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小説・クロスステッチ第2部 <完>
18.罪 ~ 20.絆


クロスステッチ 第二部 19.謝 罪 08

2010.12.03  *Edit 

 丸山の姿を見て、神山の父親はたじろいだ。
「神山さん。これは一体、どういう事です?お見舞いに
来られたんですか?」
 丸山は厳しい顔をして、そう言った。
「け、刑事さんこそ、どうしてここに……」
「奥さんから連絡があったんですよ。犯人のお父さんが来てるが、
どうしたものかと」
 刑事はそこで溜息をひとつ洩らしてから、言葉を続けた。
「被害者とは接触しないで頂きたいと、お願いした筈ですね。
なのに、どうして、ここにいらっしゃるんですか?」
 雅春は驚いた。警察から、そう注意されていたのに、
来たと言う事か。
 丸山刑事の問いに、神山は蒼ざめたまま何も言わない。
 刑事は理子の方を見た。
「理子さんは、泣いてらっしゃいますね。一体、どうしたんです」
 刑事の言葉に、理子は「何でもありません」と答えたのだった。
その事に対し、刑事は再び溜息をついた。
「神山さんは、告訴を取り下げて欲しいと頼みに見えたんですよ」
 雅人が静かにそう言った。
「そうですか。…困った人だ」
 刑事の顔は、やっぱりな、と言った顔だった。
予想通りだったのだろう。
「それで、増山さんの方では、何とお答えを?」
「そんな事はできません」
 きっぱりと雅人は答えた。
「そうですよね。そんなのは当たり前だ。それに、もし仮に
増山さんの方で取り下げても、警察の方では起訴する事に
決定してますから、土台無駄な頼み事なんですよ、神山さん」
「刑事さん!どうしてです。結果的には大事に至らなかったんだ。
被害者の方で告訴を取り下げれば示談で済むでしょうにっ」
 まだ、そんな事を言うのかと、雅春は憎しみが
募ってくるのを感じる。
「神山さん。今回の事件は悪質です。1カ月前から、二人を尾行し、
写真を撮って送りつけてるし、計画的犯行です。おまけに、
協力者を金で雇ってる。か弱い女性にいきなり当て身を喰らわせて
攫った上に、ベッドの上に縛り付けて強姦しようとしたんですよ?
そして、抵抗した彼女を執拗に打ち続けた。そのせいで、危うく
脳障害になる所だった。おまけに肺炎まで起こし掛けて、
あわや命にも関わるところだったんです。幸い、重症にならずに
済みましたが、犯行そのものは許されるものじゃない。それに、
証拠のビデオもあります。あれを見たら、誰だって酷い、
行き過ぎだと思うでしょう。ただ大人しくさせる為と言った
程度じゃないですからね」
「だけど、息子は、姉を思って…」
「どんな理由があろうとも、許される行為ではありません。
それと、こうして被害者の病室へ押し掛けて告訴を
取り下げるように迫る行為も、厳密に言えば違法ですよ?
少しは被害者の気持ちを考えたらどうです。若い娘さんなんですよ。
どれだけショックを受けた事か。まだ立ち直っていないのに、
こんな風に押しかけてくるなんて非常識でしょう。こういう行為も、
裁判になった時に息子さんに不利に働くんですよ」
 神山は顔を強張らせた。
「もう二度と、ここへは来ないようにして下さい。増山さんが
退院された後も、会いに行ったりなさらないように。下手すると、
脅迫罪で訴えられますよ」
「刑事さん……」
 神山は泣きそうな顔をして、刑事を見た。
「親御さんとしての気持ちは分かりますよ。私も親ですから。
ですが、被害を受けた方の親ごさんやご主人の気持ちも考えて
下さい。そして、一番辛い目に遭った彼女の気持ちも。
どんな事情があっても、罪は罪なんだ。ちゃんと償って出なおす
べきだ。親なら、そんな息子さんを応援してやるべきなんじゃ
ないのかな」
 刑事の言葉は優しかった。
 それを聞いた神山はその場に泣き崩れ、「すみませんでした…、
すみませんでした…」としきりに呟いた。
 そんな父を悲しい目で見た後、美鈴が理子の方を向いて声を掛けた。
「理子さん……。本当にごめんなさい。謝って済む事じゃないけど、
本当に、ごめんなさい……」
 理子はゆっくりと首を振った。
「増山先生、ごめんなさい。私のせいで…こんな事に
なってしまって……」
 雅春は冷たい瞳で美鈴を見た。
「俺は、曖昧な態度を取ってしまった事について、ちゃんと君に
謝った。そして、自分の気持ちをはっきりと伝えた。簡単に
諦めきれないのは分かるが、だからと言ってしつこく家まで
やってきて、愛人にするように理子に迫ったと聞いた時、
俺は君を軽蔑した」
 美鈴の顔が引きつった。そして、理子が雅春の手を強く握った。
それ以上は言うなと言う意味だろう。だが、雅春は敢えて言った。
「俺が愛してるのは理子だけだ。この先もそれは変わらない。
俺にとっては、理子以外の女は、どうでもいい存在なんだ。
嫌われる事こそ本望だ。だから、俺達の仲を邪魔する人間は
許せないし、俺から彼女を奪おうとする人間は一生許せない。
だから俺は、君の弟を一生許さない。君については、
理子の言う通りだから憎むのは止す。だが、これ以上付き纏う
ようなら、俺はとことん君を憎む。それを覚えておいてくれ」
 美鈴は暫し悲しげに雅春を見つめた後、深々と頭を下げて
立ち上がった。
「お父さん。もう行きましょう?仕方が無いわよ。
佑介が悪かったんだから……」
 美鈴はそう言って、泣き伏している父を促して、病室を
出て行った。最後に理子に向かって、「本当にごめんなさい」
と言い残して。
