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小説・クロスステッチ第2部 <完>
10.混 沌 ~ 13.愛 欲


クロスステッチ 第二部 11.もう一度 06

2010.10.12  *Edit 

「神山先生・・・」
「増山先生。お待ちしてました。一緒に来て下さいますよね」
 雅春は躊躇したが、とにかくここで立ち話というわけにもいかないし、
美鈴とはちゃんと話し合うべきだろう。
「わかりました」
 美鈴は車で来ていた。授業が午前中だけだったので早退したと言う。
「今日は学校を引けた後、病院へ行ってきたんですよ」
 車を出して暫くしてから美鈴が言った。
「病院?」
「総合病院です」
 総合病院?理子が入院している病院だ。
「どこか悪いの?」
 雅春が不安げに聞いた。
「ええ。心が」
 美鈴はそう言うと笑った。
 雅春は何か怖いものを感じた。
 車はどうやら彼女のマンションに向かっているようだった。
矢張り、そこで話すしかないのか。
 その後二人は何も話さず、車の中には重苦しい空気が流れていた。
 やがて思った通りに彼女のマンションに着き、雅春は彼女の部屋へ
通された。この間来た時と変わらず、すっきりとした部屋だった。
 美鈴は黙ってお茶を淹れ、雅春の前へ置いてから隣に座った。
「先生。私、理子さんに会ってきたんです」
「えっ?」
 総合病院と聞いた時、嫌な予感がしたが。
「電話がかかってきた時、先生は『理子』って呼んでたでしょ?
すぐに奥様の名前だとわかりました。タクシーに乗る時には
『総合病院へ』っておっしゃってたから、そこに入院していると
すぐにわかりました。病院へ電話をしたら確かにそこに入院して
らしたので、今日行ってきたんです」
「なぜ?」
 雅春の声が僅かに震えた。理子は会ったのか。一体、どう感じ
何を思ったんだろう?
「なぜ、って、先生と別れてくれるようにお願いしに行ったんです」
 雅春は驚いた。何を言ってるんだ、この女は。
「君は本気なのか?」
「先生、何を言ってるの?本気に決まってるじゃないですか」
「僕は君に言った筈だ。僕が愛しているのは妻だけだ。君には
申し訳ないが、君の気持ちには応えられない」
「先生、そんな事を言わないで。彼女は、離婚はできないけど不倫は
いいって言ったのよ。だから自分の気持ちに嘘をつくことはないわ」
「彼女がそんな事を言うわけがない」
 雅春は冷たく言い放った。
 美鈴は笑った。
「先生、嘘じゃないわよ。不倫に関しては、私達二人の問題だって
言い放ったのよ。彼女って冷めてるのね。最近の若い子はドライよね」
 そうか。美鈴の言葉を聞いて、雅春は理子の言った事がわかった。
そして、理子がすっかり自分を取り戻している事を悟った。
「あの子、教え子だったんですってね。本人から聞いて驚きました。
先生が教え子となんて・・・。先生はきっと、若いあの子に
疲れたのよ。大人と子供過ぎるわ」
 美鈴の言葉に、雅春はフッと笑った。
「あいつは、聡明な女だ。君も彼女と話してそう思っただろう?
若いなんて関係ない」
 雅春の態度は冷たかった。美鈴は納得がいかない。まるで、
二人が親しくなる前の、美鈴の存在なんて眼中に無かった頃のようだ。
どうしてこんなにも冷たい?あんなに優しかったではないか。
あんなに美鈴を求めてくれたではないか。
「先生、どうしてそんなに冷たいの?」
 今まで、冷たい態度を取っていても笑っていた美鈴だったが、
今は泣いていた。
「これが本来の僕なんだ。愛する女にしか興味は無い」
「そんな事言わないで。私は一番じゃなくてもいいです。先生が
疲れた時に、癒されに来てくれるだけでもいい。時々私を可愛がって
くれれば、それでいいんです」
 美鈴は雅春に抱きついた。
「君をそんな気持ちに駆りたててしまったのは僕だ。だから僕は
君への罪悪感から、君を強く拒否できない。でも、だからと言って
君を受け入れる事もできない。できれば君の方から離れて欲しい」
 雅春の言葉に美鈴は頭を振った。
「いやっ!」
 美鈴は顔をあげると、雅春の顔に近づいてきた。
雅春は美鈴を突き放した。
「先生、お願いです。私を抱けないなら、それでも構いません。
抱かなくても、触る事はできるでしょ?キスくらいはできるでしょ?
その手で、その舌で、私を喜ばせてくれるだけでいい。先生に
そうされるだけで幸せなんです。だから・・・・」
 美鈴は懇願する。ここ数か月の時間、夢のようだった。また、
以前のように何事も無いような関係に戻るのは嫌だ。辛すぎる。
「それが駄目なら、ただ会ってくれるだけでもいいです。
これまでのように、時々会ってくれれば」
 だが雅春は冷たく突き放した。
「できない。君とはもう会う気はない。君には本当に申し訳なかったと
思っている。僕は最初から最後まで、一度も君を愛した事はない。
君の優しさに癒されたのは確かだが、それだけだ」
 その言葉に美鈴は号泣した。
「酷いわ!そんなに彼女を愛してるなら、何故私の所に?酷過ぎる」
 雅春の顔は苦痛に歪んだ。そのつもりではなかったが、
結果的には弄んだことになる。
「すまない。本当にそれしか言葉が無い」
 雅春はそう言うと、泣いている美鈴を後にして部屋を出た。

