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小説・クロスステッチ第1部 <完>
第9章 染まる染まらない~第15章 許されざる者許す者


クロスステッチ 第1部第11章 波紋 第2回

2010.03.19  *Edit 

 理子の質問に石坂は笑って答えた。
 「どうしてなんだろうねぇ。決め手は無いんだ。長年の勘、かな。
僕も君の事を気にしているからかもしれないね」
 理子はこの瞬間、自分の視界から増山をシャットアウトした。
これからは、職員室へ来ても、一切増山の事は気にしない事に決めた。
 「これまで多くの女生徒と出会ってきたわけだが、色んなタイプが
いる。最初から大人っぽい子もいれば、卒業するまで子供っぽい子も
いるし、最初から最後まで色気が全くない子もいる。最初は地味で
目立たないが、ある時いきなり開花しちゃう子もいるし、徐々に
花が開くように成長する子もいる。実に様々で、その子供たちの
過程を見せて貰えるのは、ある意味役得のように思っているんだよ。
10年以上もこの職業をやっていると、若い子と毎日触れ合って
いるせいか自分の気持ちも妙に若いと言うか、成長しきれない部分
があって、自分よりもかなり年下でも惹かれる事もあるんだ」
 石坂の言いたい事がわからない。言っている意味はわかるが、
核心部分がわからない。
「先生は、その例えば、その惹かれている相手から求愛されたら
どうします?受け入れるんですか?これまで、そんな事がありました?」
 理子は敢えて思い切って切り込んだ質問をしてみた。
 その質問に、石坂は眉根を寄せた。


 「うーん、職員室でする内容じゃ、無くなってきちゃったねぇ」
 理子は黙って石坂を見つめた。この人の意図は一体何なんだろう。
 「僕は、結婚してるから、求愛されれば嬉しくはあるけれど、
受け入れるのは無理かなぁ」
 「じゃあ、自分の方から相手に告白するなんて事は、
あり得ないんですね?」
 「そうだね。でも、先の事はわからないよ」
 「それはどういう意味ですか?」
 石坂は腕を組んで体ごと理子の方を向いた。
 「これまでは、あり得なかった。常識の方が気持ちを上回って
いたからね。でも、恋とはそういうものじゃぁ無いでしょう。
常識で測れないのが恋だ。教師という立場も、夫と言う立場も、
全てかなぐり捨ててもいい程の恋をしないとは限らない」
 理子は、ふと、「残りの雪」を思い出した。あの小説では、
結局のところ、男は身体の弱い妻を見捨てる事が出来なかった。
 「数学の先生でも、そんな感情論を語られるんですね」
 「それはそうだよ。人間なんだから。それに、男でもある」
 そう言う石坂は、妙に男臭かった。
 「おいおい、石坂先生、職員室で女生徒を口説いちゃいかんよ」
 と、急に斜め向かいの席から声がかかった。見上げると諸星先生だった。
 いつからいたのだろう。話しに夢中になり過ぎていたのか。
 「諸星先生、人聞きの悪い事は言わないで下さいよ」
 と、石坂が笑いながら言った。
 「いやいや、君には奥さんと言う前歴があるだろう」
 「それを言うなら、諸星先生こそ、でしょう。僕は卒業後だし、
口説いたのは職員室じゃあ、ありませんよ」
 「はっはっは!まぁな。でも、今はちょっと怪しい雰囲気だったぞ。
理子も、そういう恋愛問題に関しては、俺に相談することだ。俺なら
安心だぞ。もうジジイだからな。石坂先生は、人畜無害な聖人君子
のような風貌だが、まだ不惑だ。今の不惑は惑いばかりだからな。
危険だぞ」
 現国の諸星は、とても豪快であけすけで気さくな教師だった。
定年間近で頭の天辺が少々寂しい。大きな二重の目で、でっぷりと
していて野球の野村監督に似ているが、野村監督よりも迫力があった。
