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小説・クロスステッチ第1部 <完>
第9章 染まる染まらない~第15章 許されざる者許す者


クロスステッチ 第1部第9章 染まる染まらない 第4回

2010.03.14  *Edit 

 「理子姫」
 部屋へ入るなり、そう呼ばれた。
 「まさに、お姫様みたいだ」
 「先生。みんなの前で恥ずかしいじゃないですか」
 理子は詰問するような口調で言った。
 「そうか?俺は平気だが」
 「先生は平気でも、私は恥ずかしいです」
 「それなら、ごめん。お前があまりに可愛いから、つい、な」
 と言って、微笑む。その笑顔がとてもチャーミングだった。
そんな顔で言われると、何もかも許したくなってくる。
 増山は理子の前に立つと、理子の顎を上げて口づけした。
 唇から、どんどん熱が全身に広がってゆく感じがする。
 増山が帯留をほどきだした。
 「着物って、色っぽいよな。だから、脱がしたくなるんだ・・・」
 と、増山が切なげに理子の耳元に囁いた。
 「先生のエッチ・・・」
 「男はみんな、エッチだ」
 そう言っている間に、帯がほどけた。


 「よく、時代劇で、帯をくるくるってやるだろ。女の子が
ア~レ~と叫びながら」
 「まさか、やりたいとか言うんじゃ?」
 「うん」
 「やめてください。そんなお下劣なこと」
 「お下劣か?」
 「お下劣です」
 理子は、ギロリと増山を睨んだ。
 「しょうがない。今日は我慢するかぁ」
 今日は我慢する?じゃあ、いつかはやってやると思っているのか。
 「先生がこんなに子供っぽいとは思ってませんでした」
 と理子が言った。
 「子供っぽいか?」
 増山は意外そうに言う。
 「子供っぽいです」
 「子供が、こんな事をするか?」
 増山が襦袢の裾へ手を入れて、理子の太ももを触った。
 「きゃっ!」
 と、理子は思わず身を引く。
 増山は妖しい瞳で理子を見ていた。
 「先生。あとは自分でやりますから」
 「最後までやらせてくれないのか?」
 「恥ずかしいから」
 「俺とお前の間でか?」
 「あなたと私の間だからです」
 理子の毅然さに、増山は折れた。
 「仕方ない。ただし、服は着るなよ。どうせ脱がされるんだから」
 理子はフッと小さな吐息を漏らした。この人には勝てないな、と思う。
 理子は増山に後を向いていて貰って、手早く脱ぎ、綺麗に畳んだ。
それから、下着姿のまま静かに増山のそばへ歩み寄ると、後ろから
そっと抱きついた。
 「理子・・・」
 増山は理子の方に体の向きを変えて抱きしめ、ベッドに押し倒した。
 「先生、今日は駄目」
 「どうして。こんな悩ましい姿で、そんなつれない事を言うのか」
 「先生が服を着るなって言うから、着ないだけです。それ以上は困ります」
 「お前は、俺に抱かれたくないのか?」
 悩ましげに言う。
 「そういう問題じゃないです。みなさん、下にいらっしゃるのに・・・」
 「大丈夫さ。みんな察してくれてる」
 「本当に?先生が勝手にそう思ってるだけじゃないんですか?」
 理子にそう言われて、増山は返す言葉が見つからなかった。
 「先生は平気かも知れませんが、私は平気じゃありません。この後、
みなさんと平気な顔して会えないです。少しはそんな私の気持ちも
考えてくれませんか」
 「・・・わかった。悪かった。服を着てくれ」
 そう言って、増山は体を起こした。そんな増山の様子を見て、
理子は少し不安になった。それでも理子は黙って服を着た。増山は
そっぽを向いている。着替え終わって理子が隣に座っても、身動きも
しない。理子は溜息をついた。どうしたものか。このまま、ずっと
こうしていても仕方が無い。
 理子は意を決して、「先生。私もう帰りますね」と言って立ち上がった。
 その手を増山が無言で掴んだ。
 「どうしてそんなに、冷たいんだ」
 増山が下から理子を見上げている。その目には微かだが怒りを
宿していた。理子は戸惑う。どうしたら良いのかわからない。
 「ごめんなさい・・・・」
 「何故、謝る」
 「先生、怒らないで。私、どうしたらいいかわかりません」
 「だからと言って、何故、さっさと帰ろうとする?」
 「だって・・・」
 理子は困惑した。増山が何故こんなにも機嫌が悪いのか分からない。
確かに、すぐに帰ろうとした自分は短絡的だったかもしれない。
だがそもそも最初に不機嫌になったのは増山だ。断ったくらいで、
どうしてこんなに不機嫌になるのか。こんな増山は初めてだ。
だから余計に戸惑うのだった。
 「俺を置いて、早く帰りたいのか?」
 「先生の意地悪」
