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小説・クロスステッチ第2部 <完>
18.罪 ~ 20.絆


クロスステッチ 第二部 20.絆 02

2010.12.04  *Edit 

 クリスマスから年末にかけて、二人は忙しい毎日だった。
 雅春は、受験生達の習熟度チェックと今後の学習計画、
そして学校の雑務と自分の大学院の受験勉強に追われ、
理子は休んでいた間の学習とレポート作成があった。
 雅春が理子に言った通り、理子の単位は基本的には安泰だった。
出席日数が著しく足りない訳ではないし、普段の成績が良いと
言う事も十分評価されていた。ただ、欠席した分、
他の生徒よりも余分にレポートの課題を出された。
 そんな忙しい暮れを送る前のクリスマス。
 今年は二人だけで過ごしたのだった。
 雅春がツリーを買って来たので、それを二人で飾りつけた。
 理子はツリーに飾りを付けるのは、初めてだった。
 吉住家では、クリスマスツリーは飾らない。基本、クリスマスの
お祝いはしないからだ。父が子供達の為に買って帰るケーキと
チキンを食べるだけだった。だから尚更、雅春がツリーを抱えて
帰って来た姿を見て、胸をときめかせたのだった。
 子供のように目を輝かせて、オーナメントを1つ手に取る度に、
どこへ付けようかと首を傾げている理子の姿を見て、
雅春は愛しく感じた。
 全部終え、電飾を光らせて部屋の電気を消した時、
理子は大きな溜息を洩らした。
「きれーい……」
 理子はそう言って、雅春に寄り添った。そんな理子の肩を
雅春はそっと抱く。
「先生……」
「ん?」
「ありがとう…。凄く、嬉しいです…」
「どういたしまして。喜んで貰えて嬉しいよ。今年は、当日に
なってしまったけど、来年からは、12月の初日に一緒に飾ろう。
君と長く楽しみたいからさ」
 理子は雅春の腕の中で頷いた。
 こうして、自分の腕の中に抱いていると、理子が欲しくて
たまらなくなってくる。
 雅春は、理子が退院してからまだ抱いていない。
 退院した日は、家族が来ていて、其々が帰宅したのが
遅かった事もあり、そのまま眠った。理子は疲れた顔をして
すぐに寝付いたのだった。
 そして、天皇誕生日である昨日は、二人で食料や日用品の
買い物に近場へ出かけ、その後はノンビリと家で映画を
観ながら過ごした。
 二人で買い物をするのも久しぶりだった。
 論文作成で忙しかったからだが、それもやっと終わった。
まだ忙しくはあるが、二人の時間を持てない程では無い。
 映画を観ている間、理子はずっと雅春に寄り添っていた。
 自分から甘えてくる事のあまり無い理子だから、珍しい事だった。
 怖い目に遭い、そして2週間も離れていたからなのかもしれない。
 入院中、何度も夜中にうなされていたようだ。
 退院まで、ずっと泊まり込んでいた母の博子が言っていた。
「毎晩では無いみたいだけど、夜中にうなされてる事があるのよ。
起こす程じゃないんだけど、それでも時々、それで目を覚ましちゃうみたい」
 博子が理子に「時々うなされてるみたいだけど、大丈夫?」
と訊ねたら、「大丈夫です」と答えた後、「早く家に帰りたい…。
先生のそばで眠りたいです」と呟くように言ったんだと言う。
 それを聞いた時、胸が切なくなった。
 渕田に襲われた時よりも怖い思いをしている筈なのに、
あの時よりも普通に見える。みんなに心配を掛けまいと、
そう振る舞っているのか。それとも、恐ろし過ぎて感情を吐き出せ
ないでいるのだろうか。いずれにしても可哀想で仕方が無い。
 最後に交わったのは、いつだったろうか?3週間は経って
いるかもしれない。二人が別居している間以外では、結婚してから
こんなに長く交わっていないのは初めてだ。
 一昨日の晩も、昨夜も、理子は雅春に寄り添って眠った。
幼子が親の懐で丸まって安心して眠ろうとしているようなその姿に、
雅春はそっと抱きしめて優しく撫でてやる事しか出来なかった。
 理子は黙って目を瞑り、心地良さそうな顔をしていた。
 こうして、自分の腕の中にいる事が、一番安心できると
以前言っていたから、雅春は敢えてそれ以上の事はしなかった。
 理子は幸せそうな顔をして、やがて安らかな眠りに落ちて行った。
