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小説・クロスステッチ第2部 <完>
18.罪 ~ 20.絆


クロスステッチ 第二部 18.罪 07

2010.11.25  *Edit 

 雅春が病院に到着した時、理子は検査中だった。
 病室の中には、志水と富樫、そして見知らぬ中年の男がいた。
 雅春は蒼ざめた顔をして椅子に座っている志水の傍へ駆け寄ると、
思わずその襟首を掴み上げた。
「君は一体、何をしてたんだっ!どうしてこんな事になったんだっ!!」
 そんな雅春を、富樫と中年男が止めに入てきた。
「止めて下さい。彼のせいじゃないんだから」
 雅春の手から離された志水は、その場にうずくまって泣きだした。
「申し訳ありません。僕がついていながら……こんな事に……」
 床に手をつき、土下座をしている。
 雅春は、そんな志水を見て自分の過ちを悟った。だが、この感情を
どこへぶつけて良いのか分からず、拳を震わせていた。
「増山理子さんの、ご主人ですね?」
 中年男に声を掛けられた。
「私は目黒署の丸山と言います。今回、この二人から通報を受け、
また、友人の林君の活躍で、理子さんを救出し犯人を逮捕する事が
できました。ですから、どうか彼を責めないで下さい。
大体の事情は伺っています」
「刑事さん……。僕は妻が攫われて、そして救出されたと言う事と、
殴られて怪我をしたと言う事しか知りません。詳細を聞かせて
貰えませんか。それから今の彼女の状況も」
 雅春は力無くそう言った。
「わかりました。じゃぁまず、今の奥さんの状況からお話し
しましょう。それが一番気になる事でしょうから」
 雅春は刑事に勧められるまま、そこにあった椅子に座った。
「理子さんは、犯人から強く何度も頬を殴打されてまして。
我々が現場へ駆けつけた時、頬が真っ赤に腫れていました。
それから鼻血と、あとは口の中が何箇所か切れていますが、
歯には影響はありませんでした。それで、殴打のせいなのでしょう。
脳震盪を起こしてまして、呼びかけても意識が無かったので
救急車を呼んでここへ運びました」
 刑事の言葉は淡々としていた。
「……実は犯人の部屋に転がっていた一眼レフを回収した所、
モードがビデオモードになっていまして、一連の犯行がそこに
写っていました。どうやら犯人は、リモコンで写真を撮るつもり
だったようですが、謝ってビデオモードにしていたようです」
 刑事の言葉に、俯き加減でいた雅春は顔を上げた。
 刑事の顔を見ると、あまり芳しい表情ではない。
「理子さんの両頬は真っ赤に腫れてましたし、脳震盪を起こして
いるくらいだから、かなり強打されたのだろうと予想はして
いましたが、ビデオに写った映像を見た所、我々が想像していた
以上にぶたれていました」
 雅春は震えた。
 雅春はボクシングをやっているから、刑事が謂わんとしている事が
察せられた。
「ま、まさか、脳挫傷でも起こしているって言うんじゃ……」
「今のところは、まだはっきりとは分かりませんが、
その可能性があるので、精密検査をしている所です」
 雅春は膝の上で頭を抱えた。
 どうしてこんな事に。
 何故、理子がこんな目に遭うんだ。
「あなたの奥さんは気丈ですね。犯人にキスをされそうになって、
相手の唇に噛みついたんですよ。ですが、それが逆に仇になった。
逆上した犯人が理子さんを打ち始めたんです」
「そ、そのビデオ、見れますか?僕に見せて貰えないでしょうか……」
「見れなくは無いです。ですが、止めておいた方がいいと思いますよ」
 刑事の言葉に、雅春は首を振った。
「いえ、見せて下さい。一体、どんな様子だったのか、
この目で確かめたいんです」
 雅春の言葉に刑事は溜息を洩らすと、胸ポケットから携帯を出し、
証拠のビデオを持って来るように連絡した。
 そのテープは思いのほか、すぐにやってきた。ロビーで
待機していた別の刑事がコピーを持っていたらしい。
 病室にはテレビデオがあり、刑事はそれにテープを差し込んだ。
 雅春は、自分も是非見たいと言い出した志水と共に、
そのビデオを見た。
 画面はいきなり、ベッドに縛り付けられた理子を映し出した。
恐怖で慄いた表情をしている。上半身は下着姿だが、下半身は
着ていたので少しだけホッとした。
 それにしても、胸が痛む。両手両足を縛られて、男が二人とてきは、
絶望的だっただろう。だが、そんな状況下でありながら、
理子は恐怖に慄きながらもどこか毅然としていた。
 画面に映った男は若い、優しげな顔をした男だった。左手に
カメラのリモコンを持っていた。そして、理子の顔に顔を近づけて
唇を重ね合わせようとした瞬間、理子が噛みついた。男は叫び声を
上げながら一端理子から離れた。
 いてぇ、と騒いでいる男の傍で、もう1人の男の声が聞こえ、
その男が理子へ襲いかかろうとしている様子が窺えたが、
唇を噛まれた男がそれを引き止めて、自ら理子の上に馬乗りになり、
罵声を浴びせながら理子の両頬を殴打し始めた。
 雅春は、その映像が見るに堪えられなかった。
 刑事が言う通り、何度も何度も理子の頬を打っている。
 雅春の口から嗚咽が洩れた。
 酷い。酷過ぎる。
 胸の奥から、咽喉の奥から、苦い物が込み上げてくる。
 思わず目を逸らすと、聴覚だけが敏感になって、男が理子の頬を
打ちながら叫んでいる言葉が耳についた。
「…………姉さんの方が…ずっと美人じゃないか。
……お前さえいなきゃ、……姉さんは幸せになれたのに!……」
 その言葉に、雅春はフイと背けていた顔を画面に戻した。
 その瞬間、チャイムが鳴って、外から「神山さーん」と
呼ぶ声が聞こえた。男の手が止まり、理子の口を塞いだ。
 何度も何度も「神山さーん」と言っている声を聞いて、
雅春は心臓が止まる程、驚愕し、瞳が凝縮した。
「神山……?」
 呟くように言った雅春の言葉に、刑事は言った。
「そうです。犯人は神山佑介と言います」
 テレビに映し出された映像は天井のみが映し出されて、
乱闘の音だけが響いていた。

