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小説・クロスステッチ第2部 <完>
21.ふたつの鼓動 ~ 22.美しき花、あとがき


クロスステッチ 第二部 22.美しき花(最終章) 06

2010.12.14  *Edit 

 愛理は小学生の時から背が高く、大女と陰口を言われ続けて
いて傷ついていたが、中学生になってから雑誌のモデルに
スカウトされて、以来自分の容姿に自信を持つようになった。
元々、豊かな経済力の家庭に育った事もあり、我がままな
部分はあったが、それが顕著に出るようになったのは、
モデルを始めてからだ。
 これまでずっと陰で悪口を言っていた連中を見返す
つもりで、勉強にも励み、周囲を見下げる事で、ウサを
晴らしていたとも言える。
 元はズボラでストレートでさっぱりした性格だけに、
陰口を言われる事が最も嫌いだった。だからと言って
ハッキリ言われても、それはそれで傷ついた。何故なら
悪意が感じられたからだ。
 モデルの仕事を始めるようになってから、学校では
前よりも一層、孤独になった。男の子にはちやほやされるが、
女子は誰も寄って来ない。そんな中でも、新年度になって
クラスが変わる度に、愛理に興味を持った女子が寄って来るが、
じきに離れて行く。
 多分、自分が我がままな性格だからなのだろう。
それでも、構わなかった。みんな、モデルとしての愛理に
興味を持ち、仕事の内容や他の芸能人の事ばかりを聞いて来て、
愛理自身の事は何も聞いては来なかった。
 親しくなっても、遊びには誘ってくれない。どうせ
最初から行けないのだろうと思われていたからだ。
愛理はいつも、後からそれを知る。みんなが楽しそうに
遊びに行った話しを聞いて寂しい思いを何度もさせられた。
そうして、最後は離れて行く。
 一人ではつまらないから、寄って来る男子達を相手に
過ごす。そんな愛理を、周囲の女子達は冷たい目で見つめ、
陰口が増えた。
 それでも、モデルの仕事を始めた事でモデル仲間の
友達が多くできた。
 最初は良かった。女の子の友達ができた試しが無かった
からだ。だが、付き合っていくうちに、プライドと嫉妬に
よる足の引っ張り合いを見るようになり、うんざりと
するようになった。
 愛理は、モデルとして恵まれた容姿を持っていた。
背が高く、手足が長くてほっそりしているのに、胸は豊で
スタイルが良い。目はパッチリとしていて、少し小さめの
鼻が可愛らしく、薄い唇が少々大人の女を感じさせる。
 何を着ても似合うと言うこともあり、ひっぱりだこだった。
それが、周囲のモデル仲間達からの嫉妬の対象となった。
 他のモデルと仕事を一緒にする時は、大抵、嫌がらせを
受けた。だが愛理は気が強いから負けていない。また、
そういう人間に負けるのが嫌だった。
 そんな中でも、気の合う数人と特に親しくなり、
仕事上での愚痴を互いに言い合ったりしていた。
 愛理は彼女達を信じていた。初めてできた、仲良しの友達。
それぞれに、人気の高いモデル達だったが、だからこそ
自分と同じように周囲からやっかまれる事が多く、
同じ気持ちを共有できる親友だと思っていた。
 だが、ある時、知ったのだった。
 自分だけが仲間外れにされていて、他のみんなは頻繁に
仕事の合間に旅行に行っていた事を。
 ティーン向けのファッションショーに参加して、ショーが
終わった時、一緒に参加していた仲良しの一人に、終了後に
うちでみんなを呼んでパーティをしないかと誘ったら、
先約があるからと断られた。
 先約があるなら、仕方ないかと肩を落として見送っていたら、
他のモデルから愛理以外のみんなで頻繁に集まっては遊んだり
旅行へ行ったりしている事を告げられた。
 信じられなかった。どうせまた、いつもの妬みからくる