 「意地悪はお前だ」
 その言葉に、理子は腹が立った。
 「じゃぁ、私はどうしたら良かったんですか?先生の言いなりになって、
黙って抱かれていれば良かったんですか?」
 つい、口調が強くなってしまった。増山は変わらず理子を
責めるような目をしている。
 どうしてこんな事になってしまったのか。理子には全く理解できない。
 理子は、増山に手を掴まれたままで、増山の隣に座った。
 「先生。私なんだか、先生の事がよくわからなくなってきました。
本当に私はどうしたら良かったの?先生の望む通りにしていれば
良かったの?先生がどうしてこんなに怒るのか、悪いけど私には
わかりません」
 「お前が急に帰るなんて言い出すからだ」
 増山は憮然とした態度でそう答えた。
 「だってそれは、先生がいつまでも不機嫌そうにして、何も
言わずにいるからじゃないですか。私が断った事で不機嫌に
なったんでしょ?そんな状況で、私は居たたまれません」
 「だからって、帰ろうとしなくてもいいじゃないか。俺の機嫌が
直るまで、黙ってそばにいてくれてもいいんじゃないのか?大体、
幾ら下にみんながいるからって、俺を断れるなんて凄いよな。
考えてみればお前は元々淡泊なタイプだったもんな」
 理子は傷ついた。こんな風に言われるとは。
 淡泊・・・。その言葉が胸に響く。
 やっぱり私って淡泊なんだろうか。確かに冷静な部分を失いきれないと
自分で自覚してはいる。
「昨日、歴研の新年会があって、みんなでボウリングとカラオケを
したんです」
 増山は理子の急な話しに戸惑った。
 「それで、ゆきちゃんと、久しぶりに会いました。終業式に
会った時より明らかに綺麗になってるって感じて不思議に思ったんです。
新年会が終わった後に話したい事があるって言われて、二人で場所を
移してお喋りしました。そうしたら、ゆきちゃん、小泉君と
クリスマスイブの日に結ばれたんだそうです」
 増山は理子を見た。
 「とても幸せそうで、綺麗でした。女になったんだな、って
感じました。でも私は、ちっとも変わってません。あれから毎日
鏡を見るけど、全然変わってない」
 「理子」
 増山は掴んでいた理子の手を離すと、肩を抱き寄せた。だが理子は
それを押しやった。増山はそんな理子を驚きの表情で見た。
 「相手が先生であるって事は伏せて、私も好きな人と両思いに
なったって告白しました。だって、このペンダントの事を聞かれたから。
ゆきちゃんに、その人と最後までいったのかって聞かれたので、
どっちだと思うか逆に聞いたら、いってないと思うって言われました。
私、全然変わってないって。どうしてなんでしょう。こんな事を
言うのもなんだけど、二人のセックスはあっと言う間に終わったって。
初詣の後にも、再び行為があったけど、やっぱりあっと言う間だったって。
なのに、どうしてゆきちゃんはあんなに変貌してるんだろう。
私は先生に、いっぱい、いっぱい愛されたのに、どうして変わらないの?
私が淡泊だからですか?先生の事、凄く好きなのに」
 増山は理子を引き寄せた。理子はそんな増山を見つめた。増山の
顔からは怒りは消えていて、優しい目をしていた。いつもの先生だ。
ドキドキする魅力的な顔だ。
 「お前は、染まらない女なんだ。だからだ。でも、お前だって、
以前よりも少しは変わったぞ」
 理子には、増山の言葉の意味がわからなかった。
 「そうだな。お前の変化に敏感なのは、男どもだろうな。昨日の
歴研の新年会。みんないつもと違うと思わなかったか?」
「えっ?なんか妙に興奮してた気がしましたけど、ああいう
場だったからじゃないんですか」
 「俺は心配だな。女子の少ない歴研の部活に、お前を出させたくないな」
 「何言ってるんですか。先生、変ですよ」
 「そうだな。まぁ、そう思うなら思ってればいいさ」
 そんな風に言われると、益々戸惑う。
 「小泉と最上は、この先ちょっと心配かもな」
 増山の言葉に理子は驚いた。先生も同じように感じているのか。
 「どうしてですか?」
 「お前の親友は熱くなり過ぎてる」
 先生だって、同じじゃないのか。
 「熱くなるのはいけない事なんですか?」
 「限度というものがある。それに、二人はまだ高校生だし、
互いに初めてだろう」
 私だって、まだ高校生だし、初めてなのに・・・。
 「最上は、男の色に染まりやすいタイプだよな。まぁ、女は大抵、
付き合う男に染まりやすいものだが、それも過ぎると危険だ」
 「危険って、どう危険なんですか?」
 「飽きられやすい。捨てられやすい」
 「そんな・・・」
 理子は母の言葉を思い出した。そうして、増山を見る。
 「おい、そんな目で俺を見るな。俺は違うぞ。疑うのか」