 二人の姿が病室から消えた時、一同はホッとして大きな溜息を
洩らした。そして丸山刑事が「申し訳無い」と言って頭を下げた。
「あの人達には、ここへは来ないように言っておいたのに、
こんな事になって済まないと思ってます。こういう事件は
被害者側と加害者側の接触は避けるのが常識なんですよ。
どうしたって、感情のもつれが生じてしまう。刑事裁判の後、
民事の方で損害賠償請求の裁判をする事になるでしょうが、
いずれにしても当事者同士の直接的な接触は避けるものです。
そうしないと、こじれますからね」
 刑事の言葉に、雅春は重たい気持ちになった。
 裁判になったら、理子も自分も証言台に立つ事になるのだろう。
自分はともかく、理子はそこでも辛い思いをするに違いない。
できれば少しでも早く忘れさせてやりたいのに。
 それに、裁判は時間が掛る。それを思うと、告訴すると言う事は、
こちら側にもデメリットが生じるものなのだな、と思うのだった。
「もう大丈夫だとは思いますが、もしまたこういう事があったら、
すぐに連絡下さい」
 刑事はそう言って帰っていった。
「全く、なんて奴らだ。憎んでも憎みきれない」
 雅春は思わずそう呟いた。その肩を雅人が掴んだ。
「お前の気持ちはよく分かるが、憎んでも仕方が無い」
「先生…、お義父さん…」
 理子の声に二人は振り返った。理子は悲しげに二人を見つめていた。
 二人は理子の前にある椅子に腰かける。
「二人とも、ちょっと言い過ぎじゃ無かったですか?あれじゃぁ、
美鈴さんが可哀想過ぎます」
 理子の言葉に、雅春は呆れ顔になる。
「君はまだ、そんな事を言ってるのか。彼女に同情してる場合か?
君が言う通り、確かに彼女がやった訳じゃない。だが、
あそこまで言わなきゃ、彼女自身、俺への思いを断ち切れないんじゃ
ないか?俺は、それを断ち切らせてやる為にも、敢えて、
あそこまで言ったんだ」
「先生……」
「彼女の言葉を聞いただろう?こんな事になっても、まだ俺を
好きなんだ。いいか?俺への想いが有れば有る程、弟のやった事が
彼女の重荷になるんだよ。その方が、余計に辛いんじゃないか?
逆に、あんな男の為に、と思えた方が遥かに楽だと思う。俺だって、
いつまでも好かれてたんじゃ、たまらないしな」
「先生はそこまで考えて……」
「理子ちゃん。こういう時は、相手に情けは無用なんだよ。
こちらは被害者で、あちらは加害者なんだ。その立場を曖昧に
する事は良くない事だ。彼らのやった事は間違っている。
示談で済まされるような事件じゃないんだ。確かに雅春が
美鈴さんに誤解を与えるような事をしていたのは良く無かった。
だが、あの程度なら、世間ではよくある、些細な事だ。雅春が
既婚者である事を知りながら、期待した彼女が悪い。その後、
きっぱりと拒否したにも関わらず、何度も君の所へ愛人に
するように迫ったじゃないか。諦めきれないのは分かる。
人の気持ちは、そう簡単にはいかないからね。だが、
拒否されているのに、何度も執拗に追いかけて来ると言うのは
問題じゃないかな?私はそれを、はっきりと指摘したまでだよ。
自分の行動は誰が見ても批判されて然るべき行動だったんだ、
と分かって貰う為にね。そうでないと、彼女自身の為にもならない。
今後、別の人間と再び同じようなトラブルを繰り返す
可能性もあるからね」
 理子は二人の顔を見た後、「切ないですね……」と呟いた。
「理子ちゃん?」
 傍で静かに成り行きを見ていた博子が、理子の傍にやってきて
声を掛けた。
「おかぁさん……」
「理子ちゃん。相手の事を本当に思いやるなら、時には
きっぱりした態度も必要よ?美鈴さんが可哀想と言っても、
いつまでもマーの事を想い切れない方が不幸じゃない?
望みの無い恋なのよ?マーが優しい態度を取っていたら、
相手の為にならないって事、分かってるんじゃないの?マーは
これまでだって、女の人にずっと冷たかったんだから」
「そうだよ、理子。そもそも、俺が中途半端な態度で彼女に
接していたから、彼女は余計な期待を抱いて、こんな結果を
招いたんだ。分かるだろう?」
 理子は頷いた。
「ごめんなさい…。私の考えが至らなくて。先生や、
お父さんお母さんのおっしゃる通りです。ただ、美鈴さんの姿が
あまりにも切なかったの……」
 雅春は理子の頭をそっと撫でた。
 もう、この件に関しては、これ以上は言うまいと思った。
 理子は疲れている。
 妊娠騒動からずっと、心休まる日は無かったに違いない。
 再び同居するようになってからも、落ち着かない日々だった。
 雅春の大学院への方向転換や、実家でのいざこざ、そして
松橋美智子の件。立て続けに心を痛める事の連続だった。
だからこそ、余計に感じやすいのかもしれない。
「理子……、もう、余計な事を考えるな。自分と俺の事だけ考える事。
この愛は、誰にも譲れないと俺は思ってる。君だって、
それは同じだろう?」
「はい……」
 頷く理子は、涙ぐんでいた。
「それなら、他人の事は考える必要は無い。愛に関しては
エゴイストでいいんだ。もっと、我がままでいいんだよ。
君は自分の愛だけを大切にするんだ。俺を愛する事で他人を
傷つけるとしても、それは君のせいじゃない。それでいちいち
傷ついていたら、愛を貫き通す事はできない。俺は、多くの
人間を傷つけるとしても、それでも君だけを愛し続ける。
そして、そこまで1人の女性を愛し抜ける自分を誇りに思ってる。
だから、君にもそうであって欲しいんだ」
 理子は涙を拭いながら、「先生、ありがとう…」と言った。
そして、はにかむように笑った。



