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小説・クロスステッチ第2部 <完>
10.混 沌 ~ 13.愛 欲


クロスステッチ 第二部 11.もう一度 05

2010.10.11  *Edit 

「それで理子。退院して元気になってからの事になるけど、
あなたはマーを受け入れるの?それとも拒否し続けるの?」
「えっ?」
「マーから聞いたわ。流産して、もう体の交わりをする気が
無くなったって。快楽を伴う行為自体に嫌気がさしたんでしょ?」
 理子は赤くなった。そんな事を今この時に言われるとは
思っていなかった。
「普段は冷静でクールだけど、一度熱くなるとどうしようもない
極端な性格でもあるから、あなたとの夜の生活が若いあなたには
苦痛に感じられる時もあったでしょう。だからわからないでも
ないけれど・・・」
「いえ、最初のうちは苦痛でした。毎晩濃厚なので・・・。でも」
 理子は顔を赤らめながら、戸惑いがちに話した。
 とても愛してる。愛は日々深まるばかり。先生の全てをこの身に
受け止めたい。もっと、深く感じたい。自分が貪欲になっていくのを
感じていた。いったい2人はどこまで行くのか?そんな時に
妊娠したのだった。避妊をしていないにも関わらず、妊娠は
全くの想定外だった。甘かったとしか言いようがない。
「だから、私、愛に溺れていた自分に罪悪感が湧いたんです」
「そう。あなたはまだ若いのに、急激過ぎたのね。マーも、
あなたを愛するあまり、全てをあなたの中に出したかったに
違いないわ。結果も考えずにね。そういう点では男はある面、
無責任だから。何と言っても結婚したわけだし、できたらその時は
その時、くらいに軽く考えてたのかもしれないわね」
 結局、仕方のないことだった。急ぎ過ぎた結婚だったのかも
しれない。何と言っても、普通の恋人同士らしい交際期間を
持たないまま結婚してしまったのだから。お互いに蓄積していたものが
一挙に噴き出してしまったのかもしれない。
「それで、罪悪感は今でもまだあるの?」
「無くなった、とは言えません」
「そうなの。でも理子。もし体の交わりを絶つとしたら、好きな人の
子供を一生産まないってことになるのよ」
理子は切なげな目で紫を見た。
「お義姉さん。その事に関しては、留保してもらえませんか?」
「留保?」
「今はこんな状況なので、よく考えられないんです。ただ、先生を
愛しているから、先生を悲しませたくはありません。それで、
許してもらえないでしょうか」
 涙に濡れた理子の顔を見ながら、紫は優しく頷いた。
 その時、
「あー、理子を泣かせてるー!」
 そう言って、志水が入ってきた。
「あらっ!」
「理子、どうしたの?このおねえさんに何をされた?」
 志水はそう言って駆け寄ってきた。
「ちょっと、聞き捨てならない事を言うわね」
「だって、そうじゃないですか。理子はこうして泣いている」
「理子が泣いているからって、私が泣かせたとは限らないでしょう?」
「いいえ。あなたはあの人の姉ですからね。理子を泣かせることに
かけては天才のあの人の」
 志水はそう言うと、いつもの微笑みを浮かべた。
「ちょっとぉ~」
 紫が呆れ顔だ。
 二人は何となく親しげに見えた。いつ親しくなったのだろう?
 志水の言葉は本気ではない事が理子にもわかった。紫も満更でも
ないような雰囲気だった。
 理子が声をかけた。
「志水君」
「なんだい?理子」
 志水はとても優しげに言った。
「志水君、ありがとう。それから、迷惑かけちゃってごめんね」
「また言ってる・・・」
 理子はさっき神山美鈴と会ってみて、自分のやってきた事を改めて
反省した。志水に対してだ。自分も志水に酷い仕打ちをしてきたと
思う。彼の気持ちを利用した。ただ楽であることだけに縋(すが)って。
「私、志水君にはとっても感謝してる。あなたは、私が思う以上に
いい人だった」
 志水はフッと笑った。
「男はね。好きな女性に『いい人』とだけは言われたく
ないもんなんだよ、理子」
「そうよ、理子。そんな酷な事を言っては駄目よ」
 紫が横から口を出した。
「おねえさん。横から茶化すのは止めてくれないかなぁ」
「あらっ。私はとても真面目なのに」
 そういう紫の目は、笑っていた。とても真面目には見えない。
 なんだかこの二人、面白い取り合わせかも、とそばで見ていた
理子は思った。
「とにかく、理子は僕の事を気に病むことはない。僕の意思で
した事だから。自分の意思でした事を人のせいにはしたくないから」
「あなた、本当に偉いわぁ。うちのマーより、ずっと大人ね」
 再び横から紫が口を挟む。
「だから。あなたは少し黙っててくれませんかぁ?」
「はいはい。すみません」
 紫のそういう姿を見るのは理子は初めてで、とても新鮮で
不思議な感じがした。
「ところで、今『マー』っておっしゃいましたね。あの人の
事ですよね?」
 紫は答えない。志水は怪訝そうな顔をした。
 理子にはわかる。「黙っててくれ」と言われたから黙っているのだ。
そういう所は雅春や自分と通じている、と思った。
「志水君が『黙ってて』って言ったから、お義姉さんは黙ってるのよ」
 理子が見兼ねて言った。
 志水は呆れ顔でため息をつくと、
「なんてひとなんだ」と呟いた。紫は素知らぬ風である。
「マーは先生の事だけど、それがどうかしたの?」
 理子が言う。
「うん。君が病院に運ばれた時に家族に連絡をしなきゃならなくて。
それで君には悪いけど、君の携帯を開いたんだ」
「そうだったんだ。ありがとう。お陰で助かった」
 理子は笑って答えた。
「それで、君の携帯を開いたら、待ち受け画面にあの人が出てきた」
 理子はそう言われて赤くなった。
「君は、あんな状況にありながら、やっぱりまだあの人なんだ、って
思ってショックだったよ」
「ごめんなさい・・・」
「まっ、それはいいんだけど、電話帳で『身内』を開いたら、
一番最初に『まー』ってあってね。最初、誰だかわからなかったんだ。
フルネームかもしくは『先生』なんじゃないかと思ってたから。
僕はあの人の下の名前は知らないしさ」
「あら、そうだった?コンパの時に出なかったかしら?」
 理子の言葉に志水は首を捻った。
「そんな気もするけど、覚えて無い・・・」
 理子は笑って言った。
「先生は雅春って言うの。お義姉さんとお義母さんは『マー』って
呼んでるのよ」
「じゃぁ、君も二人きりの時はそう呼んでるんだ」
「ううん。私はずっと『先生』よ」
「じゃあ、なんで・・・」
「もし万一、携帯を見られた時に、先生だとわからない為にね。
春まで、教師と生徒だったでしょ。関係者に気付かれたら
まずかったから、登録名をそうしたの」
 そう言って理子は笑った。
「なるほど。そういう理由か」
 志水は納得した。
「だけど、待ち受け画面はあの人のままなのに、君は携帯をバッグの
一番底に入れてたね。見つけるのにちょっと苦労した」
 志水が微笑んだ。全てを察しているような笑みだった。この人の
鋭い感性なら、理子の心境は既にわかっている事だろう。だから
理子は笑みだけを返した。
 そばで聞いていた紫にも察しはついているようだ。
「じゃぁ、僕はそろそろ帰るから」
「あらっ、もう帰っちゃうの?」
 と紫が言った。
「長居してもしょうがないでしょう。理子が疲れるだけだし、
もうすぐあの人も来る」
「会って行かないの?」
「どうして僕があの人に会っていかなきゃならないんです?」
「避けてるの?」
「そうじゃないでしょう。会う理由が無いだけです」
「じゃぁ、私も帰るわ。一緒に帰りましょう」
「お断りします」
「あら何故?」
「一緒に帰る理由がありません」
「一緒に帰らない理由もないわね」
 紫は笑った。
「さぁ、決まり!行きましょう。私は車だから、送っていって
あげるわ。この前みたいに」
「この前?」
 理子が不思議に思って訊ねた。
「理子がここへ来た晩よ。手術が終わった後、夜遅いから私が
送っていってあげたの」
 そうだったのか。それで、どこか打ち解けた雰囲気だったんだ。
「今日は早いんだから、電車で帰れるのに・・・」
 と志水は呟いたが、結局、紫と共に出て行った。
 理子は二人が残した雰囲気がどこか楽しげだったので、明るい
気分になったのだった。

