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小説・クロスステッチ第2部 <完>
10.混 沌 ~ 13.愛 欲


クロスステッチ 第二部 12.回 顧 02

2010.10.16  *Edit 

 朝霧高校へ赴任した時、女子高生達の嬌声に頭が痛くなった。
 幼い時から周囲からチヤホヤされ続けて来たが、こんな嬌声を
浴びせられたのは初めてだった。自分が高校生の時はどうだった
だろう?ここまで周囲の女子達に騒がれただろうか?思い出して
みるが、ここまででは無かったように思う。
 大学でも随分と騒がれたが、こんなに耳をつんざくような、
頭痛を呼ぶほどのものでは無かった。
 暫くして、何故こんなにも頭が痛くなるのか、原因の一端が
わかった。学校と言う環境だ。狭い校舎の中での女子の嬌声は、
とてもこだまして響く。大学は教室も校舎も広いから、ここまで
響かなかったし、そもそも女子も多く無い。
 朝霧高校も、女子の数は全体の三分の一と少なめではあるが、
どうにも狭い校舎では響き渡るのだった。赴任した最初の一週間は、
帰宅しても頭の中に女生徒の嬌声がこだましていて、非常に神経が
疲れて休まらなかった。
 女子高生達は、毎日雅春の周囲に群がっては、くだらない質問を
ぶつけてくる。答えるのも馬鹿馬鹿しいような質問ばかりだ。
どの顔も、頬が蒸気し、目を輝かせていた。鬱陶しくてたまらない。
無視しても、冷たい目を向けても、一向に怯まない。
 そのバイタリティを、もっと他の事へ向ければ良いのにと
思うばかりだった。
 寄って来るのは、自分の受け持ちの女生徒だけではなく、
関係の無い学年の女子達まで毎日職員室まで押しかけて来た。
訳も無くプレゼントを持参しては置いて行く。迷惑甚だしい。
 受け持ちのクラスの初めてのロングホームルームの時、
お決まりのように生徒達に自己紹介をさせた。男子は歴史好き
らしい生徒が多かった事を喜ばしく思ったが、女子に関しては、
面白く無いし興味も無いので殆ど右から左に聞き流していた。
それに、女子はやたらと長かった。
 理子は、一番最後だった。
 理子の番まで来た時、やっとこれで終わるとホッとした。
「吉住理子です。趣味は読書で、好きな科目は現国です」
 それだけ言って着席した。
 自己紹介が短い女子は他にも数人いたので、特に何とも
思わなかったし、終わった事に安堵するばかりだった。
 大体、新規で赴任したばかりで担任を任せられた事自体、
不満だった。教師一年生で、全く右も左もわからない。日本史さえ
教えていればそれで良いのだろうと思っていたのに、何故担任なんか、
と思うばかりだったのだ。
 中高時代にブラスバンド部に所属していた事もあって、ブラバンの
顧問にもなった。こちらも精神的に負担だった。
 音楽は好きだ。だからブラバンはいい。ただ、何故いきなり
顧問なのか。担任と顧問。どちらも生徒達と深く関わらなければ
ならない。少々人間嫌い気味な雅春にとっては、できれば
やりたくない事だった。特に女子を相手にしなければならないのが
最大の苦痛だった。
 真面目に取り組んでくれるのなら良い。だが雅春が予想していた
通り、大方の女子は雅春目当てであり、気もそぞろに演奏している。
授業にしても同じだ。前を向いてはいるが、見ているのは雅春で、
耳は雅春の魅力的な低音の声を聞いているだけで、内容は把握して
いない。手も殆ど動いていなかった。
 そんな中で、一人だけ熱心な女生徒がいた。それが理子だった。
 理子は前から2列目に座っている為、最初のうちは気付かなかった。
 授業をする事にも馴れて来て、教室全体に目が行くようになってから、う
っとりと雅春を見つめるだけでは無く、ちゃんと授業を受けている
女生徒も数人いる事に気付くようになった。
 理子はその一人だったが、誰よりも真剣な目をして授業を聞き、
ノートを取っていた。黒板を写すだけではなく、雅春が口にした事の
重要と思われる事を次々にノートに書き止めている。
熱心さは一目瞭然だ。
 歴史の授業で、これだけ熱心な女子は珍しい。
 6組は歴史好きの男子が多いが、そんな男子達よりも更に熱心だった。
だから、彼女に興味を抱いた。
 まさか、ポーズじゃないだろうな?
 そう思って試しに指名してみると、しっかりとした答えが返って来る。
質問されて、教科書やノートを見ながら答える事は一度も無かった。
 まだ4月だ。学習的には時代は古い。ポピュラーな時代では無い。
それにも関わらず、何も見ずにスラスラと答える。ちょっと捻った
質問をしても、澱みなく答える。そうなると雅春も意地悪心が
湧いてきて、更に意地悪な質問をしてみるのだが、自分なりの
考えを怖じけずく事も無く堂々と返して来る。
 雅春は、理子に対して非常に興味をそそられた。
