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小説・クロスステッチ第2部 <完>
10.混 沌 ~ 13.愛 欲


クロスステッチ 第二部 12.回 顧 07

2010.10.21  *Edit 

 車内は賑やかだった。それぞれがグループで楽しんでいる。
雅春の前の席は男子ばかり6人のグループで、その6人は旅行後に
発足予定の歴研に所属しているメンバーだった。ひとしきり話しが
弾んだ後、一人の生徒が言った。
「おい!枝本と茂木の席に理子姫が座ってるぞ!」
 その言葉に、グループの男子達が慌てふためき出した。
「あいつらだけ、ずるい。誰か姫を呼んでこいよ」
 雅春は内心訝しんだ。理子姫だってぇ?何時の間に姫なんて
呼んでいるんだ。
 雅春の目の前の席に座っていた男子が、俺呼んで来ると言って
席を立ち、前の方へと歩いて行った。
 やがて、戻って来た男子と共に理子がやってきた。雅春は
穏やかではいられなかった。何気なく理子に視線をやる。
理子は俯き加減で、雅春とは目が合わなかった。
「理子姫を連れて来たぞー」
 との声に、おー!と言って拍手が湧いた。
「さぁ、姫どうぞ」
 と、前の席を勧められ、躊躇いがちに理子は着席した。連れて来た
男子はその傍に立っている。もうそれだけで、雅春にとっては
鬱陶しい。しかも、かなり盛り上がっている。こいつらが、
こんなに理子に入れ上げているとは思っていなかった。
 姫と呼んで盛り上がっているのに腹が立って仕方が無かった。
確かに、「姫」との呼び名には感心する。長めの綺麗な黒髪と言い、
可愛いくて理知的な一重の瞳と言い、全体的におっとりとした
和風美人のような雰囲気は、姫っぽい。だがそう呼んでチヤホヤ
して喜んでいる様は、どうにもムカつくのだった。
 たまらなくなって、「うるさいぞ」と叱りつけた。実際、
うるさくて敵(かな)わなかった。理子には自分の席へ戻るように
言った。ブーイングが起こる。理子は「帰るね」と言って、
雅春の方は見ずに戻って行った。
「先生、ひどいよー」
「何がひどいんだ。幾ら貸し切りだからって、うるさすぎるぞ」
 雅春は不機嫌にそう言った。
 雅春はそれからふと、理子の事が気になった。雅春の方へは目も
くれずに去って行った。怒られたと思ったのだろうか。メルアドを
教えたあの日、雅春の態度を怒ったと思って心配げなメールを
寄越してきた事を思い出した。
 雅春は理子にメールした。怒られたと思ってしょげていては可哀想だ。
 その後暫く待ったが、返事は来なかった。仕方が無い。旅行中だ。
 やがて新幹線は岡山に到着し、そこから在来線で倉敷へと移動した。
倉敷では夕方まで自由行動だ。教師達は事前に決められた区域を
時間通りに巡回する。子供達の様子を見ながらトラブルが無いか
確認する。だからノンビリ見学どころでは無かった。
 女生徒達がすぐに寄ってきて、「先生、一緒に回ろうよ」と
誘って来るが、もしその気が有ったとしても無理な算段だった。
 途中、何度か理子を見かけた。理子の方は気付いていない
ようだった。楽しそうな顔をしている。しきりに仲間と一緒に
写真を撮っていた。それと、遠巻きで彼女の写真を撮っている者も
いた。本人は全く気付いていないようだ。
 こうして見ていると、矢張り違う世界に居る事を痛切に感じる。
彼女には彼女の世界がある。同世代の仲間達と楽しげに過ごしている
様子を見るにつけ、自分は見守る事しかできないんだと思うのだった。
 理子の姿が見えなくなって暫くして、携帯のメール音が鳴った。
どこかで何かあったのだろうか。そう思って携帯を開いたら、
理子からのメールだった。
”理子姫はやめて下さい”
 雅春は思わず微笑んだ。心の中に小さな暖かい灯火(ともしび)が
灯るのを感じる。そう言えば、男子達に「理子姫」と呼ばれて、
嫌がっていたのを思い出した。そんなに嫌なのか。可愛い呼び名だし、
合ってるのにと思う。
 雅春は自由行動が終わってホテルに到着後、職員の軽い打合せの
後に部屋へ入った。入ってすぐに、理子にメールをした。
 理子はどう思っているだろう。
 こんな風にメールをやり取りするのは初めてだ。雅春は理子が
メールの返事をくれた事がとても嬉しかった。生徒からしてみれば
相手は教師なんだから鬱陶しく思ってもおかしくない。それなのに、
ちゃんと返事をくれた。今頃はきっと、雅春のメールを見て、
その内容にむくれている事だろう。むくれ顔の理子を想像したら、
顔が自然にニヤけてくるのだった。
 一休みしてからロビーに出たら、石坂と理子が楽しげに会話して
いる姿が目に飛び込んで来た。気付かれないように、少し離れた
所からそっと様子を窺う。一体何を話しているのだろう。
思いのほか熱心に話しこんでいる。
「センセー」
 と、数人の女子達が絡んで来たので、雅春は慌てて彼女らを
交わして場所を移動した。石坂が羨ましかった。ああして、
気軽に理子と話しができる。もしあれが雅春だったら、まずすぐに
他の女生徒に邪魔されるだろうし、理子は目の敵(かたき)に
されるだろう。
 何故こんなにも、俺は理子の事が気になるのだろう。
 理子と楽しそうに話している男達を見て羨ましいと思っている
自分が不思議だった。見える範囲内に理子がいたら、必ずと言って
いい程、気にしている。誰にも気付かれないように視線を飛ばし、
意識を飛ばしている。理子の事が気になって仕方が無い。
 あいつは俺の事をどう思っているのだろう。
 そんな事を考える。
 いつだって、俺を見る目は普通だ。二人きりになった時は、
さすがに少し緊張している風ではあったが、それでも彼女が
俺に特別な好意を寄せているようには思えなかった。
物怖じもせず、生意気な態度と言葉からすると、俺を男とは
思っていないのではないかと言う気がして来る。それに彼女を
見ていると、どこか無防備な感じがする。男子達に人気があるのに、
本人には全く自覚が無く、異性の友人ではなくて、ただの友人と
言った感覚でいるように思えてならない。
 そして、雅春に対してもそれと同じような感覚なのではないか。
 夜の美観地区内での自由時間の時、職員達は打合せをしていた。
その打合せが早めに終わったので、雅春はロビーでのんびり寛いで
いた。そろそろ門限時刻になる。そうしたら、残っている生徒が
いないかどうか、見回りに出なければならない。
 そろそろ生徒達も戻って来る時間だろうと時計を見ていたら、
ホテルのドアが開いて理子が駆け込んで来た。息を切らして
慌てている様子に驚いた。
 思わず、「どうした?」と声を掛ける。
 その直後に、枝本と茂木が理子を呼んで入って来た。こちらも
走って来た様子で息を切らしていた。どうしたと言うのだろう。
何かあったのだろうか。理子は雅春に駆け寄り、その背後に
隠れたのだった。その事に雅春は動揺した。助けを求めているのか。
「理子」と、寄って来た二人に、雅春は両手を広げた。
「お前ら、何やってるんだ」
 この状況から察するに、この二人は何か良からぬ事を理子にした
としか思えない。雅春の中から怒りがフツフツと湧いてきた。
 二人は誤解だと訴えた。それを説明したくて追いかけて来たと。
状況がよくわからないが、それでも理子が逃げて来た以上、二人は
理子が迷惑に思う事をしたには違いないのではないかと思うのだった。
しかもこうして隠れている。
「二人はこう言ってるが、どうする?」
 雅春は背後にいる理子に問いかけた。その問いに、理子は一人に
して欲しいと言った。そして最後に、「私、他に好きな人がいるの」
と言うと、走って去って行った。その言葉に、雅春はショックを
受けて茫然とした。
 雅春は、枝本との仲の良さや、二人でデートをしたらしい様子から、
枝本と付き合っているのではないかと疑っていた。だが、普段の
様子を見る限り、仲は良いが交際をしているらしい濃密さは
感じられなかった。
 想いは有っても、まだ交際までには発展していないのかもしれない。
そんな風に思っていた。だが、今、その本人を目の前にして、他に
好きな人がいると言った。一体それは誰なのだろう。
 枝本以外で仲が良いのは茂木だ。だが、茂木はこの場にいる。
耕介とも仲良しだが、どう見ても耕介に特別な感情を抱いている
ようには思えない。そう思うと、他の男子に対しては尚更該当者が
見当たらない。 
 目の前で肩を落としている二人に気付いた。他の生徒達が次々と
中へ入って来た。女生徒達は雅春の姿を見て嬌声を上げている。
「お前らちょっと、こっちへ来い」
 雅春は二人をロビーの隅の方にあるソファの方へと誘(いざな)った。
「一体、吉住と何があったんだ。お前ら彼女に、何か変な事でも
したのか?」
 雅春は二人を睨みながら訊いた。
「変な事って・・・」
 そう言いながら、二人は互いの顔を見合わせ、困ったような
表情をした。
 そこへ、耕介と小泉がやってきた。
「理子はどうした?」
 と、心配そうな顔をしている。
「一人にして欲しいと言って、部屋へ戻った」
 バツの悪そうな顔をしている二人に変わって、雅春が答えた。
「お、お前ら全く、何やってんだよ」
 耕介が呆れたように二人に言ったので、雅春は耕介と小泉に向かって、
二人が何をしたのかを訊ねたのだった。雅春の問いに、小泉が二人の
様子を気にしながら事情を話し、それを聞いた雅春は、
耕介と同じように呆れたのだった。




