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小説・散 華
序章


散 華  序章 04

2011.01.06  *Edit 

 航平は焼香を済ますと再び遺族に一礼し、大勢いる会葬者の中に
身を沈めた。そして、そっと周囲を窺う。
 藤村澪…。
 彼女はどこにいるのだろう?
 二十五年前、忽然と姿を消して以来、その消息は杳として知れない。
 彼女が何も言わずに姿を消した時、航平の心にぽっかりと
大きな穴が開いた。以来その穴を埋めるべく必死に彼女を探した。
あらゆる伝手をたどって日本中を巡った。それなのに、
ほんの僅かな手掛かりさえも掴めずに時間ばかりが過ぎ、
とうとう二十五年の歳月が流れてしまったのだった。
 もう一生、彼女と再び見(まみ)える事は無いのだろうか。
 そんな思いに支配され始めていた矢先の華陽院樹の死…。
 きっと彼女は来る。
 来るに違いない。
 虚飾に満ちた世界で、鮮烈に咲き誇っていた気高き一輪の薔薇。
 美しく咲き誇りながらも、自身の茨の檻の中で必死にもがき
傷ついていた孤高の魂。そして、そんな彼女にひと目で心を
奪われてしまった自分。彼女の全てを受け止めたい。
そう思っていたのに何も告げずに何故姿を消してしまったのか。
「牧村…」
 ふいに声を掛けられて、思わず体がビクリとした。
恐る恐る振り返ると、以前勤めていた新聞社の元同僚が
そこに立っていた。
「やっぱり、お前だったか」
 田中と言う大柄な男が、珍しい物でも見るような目を
航平に向けていた。田中は航平と同期入社だった。見るからに
堂々とした風貌で、出世したであろうことがはっきりと分かる
風格を備えていた。そんな田中の視線を真っすぐに
受け止める事が出来ずに、目を逸らす。
「お前、今まで一体、どうしてたんだ。…いや、細々とルポを
売って食い繋いでいるのは知っている。日本中を放浪している事も。
まだ、彼女を追ってるのか?」
 航平が藤村澪の消息を追って日本中を放浪している事は、
関係者の間では周知だった。記者として優秀で有望株だった航平が、
藤村澪の失踪と共に新聞社を退職した時には、誰もが驚いた。
 華陽院樹の取材をしているうちに藤村澪を知り、その魅力の
虜になって人生が狂ってしまったに違いないと誰もが噂した。
 澪は樹の事業拡大に大きく貢献していたが、その貢献の仕方は、
自分の女としての魅力を持って取引を成功させていると言われていた。
事実、取引先の経営者や担当者はこぞって澪贔屓だった。
 だが航平は、その噂は噂に過ぎないと思っていた。
そう噂される程、彼女は魅力的だ。だが、聡明である事も事実だった。
そして、清らかな魂を持っている事も知っている。
「今日ここへ来たのも、彼女の消息を知る為なのか?」
 田中の言葉に逸らせた視線を戻すと、憐れみのこもった瞳が
彼を迎えた。
「もういい加減、諦めたらどうだ。あれから二十五年だぞ。
彼女が幾つになってるか、分かってるだろう。もう、ばあさんだ」
 その言葉に、航平は言い知れぬ怒りが静かに湧いてくるのを感じた。
「魔性の女と言えど、寄る年波にはかなわない。お前の年なら、
まだやり直しはきく。これを機に、彼女の事はきっぱりと
諦めたらどうだ」
 諦められるものなら、とっくに諦めている。確かに彼女は
もう高齢だ。だが、そんな事は航平にとっては何でもない事だった。
そんな航平の心の内は誰にも分からないに違いない。
分からなくて当たり前だ。だから、そんな外面的な薄っぺらい
言葉が出てくるのだ。湧いてきた怒りが胸の底へ沈んでゆく。
「俺の事は、放っておいてくれないか」
 航平はそう言うと、田中のもとを離れた。
 そして再び、黒服の人の中に彼女の姿を探し始めた。

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~ Comment ~

Re: NoTitle>秋沙様 

秋沙さん♪

コメント、ありがとうございます。

「華麗なる一族」ですか。光栄です。確かに設定的には
華麗なのかな、とは思います。

出だしは謎めいてますね。
一体、どういう風に話が進んで行くのか、今の状況では
ちょっと見えてこない感じですが、もうすぐ次章です。
次章からは、普通の物語展開になる筈ですので、
ガッカリされないで下さいね~(^_^;)

あ~、なんか、皆さんの温かい、嬉しいお言葉に、
逆に身をすくませているnarinariでございます……orz

NoTitle 

いろんなところに散らばっているいろんな人のことが、だんだんつながってきましたね(^^)
これから、ますますそれが見えてくるのが楽しみです。

「華麗なる一族」っぽい出だしに、ドキドキさせられてますよ~!

クロスステッチとはまた違う、narinariさんのミステリー調の文章がまた素敵です!

Re: NoTitle>lime様 

limeさん♪

コメントありがとうございます。
なんか、出だしが大仰過ぎて期待させてしまってるのが
申し訳なく思えてきます。
いや、そんな、スケール大きくなんかないんですよ(^_^;)
ありきたりな陳腐なお話です。。。。
それに、自身の力量不足で、自分が思い描いている作品に
書けるかどうか、非常に不安でして……。

今はどこかミステリアスな雰囲気の出だしなので、
ちょっとサスペンスっぽい感も無くはないのですが、
愛憎劇でございます。
次章から、ドロドロ始まってくるものと思われます。
そうなって来ても、お見捨てにならず、最後まで
お付き合い願えると大変嬉しいです。

NoTitle 

スケールの大きさを感じさせる始まり方ですね。
narinariさんの丁寧な描写は、いつもながら尊敬します。
航平と澪という人物が中心になってくるんでしょうか。
歳もかなり違う彼らにどんなドラマが待ってるのでしょう。
想像がつかない分、よけい楽しみです。
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