 一体こいつは、どんな生徒なんだろう。
 そんな思いから、何気なく眺めていると、ホームルームの時には
雅春と目を合わす事は殆ど無い。いつも何を考えているのか
わからない表情だった。だが日本史の授業の時には、真っすぐに
雅春へ視線を向けてくる。
 当然、何度か視線が合うのだが、大抵の生徒は目が合うと
逸らすのに、理子は逸らす事が無い。照準を合わせたように、
ピタッとしている。そしてその目は、1つも聞き洩らすまいと
集中しているのがよくわかる真摯な目をしていた。
 そういう態度で臨まれれば、教師としてもやり甲斐がある。
雅春も熱心に授業をするようになった。手応えのある生徒が
一人でもいると、気力が充実してくる。
 授業が終わると、理子は緊張の糸が解けたように、リラックスした
明るい顔になった。一見、あまり人目を引くようなタイプでは無いが、
何故か周囲には男子が多く、クラスメイト達からは男女共に
「理子」と下の名前を呼び捨てにされていた。
 何となく、過去のデータを調べてみた。
 中学の内申書は良かった。家庭科・体育・美術は並の成績だったが、
それ以外の科目はどれも良い。担任の講評も非常にいい。
学級委員長を数回やっているし、部活でも部長をやっていて、
非常に積極的でリーダーシップを発揮したと書かれてある。入試時の
成績も上位だった。だが、去年の1年時の成績は、文系は非常に
良いのに、理数系が悪いのには驚いた。
 中学では理数系も非常に良好なのに、どうした事だろう?
 1年時の担任は熊田先生だった。熊田のコメント欄には、国語と
英語が得意で、将来は英文科を漠然とだが志望しているようだ、
と書かれてあった。それを見て、意外に思う。
 そんなある日、ブラバンの練習が終わって、生徒達を帰した後で
譜面台を音楽準備室へ片づけに入ったら、思わぬ人物がそこにいた。
理子である。
 何故、ここにいる。
 単純にそう思った。思いも寄らない事に、雅春はつい憮然と
してしまった。それに相手は女子である。自然と身構えてしまう。
「先生、なんで?」
 と問われた。
 見ればわかるだろう。お前こそ、何でこんな所にいるんだ、と思った。
わかりきった事を聞かれて、雅春は少し頭にきていた。だが理子は、
そんな雅春の態度を不服に思ったのか、反抗的な態度を取って来た。
この理子の態度に、雅春は面食らう。女子からこんな態度に
出られた事が無かったからだ。おまけに、「お前」と呼ばれた事に
腹を立てている。そんな様子を見て、雅春は思わず彼女を「理子」と
呼んでしまっていた。普通に名字で呼べば良かったのに、雅春の
頭の中では既に「吉住」ではなく「理子」だったからかもしれない。
出欠を取る時や授業では「吉住」と呼んでいるにも関わらず。
 そして、理子の妙な喋り方の説明を聞いて、雅春は爆笑して
しまった。突拍子も無い、あまりに可笑しなその言い方に、
腹を抱えて笑った。
 普段何を考えているのかわからないような表情をし、授業の時には
驚く程真剣で真摯な表情を見せ、偶然遭遇したここではムカつく程の
生意気な態度を示しながら、いきなりこれだ。
 この事で警戒心が無くなってしまったのかもしれない。この後雅春は、
自分でも信じられない程、自分の事を語ってしまっていた。そして、
理子に対する興味が更に湧いてきた。
 こいつ、面白い奴だな。
 弾き語りをしていたと聞いて、是非、聴いてみたいと思った。
本人に所望したが、拒否されてガッカリした。雅春に頼まれて
断る女がいたとは。
 それからだ。何となく理子が気になる存在になったのは。
 とは言っても、女として意識していたわけでは無かった。面白い
生徒としてしか認識していなかった。面白いから、もう少し相手を
してみたい。遊んでみたい、そんな思いだったのだ。
 中間テストが終わった時、雅春は驚いた。自分が自信を持って
作成した試験で、理子が満点を取ったからだ。満点を取ったのは
彼女だけだった。全て暗記しても満点は取れない、そういう
問題を作成した。
 教科書や板書の内容だけでは無い、雅春が授業中に何度か示唆した
事柄までも吸収していないと満点は取れない内容を盛り込んだ。
しかも、選択式では無く、全て記述式だ。彼女の答案は完璧だった。
非の打ちどころの無い答案に驚愕した。
 更に満点は他にもあった。現国と英語のリーダーだ。その他の
テストも、文系に関しては非常に良かった。それなのに、理数の
結果は悪い。
 本人の志望先を見ると、国立になっている。それを見て雅春は唸る。
私立の文系なら何の問題も無いだろう。この調子で頑張れば、
かなり高レベルの大学を狙える筈だ。だが国立となると、この理数の
悪さは大いに響く。1年時の理数も同じように悪い。中学の時には
押しなべて全教科良いのに、この落差は一体どうした事か。

