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小説・クロスステッチ第2部 <完>
18.罪 ~ 20.絆


クロスステッチ 第二部 18.罪 02

2010.11.21  *Edit 

 昼休みに愛理が、「ねぇ。クラス忘年会、やるんでしょ?」と
皆に問いかけた。
 愛理の投げかけた言葉に、多くが賛同の意思と取れる声を上げた。
その中で富樫が、
「いいけど、もう遅くね?」
 と言った。
 既に暦は12月に入っていた。
 11月に駒場祭があって、このクラスは模擬店を出した。
もんじゃ焼だ。
 約35人のクラスの中で参加したのは20人程。理子は体調を
理由に辞退したが、当日呼び込みの手伝いをした。
志水も一緒だった。終了後の打ち上げには参加していない。
 例の写真の件があるから、なるべく余計な行動をしない方が
安全と言う理由からだったが、冬学期に入って間もなく
入院したりして、いつの間にか自分だけが少し阻害されている
ような、そんな寂しさを最近感じるようになった。
 勿論それは、理子の気のせいだ。周囲は理子が思っている程、
気にしていない。だが、本来ならクラス委員である理子から
提案すべきだった事柄を愛理に提案されて、気の利かない
役員だと思った。しかも、富樫の遅くないか、と言う指摘には、
益々もっと早くに気付いて提案すべきだったと思うばかりだった。
「普通だったら、ちょっと遅いかもしれないけど、当てがあるんだ」
 愛理が華やかな笑顔を浮かべて自信ありげにそう言った。
「当てって?」
 美香が不思議そうな顔をして訊く。
「うん。昔やってたバイトの関係で、ライブハウスを貸切りで
使わせて貰えそうなの」
 へぇ~、と皆が感心したように顔を見合わせた。何となく
明るい顔をしている。
「貸切かぁ。それはいいよな。居酒屋とかだと他の客とかが煩いし、
人数多いと予約取るのも大変だしな」
 男子の1人が嬉しそうにそう言った。
 理子も同感だ。
「場所はどこなの?」
 と訊ねると、「勿論、渋谷よ」と愛理は笑った。
 こじんまりとした店なので、30人前後で借りるのに丁度
良いらしい。料金も愛理の顔で格安にしてくれると言う。
しかも日にちは22日で、天皇誕生日の前日だった。
冬休み開始前日でもある。
「ライブハウスって事はさ。ステージとか、使わせて貰えるのかな」
 趣味でバンドをやっている男子の1人が嬉々とした
表情で訊いてきた。
「多分OKよ~。アンプやマイクは使わせてくれるから、
楽器持ち込みなら大丈夫だと思うよ。照明とかもあるし、
ちょっとしたライブ、できるわね」
 愛理の言葉に、うぉ~っ!と雄叫びを上げたので、
場が一気に盛り上がった。
 昼休みの時間も終わりに迫って来た為、続きは放課後になった。
 カフェテリアにみんな集まり、当日の内容をあれやこれやと
話しだす。
「ここに居るって事は、理子も勿論参加するのよね?」
 愛理が理子にそう振って来た。
 理子は苦笑する。
 入学当初は付き合いが悪かったが、それも段々解消されてきていた。
だが、先月頃から再び付き合いが悪くなってきた理子だったから、
そうやって駄目押しをしてきたのだろう。
 理子が返事をする前に、富樫が「理子はダンナさんが厳しくて
出してくれないんじゃないの?」と言った。
「そうだよなぁ~。人妻だもんな。人妻だと、気軽に出歩かせて
貰えないのかもな」と、普段付き合いの少ない男子がそう発言した。
「えっ?でも最近の奥様方って、結構遊んでるんじゃないの?
テレビとかでも、よくやってねぇ?」
「馬鹿、それはもっとオバサン達の話しだろう?」
「ちょっとアンタ達、理子に対して失礼じゃないの?」