悪口だろうと、その時は思った。だが、それが事実だと
分かった時、愛理は打ちのめされた。
 それから、モデルの仕事を減らし、勉強に前よりも身を
入れるようになったのだった。
 歴史に興味を持つようになったのは、祖父の影響だ。
いつも一人だった愛理に、祖父は昔の人達の面白い話を
沢山聞かせてくれた。千年も二千年も昔の人達も、自分達と
同じように色んな人生を歩んで生きていたんだなぁと、
祖父の話しを聞く度に彼らを身近に感じ、関心を深めた。
 自分を馬鹿にする連中を見返してやりたい。
親に相談し、進学塾へ通うようになり、必死に勉強して、
東大に合格した。
そして、美香と理子と友達になったのだった。
歴史好きな女の子は珍しい。おまけに二人とも、これまで
出会ってきた陰湿な女子達とは一線を画している雰囲気だった。
二人以外の女子の多くは、これまで遭遇してきた連中と
似たり寄ったりで、愛理に嫉妬と羨望の眼差しを向けてきて、
時々厭味を言いながら遠巻きで見ている。
そんな中で、二人は違った。
美香は少し落ち着いていて、常識的で思慮深く、優しい
女の子だった。容姿の優れている愛理に羨望の目を
向けながらも、嫉妬の感情は無く、純粋に愛理を
受け入れてくれていた。
理子は自然体だった。顔立ちは整っていて、よく見ると
可愛らしい感じはするものの、全体的には地味な感じだが、
瞳の輝きが印象的だ。何の曇りも無いように見え、
愛理に対して羨望の眼差しすら向けなかった。
話してみると気が合った。明るい笑顔を見ると、なんだか
こちらまで楽しくて優しい気持ちになってくる。頭が良くて
しっかりしてると思うと、妙に抜けてたり、度胸が
良いのかと思うとシャイだったり。
相反する二つの要素が、顔を出す度に不思議な子だと思った。
だが、それが彼女の魅力でもあった。そして、何故か
独立独歩な感じがして人からの助けを求めようとはせず、
また手を貸しても受けようとはしない。その癖、他人の事を
心配したり、他人の手助けになる事は厭わない。
そんな理子だから、愛理もついつい、甘えたり我がままに
なったりする。そして、同じように甘えてきてはくれない
理子に物足りなさも感じていた。
この子はとても優しいけれど、あたしが思うほど、あたしが
彼女を好いている程、あたしの事を好いてはくれて
いないのかもしれない。
みんなに対して優しいのと同じように、あたしにも
優しいだけなのかもしれない。
一緒に遊びたくて誘っても、なかなか良い返事が貰えない。
それが、結婚している為だと言う事が分かった時には、
ほっとした。自分だけに素っ気ないわけじゃないんだと
思ったからだ。
理子には理子の事情や都合がある、と美香に言われて、
愛理は納得した。感情に走り易い愛理を諭してくれる
美香の存在も、いつも有難く思っていた。
この二人だけが、我がままな自分を受け入れて、ずっと
友達でいてくれる。それが何より嬉しかった。
大学に入っての、初めての夏休み。
愛理は二人と旅行に行きたかったが、二人とも都合が悪かった。
だから、冬休みに期待していた。だが、期待に反して、
理子は行けないと言う。本人から理由を聞いて、納得した。
寂しいけれど、仕方が無い。その代わり、新年度からは
もっと一緒に遊べると聞いて、愛理は嬉しくなった。
春のゼミ旅行。
理子の事情を知った愛理は、当然の事ながら、理子は
参加しないのだろうと思った。本当は一緒に行きたかった。
一緒に現地の遺跡を見て、一緒に発掘体験をして、
共に色々と語り合いたかったのだ。
だから、一緒に行けると言う事が本当は凄く嬉しい事の
筈なのに、愛理はそれを聞いて過去の事を思い出し、
同じ目に遭ったような気がしてしまった。
やっぱり、理子もみんなと同じだったの?あたしと
旅行に行くのが本当は嫌だったの?