「増山さん。あなたと理子さんの許に不審な写真が1カ月程前に
届いたそうですね?」
 愕然と立ちつくしている雅春に、刑事が言った。
「その件についての凡(おおよ)そは、そこにいる志水君から
聞きました。それで伺いたいのですが、ビデオに写っている
犯人に見覚えはありますか?」
 雅春は体を震わせながら首を横に振った。
「では、心当たりは」
 雅春は何をどう話したら良いのか分からなかった。
 だが、もしそうなのだとしたら、全ては自分の責任だ。
 何も答えられずにいる雅春の傍に、志水が立った。
 雅春が志水の方に視線をやると、志水は哀しい目をして頷いた。
「僕が……話してもいいですか」
 志水のその言葉に、刑事は驚いた。
「君!何か知ってるのか?」
「いえ。知っていると言う程では。……ただ、犯人の名前を聞いて
気になる点が」
 志水の言葉に、今度は雅春が目を剥いた。
「君は知ってるのか?」
 志水は静かに頷いた。
「理子から……聞いた事があったので」
「いつだ」
「授業のノートをお宅へ持って行った時です。僕を警戒した、
あなたのお母さんに対して、『彼は美鈴さんとは違うから』と
言ったので、一体誰の事なのかと思って訊いたんです」
 それを聞いて雅春は大きく息を吐いた。
 そうか。知っていたのか。彼女の名前を。
 それなら、「神山」と聞いて、不審に思うのも当然だろう。
「おい、君たち。一体、何の話しをしているんだ。
ちゃんと説明してくれ」
 雅春は顔を上げると、真っすぐに刑事の方を見た。
「刑事さん。犯人は逮捕されてるんですよね?取り調べの方は
どうなってるんです。自供したんですか?」
 ついさっきまで体を震わせていた雅春が、冷静な目を向けて
来たからなのか、刑事は少し戸惑いの表情を浮かべた。
「その前に、君たちの話しを聞かせてくれ」
 刑事の言葉に雅春は首を振った。
「こちらは被害者なんです。プライベートの、人権に関わるかも
しれない内容を先にお話しする訳にはいきません。まずは取り調べの
状況を先に聞かせて下さい。こちらの話しはそれからです」
 毅然とした雅春に、刑事は諦めたように小さく溜息を一つ洩らした。
「取り調べの方は、順調とは言い難い。さっきのビデオだが。
最後に大声を出して彼らを呼びだしたのは理子さんのクラスメイトの
林君だ。彼がヤツらを尾行してあの場所を発見した。
乱闘になった為にカメラが倒れた。林君が彼らを打ちのめした後に、
うちの警官たちが踏み込んだんだが、あんな現場で逮捕されながら、
最初は容疑を否認していたんだ」
「否認?」
 雅春は驚いた。



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