ユーモアに溢れていて楽しい先生だが、溢れすぎていてどこまで
本当なのかわからない部分もある。
 石坂は溜息をついて、諸星先生には敵わないって顔をして見せた。
確かに雰囲気が怪しくなってきていたので、理子にとっては
諸星先生の登場に助けられたような気がした。
 「じゃあ、諸星先生にお伺いしますけど、先生は長年教職に
あって、奥さん以外で女生徒に惹かれたりとか、そういうのは
無かったですか?」
 諸星は嬉しそうな笑顔になった。
 「おおっ!よくぞ聞いてくれた。そんなのはなぁ。山ほどある。
数えきれないくらいだ」
 と言うと豪快に笑った。この先生には聞くだけ無駄だったか。
 「理子は、そんな事を石坂先生に聞いていたのか。そういう
話しは数学教師に聞いては駄目だ。数学者は常識的で一本気だから。
オールオアナッシングだ。男女の複雑な心の機微までは語れない」
 成る程、伊達に年を食ってはいないようだ。
 「だがなぁ理子、覚えとけよ。教師だって男だ。ついでに
男子どもも当たり前だが男だぞ。男はみんな狼だからな。
用心に越したことは無い」
 「ジジイもですか?」
 ちょっと突っ込んでみた。
 「ジジイもだ」
 諸星はそう言ってまた豪快に笑った。
 「この俺もなぁ。若い時は増山先生ばりのイケメンで、
ものすごーく、モテたんだぞ。泣かせた女は数知らず」
 相手が知らないのをいい事に、何て事を言うのだろう。
まさに大言壮語だ。
 「先生、それはちょっと無理があるような・・・」
 「信じてないなぁ?今度、昔の写真を見せてやる。驚くぞ。
それに年よりを馬鹿にするが、そこの石坂先生だって増山先生だって、
年を取れば同じようになるんだぞ」
 想像できない。年は取っても、同じようになるかどうかは疑問だ。
 丁度いいところでチャイムが鳴ったので、理子はそそくさと引き上げた。
 結局、石坂先生の本意はどこに有ったのだろうと理子は考えた。
あの先生は、自分と増山との関係を薄々気づいているのだろうか?
それとも、相互の関係ではなく理子のみの気持ちに気づいているのか・・・。
『僕も君の事を気にしている』と言っていた。『僕も』の“も”が気になる。
 教室へ帰ると、「おかえりー」と岩崎が出迎えてくれた。
その笑顔を見てホッとした理子だった。

 毎日学校で増山の顔を見れると言っても、盗み見るように
しているので、満足に見れたためしがない。先生の顔がちゃんと
見たい。その欲求が高まる。理子は増山の写真を持っていない。
年度初めに撮るクラス写真くらいで、小さいのが不満だ。携帯は
危険だし、家も危険だ。万一親に見つかったら困る。とにかく
用心に用心を重ねて写真は持たないようにしている。せめて写真が
あれば、勉強の合間に見て力が湧くのにと思う。だが、もうあと
数日の我慢だ。そうしたら本人に会える。
 新年度になってから、学校生活においては今ひとつ充実感が
無かった。親しい友人達と違うクラスになり、休み時間のやり取りが
激減した。元々休み時間は本を読んでいる事の方が多い理子だったが、
それでも去年は耕介を始めとして周囲が賑やかで楽しかった。
 だからと言って、今更、友人作りに時間を割く気にもなれない。
クラスメイト達の様子を窺うと、去年よりは緊張感があるものの、
それでもまだまだ呑気な感じだ。
 ゆきが理子の教室まで訪ねて来た。
 「あれ?どうしたの?」
 教室まで訪ねてくるのは珍しい。3年になってからは、部活で
会う以外では、メールで連絡してくるのに。どこか様子が変だった。
 「理子ちゃん、ちょっと話したい事があるの。昼休み、いいかな?」
 「勿論」
 「良かった」
 ゆきはそう言うと、長居をせずに去って行った。
 「最上さん、何か深刻そうじゃなかった?」
 渕田が後ろから声を掛けて来た。ゆきも一年の時に渕田と同じ
