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小説・クロスステッチ第2部 <完>
14.母と娘 ~ 17.衝 撃


クロスステッチ 第二部 17.衝 撃 01

2010.11.13  *Edit 

 大学から帰って、郵便受けを見たら大きめの封筒が入っていた。
宛名は理子宛てになっている。誰からだろうと裏を返すと、
差出人の名前が無い。不審に思って消印を見ると、青葉台局に
なっている。近所だ。
 封筒の上から中の様子を手で探ってみると、写真のような
ものが複数枚入っているように感じた。便箋が入っているような
感じはしない。
 ダイレクトメールだろうか?
 だが、結婚してから半年余りしか経っていない。
そう言った類の物が来るには、まだ少し早いような気がした。
 部屋へ入ってから、封を切った。封は糊づけだった。
 中を覗くと、矢張り写真のようだ。それ以外の物は見当たらない。
なんの言葉書きも無いまま、写真だけ送って来る事に疑問を感じた。
もしかして、結婚式の時の写真を誰かが送って来たのだろうか。
そんな風に思って中身を取り出して、理子は愕然とした。
 出て来た写真は、ハガキくらいの大きさで、写っているのは、
雅春と彰子だった。
 バーカウンターに2人で並んで座って、会話をしている。
中には笑っている写真もあった。数を数えてみると、10枚だった。
 何で、こんな写真を理子宛てに送ってくるのだろう。
 一体、誰が何の目的で……?
 もしかして、雅春が妻以外の女と2人で楽しそうに
過ごしている事を、理子に教えてやろうとでも思っての事なのか。
 こういう写真を送ってくると言う事は、矢張りどう考えても、
理子に対する嫌がらせだろう。そうとしか考えられない。
 それに、これは隠し撮りだ。と言う事は、この写真を
撮った人間は、雅春を尾行していた事になる。
 理子はゾクリとした。
 なんだか…、怖い……。
 誰かが私達を見張って、何かをしようとしているのか。
 理子はふと、志水の言葉を思い出した。
 渋谷でみんなと別れて、志水と2人で田園都市線に
乗り込んだ時に、「最近、妙な気配を感じるんだけど、
理子は感じない?」と言い出した。
「妙な気配って?」
 理子は全くそんな事は感じていなかったから、
志水の言う事がよく分からなかった。
「何ていうか、誰かに見られてるような、そんな感じがするんだ」
 それは、あなたが素敵だからじゃないの?と内心思ったが、
言わなかった。考えてみれば、そういう視線なら本人は既に
慣れっこになってる筈だからだ。
 志水の人気は、以前よりも高まっている。一時期、
理子と噂になったものの、最近はその噂もすっかり無くなり、
多くの女性が彼に熱い視線を送っている。
 志水は雅春と同じように女性に興味が無かったが、
雅春のようにハッキリと冷ややかな顔になったりはしない。
いつでも、謎の微笑を浮かべている。その、謎の微笑を
浮かべたままで、口から出て来る言葉は冷たい。
 そのギャップが溜まらないと、ウケるようになった。
 辛辣な言葉を浴びせられても、そこがいいと言って
うっとりしている。
 女心って、不思議…と、同じ女でありながら、理子はそう思った。
 そんな訳だから、志水は常に誰かしらの熱い視線を受けている。
 だから、志水が言うのは、きっとそれとは違うのだろう。
この人は勘の鋭い人だ。
「きっと、気のせいよ」
 と、理子はその時に言ったのだが、今、目の前に
送られてきた物を見ると、志水の言葉が今更ながらに気にかかる。
 雅春は、夜遅くに帰って来た。
 学校での仕事が忙しく、ここの所、ずっと帰宅時間は遅めだった。
 出迎えると、いつもと少しだけ様子が違う事に気が付いた。
ほんの僅かだから、普通なら気付かぬ程度だろう。
だが、理子には感じる。他人の様子には普段無頓着気味な理子だが、
雅春の事に関してだけは敏感だった。
 特に、学校での噂のトラブルが有ってからは、
一層、気を付けている。
 雅春はいつも通りに、理子の顔を見て笑顔になると、
