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小説・クロスステッチ第2部 <完>
14.母と娘 ~ 17.衝 撃


クロスステッチ 第二部 16.岐 路 02

2010.11.09  *Edit 

「彼女、可愛かったな。さっき、料理の事ではにかんだだろ。
僅かに頬を染めて、何かそそられたよ。だから、まぁ、お前の
気持ちも何となくだがわかる。ずっとそばに置いて、愛でて
いたいんだろう、彼女を」
 増山は軽く唇の両端を上げた。
「ああ。そうなんだ。彼女が見せる色んな表情や仕草には、
そそられる。だから、余計に心配になるんだよ」
「分かるけど、そんなに心配し過ぎてもしょうがないと思うけどな」
「頭では分かってるのさ。だが、胸が痛むんだ。彼女を欲して。
こんな事をお前に言うのも何だけど、俺は彼女と入籍した日から、
毎日彼女を抱いていた。それも、1度や2度じゃなく、3度も4度も」
 古川は目を剥く。
「お、お前、淡泊じゃなかったか?」
「淡泊だった。だけど、彼女に対してだけは、粘着みたいだ」
「粘着って・・・」
「しつこいんだよ。相手は未成熟だって言うのにな。大学が
始まってから、彼女は日々の生活と、俺との深夜にまで及ぶ
セックスとで疲れ果ててしまって、まぁ、ひと悶着あったんだ」
 古川は溜息が出た。極端な性格なのは知ってはいたが、
ここまでだったとは。愛の無いセックスは淡泊過ぎる程淡泊で、
愛する相手には酷い程に執拗なのか。
 呆れる。呆れるしかない。
「それ以降は、毎日は止めようと言う事になった。なんせ俺は
しつこいから、時間がかかるのさ。それに、学校での仕事も
増えて来て帰宅時間も遅くなってきたし。おまけに、休日も忙しい。
新婚旅行も、結局、行かれなかったし。週末、二人で何処かへ
出かける事もままならないんだよ。結婚したって言うのに」
 全く、可哀想なヤツだ。
「わかった。お前に同情するよ」
 古川の言葉に、雅春は笑った。
「ありがとう。お前にそう言って貰えると、少しは気が軽くなる」
 雅春はそう言って、酌をした。
「大学へ戻っても、俺の居場所、あるのかな・・・」
 雅春はボソリとそう言った。
「大丈夫だ。お前ならある。理子ちゃんからも聞いてるだろう?
大学に戻って来ないかって教授どもが言ってるって」
 考えてみれば、学問に打ち込む所と彼女に入れ込んでいる所は
よく似ている。好きな事、好きな女には、とことん夢中になる
性格なのだろう。
「俺が戻る事で、お前の居場所が無くなる事は無いだろうか」
「それは大丈夫だから、心配しなくていいさ。お前は自分の
事だけ考えろよ。やっぱりお前には学者の方が合ってると思う。
ストレス溜め続けて消耗していくお前を見たくない。理子ちゃん
だって同じだろう。大学へ戻れば、二人の時間は今より遥かに
多くなるし、一石二鳥じゃないか。俺も大歓迎だ。またお前と
一緒に勉強し、将来も一緒に働けるなんて嬉しいよ」
 古川の笑顔を見て、雅春の心は軽くなった。だがそれでもまだ、
決心が付きかねない。
「俺さ。今の仕事が向いてないのはわかってるんだ。だけど、
ここで投げ出してもいいものだろうか、との思いもあるんだよ。
子供たちを志望校へ合格させてやる為に、俺は校長から期待されて
あの学校に採用された。校長を尊敬してる。理子との結婚の時も、
そして学校での騒動の時にも、味方をし、守ってくれた。今ここで
辞める事は、その恩に背く事になるんじゃないかって思いがあるんだ。
理子も同じように思ってる。校長も、じきに異動になるとは思うが、