そんな理子の額に軽く口づけた。
 そして、昼間の間は、ずっと雅春に寄り添って離れようとしない。
 親との関係で、自分から人に甘える事が苦手で、
付き合いだしてからも、そして結婚してからも、自分の方から
ベタベタしてくる事はあまり無い理子だった。いつも雅春の方で
引き寄せて、恥ずかしそうにそっと寄り添うのが常だ。
 そんな理子が、自ら雅春に寄り添って、纏わり付いてくる。
 あんな事件が有りさえしなければ、雅春はそんな理子を
手放しで嬉しく思っただろうが、そうではないから思いは複雑だ。
 ただ、求められている事は事実だ。あんな事があったからこそ、
離れがたい思いが強まったのだろう。そして、雅春のそばで
癒されようとしているに違いない。自分にとって理子が唯一の
癒しの存在であるのと同じように、理子にとっても自分が
唯一の癒しの存在なんだと実感する。
「理子…、俺、お腹が空いてきたんだけどな…」
 雅春の腕の中でツリーに魅入っている理子に、雅春はそう言った。
「あっ、ごめんなさい。じゃぁ、そろそろ、食べましょうか?」
 理子は身を起こして笑顔になった。その笑顔が眩しくて、
雅春は安堵した。
 テーブルには、クリスマスらしい御馳走が並んだ。
どれも美味しそうで雅春は目を見張った。ケーキまで焼いてある。
粉物が苦手だと言っていたのに、食べてみると絶品だった。
「君は本当に料理上手だよな。なんで、こんなに上手いんだろう」
 雅春の言葉に理子は頬を染めた。
「先生、褒めるのがお上手ですね。…多分私、食べるのが基本的に
好きだから、だと思いますよ。美味しいものを食べたいって
欲求が料理を上達させるんじゃないでしょうか」
「なるほどな~。好きこそ物の上手なれ、とも言うもんな」
「下手の横好きって言葉もありますよ?」
 理子の言葉に雅春は思わず笑う。
「君はそうじゃないだろう?俺は君が料理上手で嬉しいよ。
俺の為に、こうして腕を揮ってくれるのが何より嬉しい」
「先生にそう言って貰えて何よりですけど、もし私が
料理下手だったら、どうでした?」
 雅春はフフンと鼻で笑った。
「その時は、俺が教える。手ほどきしてやる」
「先生って、万能選手ですよね。何でも教えられるんだもの。
料理まで教えて貰うようじゃ、私、全く先生に頭が
上がらなくなっちゃう」
 小さく口を尖らせて言う様が可愛い。
「その物言いからすると、頭が上がらないのは嫌だって受け取れるが」
「そんなの、当たり前じゃないですか。力関係がどちらかに
偏り過ぎるのは嫌です」
 理子はきっぱりとそう言った。そういう所は相変わらずで安心する。
「勝気で生意気だな。まぁ、そこが好きだから構わないけど」
 雅春の言葉に理子ははにかむように笑って言った。
「先生。前にお母さんがお手伝いにいらしてた時に、
夫を負かすくらいの強い娘が好きだっておっしゃったんですよ?」
「また母さんは、何でそんな事を……」
 雅春は腕を組む。
「あれは確か、先生が私に学校へ行くなって言われた日だったと
思います。先生にやりこめられてる私より、先生が入院していた
時に先生をやりこめた私の方がお好きなんだそうですよ」
 笑いながら言う理子に、雅春は苦笑した。
「母さんも、君を元気づけようとして、そう言ったんだろうけど、
なんかいつも俺に不利な事を言って無いか?」
「そんな事、無いです。お母さんは、何て言うか何でも
お見通しな感じですね。そう言う所は先生と似てるような気がします」
「まぁ…な。親子だしな」
 似ていると言われて、どういうリアクションを取ったら良いのか、
分からなかった。理子は母親と似ていると言われた時に怒っていたが、
自分は特に怒る理由も無ければ喜ぶ理由も無かった。
「その時に言われたんです。先生にもっと甘えていいんだって。
もっと我がままになっていいんだって……」
 伏せ目がちに、理子はそう言った。
 雅春は、本当に母はお見通しなんだな、と思った。
理子の事をよく分かっている。
 理子は付き合い始めた頃は、まだ自分の心を硬くガードしていた。
そのガードの習性が嵩じて、若いのにポーカーフェイスが上手かった。
 その心も、少しずつ開くようになって、色んな感情を
雅春の前で見せてくれるようになったが、それでも自ら
甘えられずにいた。
 母が理子に言ったのは2カ月ちょっと前の事だ。