カバンを置いて理子を抱きしめ、そっと唇を重ねた。
 唇を離し、僅かに見つめ合う。理子は雅春の瞳の奥に、
矢張りいつもとは違う色を感じた。
 何か、ある…。
 だが、取り敢えず、何も言わずにいた。
 食事が済み、お茶を淹れた後、理子は仕舞っておいた封筒を
出して、雅春の前に置いた。 「今日、こんなものが届いたんです」
 理子の言葉に、雅春はとても驚いた。中を見なくても、
それがどう言ったものなのか察している様子が感じられる。
 雅春は黙って封筒を手に取ると、中の写真を見て、
呆れたように溜息を洩らした。そして、改めて封筒を手に取り、
裏を返したり、表書きを注意深く見た。
 手にしていた物をテーブルの上に置くと、
「俺にも似たような物が来たんだ」と言った。
「似たような物?」
「ちょっと、待っててくれ」
 そう言ってリビングから出て、間もなく戻って来た雅春の手には、
確かに同じような封筒があった。
 雅春がそれを理子に差し出したので、受け取った。
 表書きは、朝霧高校 増山雅春先生、となっていた。
「わざわざ、学校の方に?」
「そうなんだ」
 理子には自宅に、雅春には学校に送って来るとは、
一体どういう事なのか。
 宛名書きの筆跡を見る限り、同じ人間のようだ。
 そして、手触りも同じだ。中身は写真だと窺える。
 恐る恐る中を取り出して見ると、思った通り、写真だった。
理子に送って来た物と同じ、ハガキ大サイズにプリントしてある。
 写っているのは、理子だった。
 10枚程ある写真の全てが、男子と一緒にいる理子だ。
 みんなクラスメイト達だが、後半は志水との
ツーショットばかりだった。
 クラスメイト達と一緒の写真の中には、愛理や美香も
一緒にいる筈なのに、トリミングされて写っていない。
わざと、彼女たちを削除したのだろう。
「どう思う?」
 雅春の問いかけに、理子は顔を上げた。
「わかりません。何故、こんな事をするのか。
嫌がらせですよね、これは」
 理子は、雅春に送られた写真を見て胸が痛んだ。
 自分で自分の姿を見る事はできない。だから、普段の自分が
学校でどんな顔をしているのか、わかる筈も無い。
 こうやって、みんなと一緒にいる時の自分の顔は、
楽しそうだ。それは、ちっともおかしな事では無い、
当たり前の日常の事なのだが、如何せん、理子以外はみんな男だ。
こうして、異性に囲まれて楽しそうに笑っている理子の写真を見て、
雅春はどう感じたのだろう。
 特に後半は、志水とのツーショットばかり。
 頭では分かっていても、こんな風に見せつけられて、
心安らかではいられないのではないか。
「そうだ。嫌がらせだろう。だが、その目的は何なのか…」
 雅春はそう言うと、考え込んだ。
 理子は、雅春宛の封筒を手に取って、表書きを見た。
消印は学校近くの郵便局になっている。と言う事は、
わざわざ、そこまで出向いたと言う事になる。
 青葉台と朝霧高校。その両方に足を運んで、わざわざ近くの
郵便局で出すとは。しかも、同じ日に届いていると言う事は、
同じ日に出したと言う事だ。消印の日付は、どちらも確かに
昨日の午前中になっていた。近くの郵便局だから、
どちらも必ず翌日に配達される。
 筆跡を見た。
 見覚えはない。
 字を見る限り、性別は分からない。細めのサインペンで、
綺麗な文字だ。
「先生…。実はこの間、志水君に気になる事を言われたんです」
 理子は志水に指摘された事を雅春に話した。
「そうか。じゃぁ、きっと、この事だったんだな。こんな写真を
撮る為に、君を尾行していたんだ。見られていたのは、
志水君じゃなくて君……」
 そう言う雅春の顔が、段々と不安な色合いに変わって行った。
「でも、先生だって尾行されていたんですよ?」
「それはそうだが、俺は別にどうって事は無い。男だし。
だが、君の事が心配だ。一体、誰が何の目的でこんな事を
しているのかはわからないが、だからこそ余計に不安だし、
君の事が心配になってくる」
 雅春にそう言われて、理子も段々と不安になってきた。
「単なる俺たちへの嫌がらせなら、こんな事くらいはどうって