    修学旅行まで進んできました。
    先生はこの旅ではっきりと理子への想いを自覚します。
    そしてこの章も、明日で終わりとなります。
    1章丸々、先生の回想で終わってしまいましたが、
    時間としては、僅かしか経ってないんですよね。
    その止まっていた時間が、次章から再び動き出しますが、
    次章は非常にエッチな章となりますので、ご了承くださいませ。^^



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~ Comment ~

Re: はい先生!>misia2009様 

misia2009さん♪

先生にとっては、これが「はつ恋」なのでしょうか?ww
まるで「少年」のようですね~。

次章の中盤くらいから、濃厚なエッチシーン満載となります(^m^)
はっきり言って、初稿はものすごーく厭らしくて、もうこれは
官能小説に間違いなし!!って程だったので、これは幾らなんでも
マズイだろうと思い、随分と割愛した所、他の章よりページ数が
格段に少なくなってしまいました…(^_^;)
なので、この章は全6回となります。

描いている時には、何かに憑かれたような状態なのですが、
冷静になって後から読み返すと、赤面ものです。
これまでのエッチシーンも、読み返すと非常に恥ずかしいですね。
二人の初エッチからして、濃厚だし……(^_^;)

あはははは……。(笑って誤魔化すしかない)

はい先生! 

高校生とまるで同じレベルですね! 読んでいてすごく楽しかったです!www

一章まるまる回想というのは分かりやすくていいですね。
毎回、勉強になるなあ(汗)と思いながら拝読しています。

次回は非常にエッチ…非常にってどのくらい…今までそんなにエッチじゃなかったとでもおっしゃいますか…

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