クラスだったから知っている。理子は渕田の問いかけに答えなかった。
親しくもない渕田にあれこれ話す必要はない。
 だが、渕田から見ても様子がおかしかったわけだから、何か
あったに違いない。一体、何があったのだろう。とても気になった。
矢張り、小泉との事か。
 昼休み、食事が終わった頃にゆきがやって来た。二人は連れ立って
非常口から外へ出た。いい陽気で風が心地良い。中庭に面した
場所にあるベンチに座った。
 「ごめんね。勉強の邪魔しちゃってるよね・・・」
 と、ゆきが言った。沈んだ様子だ。
 「ううん。そんな事より、どうしたの?何かあった?」
 「小泉君と、最近うまくいってなくて」
 矢張りその事か。
 「うまくいってないって、どういう事?」
 ゆきは力なく話しだした。
春休み前までは毎週会っていた。春休みに入って、勉強に集中したい
からと小泉に言われて、春休み中一度だけ映画を観に行っただけで
終わり、新学期が始まってからは歴研の部活の日に一緒に帰るだけで、
週末も全く会ってないとの事だった。ゴールデンウィーク中も中間を
控えているから会うのはよそうと言われたそうだ。
 ゆきは、最後には泣きだした。
 「ねぇ、理子ちゃんはどう思う?」
 「どう思うと言われても・・・」
 何と答えたら良いのかわからない。何故なら、自分も小泉と
同じような立場にあるからだ。受験がいよいよ迫ってきて、
気持ちにも余裕が無くなってきているのだろう。きっと集中したいに
違いない。だが、同じ立場ではない恋人にとっては、辛い事でもある。
 「ゆきちゃんは、どう思ってるの?どうしたいの?」
 「あたしは、何だか不安で・・・。小泉君が勉強に集中したい
気持ちはわかるんだけど、ずっと毎週会っていたのが急に会わなく
なって、極端って言うか、平気でいられるのが不思議で・・・。
それって、気持ちも薄れたからなんじゃないかって思えちゃって」
 ゆきは、これまでのように毎週会うのが無理なのはわかるから、
2,3週間か、せめて月1でもいいから二人きりで会いたいと言った。
そうでないと、不安でたまらないとも言った。
 理子は溜息を吐いた。会いたい気持ちで一杯なのは理子も同じだ。
だから、ゆきの気持ちは痛い程わかる。理子は増山を全面的に
信じている。だから不安になることは無い。だが、ずっと会えないで
いるのは寂しかった。
 しかし、会う頻度が高い程、勉強に集中できなくなる事も
わかっている。だから極力会わないようにしているのだ。その事が、
相手にも寂しい思いを強要している事もわかっている。だから、
矢張り互いの為にも妥協点は必要だ。相手を大切に思うのならば。
 「ゆきちゃんの、その気持ちを小泉君には言ったの?」
 理子は極力優しく、ゆきに問いかけた。
 「うん。一緒に帰った時に。でも小泉君は、『ごめん。わかって
欲しい』って言うだけで・・・」
 「そっか。なら、わかってあげるしか無いんじゃない?好きならば」
 「小泉君は、あたしのことが、あまり好きでなくなって
きちゃったんじゃないのかな?」
 「私には小泉君の本当の気持ちはわからないけど、勉強に
集中したい気持ちならわかるよ」
 「理子ちゃんも同じなの?勉強に集中する為に会わないでいるの?」
 「うん。私達は既に大分前から、たまにしか会ってないし」
 ゆきは目を剥いた。
 「それで平気なの?」
 「平気なわけないじゃない。相手から非難されたりもしたし。
でも、会うと平静ではいられないから。元の自分を取り戻すのに
時間がかかっちゃうの。そういう事を頻繁に繰り返していたら、
勉強できるわけないでしょ?」
 「それはわかるけど、でも、あたしは寂しい・・・」
 ゆきは俯いてそう言った。瞳には変わらずに涙が溜まっている。