博子からそう言われても尚、理子はそれから甘えて来ていたとは
言い難い。
「そうか。でも君は、そう言われながらも、その後も
ちっとも甘えて来なかったよな。でも今は、違う…。
俺はそれが凄く嬉しいが……」
 雅春は思わず眉間に力が入った。その表情の変化を理子は
敏感に見て取ったのだろう。少し不安そうな顔をした。
そんな理子を見て、雅春は微笑んだ。
「理子……。俺さ。君に甘えられるのが、ものすごーく、
好きみたいだ。昔は、女に纏わり付かれるのが鬱陶しくて
しょうがなかったのにな。好きな女が相手だと、こうも
違うのかって、つくづく思うよ。元々つれない君だからこそ、
余計、かな…?」
「私…、本当は先生にもっと甘えたいって思ってたんですけど…、
何て言うか、その…ちょっと恥ずかしいような気もするし…、
どこか遠慮と言うか、その…」
 赤くなって俯く理子を、雅春は抱き寄せてそっと押し倒した。
その行為に、理子は少し戸惑うような表情になった。
「甘えたい時には、いつでも甘えて構わないんだ。俺に遠慮なんて、
する必要はないよ。第一、俺は甘えられたいんだし。
君が甘えてくれたら、俺は嬉しいんだからさ。俺を喜ばせたいって
思っているなら、これからはどんどん甘えてくれないかな」
 頬を染めて、潤んだ目で自分を見つめる理子が愛しくて、
雅春はそっとその唇に唇を寄せた。
 柔らかい唇の感触に、一挙に心臓の鼓動が速くなり、
体中に熱い血が滾ってくるのを感じる。
 このまま抱いてもいいのだろうか……?
 理子の怖れを心配しながら、雅春は理子の耳たぶをそっと
指で挟んだ。その瞬間に、理子は小さく体を震わせた。
唇から甘い吐息が微かに洩れて来た。
 そっと耳たぶをいじりながら、唇を外して理子を見ると、
理子は甘い顔をしている。自分を見つめる視線を感じたのか、
理子の目が静かに開いた。
「先生……」
 小さく呟くような声だった。
「俺達、もうずっと、交わって無い……」
 雅春がそう言うと、理子は頷いた。
 頬にかかる僅かな髪の毛を指でそっと避けると、
理子は目を閉じて睫毛を震わせた。
 どうやら拒否の意思は見受けられない。
 親指で唇をなぞると、戦慄き震えた。
 ツリーの灯りがチカチカと理子の顔に変化をもたらす。
その色の変化で、理子自身の顔色は窺えない。
 再び唇を重ね合わせる。
 雅春の脳裏に、ふと、神山佑介の唇に噛みついた理子の映像が
浮かんだ。己ができる唯一の抵抗だったのだろう。
そんな理子が愛おしい。
 雅春は理子の唇を舐め、そして吸った。
 舌を入れようとした時に、理子が体を震わせている事に気付いた。
一時的に震えたのではなく、震え続けている。
 雅春は不審に思い、唇を外した。
 ついさっきまでの甘い顔ではなく、蒼ざめた顔がそこにあった。
一瞬、電飾のせいなのかと思ったが、違うようだ。
「理子。どうした?寒いのか?それとも、怖いのか?」
 雅春の声に目を開いた理子は、怯えた色を浮かべていた。


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~ Comment ~

Re: レビューではありませんが…>kouchan様 

kouchanさん♪

読んで貰えるなんて、嬉しいですね。
でも、ちょっと恥ずかしいかも……。
かなり長いので、准教授に見つからないようにね^^
特に、濡れ場が結構あるので、興奮しないようにwww。

私も学生の時には結構、書きました。小説も詩も。
今以上に独りよがりの自己満足でしたが(^_^;)。
若気の至りでした。
結婚してからは全く書いて無かったので、十数年ぶりです。
若い人、特に男性が読まれてどう思われるのか、
恥ずかしい一方で興味もあるので、また時々感想を
頂けると有難いです。ヨロシク(^_-)☆

レビューではありませんが… 

自作小説良いですね。僕も一時期やっていました。
高校のときは気が付いたら、小説のストーリーよりも女性キャラクターのスリーサイズばかり考えていました(笑)。
せっかくなので、まとめて読みますね。その合間に研究してます(笑)。wordで縦書きにし直してから読みます♪
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