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小説・クロスステッチ第2部 <完>
10.混 沌 ~ 13.愛 欲


クロスステッチ 第二部 10.混 沌 03

2010.10.02  *Edit 

「俺はさ。黒田さんが好きだった。自分で自覚していた以上にね」
 その言葉に、理子は少なからずショックを受けた。「黒田」とは、
当時の枝本の彼女の事だ。2人がとても仲良しだった事は、ずっと
2人を見てきた理子にはよくわかっていた事ではあった。
「彼女から別れ話をされた時、酷く頭にきたんだ。まずプライドが
傷ついた。相当に。俺のプライドは人並み以上だったからね。
そのプライドを傷つけられたことに、あの時は耐えられなかったんだ」
 それは、ずっと枝本を見てきた理子にも察せられた事だった。
負けん気が強くて、何事にも強気だった。常にリーダーシップを
発揮して、自分のペースにもってゆく。まだ内向的で消極的だった
理子にとって、そんな枝本は憧れであり、そういう所が好きだった。
理子はちょっと強引な男が好きなのかもしれない。自分をリードして
もらいたい、そんな気持ちがいつも心の中にあるような気がした。
結局、母親の支配から抜けたい一心でありながら、別の人間の支配を
求めているのではないか?そんな風に最近は思う。
「プライドを傷つけられたら、とても素直にはなれない。
好きだったから付き合っていたのに。突然の別れ話に、内心では
納得できないでいた。だけど、プライドが邪魔して、自分から
それは言えなかった。そして、その後、実は彼女は俺を試す為に
別れ話を持ち出したんだと知って、更に頭にカーッと血が上った」
 そうだった。その話は黒田萌子の親友から聞いていた。
「萌子は枝本君の気持ちを試しただけだったの。本当は引き止めて
欲しかったんだよ」と言っていた。
 その言葉を聞いた時、同じ女としてそんな気持ちを理解できなくは
無かったが、なんて馬鹿な事をしたのだろうと思ったものだった。
「凄く腹が立った。何故そんな事をするのか、俺には理解できなかった。
成長するに従って、女の子は時にそういう事をするっていうのが
徐々にわかってはきたけど、そもそも好きな相手を試すような
真似なんて良くないさ。試されたら、相手は自分の事を信じていない、
疑っているって思うじゃないか。それがどんなに傷つくか。
わかってはいなかったんだろうけど、俺は多いに傷ついた。
好きだったから余計にね」
 枝本は憮然とした表情だった。理子もそれを聞いてしんみりとする。
「そうだよね。私、そんな予感はしてたんだ」
 と理子が言うと、枝本は驚いた顔をした。
「私ね。枝本君と黒田さんの別れ話の事情、知ってたの。黒田さんの
親友の小松さん、っていたでしょ?彼女から聞いてたの」
「そうだったんだ」
「3学期になってから、枝本君の黒田さんへの攻撃といったら
凄まじかったよね。私は、枝本君があそこまで黒田さんに固執するのは、
深い愛情の裏返しなんじゃないかって思ったの。だからもしかしたら
私は、単なるあて馬に過ぎないのかも、って思いが湧いてきて。
枝本君が私の事を好きだなんて思えなかった」
 理子は当時の悲しい予感が当たったようで、今更ながらに悲しい
気持ちになった。今はもう、ただの友達の2人なのに。
「もしかしたら、そういうものもあったかもしれないけど、彼女を
憎む気持ちの一方で、理子に惹かれていったのも嘘じゃないよ。
最初は、黒田さんから別れ際に君の事を言われていたから、
ちょっと気にしていただけだったけど、知るほどに惹かれて
いったのは確かなんだ」
「それを聞いて少しはホッとした」
 理子は微かに微笑んだ。
「あの時、学校が別々にならなかったら、別れることなんて
無かったのにって思うよ」
「本当に?」
「本当に。だけど、結局、親父の転勤で名古屋へ引っ越し
ちゃったからな。別れる運命だったのかな」
 運命か。でも、再会した。
「俺、君から手紙を貰った時、君も黒田さんと同じだって思った」