 「ごめんなさい」
 増山は大きく息を吐いた。
 「小泉は、受験勉強に真剣だ。多分、これからはそっちの比重が
重くなるだろう。だが、最上は小泉に夢中になり過ぎてる。その最上を
小泉は重たく感じるようになるだろう。彼女を抱いた事で、彼女への
興味も半減している。互いに高め合える関係になれなければ、
続かないだろうな」
 そう言うと、増山は理子を見た。
 「まるで、俺達みたいだな」
 ボソリと言った。
 「えっ?」
 理子は増山の言葉に驚いた。
 「小泉がお前で、俺が最上」
 「先生、私、男の子じゃありませんよ」
 「俺も女の子じゃない」
 見つめ合う。
 「状況が似ているって事さ。喋ってて自分で気づいた」
 「私が先生に飽きるって言うんですか?重たく感じるようになるって?」
 「もう既に、重たく感じ始めてるんじゃないか?」
 増山の目が切ない。
 「先生、お願いだから、そんな事を言わないで」
 「いや、俺がお前に夢中になり過ぎて、お前を困らせているのは
確かだろう?」
 「それは、確かです。でも、重たくなんて感じてません。初めての
事だから、自分でもどうしていいのかわからなくて、持て余して
いるだけです」
 「そうか。すまない。悪かった。お前がどうしてそんなに冷静なのか、
俺にはわかってるつもりだ。わかっているのに、お前を冷たいと
罵る俺がいる」
 増山は辛そうに言った。
 「先生には、わかるんですか?私って、そんなに冷静ですか?」
 「自覚がないのか?」
 「冷静であろうと努めているだけです。それを冷たいと言うなら、
そうなのかもしれません・・・」
 「いや。お前はそれていいんだ。俺が悪い。俺が自分を制御できないで
いるだけなんだ」
 「先生・・・」
 理子は増山の腕に絡みついた。
 「先生、私、怖いんです。先生の事、とっても好き。日々気持ちが
深まってくの。だから、溺れそうで怖い・・・。流されそうで・・・。
でも本当は、このまま流されて溺れてしまえたら、とても楽だろうにって
思ってるんです」
 増山は理子を抱きしめた。
 「お前が必死に踏ん張ってるのに、それを俺が無理に押したり引いたり
してるんだな。すまなかったな」
 「ねぇ、先生。先生は、受験勉強はメリハリが大事だって言ってた
でしょ?それって、恋愛も同じじゃないのかな」
 増山は理子を見つめた。
 「同じだと思う」
 「じゃあ、そうしましょうよ。お互いにそれぞれの暮らしを
思い切り頑張って、」
 「会った時には、思いきり愛し合う。いいのか?思いきり愛しても」
 増山の目が熱い。
 「限度ってものがあるんじゃなかったでした?」
 と、理子がにっこり微笑んだ。
 「お前には敵わないな」
 そう言って増山も微笑んだ。
 増山の顔が近付いてきて、理子の口を塞いだ。優しかった。本当なら、
このまま先生に抱かれたい。今日抱かれないで別れたら、今度はいつ
二人きりで会えるのだろうか?いいところ、ヴァレンタインか。
一か月以上も先だ。ヴァレンタインの次は?そう考えるとキリが無いように
思えた。そう考えるだけでも、既にはまっているのだ。
 「お前の、全てが見たい」
 唇を離した後に増山が言った。唇が離れただけで顔は接近したままだ。
吐息が直接かかる。胸が熱くなってくる。
 「いつか、お前を狂わせたい。全てを解放して、貪欲なまでに
快楽を求めるお前の姿を、見たい」
 増山の熱い吐息と一緒に、熱い心も伝わってきた。
 「先生・・・」
 「なんだ?」
 「先生は私を、自分の色に染めたいと思いますか?」
 「思わない」
 増山は理子を抱きしめると、そのままベッドに倒れこんだ。
 「どうして?」
 「お前はお前だから、かな。俺はお前が好きだ。お前にはお前らしく
いて欲しい。他の色に染まったら、お前ではなくなる」
 理子は増山を見つめて言う。
 「私は、先生の色に染まってみたい・・・」
 増山は首を振った。
 「理子。お前がそう言ってくれるのは嬉しい。だが俺は、やっぱり
染まらない理子が好きだ。ごめんな。色んな事を言って、お前を責めたりして」
 「いいの。私はまだ子供だから、戸惑うことばかりだけど、それでも
好きな気持ちは変わらないから。結局、私は先生に従ってしまうの。
先生には、勝てないみたい」
 「そうか。でもそれは、俺も同じだ。俺も理子には勝てないみたいだ」
 再び唇を重ねる。
 ずっと、こうして二人だけの世界にいられたらいいのに・・・。
 増山の腕の中は暖かかった。この人に愛されている。それを実感する理子だった。

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