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小説・クロスステッチ第2部 <完>
10.混 沌 ~ 13.愛 欲


クロスステッチ 第二部 11.もう一度 01

2010.10.07  *Edit 

「マー。どう?」
 理子が深い眠りについた頃、姉の紫が入ってきた。
「姉さん、済まない。ごたごたに巻き込んで」
 わざわざ仕事を休んでまで来てくれた姉に対し、本当に
申し訳ないと思うのだった。
「何言ってるの、水くさい。だけど、本当に凄いお母さんね」
 紫はため息をつくように言った。
 話しには聞いていたが、まさかあそこまでとは思っていなかった。
そして、結婚式の再現ドラマに対する文句をこんな形で言われて
驚いていた。弟と理子は、あのドラマの件で随分と心配していたが、
その時は杞憂だと思っていた。その思いを今は訂正する。
「理子は眠ったの?」
「ああ。まだかなり頭痛がするようだ」
 雅春は苦悶の表情を浮かべていた。
「そうなの。可哀そうに・・・」
 二人は理子を見た。
「随分、痩せちゃったわね。私がもっと様子を見に行っていれば・・・」
 雅春とは連絡を取り合わないと聞いていたので、紫は時々、
理子にメールをしていた。一人で居させるのが心配だったからだ。
だが理子は、その度に“元気でやってます。心配いりません”と
返して来るのだった。紫も仕事で何かと忙しく、毎日夜遅い。だから、
顔を見に行こうと思っていてもなかなかできずにいた。
「姉さん、それは仕方ないよ。2人の問題なんだし」
「でも私、とっても見兼ねて、少しは手を打ったのよ」
「手を打った?」
 雅春は姉の言葉に顔を上げた。
「彼女の友達に会って、色々話したわ。最上さんって言ったかしら」
 そうだったのか。それで枝本も詳しかったのか。枝本の言葉は
痛かった。みんな真実だったからだ。それでもすぐには目覚める事が
できなかった。だが、枝本が来てくれたのは有り難かった。
そう言えば志水も枝本の事を知っていた。枝本は志水にも会ったのか。
「ところで、マー。夕べあなたはどこにいたの?」
 突然の紫の問いに、雅春はうろたえた。
「私に電話がかかってきたのは、確か10時を過ぎてたわよね。
タクシーで病院へ向かってるって言ってたけど、どこから
タクシーに乗ったのかしら?」
 雅春は目を背けた。
「答えられないわけ。それとも答えたくないのか」
 紫は厳しい目を弟に向けた。
「ここでは、話せない。理子の前では・・・」
 雅春が言った。
「じゃぁ、外へ出ましょう」
 二人は病室を出て、廊下にある長椅子に座った。
 座るや否や、
「それで?」
 と紫が言った。
「彼女の所にいたのかしら?」
 なかなか切り出さない弟を見かねて、紫の方から口火を切った。
「ああ。昨日は研修会終了後に少し飲んで、彼女を家へ送って
行ったら、上がるように誘われた」
 苦しそうに雅春が言った。
「それで、上がったんだ」
「ああ・・・」
「ふぅ~ん。でもその様子じゃ、結局のところ何もなかったようね」
「わかるの?」
「わかるわよ。お姉さんだから」
 紫はエッヘン!と言わんばかりの様子だ。そして唐突に言った。 
「昨日の男の子、志水君って言ったっけ。あの子でしょ?
理子の相手は。」
「そうなんだ。だけど、彼がいてくれたから理子は助かった。
そうでなかったら手遅れになっていたかもしれない」
「あの子、年の割に凄くしっかりしてるわよね。ある意味、
マーより大人かもって思ったわ」
「そうかもしれないな。俺はあいつを侮(あなど)っていたみたいだ。
手術中に色々話したんだけど、あいつにとって俺は恋敵なのに、
結局はあいつに諭された」
「あの子は多分、かなり辛酸を舐めてきたんじゃないかな。
あの若さで」
 紫が呟くように言った。
「えっ?」 
 雅春は驚いた。
「だって、理子と同い年だぜ?」
「そうね。だから余計に深い部分があるんじゃないのかな」
 そう言うと紫はとんでもない事を口にした。
「私・・・、あの子に興味を覚えたな」
「えっ、何だってぇ?」
 予想もしない姉の言葉に雅春はひどく驚いた。
「姉さん、何言ってるんだよ。あいつ、まだ19だぜ?姉さんより
8つも下じゃないか」
「愛があれば年の差なんて、でしょ?」 
 紫はニッコリと笑った。
「信じられない。って言うか、信じたくないな」
「別に、信じてくれなくても結構よ。私は私でやるから」
 雅春は呆れ顔で姉を見た。
 誰が見ても美しいと思うだろう。頭もいいし、気持ちも優しい。
ユーモアもあるし、非の打ちどころのない女性だと思う。いつか
俺と同じように、誰かを愛するようになるのだろうか?だが、
その相手が志水ではあって欲しくない。何と言っても年下過ぎるし。
「それより」
 紫の表情が厳しくなった。
 紫は美鈴の事へ話を戻した。何も無かったとは言っても、
全く何も無かったわけではないだろうと問い詰められた。