事は無い。君の笑顔は俺には痛いが、仕方の無い事でもある。
だが、他に何か良く無い事を企んで無いとは言いきれないからな」
 大体、理子が写っているのは大学の教室内だ。
相手はそこまで入りこんで盗撮したと言う事になる。
 それを考えると、理子に何らかの危害が与えられるのじゃ
ないかと心配になってくる。
「理子。提案なんだが…」
「何ですか?」
「俺にとっては不本意だが、志水君に事情を話して、
毎日家まで送って貰うんだ」
「えっ?毎日?」
「そうだ」
 一体相手が誰なのかは分からないが、よくよく考えれば、
2人の結婚を良く思っていない人間は少なくない。
こうして2人に、それぞれ異性と一緒にいる写真を送りつけて
くると言う事は、2人を仲違いさせたい意図があるのでは
ないかと思われる。
 嫌がらせだけでは終わらず、もし、直接的な攻撃に
出て来るとしたら、矢張りターゲットにされるのは理子だ。
渕田との時のような事があっては大変だ。その為にも
用心を怠るべきではない。
「先生、幾らなんでも、ちょっと大袈裟ではないですか?」
 そう言う理子に、雅春は厳しい目を向けた。
「君はどうして、いつもそう呑気なんだ」
 厳しい顔で言われて、理子は怯んだ。
「だって、駅からは近いんだし、わざわざ送って貰わなくても…」
 駅からは徒歩5分少々だ。人通りもそれなりにあるし、
そこまで警戒する必要があるのかと、理子は思った。
 理子の言葉に、雅春は溜息をつく。
 確かに理子の言う事にも一理ある。普段だったら、
そこまでしないだろう。だが、今、現実に危険が迫って来そうな
気配なのに、僅か5分と侮る事などできない。
「これからどんどん、日が暮れるのが早くなる。夕暮れ時は
魔の時だって昔から言われている。油断できない時間帯だ。
僅か5分でも、細心の注意を払うべきだと俺は思う。それに、
俺にとっては、何にも代えがたい君だからこそ、
ここまで心配するんだよ」
 雅春はそう言うと理子を抱き寄せた。
 広くて暖かい胸に抱きしめられて、理子の鼓動が速くなる。
 何度となく、愛し合い、互いの体の隅々まで
知っているにも関わらず、雅春とのふれあいは、
理子にときめきをもたらすのだった。
「君が心配なんだ。明日の朝も、学校へ行く際には
十分注意してくれ」
 その言葉は、とても切なげに雅春の口からこぼれた。
理子をとても心配しているのが伝わって来る。
「わかりました。十分注意します」
 雅春は理子の頭に口づけると、愛おしげに髪を撫でた。


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~ Comment ~

Re: こんにちわ。>misia2009様 

misia2009さん♪

イイ男との結婚って言うのも、大変なんですねぇ。
昨日も玉の輿の話題で友人と話してたんですが、
玉の輿も相手の家の中で逆に苦労するって。。。。
お友達のお友達が玉の輿だったそうなんですが、
家業の手伝いで、姑、大姑の中で手伝わされて
大変な思いをされてるとか。
大金持ちでも、これは嫌だよねって話になりましたww。

童話のように、王子様と結婚してメデタシメデタシって訳にはいかないようです。
大体、結婚をゴールインとする風潮が未だにある事が、
バカバカしくて仕方ありません。

これから始まるんだよ。長くて険しい道のりが……www。

> それにしても仕事しましょうや、もう一人の日本史の先生。(言っちゃだめ?)

いえいえ。誰もが推測される事でしょう。

さて。真実はいずこに……?

こんにちわ。 

こちらへもお邪魔しております。
美男と結婚するのは踏んだり蹴ったり山あり谷ありですね。素敵な芸能人(みたいな人)とラブラブで結婚して幸せになりました、おしまい、じゃないところが今更ながらスゴイです。
それにしても仕事しましょうや、もう一人の日本史の先生。(言っちゃだめ?)
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