       19.謝 罪  了  20.絆  へつづく。


          18と19は辛い章でした。
          神山美鈴との件が、あのままで終わるのか?
          そんなに簡単でいいのか?
          と思い悩んでいるうちに、こういう展開に発展して行きました。
          でもって、理子をどうするか?
          生かすか殺すか。重くはないにしても障害を負い、
          雅春とのリハビリ物語にするか、なども考えたのですが、
          そこまで書く自信もなく……。
          そもそも基本的にお涙頂戴的なメロドラマは嫌いなのです。
          だからレイプとか死とか病気とか障害とか、
          悲しくて当たり前だから嫌なんですよねぇ。。。。 
          今回、先生が何より可哀想で、書きながら泣いてました。
          実生活にまで影響しちゃって、日々、陰々滅滅。
          そして、この先、お話をどう纏めて終わらせるのか。
          まさに産みの苦しみ……。
          この先は、もしかしたら物足りない感があるかもですが、
          ご容赦下さい。
          今後、アップペース、上がると思いますが、最後まで
          宜しくお願い致します。
          また、コメの付けようもない内容の連続ですが、簡単でも
          感想を頂けると非常に有難いです。<(_ _)>

  

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~ Comment ~

Re: こんばんわっ>misia2009様 

misia2009さん♪

お忙しい中、どうもありがとうございます。

随分と頭を悩ませた二部でした。
事件を収拾するのは大変ですよね。
自分的には、この人物ならどう考えどう行動するだろう?
と考えに考えての経緯と結果なのですが、実際問題、こんなに
上手くいくのかは大変疑問です。

そもそも、どんなに論理的で筋が通っていて正論であっても、
納得できない人、しない人って現実には多いんですよ。
価値観や考え方の違いからくるのでしょうが、
ああ言えばこう言う、こう言えばああ言うって人、少なくないし。
また、どうしても感情論中心って人もいますし。
人を説得すると言うのは難しい事です。
だから、書きながら何度も自問自答したのですが、決着を
付けない事には、物語も終われないし……(^_^;)