 雅春はタクシーに乗り込むと理子に電話した。既に6時を
過ぎている。どうやら一緒に夕飯を取れそうにない。コール
サインが2回鳴ったところで繋がった。
「先生?」
 曇りのない理子の声を聞いて、胸が熱くなった。
「今、大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。どうかしたんですか?」
「ちょっと用事が入って、今からそっちへ向かうところなんだ。
悪いが食事は一人で済ませてくれないか?」
「わかりました。じゃぁ、先に食べて待ってますね」
「ああ。じゃぁ、後でな」
 早く逢いたい。それしかなかった。
 美鈴には本当に悪い事をしたと思っている。だが、深い関係に
なったわけではない。時々会って食事をしたり展示会へ行っただけだ。
好きだと言ったわけでもないし、そういう素振りを見せた覚えはない。
ただ安心感はあった。だから、ほっとした表情は何度も見せては
いただろう。だが、それだけだ。美鈴の方が雅春への思いを強く
しただけで、二人で盛り上がったわけではないのだ。
 そう。盛り上がったわけではない。だが、彼女の部屋に入り、
彼女を抱こうとした。だから、妙な希望を持たせてしまったのだろう。
これまで、どこまでも女には冷たい雅春だったから、今度の
ような事は初めてだった。矢張り身から出た錆としか言いようがない。
 車は三十分ほどで病院へ到着した。
 急ぎ足で病室へと向かう。
 病室に入ると、理子がちょうど食事を終えたところだった。
「あっ、先生」
 理子は笑っていた。その笑顔が眩しかった。
「今、食事が終わったところです。惜しかったですねー」
「そうだな」
 雅春は理子の終わった食器を片づけた。
「あっ、すみません。もう自分でできるのに」
「気にしなくていい。立ってるついでだから」
「先生、食事は?」
「急いで来たから、まだなんだ。どうするかな。帰ってから
適当に食べるか」
「それなら、いいものがありますよ」
 理子はにんまりと笑って、引出しから紙袋を出した。
 袋には「米山ベイカリー」とプリントしてあった。
「これは?」
「昼間、お義姉さんがお見舞いに来てくれて、二人で食べろって、
これを置いて行ったんです」
「姉貴が?」
「はい。何でも評判のパン屋さんらしいですよ。…あっ、美味しそう」
 袋を覗いて、理子が可愛らしく笑った。
「理子、君まだ食べる気か?」
 確か、夕食の食器はどれも綺麗に空(から)だった筈だ。
「いけませんか?お義姉さんは二人でって言ったのにな」
「いや、いけなくはないが、太るぞ」
 理子はそれを聞いてむくれ顔で言った。
「だって先生、太れって言ったじゃないですか」
「限度ってものがある。大食漢になっても知らないからな」
「それは大丈夫です。これくらいじゃぁ、大食漢にはまだまだ
程遠いですよ。だから先生、コーヒー淹れて一緒に食べましょうよ。
私はココアで」
「ココアぁ~?」
 雅春は仰天した。しっかり食事を摂ったのに、ココアを飲むのか。
パンを食べながら。
「だって、夜はコーヒーを飲んじゃいけないって言われてるし」
「君、コーヒーはいつもブラックだし、甘い飲物は基本的に
苦手じゃなかったか?」
「そうなんですけど、ココアを飲みたくなる時だってありますよ」
 理子の言葉に雅春は呆れた。
「しょうがないヤツだな。でもココアは駄目だ」
「どうしてですか?」
「血糖値が上がり過ぎる。良くないよ。ノンカフェインの
麦茶が適当だな」
 そう言うと、雅春は自分にはコーヒーを、理子のカップには
麦茶を注いだ。
「ちぇっ」
 と不服そうに言った。そんな理子が可愛い。
 二人でパンをつまむ。パンは全部で5つあった。理子は食事を
したんだから、1つで終わりだろうと思っていたのに2つも食べた。
「ちょっと、食べすぎじゃないかぁ?食べないのも心配だが、
食べ過ぎも心配だなぁ」
「よくわからないけど、今日は何故かとってもお腹が空いちゃって、
病院の食事だけじゃ物足りなくて」
「珍しく運動でもしたのか?本ばっかり読んでるのが飽きて」
「いいえ。ずっと病室にいました。でも今日は来客続きだったから、
それでかな」
 理子の「来客」という言葉にビクっとした。そうだ。昼間、
美鈴がここへ来たんだった。
 理子がいつもと変わらず明るいので、その事を忘れていた。
まさか美鈴が嘘をついたわけではあるまい。
「理子。・・・今日、来たんだろう?神山美鈴が」
「ええ。来ましたけど、先生はどうしてご存じなんですか?」
 理子は平然としている。
「俺の所にも来たんだ。」
「えっ?」
 雅春の言葉に理子が顔を上げた。


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~ Comment ~

Re: 麺!>misia2009様 

misia2009さん♪

福山さんの、ラーメンをすする図、でしたら
何度も拝見した事がございます。
もう、それはそれは、ステキなお姿で、
ああぁ~~、麺になりたいぃ~~と
思う事、しきりでございました。//▽//;

麺! 

福山増山雅春、ラーメンをすするの図。
それはそれで見たい…
色っぽいような気がします♪

Re: 先生!>misia2009様 

misia2009さん♪

欲しがってるんだから、あげればいいのにねぇ。
寝る前じゃないんだしww
だけど先生、夕飯にパン3つで足りるんでしょうか?
きっと帰ってから、麺かなんか食ったんだゼ( ̄∀ ̄*)ニヤリ☆

美鈴さん、切実ですねぇ。
普通の男性なら、ちょっとくらい、とか思って
お願いを聞いてあげちゃうのかしら?
でも、こういう人が相手だと、後々怖そうですよね。

先生! 

パンと麦茶は、合わないと思います!

脳が疲れた理子は甘いものが欲しかったのかもしれませんね。

美鈴センセの掻きくどきにはニヤニヤしてしまいました…
彼女も教員らしく暮らしてきて、恋の経験は少なそうですね。
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