「えっ?」
 理子はドキリとした。
「確かに俺も悪かったけど、君の手紙を読んだ時、また
試されてるんじゃないかって思ったんだ」
「枝本君・・・」
「本当のところは、どうだった?そういう気持ちが少しは
あったんじゃないの?」
 理子は胸に痛みを覚えた。急所を突かれてしまったような痛みだ。
それは枝本の言っている事が正しいと証明している。
「私・・・、自分では試すつもりなんて全くなかったのよ。でも、
枝本君から何の返事も来なくて、凄く悲しくて落ち込んだ。少しは
期待してたのかもしれない。嫌だとか、何故とか、そういう
リアクションを。それが無かったから、やっぱり私は、枝本君に
とっては、それほどの存在では無かったんだなって思って、
悲しかった・・・」
 理子は自分の膝に目を落とした。枝本の顔をまともに見れなくて。
「理子でも、そういう事をするんだな。でもって、今、それと
同じ事を先生にしてないか?」
「えっ?」 
 理子は驚いて枝本を見た。
「俺は理子をあの時に引き留めなかった。引き留めなかった事を
今でも後悔している。あの時に引き留めていれば理子は先生の
ものではなく、俺のものだったんじゃないかって思いが今でも
抜けない。先生は、これまで女の方からいつも別れ話を
切り出されてきた。そっけない態度に愛想をつかした女の方から。
俺の素っ気なさに愛想をつかして別れの手紙を出した理子のように」
 理子は震えた。枝本の言いたいことがわからなかった。
わかりたくなかった。
「先生は今、先生のそっけない態度にも愛想をつかさない女性と
付き合ってる」
 枝本の言葉に、一瞬、全ての時間が止まったような気がした。
「えっ?今なんて?」
 確認しないではいられない。
「理子に疲れて、楽な女と付き合ってるんだよ」
 枝本の言葉が信じられなかった。
「そんなの、嘘・・・」
「どうして嘘だと思う?それは、理子は先生が自分だけを
愛している事を十分知ってるからだ。先生は理子以外は誰も
愛せないし、相手にしない。こんな状況になっても、自分を決して
裏切らないと思ってるんだろう?自分の事は棚に上げて」
 枝本は冷たい目でそう言った。
「自分の事は棚に上げてって・・・」
 理子は震えた。
「違うのか?じゃぁ、あの男は?あいつだろ?結婚してる理子を
諦めずに追いかけてる男っていうのは」
「どうして、知ってるの?」
「以前、先生から聞いた。あいつは危険だって心配してたよ」
「先生が・・・」
 枝本の言葉に驚いた。志水の事は何も話していないのに、何故
雅春は知っているのだろうか。勘の良い人だから、言わなくても
気付いていたのか。しかも、あの嫉妬深い人が、理子にはその事を
何も言わずにいたなんて。
「今は、あいつと付き合ってるんだろう?あいつもずるいけど、
理子もずるい」
「ずるい?」
「そうさ。あいつの愛を利用している」
 理子は何も言えなかった。
「俺が見たところ、理子はあいつの愛を受け入れもせず、拒否も
していない。これのどこが、ずるくないって言えるんだ?」
「・・・・」
「図星だろ?」
 何も言えない。枝本の言うとおりだ。
「あいつもあいつだ。何が『今日は彼に送ってもらうといい』だ。
いつもは自分が理子を送っているんだと自己主張しやがって」
「えっ?そうなの?」
 「気付かなかったのか?先生は、あいつと先生と俺は同じ匂いが
するって言ってたけど、本当だな。だから意図するところが
すぐにわかる。お互いに」
 枝本は憤慨した様子だった。
「理子。もっと自分の気持ちに正直になれよ。そうでないと、
本当に後悔することになるぞ。もっと傷つくぞ。先生は、自分が
そばにいない方が理子の為なのかもしれないと思い始めてる。
そして、理子のいない穴を埋めずにはいられなくて、他の女を
身代わりにしようとしてるんだ。いいのか?それで?先生を
他の女に奪われても、君は生きていけるのか?」
 枝本の言葉は理子の心に重くのしかかってきた。
そして、何かが壊れてゆくような気がするのだった。