それがいつになるのかは、はっきりとはわからない。せめて、
校長が異動してからでもいいんじゃないかって気持ちもあって、
踏ん切りがつかないでいる」
 全く、義理がたい奴だ。
 愛の無い相手でも、二股を掛けなかったのも、その律儀さ故だった。
そういう律儀な所は、雅春の魅力でもあるし古川も好きだった。だが、
自分を追い込んでまで果たさなければならないのだろうか。
「俺が思うに、転向するならさっさとした方がいい。遅くなれば
なる程、不利だ。お前の気持ちもわからんでは無いが、
俺は大学へ戻る方に賛成だ」
 古川は猪口の酒を一気に煽ると、そう言った。
「やっぱり、そうだよな」
 雅春は考え深げな様子でそう言うと、同じように酒を飲んだ。
「まぁ、今すぐ結論を出さなくてもいいさ。申し込みの締め切りは
まだ先なんだし、その間に色々と考えるがいい。校長にも一度
相談してみたらどうだ?」
「そうだな。急に話すのもなんだしな」
 古川の言う通り、校長には早めに話しておいた方が良いだろう。
世話になったのだから、ちゃんと筋は通すべきだ。
「だけど、あれだな。悩み打ちひしがれているお前って、
妙に色っぽいな」
「な、なんだよ」
 雅春は古川の言葉に驚いた。
「よく見ればお前って綺麗な顔立ちしてるもんな。そんな風に
打ちひしがれた姿を見るのは初めてだが、だからこそ新鮮だし、
なんだかそそられてくるよ」
 古川は美味しそうな御馳走を目の前にして涎(よだれ)を
垂らす寸前、といったようなニヤケ顔で雅春を見ていた。
元々、気持ちの良い顔では無いだけに、雅春は気持ち悪さで
悪寒が走った。
「やめてくれよ、変な事を言うのは」
 古川を睨みつける。だが古川には通じないようだ。
「なぁ。ちょっとだけでいいからさ。キスさせてくれないかなぁ」
 雅春はすぐさま古川から離れた。
 長い付き合いの中で、何度も一緒に寝泊まりをしている。
仲間達と一緒の時もあれば、二人だけの時もあった。当然、
風呂にも共に入った仲だ。だが、こんな事は未だかつて一度も
無い。一体、今更、どうしたと言うのだろう。雅春には
理解できないし、戸惑うばかりだ。
「お、お前、酔ったのか?それとも欲求不満か?」
 古川は雅春と同じく酒豪である。この程度で酔ったとは思えない。
欲求不満だったとしても、男に言い寄るというのも理解し難い。
「どっちでもない。ただ、初めて見るお前の打ちひしがれた姿がさ。
色っぽくて、胸にグッと来るんだよ。こうやって改めて見ると、
お前の小さくて薄い唇がさ。俺を誘うんだよ。・・・だからさぁ。
なっ?いいだろう?キスくらい。それ以上する気はないからさ」
 古川はそう言うと、雅春の方へにじり寄って来た。雅春は慌てて
立ち上がり、更に距離を置いた。
「いい加減にしろよ。俺にはそんな趣味は無い。幾ら親友の
頼みとは言え、出来る事と出来ない事がある。それに、
俺の唇は理子のものだ」
 雅春の言葉に、古川は大きな溜息を吐いた。
「ちぇっ。しょうがないなぁ。・・・お前が悪いんだぞ。色気に
満ちた姿をするから。お前が女だったら、何と言われようと
襲ってるし、俺が女だったら、どんな手を使っても抱かれるぞ」
 そう言って、下から睨むようにして増山を見るのだった。
「お前なぁ・・・」
 雅春はガックリと肩を落とした。
「古川君。君さぁ。どんなに色っぽいとは言っても、俺は
男なんだぜ?男相手にキスしたいとか、よく思うよな。
また、よく迫るよな」
 雅春の言葉に、古川はニヤリと笑った。
「男だって事は十分承知してるさ。だからセックスしたいとは
思わない。でも、キスくらいは、してみてもいいんじゃないか?
