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小説・クロスステッチ第2部 <完>
10.混 沌 ~ 13.愛 欲


クロスステッチ 第二部 10.混 沌 01

2010.09.30  *Edit 

 9月に入り、新学期が始まった。
 研修ばかりの夏休みは終わった。矢張り生徒相手の授業の方が、
緊張感があって疲れるが、反応がある分、楽しくもある。
 雅春の沈んでいた心は若干だが浮上していた。
 時々会う神山美鈴のお陰だ。彼女と一緒にいると何となく癒される
気がするのだった。雅春がどんな態度で接しても、微笑んでいる。
大学の時に付き合っていた女達は、雅春の素っ気ない態度に不平を
言ったり、顔に表したりしていたが、彼女は雅春に素っ気なくされても、
気にならない素振りだった。雅春が機嫌の悪い時でも、その態度は
変わらない。一貫して優しい笑顔だった。
「どうしていつも、そんなに笑顔でいられるんだい?」
 疑問に思った雅春の言葉に、
「笑顔でいた方が楽しいから」
 と美鈴は答えた。
 美鈴のその言葉に雅春は惹かれた。精神的に参っていた雅春に
とっては、美鈴の言葉は胸を打った。
 何の気を使わなくても、いつも笑顔でいてくれる女性。一緒に
いて楽な相手だった。
 雅春は疲れ果てていた。理子を愛していることには変わりはない。
だが、何の進展もなく、堂々めぐりのような毎日が辛くてたまらない。
心は乾く一方だった。そこに美鈴が現れたのだった。
 人間は弱い。どんなに強い人間でも、打ちのめされたままの状況が
長く続けば続く程、脆くなってゆく。人は流されやすい。その方が
楽だからだ。必死に踏みとどまろうとしても、やがては耐えきれずに
流されてしまう。雅春は今、そういう状況にいた。
 それに、理子をこういう状況に追い込んでしまったのは自分だという
思いがある。そんな自分と一緒にいても、理子が辛い思いをするだけ
なのではないか。自分では理子を元には戻せないのかもしれない。
そんな思いが雅春の心を支配しようとしていた。理子の為を思うなら、
このまま身を引いた方が良いのではないか。
そんな思いが湧いてくるのだった。

 紫(ゆかり)は二人が心配だった。
 魂が強い絆で結ばれていると思っていた二人。
 こんなことになろうとは。
 二人して自分を傷つけている。
 二人して、今、流されようとしている。楽な道を選ぼうとしている。
 良いのだろうか、本当にそれで。
 絶対に後悔する筈だ。
 私はどうしたら良いのだろう。
 割って入ったところで、結局は二人の問題だ。いくら諭しても、
自分を責めることしかできない2人の心には届かないのではないか。
 弟が、他の女性と個人的に会っている事を知り、紫はショックを
受けた。あれほど、女に興味の無かった弟が。理子以外の女に心を
奪われようとしている。だがそれは錯覚だ。理子を愛することに
疲れて楽な女性を選んでも、冷静になったら必ず気づく。
その時どれだけ傷つくのだろう。
 理子も同じだ。どれだけ自分を傷つけ、弟を苦しめれば気が
済むのだろう。弟が過ちを犯したとき、理子はどうするのか。
耐えられなくなって、理子も楽な相手に逃げ込むかもしれない。
 そしてやがて気づくのだ。矢張りお互いでなければならない事に。
でもその時では遅い。互いに自分と相手を裏切ったことに、
今よりも苦しむだろう。そうならないうちに、何とかしなくては。

 枝本はゆきからの話に衝撃を受けた。
 信じられなかった。何故あの二人が。
 どれだけ自分が理子を求めたか。求めても得られずに泣く泣く
諦めたというのに。
 先生は何故、家を出たんだ。いくら理子に懇願されたからと言って、
どうして彼女を手放せる。
 しかもお互いに別の相手と付き合っていると言う。
 先生は他校の女教師と。理子は、以前から先生が危惧していた、
あのクラスメートと。
 何故二人してそんな事ができるんだ。
 二人の絆はその程度のものだったのか。2人に対し、怒りの
気持ちが湧いてくる。
 他人の自分がこんな気持ちになるなんておかしいかもしれないが、
あの二人には特別な思いがある。
 自分だって理子が欲しかった。理子と共に楽しい青春を送りたかった。
中学生の時に手放してしまった事をどれだけ後悔したことか。
 そうだ。先生だっていずれ気づく筈だ。理子を手放してしまった
愚かさに。その時に後悔したって遅い。それを先生に言ってやらなきゃ。
 枝本は母校へ、雅春に会いに行った。