「理子くんは、どうですか?術後の経過は?」
 帰る支度をしている雅春に、数学の教師である石坂が声をかけてきた。
「おかげ様で順調です」
「若いですからね。回復も早いんでしょう。大学を休まなきゃ
ならないのは辛い所でしょうが」
 大学の方は志水のお陰で何とかなっている。本当に彼には頭が下がる。
「毎日授業のノートや資料をクラスメートが持ってきてくれまして。
助かってます」
「そうですか。それは良かった。理子くんは勉強家だから、じゃぁ
病院で勉強してるんでしょうねえ」
 雅春は笑った。
「それが、本ばかり読んでいるようです」
「ははは、それは理子くんらしい。本の虫でもあるもんねぇ」
 ひとしきり石坂と話した後、雅春は学校を後にした。気持ちは
既に理子の事で一杯だった。
 門を出たところで、雅春は足を止めた。思いもよらない人物が
そこにいたからだ。
 神山美鈴だった。



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~ Comment ~

Re: 紫さんと志水くんが>misia2009様 

misia2009様

紫さんと志水くんがカップルになったら、楽しいでしょうねぇ。
先生は、さぞうろたえることでしょう^^
実際、カップルになるのかどうかは不明です。二人次第ですねぇ。
どうも、登場人物に成り行きを任せてしまう作者な物ですから(^_^;)
ただ、第二部ではなりません。

美鈴先生も、困った人ですね。
相手が雅春先生だけに、簡単には思いきれないんでしょうね。
彼女の家に上がって、あんな事をしてしまったのが、
いけなかったんでしょうね。
やっぱ、その気になっちゃうでしょう。
私なら、先生を監禁しちゃう(爆)
こんなチャンス、二度とないでしょうから(^^ゞ

紫さんと志水くんが 

いい仲になったら、理子にとっても「まー」にとっても志水くんが「お義兄さん」になるんですねwww(先日のコメントで間違えました)

美鈴せんせ…。
この先も研修で顔も合わせるでしょうし…自分なりに決着をつけたいのでしょうが…勝手に思いつめて盛り上がって結論を欲しがる…ある意味これも研究者肌でしょうか。

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