男同士のキス、興味を覚えるぜ」
 古川の言葉に、背筋がゾォっとしてくるのだった。
「なら、別のヤツとやってくれ。俺はごめんだ」
「馬鹿だなぁ。お前だからしたいんじゃないか。他に誰がいるよ?
魅力的なヤツが」
 雅春は自分の机の椅子まで批難した。
「俺さ。セックスだけじゃなくて、キスだって、理子以外には
出来なくなった。さっきも話しただろう?他校の女性教師の事を」
 古川はフッと笑うと、自分の盃に手酌しで酒を注ぎ、一気にあおった。
「一本気だもんな、お前は。それならそれで、他の女で寂しさを
埋めようなんてしなきゃ良かったんだ」
 そう言われると、耳が痛い。
 自分からは誘った事は無かった。ただ彼女の誘いを受け入れた
だけだった。楽だったからだ。深く考えなかった。
「まぁ、それはそれとして。俺にキスされたく無かったら、
打ちひしがれた姿を見せるな。色っぽ過ぎてな。キスどころか、
犯したくなってくるぞ」
 過激な発言だ。だがもしかして、慰めてくれてるのだろうか。
「お前、彰子とはどうなってるんだ?幾らあいつが捌けてると
言ったって、俺とのキスなんて快く思わないだろうに」
 雅春の言葉に、古川は寂しそうな顔をした。その表情を見て
怪訝に思う。
「おい。どうしたんだよ?」
 思わず机から身を乗り出した。そんな雅春を古川はチラッと
見ると、溜息を洩らした。
「考えてみると、やっぱり俺、欲求不満なのかなぁ。・・・実は、
彰子ちゃんとは、まだ清い仲なんだよ」
「ええーっ?」
 雅春は驚いた。付き合いだしてから、もう1年少々経ってる筈だ。
中高生じゃあるまいし、信じられない。自分との時には、
1カ月で関係を結んだのに。
「やっぱり俺じゃぁ、彰子ちゃんにとっては役不足なのかなぁ」
「役不足ってなんだよ。それなら付き合ないだろうに」
 とは言ったものの、雅春にはよくわからない。元々女の
気持ちなんて考えた事が無かったから尚更だ。
「なぁ、増山。それとなく彼女の気持ちを探ってくれないかな」
「えっ?」
 さっきまでとは打って変わって、弱気な様子に同情の
念が湧いてきた。
「例の女教師の事を相談すればいい。で、そのついでに、
俺との事もさ、それとなく」
 雅春は溜息を吐いた。美鈴の事を相談すると言うことは、
この夏の経緯の全ても話さなければならないと言う事だ。
その事には抵抗を感じる。自分の事を他人に話すのは嫌いだ。
ましてや女に話すなど、尚更である。
「あのさ。俺、あまり自分の事を語りたくないんだ。それに
ついては、お前もよくわかってるだろう?お前の事で訊き
たい事がある、って正直に言って、どこが悪いんだ?」
 雅春の言葉に、古川が赤くなった。
「最初にそう言ったら、警戒しないか?俺、怖いんだよ。
俺が気にしてるって事を彼女が知ったら、彼女がどうするか。
自信が無いんだ」
 いつも強気の古川だけに、この有り様には驚くばかりだ。
こんな古川を見るのは初めてだ。
「じゃぁさ。お前に頼まれた事は伏せるよ。お前に迫られた
事を話す。それで、いつもとは違うお前の事が心配に
なったって事で、どうだ?」
「ええっ?それは止めてくれよ。軽蔑されたらどうするよ」
「やったのはお前だろう。それに、それくらいじゃぁ、
軽蔑しないよ、彼女は」
 疑わしそうな目で古川は「何故わかる」と言った。
「俺とあいつの仲だから。って言ったら、お前妬くか?」
雅春は笑った。その笑顔を見て、古川は悔しそうな顔をした。
「ああ、妬くよ。俺はまだ彼女を知らないんだからな。全く、
お前も根性悪いよな」
 結局、雅春の案に古川は承知し、二人の熱い時間は
これをもって終了したのだった。


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