 まだ少し蒸し暑い日、枝本は半年振りに母校を訪れた。
卒業してから一度も訪れてはいなかった。懐かしさが湧いてくる。
 職員室へ赴くと、何人かの教師がいた。雅春の席は以前とは違う
場所だったが、背が高いからすぐに見つかった。
「増山先生」
 入口で声をかけると、振り向いた雅春は驚いた顔をした。
「枝本か」
 驚いた後、何故彼がここへ来たのか、わかっているような表情をした。
 すぐに平常と変わらない顔になり、
「久し振りだな」
 と言った。
「先生、話があります」
 深刻そうな顔をしている枝本を見て、雅春は応接室へ枝本を連れて
行った。ソファへ座るように勧める。
「一体、どうしたんだ?」
「わかっている筈です」
 雅春は黙ったまま、枝本に茶を出すと、枝本の向かい側に座った。
「先生。絶対に後悔しますよ」
 枝本は雅春を睨むような顔をして言った。
「何のことだ」
 雅春はどこかやつれていた。理子の事で消耗しているのだろう。
推測して余りある。
「理子と別居していると聞きました。何故そんな事をしてるんです。
夏休み中に最上さんが家へ遊びに行ったそうです。そこで理子から
事情を聞いて驚いていました。僕も最上さんから話しを聞いて
驚きましたよ。愕然としました。いいんですか、こんな事をしていて。
僕は中学の時に彼女を手放してしまった事を、未だにとても後悔
してます。後から気付いても遅いんですよ。取り返しがつかなくなる」
 枝本の口調は強かった。
「後悔しても遅い、か。それはそうだな」
 雅春は何故か冷静だった。
「先生は今、他の女性と付き合ってるそうですね」
 枝本の言葉に、茶をじっと見たままだった雅春の顔が枝本を見た。
「そんな事まで知ってるのか」
「まだ他にも知ってますよ」
「どんな事だ」
「理子が、あの男と付き合っています。例のクラスメートです」
「なんだって?」
 雅春の顔色が変わった。明らかに動揺している。
「2人とも何をやってるんです?愛し合っていながら、どうして
別の人間と?僕には理解できません」
「理子は何故あいつと・・・」
 雅春はうろたえていた。
「それはあいつが、理子の心の隙間に上手く入り込んだんでしょうよ。
先生が付き合っている女性のように」
「彼女は、違う」
 雅春は強い口調でそう言った。
「違うって、何が違うんです?」
 枝本は射るような目で雅春を見つめた。雅春はそんな枝本の
視線を受けて目を逸らした。
「俺の方が勝手に」
「それこそ、違うでしょう。先生は結婚してるんだ。それは相手も
承知してる筈でしょう?わかっているのに親しくして、一緒に
出かけたり食事したりするのは何故なんです?気があるからに
決まってるでしょうが」
 雅春は情けない顔をした。枝本はこんな彼を見るのは初めてだった。
自分にとってはいつも教師であり、常に堂々としていたし、自信に
満ち溢れているように見えた。常に冷静であり、クールで何事にも
動じない強さがあった。そんな人だから、とても自分は敵わない、
太刀打ちできないと思っていたのに。
「あなたの方が理子より遥かに大人なのに、何故そんな分別の
ない事を?あなたには理子しかいない筈でしょう?その事で理子が
更に傷つくとは思わないんですか?」
「理子はもう、俺を愛していないのかもしれない。愛していないなら、
傷つくこともないだろう」
 雅春の言葉に、枝本は怒りが湧いてくるのを感じた。
「本気でそんな事を言ってるんですか?先生がこんなに情けない
人だとは思わなかった。あなたがそのつもりなら、僕も遠慮
しませんよ。僕だって、理子が欲しかったんだ。僕の方が先に
理子を愛したんですから」
 枝本はそう言うと、その場から去った。
 悔し涙が頬を伝った。
 こんな事って、あるか!
 理子しか愛せないんじゃなかったのか。
 枝本は心の中から怒りと悲しみが溢れて来るのを
押さえきれないのだった。


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~ Comment ~

Re: NoTitle>水聖様 

水聖さん♪

スミマセン、こじれちゃってて…(^_^;)
まどろっこしい二人ですよね。
ネックは理子、なんでしょうか。
先生もなんだか情けないですが。

志水君の家庭の事情も気になりますよね。
いずれ明らかになる筈ではあるのですが、
第二部では無理かも…って、第三部があるのかい!
って感じですが、それについては未定でございます。

志水君に関することや、その他理子の周囲の人間の
トラブルなど、盛り込みたい事が多いのですが、
長くなり過ぎて無理っぽいので、もしかしたら
第三部、もしくは番外編といった形で将来、出て来るかも…です。

本当は、四つ葉のクローバーをなぞって、4部形式で
完結させようかな、なんて考えていたのですが、
どうも力量が足りないようで……。
取りあえずは、2部で終わりにしようかなと考えております。


NoTitle 

ここしばらくドキドキしながら読ませていただいております。
こじれまくりですね、そこにお互い、入り込んでくる異性が。
修復は可能なんでしょうか。そうあってもらわなければ困るんですが・・・。
でも、志水くんの複雑な家庭事情も気になります、いずれ明らかになるんでしょうか。
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