 個人面談が始まった。
 個人面談は雅春には苦痛だった。目の色変えた女子どもが、
やたらとアプローチしてくる。普段、全く相手をしないからか、
ここぞとばかりに無関係な話しばかりを持ち出して来る。進路の為の
面談であるのに、話しが一向に進まない。
男子は将来の目標が決まっていない者でも、それなりの手応えが
あったが、女子の酷さにはうんざりした。それでも、中にはやる気の
ある者や目標が定まっている者もいて、そういう相手に関しては、
雅春は真摯に指導した。
 そして、最後が理子だった。部活動をしている者は遅めの時間に
したのだが、そんな中でも理子を最後にしたのには、雅春なりの
理由があった。
 彼女と誰にも邪魔されずに、じっくりと話してみたかったのだ。
他意は無い。下心も勿論無い。単に、突っ込んだ話しをして
みたかっただけだった。本当なら、休み時間に職員室に呼びつける
ところなのだが、雅春はいつも鬱陶しい女子達に取り囲まれて、
自由を制限されていた。
 相手が男子ならともかく、女子だけに、こちらに他意は無くても、
周囲の女子達の苛めの標的にされるのは目に見えている。だから、
気安く話せない。
 理子の前の男子の面談が終わり、教室を出て行ってすぐに、
廊下で話し声が聞こえた。顔を出して様子を見たら、ちょうど
理子がやってきた所だった。二人で軽く挨拶を交わしている姿を見て、
何故か心がざわついた。そんな自分を訝(いぶか)しく思う。
 そのせいなのか、自分の前に座った理子に対し無愛想な態度で
話しだす。正直な所、女子高生相手に、どう対応して良いのか
わからなかった。かなり年下だし、生徒だ。これまでのように、
ひたすら冷徹に対すると言うわけにもいかない。だが、この
個人面談で、何人もの女子から積極的なアプローチを受けて
ウンザリしていたので、女子を相手にするのに腰が引けていた。
 相手は生意気な理子だ。多くの女子が自分に媚びて来る中で、
自分に無関心の女生徒もいる。理子も一見、その類に見えるが、
実際に接して見るとそれらの女生徒達とも少し違う気がした。
こいつとゆっくり話してみたいと思って最後にしたと言うのに、
当の本人を目の前にしたら、どんな態度を取ったら良いのか
わからなくなった。



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~ Comment ~

Re: 女子どもw>misia2009様 

misia2009さん♪

年齢的には大人だし、女の体はたくさん知ってるのに、
恋に関しては、まるで子供ですからねぇwww
しかも、立場上、素直には認めにくい部分もあるし…。

当時の先生の苦悩に、暫くお付き合い下さいませ。

女子どもw 

朝霧の職員室、出入り自由ですねえ…(変な感心)
先生の「これって恋?」とも思いつかない初々しさがたまりませんw男の子ってこういうものでしょうねw
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