 「今の寂しさに負けて受験を捨てるのか、それとも我慢して
乗り越えるのか」
 「理子ちゃんの言う事は凄くわかる。だけど、それにしても、
会わなさすぎじゃないのかな。なんだか、このままずっと会えなく
なっちゃうような気がして・・・」
 「会えない、会えないって言うけど、部活のある日は一緒に
帰ってるじゃない。私なんて、それすら無いのに」
 つい、口調がきつくなってしまった。自分の方がゆき達よりも
全然一緒に過ごせないでいると言うのに、この程度で悲観的に
なっている事に少々腹が立ってしまったのだ。ストレスが溜まって
いるのだろうか。これまでは、2,3カ月会えなくても大丈夫
だったのに。これで会ったら、なし崩しのようにならないか、
不安になってきた。自分を保ちきれるだろうか。
 「理子ちゃん、ごめん。理子ちゃんの気持ちも考えないで」
 ゆきが、しょんぼりと言った。その様子を見て理子は反省した。
 「ううん。私の方こそごめんね。ゆきちゃんの気持ちも凄く
わかるんだ。でも私自身も、会いたい気持ちと会わない方がいいと
思う気持ちの間で、しょっちゅう揺れてるから」
理子はそう言うと、ゆきの手を取った。
「たださ。辛い思いをしてるのは、ゆきちゃんだけじゃないと
思うよ。小泉君だって、我慢してるんじゃない?それに、
ゆきちゃんに対しても済まない気持ちを持ってると思う。だから、
ゆきちゃんはもう少し小泉君を信じてあげるべきだと思う。たまには
会いたいなって気持ちを伝えるのはいいと思うけど、しつこく
ならないように注意してさ」
ゆきは切なげな表情で理子を見た。
 「理子ちゃん、ありがとう。あたし、なるべく我慢する。
でも、やっぱり不安なの。理子ちゃんの言う事は凄くわかるし、
小泉君が大変なのもわかるの。ただ、何ていうか、気持ちの
変化をどうしても感じてしまうって言うか・・・」
 そう言って、ゆきは目を逸らせた。
 気持ちの変化か。それだけは、理子にはわからない。肉体的に
結ばれて、毎週のように体を重ねている関係だから、敏感に
感じるものがあるのかもしれない。しかも今は小泉ともクラスが
別であまり会わないから余計だ。
 「そういう事は、私にもわからないかな。私がゆきちゃんだったと
しても、やっぱりどうしたらいいのかわからなくて悩むと思う」
 理子は、枝本に相談してみてはどうかと提案した。小泉の事だから、
自分の事は何も話してはいないと思うが、同じ男として、少しは
小泉の気持ちがわかるのではないだろうか。
 「そうだね。そうしてみるね」
 ゆきは涙を拭った。
 難しい時期だ。しかも、これから益々状況は厳しくなっていくのだ。
来年の3月まで、持ちこたえられるのだろうか。

 翌日職員室へ行くと、石坂に「昨日は来なかったね」と言われた。
 「すみません。友達の事で色々あって・・・」
 理子は頭を下げた。
 「いや、謝る事は無いよ。君がここへ来なければならない義務は
無いんだから。ただ、一昨日の話しに懲りてしまったんじゃないかと、
ちょっと心配になってね」
 「いえ、そんな事はありません。そもそも私の方から色々
聞いたからなんですし」
 理子はそう言うと、斜め前の席へ目をやった。諸星の席だ。いなかった。
 「諸星先生は、今日は出張でいないよ」
 石坂の言葉に理子はちょっと驚いた。理子の様子をすぐに
把握している。この人の前では油断できないと思った。これでは、
理子が増山を気にしているのを感じるのも無理はないかもしれない。
 「諸星先生、いらっしゃらないんですか。ちょっと、つまんないかも?」
 と理子は笑って言った。
 「あの先生がいるとね、賑やかで仕事にならないんだよ。陽気で
楽しいんだけど、困る時もあってねぇ」
 「まぁそうなんでしょうね。お喋りですよね。勉強を教えて
