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小説・クロスステッチ第2部 <完>
18.罪 ~ 20.絆


クロスステッチ 第二部 18.罪 06

2010.11.25  *Edit 

 林は富樫に連絡した後、どうするべきか考えた。
 富樫は志水と相談して、警察へ通報する事にして、110番へ
電話をしている所だった。現在地を教えたから、やがてここに
警察官達がやってくるだろう。車の車種とナンバーも教えたから、
警察なら見つけてくれるに違いない。
 だが、間にあうだろうか。
 その間に、理子の身に危害が加えられる恐れがある。相手は男が
二人だ。ぐずぐずしてはいられない。
 この道に入ってすぐに姿が消えたと言う事は、比較的早い路地で
曲がったと言う事だろう。
 そう思って、周囲を窺いながら最初のT地路を曲がった。左右を
窺いながら先へ進むと、そこは行き止まりだった。急いで元の
T地路へ戻ると、再び直進し、また左右を確認しながら
次の路地を曲がる。
 もしかしたら、無駄な作業かもしれない。この区画ではなく、
ここから別の道路へ抜けたのかもしれない。だが、林は自分の勘を
信じた。追われている事に気付いている節は全く無かった。また、
林自身も、それを注意しながら追っていた。
 追われていると知れば、こういうゴミゴミした住宅街へ入りこんで
まこうとするだろうが、その目的が無ければ、渋滞もしていないのに、
こんな細い路地へ入り込む必要は無い。こんな所を通るのは、
ここに住んでいるからだ。
 実際、T地路が多く、全て行き止まりになっている。
抜け道の可能性は低いと考えた。
 3本目のT地路へ入ったら、すぐに例のシルバーのエヴリィが
目に飛び込んで来た。
 見つけた!
 古びたアパートだった。車はその地続きの駐車場に止まっていた。
林は急いでバイクのエンジンを切ると、電柱の陰に置いた。そして、
車まで移動した。
 車の中は空で、誰も乗っていない。ナンバーを確かめると、
案の定だった。車の前のアスファルトに番号が白い字で書かれてある。
 “101”
 部屋番号と同じだろうか?
 林はアパートの方へ視線を移した。101なら、1階の、左右
どちらかの部屋だろう。こういう場合、左が1番のケースが多いが、
近づいて見ると案の定、左端が101号室だった。
 表札は掛っていないが、ドアのポストにダイレクトメールらしき
物が覗いていた。静かに音を立てないよう、そっと抜いて見てみると
『神山佑介様』と書いてある。
 林はそれをズボンのポケットに突っ込むと、ドアに耳を当てて
中を窺った。中からは、男の話声が聞こえるものの、
女性の声は聞こえない。
 ここでは無いのか?
 そっと、左手の奥へ入った。足許には砂利が敷いてあるので、
足音を立てないように慎重に歩いた。
 その時、中からドタバタとした音が聞こえ、男が叫んでいるのが
耳に入って来た。林は慌てて窓のある所まで半ば駆けるようにして
移動し、窓から中をそっと窺うと、理子はベッドの上で両手両足を
縛りつけられて、上半身は下着姿だった。その上に理子に当て身を
喰らわせた男が馬乗りになって、理子の頬をしきりに叩いていた。
 男の目的は明らかだ。
 暴力で大人しくさせた後、レイプするに違いない。
 急がなければ。
 林は目の前のガラスを破って中へ侵入する事を考えたが、
丈夫なサッシだし、怪我をする可能性もある。戦う前に怪我を
していたのでは、二人相手に不利だ。
 二人とも強そうには見えないが、それは自分だって同じだろう。
人を見かけで判断しては後で痛い目に遭わないとも限らない。
 矢張りここは不意打ちをかけるしかない。理子は縛られているから、
逃げ出す事はできない。だから、人質にされる恐れがある。
 二人同時に相手にせずに、手早く1人ずつ片づけるしかない。
 そう考えて、林は相手を呼び出す事にした。大声を上げて、
何度もチャイムを鳴らす。車もある訳だから、しつこくされると
近所の手前、まずいと思うだろう。それに、自分の声に理子が
気付いてくれれば、精神的に彼女も楽になるのではないか、
との狙いもあった。
 そして、思った通り、中から出てくる気配を感じ、
ドアへそっと身を寄せて中を窺うと、男が小さめの声で
何の用なのかと問いかけて来た。
 林はニヤリと笑うと、車が大変な事になっている、と告げた。
こう言われて出て来ない人間は、まずいない。
 林は相手がチェーン越しに車を確認するかもしれない事も想定して、
ドア越しに見える場所に、マジックで大きく×印を付けておいた。
こうしておけば、チェーンを外して出てくるに違いない。
 だがドアにはチェーンが掛っていなかった。何の障害も無く開いた
ドアの先に現れた男を、林は渾身の力を込めて、
その腹に拳を突きだした。
 男は部屋の奥まで飛ばされた。林はすかさず上がり込んで、
もう1人の男と対峙する。
 何が起こったのか分からずに戸惑っている男に、林は殴りつけた。
3回殴りつけた所で背後に気配を感じた。さっきの男だろう。
林はすかさず足を後方へ蹴りあげる。相手の股間に命中し、
叫び声を上げながら股間を抑えて転げ回った。
 目の前の男も、床に投げ出されていた。その姿を一瞥してから、
林は理子の方へと顔を向けた。
 理子は気を失っていた。
 両頬は真っ赤に腫れて、鼻血が出ていた。唇の端からも
血が零れていた。
「増山さん!増山さんっ、大丈夫?」
 林は必死で声を掛けたが返事は無い。
 こういう時に、揺すってはいけない事は分かっていた。
 理子の姿を見て、林の中から言い知れぬ怒りの感情が湧いてきた。
窓越しに見た時から湧いて来ていた感情だったが、
今はそれがフツフツと煮えたぎっている。
「お前らぁ……」
 腹の底から絞り出すような声でそう言うと、ギュウッと強く
拳を握りしめる。その手は真っ白だった。
 憤怒の形相で、再び目の前に倒れている男を掴まえて殴ろうと
したら、ドカドカと警官達が部屋の中へと入って来たのだった。

