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小説・クロスステッチ第2部 <完>
10.混 沌 ~ 13.愛 欲


クロスステッチ 第二部 12.回 顧 08

2010.10.22  *Edit 

「ほんとに、何やってるんだお前達は」
「枝本がいけないんですよ。勝手に理子の手を取って繋ぐから」
 茂木が訴えた。
「いいじゃないか。理子は拒まなかったんだから」
 と、枝本が言い返す。
「お前が強引だったからだろう?」
「だからって、もう一方の手を繋ぐヤツがいるかよ。両手を別の
男に繋がれたら、嫌に思うに決まってるじゃないか」
 二人は互いの言い分を主張して睨みあった。
 そんな二人を見て、雅春の心の中から嫉妬の感情が生まれて来た。
生徒相手に馬鹿馬鹿しいと思う反面、彼女と手を繋いだと言う二人を
憎たらしく思う。
「お前ら、いい加減にしろ」
 雅春は低く抑えた声でそう言った。
「まず枝本。今は修学旅行中だぞ。デート中じゃないんだ。断りも
無く勝手に手なんて繋ぐんじゃない。恋人同士ってわけじゃ
ないんだろ?」
 雅春の言葉に、枝本は俯いた。
「それから茂木。枝本に対抗心を燃やして、馬鹿みたいな事をするな。
もし吉住が困って手を繋がれたままだったら、3人で仲良しこよし
よろしく、手を繋いで戻って来たのか?どう見たって見っとも無い
だろう。吉住にしてみたら、困る以外の何ものでもない。
そんな相手が困るような事をして満足に思うなら、お前、おかしいぞ」
 全くもって、この二人はどうかしている。幾ら理子が好き
だからって、行き過ぎだ。例え理子に好きな相手がいなくても、
困るのは当然の事だろう。
 その後雅春は、二人をこってりと絞った。必要以上に絞ったと
言っても過言ではない。普段から理子と仲良くしている二人
だからこそ、必要以上に厳しく当たったのだった。
 その晩、雅春は神経が昂ってなかなか寝付けなかった。寝ようと
思うのだが、理子の姿が脳裏から離れない。逃げて来た理子が
雅春の後に隠れる。それがとても嬉しかった。だが、その直後、
他に好きな人がいるの、との言葉が浮かんできて悲しい思いに
襲われる。
 結局、旅行中は悶々とした時間を過ごした。業務をこなすだけで
精一杯だった。何度か修学旅行を経験しているベテランの先生が、
今年の生徒達は大人しいと言っていた。確かに、自分が高校生の
時にも何かしらのトラブルが有ったものだが、今回はそういう事が
皆無と言っても良かった。
 本当に大人しくて真面目なのか、それとも教師達に全く
気付かれる事無く上手く立ちまわっているのか、それはわからな
かったが、教師の方では楽な旅行だと言えた。ただ雅春は、気が
抜けない。気を抜くと、女生徒達に自分の仕事を邪魔され兼ねない。
なるべく気軽に寄って来られないように、自分の居場所に常に
気を付けていた。
 だから気疲れの連続だった。
 京都に着いた時、ホッとした。来馴れている京都だ。今回宿泊する
京都国際ホテルも何度か利用した事がある。ここの庭園は見事だった。
そして、穴場でもある。生徒達がここへやってくる事もあるまい。
そう思って、雅春は庭へ出た。
 庭を散策し、池の前まで来た。平安時代、堀川天皇の里内裏が
あった場所でもあるせいか、見事な庭園だ。心が和んだ。辺りは
薄暗く、庭園灯の周囲だけが柔らかい光で照らしだされていた。
 雅春が池の前へ立ったからだろう。鯉が近寄ってきて水面から
口を出している。生憎、餌は持っていない。水面に理子の明るい
笑顔が浮かんだ。ここまで来ても、浮かんでくるのは理子の顔だ。
どうかしていると思いながらも、否定しきれない想いが自分の中に
あるのを感じた。
 一体、自分はどうしてしまったのだろう。思い起こせば、
赴任してから間もなくだ。最初は単に、歴史の勉強に熱心で優秀で
あると言う事に興味を覚えただけなのに。直接話してみて、非常に
面白い生徒である事に興味への拍車がかかった。とは言っても、
相手は生徒であって、女じゃなかった筈だ。
 こんな想いにかられた事は未だかつて一度も無い。女と話して、
これほど相手に興味を覚え、もっと話したい、もっと知りたいと
思った事など無かった。もっと自由に話せていたらどうだったの
だろう?これほど気になる存在になっただろうか。話したいのに
話せない。そんなジレンマから、意識し出すようになったのでは
ないのか。この想いはだから錯覚なんじゃないか。
 そんな事を考えていたら、人の気配を感じた。そちらへ顔を
向けると、理子がこちらへやって来る。まだ雅春に気付いていない。
雅春の胸は高鳴った。いい機会だ。話してみようと思った直後、
理子から少し離れた後に枝本の姿を認めた。
 雅春は慌てて、池の向こう側にある茂みに身を隠した。
 やがて理子がやってきて、池の前で立ち止まった。ぼんやり
したような顔で池を見ている。何か思う事でもあるのだろうか。
 間もなく枝本がやってきて、理子に声を掛けた。
 雅春は、二人の会話を聞いてしまった。改めて理子に告白
している枝本。相手に好きな人間がいると知っても、告げずには
いられなかった想い。
 理子が好きな相手は社会人だと言う。しかも彼女がいるのに、
好きだと言っているのを聞いて、雅春の心は締め付けられた。
周囲に該当者がいないのも当然だった。理子の好きな相手は、
誰も知らない大人だったのだから。
 一体、どんな男なんだろう。高校生の彼女が、どうして社会人の
男なんかを好きになったのか。そんな思いが頭の中を駆け巡る。
 やがて、枝本は去って行った。それを見た雅春は、思い切って
理子を呼んでみた。とにかく二人で話しがしたい。
 突然現れた雅春に、理子はひどく驚いていた。
「こっちへ来ないか」
 この離れた状況では、いつ誰に見られるかわからないから、
気が気では無い。
 だが、雅春の呼びかけに理子は応えずにいた。
 仕方なく、少し強い口調で呼んだが、彼女は尚も近づいて来ない。
「来い!」
 三度目にそう命じたら、やっと傍へやって来た。
「まったく、お前には苦労する」
 雅春は苦笑した。
 理子は居たたまれないような表情をしていた。この状況がよく
わからないのだろう。突然現れた雅春に何故呼びつけられたのか。
しかも雅春は枝本との会話を聞いてしまっている。所在なげな
気持ちになるのも当然だろう。
「あの、先生。初日の倉敷の夜の件、助けてくれてありがとう
ございました」
 理子は戸惑いの表情を見せながら、雅春にそう言った。
「・・・あの二人には呆れたよ。だけどお前、もてるな」
 おまけに二人ともお前好みの眼鏡じゃないか。逃げなくても
いいだろうに。
 そんな雅春の言葉に、理子は目を剥いていた。
 好きな相手って大人で、しかも片思いなんだってな。悪い事は
言わないから諦めろ。
 つい、口を吐いて出てしまった。本当にそう思っていたからと
言う事もある。
「なんで先生にそこまで言われなきゃならないんですか?」
 理子が鋭い視線を向けて強い口調で言った。そんな理子の反応に
雅春はたじろいだ。
「彼女がいるなら、女子高生のお前なんて眼中に無いだろう。
辛い思いをするだけだ」
 雅春は目を逸らせて、そう言った。強い理子の眼差しをまともに
受けれなかった。
「余計なお世話です。そんな、追い打ちをかけるような事を
言わないで下さい」
 理子は「失礼します」と言って立ち去ろうとした。その事に
雅春は慌てて理子の手首を掴んだのだった。理子は驚いて
振り向いた。その理子の腕を引き寄せた。
「すまなかった。こんな話しをする為に、お前をここへ
呼んだんじゃない」
 雅春はそう言うと、理子の手を離した。
 本当に、俺は一体何をやっているのか。折角理子を傍へ呼んだのに、
言わなくていい事を言って怒らせて何の意味が有る。
 理子は俯いた。そんな理子に雅春は顔を見せて欲しいと頼んだ。
理子の顔を間近で見たかった。そして、自分の想いを確認したかった。
俺は本当に理子が好きなのだろうか。理子のことが気になるのは、
果たして面白可笑しい手応えのある生徒としてなのか、それとも
女としてなのか。
 だが理子は、なかなか顔を上げない。雅春の言葉に、あれこれと
理屈をこねては素直に従おうとはしないのだった。
 やっぱりコイツは天の邪鬼のひねくれ者だ。手に負えない
生意気な女だ。
「あまり減らず口をたたくな。その口を塞ぎたくなる」
 思わず出てしまった言葉だった。
 理子はその言葉に驚いて、顔を上げて雅春を見た。
 雅春は、そんな理子を見つめた。
 天の邪鬼のひねくれ者の癖に、その瞳はとても澄んでいた。
全く邪気の無いピュアな色をしていた。そして、知性の輝き
が感じられる。驚いた表情のまま雅春を見つめているその顔を、
とても愛しく感じた。
 何も言葉を交わさなくても、こうして見つめているだけで
胸が騒ぎ、そして熱い思いが満ちてゆく。
 こいつのそばにいたい。
 そんな思いが湧いてきた。はっきりとした言葉として。
 抱きしめて、その可愛いピンクの唇にキスをしたい衝動が
生じて来て、雅春は理子から視線を逸らせた。
「悪かった。だが、これでようやくわかったよ」
 雅春は伏せ目がちに、そう言った。そして、彼女に部屋へ
帰るように言った。
 そう。これでようやくわかった。
 もう、誤魔化しようも無い。
 俺は、理子が好きなんだ。一人の女として。
 はっきりと、そう自覚した。