大学の法学部に席を置いていた時があって、その時に教授に、
幾つもの判例を題材に、自分なりの論理を展開する
レポートを随分と書かされました。
法律と言う基準はあっても、それを解釈して適用するのは人間で、
判例とは違う判決であっても、それを納得させられる論理を
展開しろと随分言われて、それはそれは大変でした。
どんな論理でも、相手が納得すれば、それが通るのです。
だから一審、二審の判決を見事に翻す有能弁護士なんかが存在するんでしょうね。
最近は、あまり見かけませんけどww。

でも、小説はねぇ……。
あまり理屈っぽいのもねぇ。
大体、自分がそんなに説得力があるとは思えないし。

他人様の文章を見て、いいなと思って盗みたくなったりしますよ。
特に、misia2009さんの作品を読んでいると、顕著に思います。
こんな風に情景描写できたらなぁ~と、読むたびに思い、
自分の潤いのない文章に自己嫌悪。

私って、元々、何も無い所から生み出すのは苦手で、
既存の物を利用して、アレンジするのが得意だったりするんです。
美味しい所ばかりを貰ってきて、別の面白いものを作るのが上手いみたい。
だから小説も、長く生きてきた経験や色んな人との出会いが
あったからこそ、それを利用して書けている部分があります。
それだけに、創造力が乏しくて、ネタぎれになると書けないんですよぉ(;_;)

そんな訳で、次回作もどうなることやら。
冒頭と大筋だけが頭の中にあるだけで……。
細かい事を調べて書くのが億劫なタイプなので、マメに、そして熱心に
調べられるmisia2009さんを尊敬しています。

こんばんわっ 

しまった、終わってる^^;;; 「謝罪」を丁寧に読みたい、けれども読むとほら自分が落ち込む~というのがあって。ご無沙汰しました。

まずは、お疲れさまでございました。
第二部は、本当にnarinariさんが、知識も情緒も倫理もふりしぼって渾身で書かれたことが感じられるので、勉強にもなり、ある意味ひじょうに面白くもありました。

鈴木さんのときも美鈴センセの件も、徹底して引っ張るのは作者の勇気で、落ち込みながらも何とかできるという自身があっての冒険だと思います。本人たちが、暴力や金、立場のチカラではなく周りの人の論理的な言葉のみによって説得されていく様子が、人間同士のケンカとはこうあるべきと、いつも気持ちよく腑に落ちます。

入院生活や刑事さんの言葉もリアルで、「こういうふうに書きたいものだ」と噛みしめるように読みました。
narinariさんは色々な経験があるか、具体的に想像できる感性があるのだろうと思いました。

キャラとエピソードの造形は感性ですが、その提示する順序は論理なので、書くにあたり論理的であることは物凄い強みだと思います。

他人様の作品を読んで、うらやましくても、いいなと思った文章を、まさかコピペして使うわけにいかないし、同じストーリーにするわけにもいかず。結局、自分は自分のものを書くしかありませんね。
ふりしぼっても大したものが出てこないときの「私の人生って」という落ち込みとかね・・・

次回作も「散華」って、もうタイトルからいきなり重そうですが^^;
期待満々です。
でもその前にクロスの続き! 長文失礼しました。

Re: 簡単でも…という事なので>OH林檎様 

OH林檎さん♪

コメントありがとうございます。
重たい話しの連続で、きつかっただろうと思います。
第一部の最初、この話を書き始めた当初は、こんなに
重たい話しにするつもりは全く無かったんですけどね。
もっと、ラブラブ胸キュンのお話にしたいのに、
何故か、そういう風には書けないnarinariでございます。
だから私からすると、OH林檎さんの書かれるお話は、
胸キュン要素満載だし読みやすいし、ハートフルで
羨ましいです。

だけど、人の作品読むと、やっぱり自省を促されてしまうのは、
書き手の皆さんの共通みたいですねー。
私なんか、書く気失せる事、多々。
さらりとした文体の割に、重たい内容で、もっと
軽いタッチで楽しい胸キュンが書けないかと思うばかり。
でも書けないものだから、やめたくなっちゃうんですよね。。。

リハビリ物語になったら、更に重くなるから、やっぱり
無理だったか……。でも、リハビリを乗り越えてメデタシメデタシ、
感動!号泣!ってパターンも有りかも(^_^;)
まぁ、幸せに、って思いは同じなんですけどね。

簡単でも…という事なので 

正直、上手い言葉が見つからず、
ここまで読み逃げをしてしまいました。

narinariさんの小説は心に棲みついてしまうんですよ。

朝起きて、まずクロスを読む。
そして、唸り、時に涙し…悩む、悩む、悩む。
(一番悩むのは自分の小説はあんなに軽くて良いのかという事)

兎にも角にも、リハビリ物語にならなくて良かった。
やっぱり幸せになってもらいたい、二人には。
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