欲しくて行っても、なんか半分以上はお喋りなんですよね。
凄く面白いし参考になる事も多いんだけど、肝心な事が・・・」
 「そうだね。この間は僕もお喋りが過ぎてしまったようで、
進まなかったよね。今日は頑張ろう」
 そう言ってくれて助かった。前回の話しの続きが始まったら
どうしようかと思っていた。聞きたい気持ちが無いというわけではなかった。
興味はあるのだ。だが、聞くのが怖い部分もあった。相手は教師と
言えども男だ。本人からして、そう言っている。諸星先生も言うように、
少しは用心した方が良いだろう。
 「今日は公式をどれだけ制覇したか、ちょっと試そう」
 石坂は次々と質問を始めたので、理子はそれにどんどん答えていった。
最初のうちは良かった。面白いくらいに出て来た。だが、進むにつれ
辛くなってきた。仕舞いには混乱しだした。
 「うーん・・・、なるほど・・・」
 石坂はそう言うと、机の上で頬杖をついて、もう一方の手の指を
机の上でトントンと叩いた。何か考えているようだ。
 「吉住さん、ゴールデンウィーク中は先に進まずに、復習に
徹しなさい。根を詰めないように少しリラックスした気分でやるといい」
 「復習、ですか」
 石坂の言葉を意外に思った。
「そう、復習。今暗誦した公式の、曖昧だった所はまだやらなくていいよ」
 「えっ、だって・・・」
 そう言われると凄く不安になる。
 「心配しなくていい。僕がゴールデンウィーク中に、夏休みまでの
数学の具体的な計画を立てておくから。君はそれまでは復習に徹して、
気持ちをリフレッシュしておいて欲しい。この休日は、少し楽しく
過ごしなさい」
 石坂の言葉に戸惑った。
 「楽しくって、そんな呑気なことで大丈夫なんですか?」
 「大丈夫だよ。そう焦らないことだ。遊び相手がいないなら、
僕がなってあげるよ」
 石坂はそう言うとウインクをした。思いもよらない言葉と
行動に理子は赤くなった。
 「君は面白いねぇ。赤くなって、可愛いなぁ」
 何故か嬉しそうな顔をしている。
 「せ、先生こそ、意外ですよ」
 「そうかい?まぁ、教師と生徒は、そう頻繁なコミュニケーションが
あるわけじゃないからね。教師の側からは興味のある生徒の事はよく
見てるけど、君達の方からは、教壇に立ってる姿くらいしか
見れないからねぇ。意外な面は多いかもしれない」
 それは確かにそうだ。自分も、増山と二人だけの接触が
無かったならば憧れの存在と言うだけで済んでいたかもしれない。
そして、今頃はゆきのように枝本との恋に悩んでいた可能性が高い。
 「君はもっと、僕の意外な面を見たいと思わないかい?」
 「えっ?」
 理子は石坂を見た。いつもと変わらぬ微笑みだったが、質問の意図を
図りかねた。ただ感じるのは危険という信号だ。だがここは職員室だ。
 「興味はあります。でもそれは野次馬的な感じでしょうか。私、
好奇心旺盛な方なので、色んな事に興味を持っちゃうんです」
 理子は努めて平静にそう言った。嘘では無い。
 「成る程。そういう事だったら、僕も似たようなものだ。興味の
赴くままに追及できたら、こんなに楽しい事はないと思うが、
その欲求を満たそうと思ったらリスクを背負う必要がある時もあるよね」
 「じゃぁ、先生の意外な面を知りたい場合も、やっぱりリスクは
あるんですか?」
 「無いとは言えない。だが、それをリスクと思うか否かは
人それぞれだろう」
 理子は、ふと、この人と何故こんな会話をしているのだろう、
と思った。最初の段階で、適当にはぐらかせば済んでいた事なのに、
つい先へと進んでしまった。何故か心地良い刺激を感じる。
お互いに敢えて核心には触れない会話をしているような気がする。

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