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小説・クロスステッチ第2部 <完>
10.混 沌 ~ 13.愛 欲


クロスステッチ 第二部 11.もう一度 08

2010.10.14  *Edit 

 雅春は理子を抱きしめて、理子の体を優しく撫でた。
 この世で最も愛しい存在。こんな自分を心の底から愛してくれる存在。
 「せんせい・・・?」
 「ん?」
 雅春は理子の髪を撫でながら優しく理子を見つめた。
 「愛してます・・・心から」
 理子は潤んだ瞳で雅春を見た。
 「理子・・・、俺もだ。君がそう言ってくれて、とても嬉しいよ」
 理子の方から言うのは珍しい。理子は恥ずかしがり屋で、自らそれを
口に出して言うことはあまり無かった。
「私ね、今度の事でわかったの」
「うん。何がわかった?」
「私、昔から母にひどく干渉されるのが嫌いで、自分は束縛されるのが
とても苦手な人間だと思ってた。だからいつも自由になりたいって
思ってたんだけど、その癖、誰かに依存しないと生きていけない。
それがとても嫌だった。先生と別居しても、自分一人では生きて
いけない。生活力がないから。結局、親元から離れても、
私は先生に依存してる」
「依存か・・・」
 雅春には理子の気持ちがわかった。あの母親を知れば、
理子の憂慮は尚更だ。
「今は仕方ないだろう。まだ未成年で学生だ。そう思うなら、
今をしっかり頑張るしかない」
「はい。そう思います。ただ、ひとつだけわかった事は、
束縛されるのは嫌いではあるんだけれど、好きな人には束縛されたい、
支配されたい、って願望が強くあるって事なの」
 理子は顔を赤らめた。
「枝本君に、指摘されて気づいたの」
「枝本に?なんて?」
「昔の枝本君の彼女との事と、私と別れた時の事で色々。私の方から
別れの手紙を出したって話は前にしましたよね。それって、
結局のところ、枝本君を試したんじゃないか、って言われたの。そして、
それと同じことを今先生にしてるんじゃないか、とも言われて…」
「試す・・・?」
 雅春にはよく飲み込めなかった。枝本との別れの経緯(いきさつ)に
ついては以前理子から聞いて知ってはいるが。
「私、枝本君を試すつもりなんて毛頭無かった。無かったんだけど、
私が出した手紙を読んで、せめて、なぜ?どうして?って反応が
欲しかった。それが無かったから、私って、結局その程度の
存在だったんだな、と思って余計に悲しかったんだけど」
「それで?俺に同じことをしているって言うのは?」
「私、一人になりたいって強固に先生を突っぱねましたよね。
本当にあの時は一人になりたかったんです。先生と一緒にいると
絶対に流されてしまうと思ったから。でも、枝本君に言われて
自分の深層心理を探って、それでわかったの。本当は、一人になんて
なりたくはなかったんだって。私がどんなに強く言っても、
『絶対に君を離さない』って先生に言ってもらいたかったんだって」
「理子・・・」
「ごめんなさい。こんな事を言って」
 理子の瞳から涙の粒がこぼれ落ちた。
「俺もな。志水に言われたんだ」
 理子は驚いた。
「志水君に?」
「ああ。理子に『一人になりたい』って言われて一人にするなんて
馬鹿だって。自分なら、どんな事があっても絶対に理子を一人には
しないってな」
「志水君が・・・」
「あいつはいいヤツだな。あいつだったら、理子を悲しませるような
事はしないだろう」
「先生、そんな事を言わないで。私には先生しかいないのに」
 理子は悲しそうな顔をした。
「ああ、すまない。そう思ったからって、あいつに譲る気は微塵も
無いから、安心してくれ」
「先生、お願い。もう二度と、私を離さないで。私が離れたがっても、
絶対に離さないで」
 雅春は目を見張った。理子は切なげに懇願している。
「私はあなたには逆らえない。それが時々息苦しくなって逃げ出そうと
してしまうのかもしれない。でも、絶対に離さないで欲しいの」
 理子はそう言うと、雅春の胸の中に赤い顔を沈めた。
 理子の言葉が胸に沁みる。
「理子、そんな事を言ってもいいのか?俺が独占欲の強い男だって事は、
君はとっくにわかってるだろう?」
 理子は雅春の胸の中で頷いた。
「理子。君を愛してる。狂おしい程に。俺はもう、二度と君を離さない。
どんなに君に懇願されようと、絶対に」
 雅春は優しく理子を抱きしめた。再び交わりたい衝動を抑えて。