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~ Comment ~

Re: 「えっ?そうなの?」>misia2009様 

misia2009さん♪

本当に理子って鈍いですよね。
これじゃぁ、パートナーは気が気じゃない。
好きな相手の言動は非常に気にするのですが、
それ以外の男の事に関しては非常に無頓着。
男には魅力的に映るのかもしれませんが、同性には
理解できないわけで。本人もモテてる自覚が全く無いし。

枝本君はいい男ですね。同級生ですが、あこがれの男子かな~。
おっしゃる通り、黒紋付、とても似合うと思います。
紅顔の美少年ってタイプだし。

志水君も枝本君も、それなりに異性と関係しているせいか、
先生よりも大人ですね。
先生は肉体的には経験豊富だけど、精神的には0ですからねぇ。^^

四つ葉ですか。
そうしたかったのですが、全体として上手くまとまるかが
最大の難関でしょうか。
志水君の過去と今後で、それなりの紙面になるし、
ネタバレになれば、ゆきちゃんの事件もあったりなんか
するのですが、第二部では無理みたいで。
でも、当人たちの話じゃないから、番外編の方が合っている
のではないかと…。まぁ、当人たちのこれから、も
あるにはあるのですが、第三部が限界のような気が…。
まぁ、登場するとしたら、かなり先になるかなぁ~と思います。(^_^;)

Re: NoTitle>OH林檎様 

OH林檎さん♪

辛いですよねー。やっぱり、二人はラブラブじゃないとねぇ。

ゆきちゃんも、枝本君も、ほんとに優しい人達ですよね。
友達の為に、ここまで親身になって。。
枝本君なんか、まだ理子が好きなだけに、本当に尊敬してしまいます。

ここまで、二人に助言されながら、まだ逃げてる理子って……。

「えっ?そうなの?」 

ああっ鈍い~~理子、鈍い~~すでに所有されてることに気づいてない~~
コーヒーもう一杯飲んできましたよ……

この天然が周りをその気にするんで、鈴木綾子が散々言った「手玉にとる」ってのは当たらずとも遠からずなんですよね。
綾子は自分が「女として認められたい」気持ちが強いから、こういう抜けた魅力を醸したくても醸せないんでしょう。

まぁこういうボケ(失礼)が主人公じゃないと話になりませんわね……
枝本君みたいに独りで考えてこれだけの結論を出せる人間が主人公だったら、彼の頭脳の展開が早すぎて読者はついていけないでしょう。

それにしてもイイ男ですね。私、枝本君が一部の頃から好きです。
もちろん黒目がクリッとした日本的な美少年だからですが、
(正直、黒紋付を着て謡ってほしいです)

「君がそんななら、僕も名乗りをあげるよ」という態度ではなくて、公平で、気高くて。自分の痛みを受け止めていて。
中学のとき女でイタイ目を見たぶん、雅春先生より大人なんですね。

そうか、三人は似ているんですね。
志水くんの事情もそれだけで一本になりそうですが。
「四つ葉構想」ひそかに支持を送ります……

NoTitle 

つ、つらい…。
早く光が見たいっす!!!
(お互い様か…)

それにしても、ゆきちゃんといい、枝本君といい、
2人はステキな友人に支えられてますね。
ここまで本気になって忠告してくれる人、
現実にはなかなかいませんもん。
頑なな理子の心よ!
早く雪解けをーーーー!!!!
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