 志水は富樫と一緒に覆面パトカーに乗り込んだ。
 警察に通報し、すぐに刑事が駒場の駅までやってきた。
 二人が事情を刑事に話している途中で、車のナンバーから
持ち主が分かり、住所も分かった。その住所は、
林が知らせて来た場所から近かった。
 志水と富樫は刑事に頼んで一緒に乗せて貰ったのだった。
 ただ待っているだけなんて出来ない。
 車の中で手を組み合わせ、ひたすら理子の無事を祈る。
 何故あの時に、トイレまで付き添わなかったのだろう。
 女の子からしたら、トイレまでついて来られるのは嫌だろうと
思った。さすがに、そこまでするのもデリカシーが無さ過ぎる。
そう思ったから遠慮した。
 その結果がこれだ。
 矢張りついて行くべきだった。
「君たち……」
 黙っている二人に、刑事が声を掛けて来た。
「状況は分かったが、どうして彼女がこんな目に遭うのか、
何か心当たりは無いか?」
 富樫は首を振ったが、志水は何のリアクションも取れずにいた。
そんな志水の様子に気付いたのだろう。
刑事は志水に鋭い視線を浴びせて来た。
「君は……、志水君と言ったかな。何か心当たりがあるのかな?」
 声音は優しかったが目つきは変わらずに鋭い。
「犯人の心当たりはありません……」
 自分の声が掠れている事に気付いた。
「犯人の心当たりは無い。…が、事件の背景には
心当たりがある、って事なのか」
 刑事の言葉に、富樫が驚いた顔をして志水の方を見た。
「おいっ、そうなのかよ?」
 富樫の責めるような口調に、志水は大きく息を吐いた。
「今回の事に関係あるのかどうかは分かりません。ただ、
1カ月少し前から、キャンパス内で妙な視線を感じるように
なったんです。誰かに見張られているような」
「それは君、気のせいじゃないのかね?」
「最初はそう思いました。ですが、彼女のご主人の元に彼女が
キャンパス内でクラスメイトの男子達と談笑している写真が
送りつけて来られたんです」
「彼女のご主人?」
 刑事は鳩が豆鉄砲でも食わされたような、驚いた顔をした。
「ご主人ってのは、なんだ、結婚してるのか?」
「そうです」
 志水は一連の出来事を話した。
 それを聞いた刑事は、「ふぅむ」と言って、
難しい顔をしながら顎をさすっていた。
「そんな事があったから、最近またベッタリだったんだな」
 と、富樫が言った。富樫の言葉に志水は僅かに口の端を上げる。
「何なんだ、それは」
 と、刑事が口を挟んで来たが、それにどう答えようかと
思っているうちに現場に到着した。



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