この姉は鋭い。雅春の事なら何でもお見通しと言った感じだ。
 仕方がないので、雅春は事の次第を一部始終隠さずに話した。
結局、こうしていつも姉に全てを知られることになる。子供の時から
そうだったし、理子の時もそうだった。この姉には頭が上がらない。
 雅春の話を聞いた紫は、その人危険ね、と一言漏らした。
「危険?」
 雅春にはどう受け取ったらいいのかわからなかった。
「マーが志水君に感じた危険と似てる、かな」
「えっ?」
「タイプは全然違うけど、彼女は多分、かなりマーに入れ込んでる。
簡単には諦めないと思うわよ」
 紫は言った。最初は結婚している雅春を遠くから見ているだけで
済んでいたのに、思いもよらず親しくなってしまったことによって、
引き返せなくなってしまったのではないか。一緒の時間を持つように
なって欲が出てきてしまった。しかも、もう少しで自分の手に入る
ところまで来ていた。ここまで来たら、あとはもう、
手に入れずにはいられない。
「いつも笑顔の女。笑顔でいる事は良い事だけど、その裏に
隠された感情…。」
 雅春は眉を顰めている姉の言葉に、
「それって、どういう意味?」と問い返した。
「いつも笑ってる女って危険なものよ。マーのこれまでには
いなかったタイプだったから、わからなかったのも当然だろうけど」
「姉さん、言ってる意味がわからない。なんでいつも笑ってる女は
危険なんだ?」
「人は誰にでも感情はあるでしょう?いっつも楽しいことばっかり
じゃない。むしろ、辛かったり悲しかったり、腹が立ったり、
そういう方が多いものよ」
 それは姉の言う通りだ。そのくらい雅春にだって解っている。
「でも彼女は『笑っている方が楽しいから』と言った。ポジティブで
いいと好感を持ったんだけど」
「ばーか!単純!セックスには長けてても、心の機微には全く
疎(うと)い。そういう点では、志水君の方が勝(まさ)ってるわよ」
 紫はそう言って笑った。
「ここで志水の事を出すのはやめてくれよ」
 雅春は赤面した。
「笑ってる方が楽しい、なんて、そんなのは誤魔化しに過ぎないのよ。
心の中では、色んな感情が渦を巻いてる筈だわ。隠しているだけ」
 確かに、どんな時でも笑いを心がけるのは悪いことではない。
笑いは人を明るくする。心を軽くする。でもその一方で、故意の
笑いは本心を包み隠す。何を言われても笑っている。どんな態度を
取られても笑っている。そうやって、自分の心の中の感情を押し込めて、
相手には良い印象だけを与えようとする。
 そういう打算があってやっているわけではないのだろう。
それはきっと本人の性分だ。だが、それだけに根が深い。外へ
出さない分、どんどん心の底に溜まっていく。溜まればいつか
溢れ出す。本人ですら、それを止めることはできない。
こうなったら大変だ。
 昨日の彼女の行動からすると、そこまで来てしまっているのでは
ないかと紫は言った。それを聞いた雅春は愕然とした。
「じゃあ、彼女の、いつになく大胆だったあれは、そのせい?」
「そうかもね。どうするの、マー?」
 雅春は姉を見た。
「どうしたら、いいと思う?」
「あなた、情けないわね」
「最近、自分でもそう思う。学校でのトラブル以来、つくづく自分は
駄目なヤツだと悟ったよ・・・」
 雅春は力無く言った。
「学校での事は、私にも責任があるわね。再現ドラマで二人が
結ばれた事を描いてしまったから。あの事は高校生達には
ショッキングな事だったようね。それに、保護者の耳にまで入って
大騒ぎになるとは思わなかったわ。ごめんなさいね」
「仕方ないよ。もう済んだ事だし、何とか収まったから。あの時は、
姉貴のヤツ~って思ったけどね」
 雅春はそう言って軽く笑った。
「そう。だけど、その事は申し訳なく思うけど、私、今度は
助けないわよ」
 紫が素っ気なく言った。
「姉さん・・・」
「そんな顔をしても駄目よ。あなた幾つよ。いつまで姉さんに
頼ってるのよ。身から出た錆でしょ。自分でどうにかしなさい。
大人なんだから」
 本当に世話の焼ける弟だ。これまで紫は弟可愛さに色々と助けて
やってきたが、いい加減、そろそろ突き放してやらないと本人の
為にならないだろう。
「自分でよく考えなさい。私が言えることは、自分の気持ちに
正直になりなさいって事だけ。変な意地や見栄は張らないこと。
何が一番大切なのか。それをよく考えて迷わないことよ」
 紫はそう言うと、理子の病室へと入って行った。
 一人取り残された雅春は考える。
 自分の考えは既に決まっている。自分にとっては理子が全てだ。
他の誰も入り込む余地は無い。もし理子の愛が自分から離れて
しまったとしても、今の自分の気持ちは変わらない。他の女は
愛せない。どんなに求められたとしても。
 例えフリーになったとしても、もう学生の時のように、
他の女達から自分を守るために誰かと付き合うような事を二度と
する気は無い。虚しくて、心が渇く行為だ。
 美鈴には申し訳ないと思うが、付き離すしかないと思うのだった。