 愛理が怖い顔をしてそう言った。
「でもさぁ。実際、家庭の事情が厳しいのは事実なんじゃないの?」
「それとこれとは話しは別でしょ。……ねぇ?理子?
出れるんだよね?」
 愛理が遠慮がちな笑顔で理子に確認を求めて来た。
 理子はにっこりと微笑んで頷いた。
「ほら、御覧なさい。理子が出れないって言ったならともかく、
返事を聞く前から、ああだこうだって言わないの」
 へ~い!と、一同は返事をしたが、理子は何となく
居心地の悪さを感じた。
「理子、気にする事ないわよ?」
 と、隣に座っている美香が声をかけてきた。
「うん。ありがとう。大丈夫よ」
 そう。気にしても仕方が無い。実際、独身ほど自由気ままに
できる訳でもないのだから。それに、もし雅春と結婚して
いなかったとしても、親元から離れて1人暮らしでもしているので
なければ、厳しい制約下にいた筈だ。
 学費も生活費の全ても、自分でどうにか出来るのであれば自由に
出来るだろうが、そうでない限り、あの母の監視の許で、どれだけ
同級生達との親交を持てるか分かったものでは無い。
 高1で図書委員だった時、グループで何度か遠出の企画があったが、
理子は一度も参加出来なかった。事情を聞かれて話すと、
みんな一様に「過保護な親だね」と批判的に言うのだった。
 そんな風に言われても理子は困るだけだった。
 何度となく親に頼んだが、駄目だった。
 その時の事を思うと、人妻だから出難いと思われている方が
遥かにマシだと思う。実際の所、今行動に制約があるのは
人妻だからな訳ではないが。
「理子…、本当に大丈夫なのかい?」
 美香とは反対側の隣に座る志水が、心配そうな顔をして
小声で囁いた。
 志水が言っているのは、美香とは別の意味である。
「志水君が一緒なら大丈夫じゃない?参加してくれるよね?」
 志水は溜息を洩らした。
「君が出るなら、僕も出るしか無いじゃないか」
 いつもの謎の微笑に、少しだけ憮然とした表情が混じっている。
 不本意だ、と言いたいのだろう。
「あの人はどうなの?」
 その問いかけに笑う。
「もうすぐ論文も終わるから、そしたら犯人究明に全力を尽くす
みたいよ?だから、忘年会の時には決着ついてるんじゃないのかな」
「犯人究明?一体、どうやって?」
 驚愕の表情を浮かべている。
「それは、私にも分からないの。先生も今は忙しくて考え
られないけど、終わったら何としてでも捕まえるって言ってた。
だから、それまでは志水君に迷惑かけると思うけど…」
 理子の言葉に志水はにっこりと微笑んだ。
「僕は全然構わないよ。迷惑だなんて思って無いし。むしろ、
誰に遠慮する事無く、君の傍にずっといれて嬉しいくらいだし。
このまま犯人が捕まらない方が、いつまでも君の傍にいれるんじゃ
ないか、なんて思うくらいだしね」
 本当に嬉しそうな顔をしている志水を見て、理子は複雑
な思いに駆られた。
「それにさ。あの人が不本意ながらも僕に頼らざるを得ないのも、
何だか嬉しいじゃない」
 案外、意地悪な人なんだな、と理子は思った。
 理子自身は、雅春の胸の内を思うと申し訳無さで一杯になる。
 この件が片付いたら、やっぱり志水とは少し距離を置こうと
思うのだった。
 理子は軽く溜息をつきながら、周囲を見渡した。
 あれっ?
 林君がいないけど、どうしたんだろう?
 もう1人の委員である林宏史の姿が見えない。
昼休みには一緒だった筈なのに。
「ねぇ、林君はどうしたのかしら?」
 理子は志水に問いかけた。
「ああ、確か、先生に呼ばれてた。後から来るんじゃないのかな」
 そう二人で話していたら、いきなり
「相変わらず、ベッタリだよなぁ~、志水は理子に」
 と、誰かが言った。
