ChaoS

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit TB(-) | CO(-) 

小説・散 華
序章


散 華  序章 02

2010.12.30  *Edit 

    わびぬれば いまはた同じ 難波なる
         みをつくしても あはむとぞ思ふ
                           (元吉親王)

    あなたに会えずに辛い思いをしているからには、
    今はもう同じことだ。難波の浦にある澪標ではないが、
    身を滅ぼしてもあなたに会いたいと思うよ。


 あの人が逝ってしまった……。
 私の全てであった、あの人が。

 山茶花の花が、まるであの人の死を悼むように
花びらを散らしている。ハラハラとこぼれ落ちる
私の涙のように……。

 何故、こんなにも涙がこぼれてくるのだろう。
 あんなにも憎み、頑丈な鎖を強引に断ち切るようにして、
あの人の許から離れたのに。

 でも本当は、元吉親王の歌のように、身を滅ぼしてでも
逢いたかった。過酷な運命を受け入れて、ただ地獄への道を
進むだけであっても、本当はそれで良かった。
自分だけが背負える罪であったならば。

 愛していた。
 自分の存在の全てで。
 そして、それと同じくらい憎んだ。
 愛と憎しみが自分の中で同居して、常にせめぎ合っていた。

 愛とは一体、なんなのだろう。
 生まれた時から目の前に呈示されていたそれは、
時に甘くて優しくて、時に厳しく悪辣だった。

 あの人の顔が見たい。
 せめて、ひと目だけでも。
 だがそれは叶わない。
 あの人は、一体どんな顔で永遠の眠りについているのだろう。
 死の間際に私を思い出しただろうか。
 自分の罪を思い出して苦悶の表情を浮かべているのか。
それとも全てを忘れて安らぎに満ちた表情をしているのか。
 人は死ぬ時、自分の一生が走馬灯のように流れて行くのを
見ると言う。そして自分の罪を思い知り、後悔するのだ。

 傲岸不遜で冷徹で、自分の欲望を満たすことしか考えて来なかった男。
 そんな男が最期に見た夢で、一体何を思い、何を感じたのだろうか。
 自分のしてきた数々の行いに懺悔の思いを抱いただろうか。
 あの人は繊細な人だ。だからきっと、懺悔したに違いない。
そして、彼岸へと旅立つ時に、迎えに来た母と逢って赤子のように
真っ白な心になって旅立って行った事だろう。

 お母さま……。
 どうか、あの人を許してあげて下さい。
 全ては、貴女への愛ゆえなのです。
 貴女があんなに早く逝きさえしなければ、彼の人生はもっと
満ち足りた幸せな人生だったに違いないのです。
 そして私も、もっと平凡な人生を送った事でしょう。

 火葬場の煙突から、薄い煙が立ち上り始め、
 それを見て、胸の奥から感情が怒涛のように突き上げてくる。

 樹さん、私を置いていかないで!
 自分ひとりで先に逝くなんて、狡い!

 過去に味わってきた辛苦に勝る胸の痛みが襲って来た。
それと同時に強い後悔の念が湧いてきた。
 せめて、ひと目だけでも逢っておけば良かった。こっそりとでも、
その顔を見に来れば良かった。

 澪は体を震わせて、その場にうずくまった。

スポンサーサイト



*Edit TB(0) | CO(2)

~ Comment ~

Re: NoTitle>lime様 

limeさん♪

読んでくださり、またコメントまで頂き、大変嬉しいです。
今度のドラマは、前作2つとは全く趣が違うのですが、
恋愛劇なのです。

序章が終わりましたら、次章から一気に昔へと
お話は遡ります。
どんなドラマが待っているか、お楽しみです。
皆さんの期待を裏切らない内容だと良いのですが……(^_^;)

NoTitle 

どんなドラマが展開するのか、ワクワクします。
一人の老人の死を悼む、何人かの人の想い。
これは恋愛劇なんでしょうか、それとも?

来年の更新が楽しみです。
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
 ◆Home  ◆Novel List  ◆All  ◆通常ブログ画面  ▲PageTop 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。