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~ Comment ~

Re: 志水が俺の義弟になって>misia2009様 

misia2009さん♪

今回は、姉弟のやり取りがウケたのでしょうか。
お姉さんも、なかなか恋人ができなくて、本人なりには
少し悩んでいるみたいですよ。
弟構ってるうちに、そろそろアラサーなお年頃になってきて。

さて。
取りあえず、ヨリを戻すだろうと思われる二人ですが、
この後、まだまだ波乱含みの展開が待っております^^

Re: NoTitle>水聖様 

水聖さん♪

こんにちは^^
やっと、事態は好転の兆しを示してきましたね。
互いに互いが、かけがえのない存在だと、つくづく
思い知らされた事件だったようです。

今後の展開、どうなるのか。
お楽しみに^^v

志水が俺の義弟になって 

理子にとっては、お義兄さん。なんだ、そりゃあ!!
…と頭を抱える雅春先生、可愛い♪
しかも、そうなったらなったで「よかった~」とか言って楽しく志水くんと付き合いそうな理子♪

雅春先生は、相手が誰であろうが、お姉さんに好きな男ができることを想定してないんですね。
理子に対しても別にプライドにかけて意地張ってるわけではなく、ウロたえてるだけ…
コドモだ、コドモ~~
…女性読者の母性本能ワシ掴みですね…

そして自分に気になる男が現れたからサクッと弟を切り捨てようとする姉。
女ってやっぱドライ。
でも紫姉もアレですね、志水くんが厄介なの知ってて興味もつんだから、根が世話焼きですね…
いいコンビの姉弟orz

紫姉さんのような頭のいい女性は志水くんのタイプかもしれず。
美鈴センセは根が深かったもよう。
まだまだ一波乱あるのでしょうか。楽しみです。

NoTitle 

先生と理子ちゃんは、やっとお互いの本当の気持ちに正直になれたようで、よかった、よかった。
でも、美鈴さんのことはかなり根が深そうなので心配です。
そして、まさかの志水くんと紫さんにフラグが?!
まだまだ、予断を許さない展開が続きそうですね。
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