・・・(笑)>秋沙様 

秋沙さん♪

年老いても尚、若々しくて美しい。女性の憧れですね。
美しく生まれて、若さと美を維持できたら最高です。
まぁ、これは物語なのですが、現実にも、そういう方、
多少いらっしゃるようです。老けるのが遅い血筋……。
うちのダンナなんかも10歳は若く見える不思議な人です。
私も昔は若く見られたのですが、最近はねぇ。
そうなってくると、見た目ではダンナが年下に見られるのが
ちょっと複雑……。

limeさんについては、私も秋沙さんに激しく同意ですね。
きっと、ステキな人ですよ^^

同じく、うらやましい・・・(笑) 

あぁぁ、ストーリーも気になるのですが、やっぱり澪の若さがほしいと思ってしまった私でありました(^^;
還暦過ぎてもなお、男性の心を奪う美しさ・・・ほしい・・・(笑)


いやいやいや、それはおいといて。

え~~~~?どうなってるんですかぁ?
航平が一方的に恋焦がれていただけなのかと思いきや、何やら再会を喜び合っているような・・・?
あぁ、どんな愛憎劇があったのかしら?わくわく。


あ、ちなみに、limeさん、あんなことおっしゃってますが、たぶん昔は年齢より上にみられがちな落ち着いた雰囲気を持っていたのでしょうが、現在は年齢より若くかわいらしく見えるんですよ(^^)

Re: NoTitle>lime様 

limeさん♪

今は序章ですので、物語の前置き、みたいなものでしょうか。
少々ネタバレですが、次章から過去へ遡ります。
物語の鍵は、樹、ですね。
ミステリー作家さんを悩ませているなんて、ちょっとだけ
嬉しいかも……^^;
ちっともミステリーじゃないのですが。

ありきたりのラブストーリーをどう料理して見せるか。
頭を悩ませながら書いております。

年取っても若く見えるって、本当に羨ましいですね。
私は子供の時には老けて見られ、大人になってからは
年齢より若く見られてましたが、今は相応かなぁ。。。
ある年齢から止まればいいのに、って思うこのごろ(^_^;)

NoTitle 

読めば読むほど、先の展開がわからなくなってきました。
66歳と54歳。
澪さんはそれでも綺麗で可憐で。
余計に妖しげで魅惑の空気が漂いますね。
この物語は過去へと遡るのでしょうか。それともこの後の物語なのでしょうか。

でも、うらやましい・・・。
年齢より上に見られる私は、澪さんの若さの秘訣を教わりたい・・笑
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