 その言葉に、「よっ!愛人!」と掛け声がかかり、
一部の間でどっと湧いた。
 愛人と言う噂は、夏学期の最初の頃に頻繁だったが、
それでも次第に下火になった。それでも一部では噂されていたし、
ここ最近の二人の様子を見て、噂が再燃しつつあるようだった。
 理子は、さっきの彼らの言動と言い、どうしてこんな風に
絡んでくるんだろう?と少し不愉快になってきた。
 この際だから、一喝入れてやろうかな、と思っていたら、
志水が静かに立ち上がった。
「君たち……。そんなに僕に喧嘩を売りたいのかい?」
 静かだが、どこかドスの効いたような声に驚いて見上げると、
志水はとても冷たくて恐ろしい眼をして彼らを見ていた。
 こんな志水を見るのは初めてだった。
 口許は笑っているが、その眼は言い知れぬ恐ろしさを感じさせた。
彼らは志水の視線に射竦められて、蛇に睨まれた蛙のように
竦み上がっていた。
 場は水を打ったように、しーん、となり、誰もが、志水の姿に
驚愕し、何も言葉を発せなかった。
 暫くその状態が続いた後、志水はいつもの優しい謎の微笑を浮かべて、
「喧嘩をしたいなら、いつでも相手になるけど?」
 と言った。
 恐ろしい視線から解放されて安堵した表情になった彼らは、
「悪い。ほんの冗談だよ。喧嘩なんてする気ないからさ。
ホント、悪かった」
 と、冷や汗を流しながら言うのだった。
「そう。ならいいけどね」
 志水はそう言って座った。
 周囲もホッとし、再び忘年会の話題に戻る。
 理子もホッとした。ホッとしたついでにトイレに行きたくなった。
「ごめん、私ちょっとトイレに行って来るね」
 理子はそう言って立ち上がった。
「大丈夫?」
 心配げに志水が理子を見る。
「大丈夫よ。すぐそこなんだし。トイレにまで着いてくんじゃ、
余計に変に思われるわよ?」
 理子はそう言って笑ってトイレに向かった。
 それにしても、さっきの志水の様子には驚くばかりだ。
 彼には何か深い事情があって、複雑な過去を持っている
らしい事は知っている。
 高校生のうちに、色んな事を体験したような話しも聞いている。
 だからなのか。
 普段の柔和な彼からは全く想像もつかない、鋭い切れ味を持つ
刃物のような恐ろしさを感じた。普段が柔和なだけに、
尚更はっきりしたコントラストを感じさせる。
 トイレで用を済まし、出て来たところで人とぶつかった。
「あっ、すみません」
 慌てて頭を下げると、
「いえ、こちらこそ。大丈夫ですか?」
 と、相手は心配そうに訊ねて来た。
 かなりな勢いでぶつかってきたので、理子は少し後ろへ
跳ね飛ばされて壁に軽くぶつかったのだった。
「大丈夫です。こちらこそごめんなさい。前方不注意で……」
「何か考え事でもしてたの?」
 見ると、優しげな顔をした男子だった。
「俺、3組のヤマモトユウスケって言うんだ。君は8組の
増山理子さんでしょ?」
 3組の人間との交流は殆ど無かったので、
目の前にいる男子は知らなかった。
「私の事、知ってるの?」
 理子の問いかけに、ヤマモトユウスケは爽やかな
笑顔を浮かべた。
「知ってるよ。だって、有名じゃない。ここのOBで
尚且つ担任の先生だった人と結婚したって事で」
 ヤマモトユウスケの爽やかな笑顔の中の瞳に、
どこか得体の知れない不愉快な感情の色が浮かんだのを感じて、
理子の中に警戒心が生まれた。
 その瞬間、ヤマモトユウスケの拳が理子のお腹を直撃して、
理子は気を失ったのだった。



           これから物語が大きく展開します。
              一体、理子の身に何が…………?


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