「結局のところ、旅行の件はてい良く断られたんだって
思ったのよ。それが、凄く悲しくて、それで……。
ほんとにごめん、わがまま言って……」
「愛理…、私の方こそごめんね。ちゃんと前もって
説明しておけば良かったね」
「ううん、あたしがバカだった。つい感情的になっちゃって。
理子の事、信じてた筈なのに……」
 理子は愛理の孤独を初めて知って、何だか身につまされた。
 自分とは違う種類ではあっても、孤独であった事には
変わりない。
 理子もずっと孤独だった。高校生になって、ゆきと言う
親友を得て、理子の心も大分軽くはなったものの、それでも
心に闇を抱えたままだった。だから、愛理の孤独が痛いほど
よく分かるのだった。
 そして、愛理がこんなにも自分を好いてくれていた事を
知り、胸が熱くなる。
「気にしないで?愛理は何にも悪くないよ。それに愛理は
正直者だから、こうしてちゃんと話してくれるでしょう?
それが何より嬉しいんだ、私は」
「どうして…、理子はそんなに優しいの?」
「ええっ?私が優しいって?自分じゃぁ、そうは思わないけど」
 理子は何となく笑う。他人からそう言われて素直に
喜べない自分が少し不思議だ。
「理子は優しいよ。我がままなあたしを嫌わずにいてくれて、
こうして許してくれてるじゃない」
「それは、愛理が好きだからよ」
 愛理は抱きついていた手を離すと、理子の顔を見た。
散々泣いたからだろう。化粧が崩れて汚れている。
「じゃぁ、理子にも嫌いな人間っているの?」
「いるわよ。当たり前じゃない」
「でも、そういう人でも、意地悪したり無視したり、
悪口を言ったりとかしないでしょう?」
 愛理の言葉に笑った。
「…そうだね。しないかな」
 自分はそういう事が出来ない性分だと思う。
「やっぱり理子は優しい。でもあたし、理子がそういう
人間だって、最初から分かってた。だから好きになったの。
理子はいつも心を開いてくれていて、いっつも笑って
くれていて、だからあたし、一緒にいるのが嬉しくて」
「愛理、ありがとう。私も愛理と一緒にいると楽しくて、
愛理が大好きなの。だから、ごめんね。ゼミへ一緒に行ける事を
真っ先に愛理と美香に言えば良かったのにね。そしたら、
愛理をこんなに悲しませなくて済んだのに」
 愛理は真黒な顔のまま、嬉しそうに笑った。化粧の落ちた
愛理は、子供のような顔をしていて可愛らしかった。
「顔、真っ黒だよ。化粧室で洗って、お化粧直してきた方が
いいよ。一緒に行こう?」
 美香の言葉に、愛理は慌てて顔に手をやると、
「うん」と頷いて、「ちょっと行って来る」と恥ずかしそうに
理子に言葉を残して、美香と共に化粧室へと入って行った。
 理子はホッとして、椅子に腰を下ろした。
 何となく遠巻きに様子を見ていたクラスメイト達は、
事態が収束したのを見て取ると、再び賑やかになった。
みんな、さぞや驚いただろう。あの愛理が号泣して
いたのだから。
「いつだって自然体で、無防備な君のそばにいると、
孤独を抱えた人間はそんな君に安らぎを覚えて惹かれるんだね。
男女の関係なく」
 志水がそう言った。どことなく寂しげな声で。
「私、自分ではまるで分からないの。無防備でいる
つもりは無いのに。これで結構、四方八方に気を
使ってるのよ?自分の内面を知られないように
ポーカーフェイスを装って」
「確かに君は、肝心な所では本心を見せないよね。
だから余計に知りたくなるんだけどね」
 思わず志水の顔を見ると、彼はいつもの謎の
微笑を浮かべたまま、ごめんよ、と言った。


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