     12.回顧  了  13.愛欲  へつづく。

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~ Comment ~

Re: 錯覚なんじゃないか>misia2009様 

misia2009さん♪

自分の心をどうにもコントロールできずに、
ついつい突っ走ってしまいがちの先生です。
理子はいつも、それに巻き込まれ……。
まぁ、経験不足が最大の原因とも言えるので、
経験を積むしかないですね~。

初稿は、はっきり言って、先生は変態化しちゃってるかも。
これでもか!って程の、行為なんですよね~。
割愛しても、かなりなものですが…(^_^;)
でも私も段々恥ずかしくなってきて、話の進行と共に
性描写の筆が鈍ってきているように感じる今日このごろ……^^;

あぁ~。掻き立てるような描写、したいなぁ。。。

錯覚なんじゃないか 

こんにちわ! 懐かしくも読み応えたっぷりでした。

いかにも研究者肌らしく、自分を分析していたのですね。
しかも天邪鬼なのはアンタも同じだ、先生^^;

面白い人間だから、もっと勉強させてやりたい。でも体も欲しい。
二輪が主張しすぎずバランスよく噛みあって廻れば進めるのですが、ギアのバランスが悪いと転ぶ…人間には専属エンジニアがいなくて厄介ですね~
ああ、紫お姉さんなら調整してくれるのでしょうが…先生はやっぱり末っ子だなァと思う今日この頃です。
愛欲…愛欲か…初稿も読みたいような…
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