 夜が明けた。朝の光がいつもよりも眩しく感じられる。日差しは
もうすっかり秋なのに。
 隣を見たら雅春の寝顔があった。幸福そうな美しい寝顔だった。
自分の寝顔も同じように幸福そうだったろうか?
 こうして、朝目覚めて一番に雅春の顔を見るのは約3カ月振りになる。
懐かしい光景だ。懐かしくて恋しかった光景。
初めて二人で迎えた夏を棒に振ってしまった。後悔の念が湧いてくる。
 時計を見たら6時5分前だった。寝過してしまった。理子はそっと
起きて身支度を済ませると朝食の支度に取り掛かった。朝食の支度を
するのも久しぶりだった。いや、キッチンに立って料理をする事
自体が久し振りだ。雅春がいない3か月の間、自分一人の食事の
支度をするのが面倒で、ろくに料理をしていなかったからだ。
 冷蔵庫のドアには、中の食材を書き出したプレートが貼ってある。
ドアを開けていちいち見なくてもいいように、そうしている。
そのプレートに食材がギッシリ書き込まれていた。雅春が買い物を
してくれたのだろう。かなり量が多い。使いきれるのだろうか?と
首を傾げる。理子は一通り食材に目を通すと、焼き魚を中心にした
和食にしようと決めた。
 鮭を焼き、青菜のおひたしを作り、里芋はレンジで下ごしらえして
煮っころがしにした。味噌汁の具は大根にし、豆腐は軽く湯通しした。
それにトマトのサラダを添えた。味噌汁の味噌を溶く前に雅春を
起こしに行こうとしたら、起きてきた。
「おはよう・・・」
 眠そうな顔をしている雅春を可愛いと思った。子供の自分が
大人の先生を可愛いと思うなんて・・・。
「いい匂いがする」
 眠そうな声で雅春が近づいてきた。
「先生、おはよう」
 理子は満面の笑みで声をかけた。
 雅春には、その笑顔が眩しかった。久し振りに二人で迎える朝。
理子の笑顔を見るのも久しぶりだ。台風一過の秋晴れのような
爽やかさがあった。そんな理子が愛しくて、雅春は思わず抱きしめて
キスしようとしたが、拒否された。
 雅春が怪訝な顔で理子を見ると理子は笑って
「まずは洗顔と歯磨きでしょう?キスはそれから」
 と、頬を染めて言った。
 この手に理子を抱きしめながら、おあずけか。まぁ仕方がない。
雅春は観念して洗面室へと向かった。
 理子はそんな雅春の姿を目で追いながら、やっぱり可愛い、と
思ったのだった。
 愛しい存在。ただただ、そばにいたい。強力な磁石に引き
つけられているようだ。離れがたい。それなのに、どうして
離れてしまったのだろう。
 いいや。本当は離れてなどいなかったのだ。何か目に見えない
強い力が二人を引きつけて離さない。最初からそうだった。
だから、否定しても否定しても二人の距離は近づく一方だったのだ。
 理子は味噌汁の味噌を溶き終えて、ご飯と共によそうと食卓へと
運んだ。雅春が洗面所から出て来て食卓に付く。二人で向き合って、
手を合わせ、「いただきます」と言った。
 雅春は味噌汁に口を付けると、「旨い」と言った。
明るい顔をしている。
「こうして一緒に理子と朝を迎えて、理子の作ったご飯を
食べるのは久しぶりだな」
 嬉しそうに言う雅春を見て、理子は眩しく感じるのだった。
 朝の光を浴びて幸せそうな顔をしている雅春はとても美しい。
初めて会った時には、無愛想で神経質そうな表情をしていた。
綺麗な顔立ちではあったが、性格は悪そうに感じたものだった。
だが、眼鏡をかけた知的でクールな雰囲気にとても惹かれた。
 ポーカーフェイスで、全く興味の無いような顔をしていたが、
本当は一瞬にして心を奪われていたのだと、今にして思う。
自分を誤魔化し隠し続けていただけだった。あの時、自分の
心のままにその想いを顔に現していたとしたら、先生は私に
興味を持たなかっただろうか。
「どうしたの?」
 雅春の問いに、理子は相変わらず敏感な人だと思った。
「先生って、本当に綺麗な顔をしてるなぁって思って、
見惚れてたんです」
 理子の言葉に、雅春は咽(むせ)た。里芋を食べていた時だったからだ。
「大丈夫ですか?」
 理子は慌ててキッチンへ駆け込むと、コップに水を入れて持ってきた。
雅春は胸を叩いて受け取ったコップの水を呑み込んだ。
「もう、変な事を言うなよ」
 咳こみながらそう言った。
「ごめんなさい。でも訊かれたから答えただけなんですけど」
「俺、男なんだからさ。綺麗とか言われても嬉しく無い」
 雅春は憮然とした顔でそう言った。
「じゃぁ、可愛い!」
 理子の言葉に、雅春が睨んだ。
「そんな、睨まないで下さいよ。思った事を言っただけなのに」
 そんな理子に雅春は微笑みかけた。
「わかったよ。君だから許す」
 理子はそう言われて、胸がキュンとした。
 食事が終わり、後片付けをして、二人はソファに並んで腰かけた。
「お腹の方はどう?傷は痛く無い?」
「態勢によって、ちょっと痛かったりします」
「そうか。傷口が動くとまだ痛むんだろうな。じゃぁ、色んな格好を
するのは無理だな」
 理子は雅春の言葉に疑問を抱いた。
「色んな格好って何ですか?」
 雅春はニヤリと笑う。
「色んな格好は色んな格好さ。転がったり仰(の)け反(ぞ)ったり、
うつ伏せになったり四つん這いになったり・・・」
 理子はカーっと赤くなった。
「どうしたの?赤くなってるけど」
 雅春はにやけ顔でそう言った。
 意地悪な人だ。こうやって揶揄(からか)って面白がってる。
「先生が恥ずかしくなるような事をおっしゃるからです」
「そうかぁ?君が勝手に変な事を想像してるだけじゃないの?」
 そうやって恍(とぼ)けるのが憎ったらしい。
「じゃぁ先生。私、ビデオに撮ってあげますから、今ここで、
転がったり仰け反ったり、うつ伏せになったり四つん這いになったり
してみて下さいよ」
 理子は満面の笑みを浮かべた。
「それを見て、恥ずかしくなるか否か、判断しようじゃありませんか」
 雅春は真顔になって理子を見つめると、
「君、意地悪だね」
 と言った。
「意地悪なのは先生じゃないですか。私を揶揄って面白がってたくせに」
「いいじゃないか、少しくらい。これは君の夫たる俺の特権だ」
 理子はプッと笑った。
「そうですね。でも私が黙って弄(いじ)られてるだけの女じゃないって
事も十分御承知の筈でしょう?」
「そうだったな。まぁ、だから好きなんだけどな」
 雅春はそう言って理子の肩を抱き寄せると、唇を重ね合わせた。
そして唇を離すと、
「君の減らず口を聞いてると、どうしてもその口を塞ぎたくなるんだ」
 と言って、再び唇を合わすのだった。
 息苦しくなる程、濃厚な口づけだった。このまま求められるの
だろうか。そんな思いが湧いてきたが、雅春は執拗に繰り返した後、
理子から離れた。
「君が欲しいけど、退院したばかりだしね」
 そう言って笑った。
「ところで少し、君と話しがしたいんだ。真面目に」
「先生?」
 言葉通りに真面目な顔をしている雅春に、理子は少し不安な気持ちに
なった。話しがしたいとは、どういう事だろう。
「そんな、不安そうな顔をしなくても大丈夫だよ。ずっと離れて
いたから、積もる話をするだけさ」
 そう言って笑ったが、理子の不安は拭いきれないのだった。


      11.もう一度  了  12.回顧 へつづく。


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~ Comment ~

Re: 是非なさって下さい。>misia2009様 

misia2009さん♪

あははww私も是非、見たいですね、先生の数々の姿態を。
ビデオに取ったら、必見物ですよ。きっと高値で売れますよ(爆)

長く続いた緊張から解放されての、ご愛嬌な二人ですね。
でも、何て言うか、トーンはあまり明るくはならずに
今後の物語は進んで行きます……。

是非なさって下さい。 

転がったり仰け反ったり、うつ伏せになったり四つん這いになったり。ええもうどうぞご遠慮なく!!www
四つん這いで仰け反るのも好きです。理子、ダビングさせて。

「再び交わりたい衝動を抑えて」に感動しました。よく頑張りましたねェ。先生にしては。

それにしても里芋にむせるのは苦しそうです。
苦しそうな先生もまた可愛いです。
やれやれ。

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