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小説・クロスステッチ第2部 <完>
7.終 息 ~ 9.試 練


クロスステッチ 第二部 8.嵐 02

2010.09.15  *Edit 

 雅春が感じた事を、理子も富樫に感じていた。大人っぽい雰囲気
だったから、二浪していると聞いて成る程と思ったが、それでも年より
老成した雰囲気を持っている。他のクラスメイト達のような若さを
感じられない。年下ばかりだからなのか、少し距離を置いている
感じがするし、傍観者のような印象を受けるのだった。
 みんなとの会話も、どちらかと言えば聞き役で、時々痛い所を
突いてきたりするのだった。皮肉屋な所がある。
「もう一人は、シャイな少年って感じだったな」
「あ、わかります?同じ委員の林君です。彼、無口なんですよ。
話しかけても、『うん』とか『はい』としか言わないの。でも好きな
古代史の事となると割と饒舌になるんだけど、それでも恥ずかしそうに
話すんですよね」
「二人とも、内面を掴みにくい人物だな」
 雅春の言葉に、理子は頷いた。二人とも自分をあまり表に出さない
せいか、よくわからない。特にわからないのは林だ。
ああも喋らないのも珍しい。
 家へ着いて、お茶を淹れて、二人はゆったりとソファに体を沈めた。
 理子は大学で富樫と会った事で、この間からずっとどうしようかと
迷っていた事を思い出し、再び迷いだした。
 富樫に言われて、鈴木とお茶した事を、雅春に報告するべきか否か。
ただ、そもそもの原因は志水である。志水の事は、とても雅春には
話せない。志水の事を話すなら、自分の複雑な思いも話す事になる。
だがそれは、上手く言葉で説明する自信が無い。
誤って伝わりそうで怖かった。
「どうしたの?」
「えっ?」
 突然の問いかけに理子はうろたえた。
「なんか、いつもと違う気がする。しかも、帰る頃からかな」
 雅春の指摘にどきりとした。
 ジッと自分を見つめる雅春の視線に耐えられなくなって、
理子は俯いた。そして、自ら視線を逸らしておきながら、きっと
雅春は不審に思っているに違いないと思うのだった。
「学校の事だけど・・・」
 雅春の言葉に、えっ?と、理子は雅春を見た。雅春はテーブルの
上に視線を落としていた。
「もう殆ど、決着がついたよ。やっと、まともに勉強するように
なってくれた」
「そうですか」
 突然の学校の話しに、理子は戸惑った。
「でも、元はと言えば、俺も悪かった。まだ高校生の君を奪って
しまったんだから」
「先生・・・・」
「枝本達に責められた時、高校生同士なら許されて、俺が教師と
言うだけで文句言われるのはおかしいと言ったが、そう考えたのは
やっぱり間違いだったんだ」
 雅春はティーカップを手にして、静かに口につけた。
伏せ目がちの横顔がとても綺麗だ。
「先生、どうしてそんな事を言うの?後悔してるの?」
 理子の言葉に、雅春は「してる」と言った。まさか、そんな答えが
返ってくるとは思っていなかった理子はショックを受けた。
「今回の事で、俺は随分と責められた。一番言われたのは、矢張り、
教師の癖に女生徒と肉体関係を持ったって事だった。『肉体関係』
なんて言葉で言われると、何だかとっても厭らしい感じがするよな。
愛し合う行為なのに。愛し合っていれば、当然のように欲しくなる。
それが当たり前だと俺は思っていた。だが、君はまだ高校生の子供で、
俺は大人であり、教師だ。高校生同士なら許されるのは、子供同士
だからだ。互いに分別が無くても当然だろう。だが俺は違う。
分別のある大人だ。欲しいから奪うなんて、短絡的な行為だし、
とても大人の、しかも教師がする事じゃない」
 雅春の言葉に、理子は震えた。先生は一体、何が言いたいのだろう。
「俺は、我慢すべきだった。卒業するまで、清い交際でいるべきだった。
そうしたら、これ程までに大ごとにはならなかっただろう」
「先生・・・。今日会った富樫君なんだけど、私この前彼に言われたの。
まともに男と付き合った事が無いのに結婚するなんて早過ぎるって」
 理子は震えながら言った。理子の言葉に雅春は鋭い視線を理子に浴びせた。
「口説かれたのか?」
「いいえ。彼は多分、私に気は無いと思う。と言っても、
私鈍いからわからないけど」
「そうか。まぁ、今日俺が見たところでは、君の思う通りだと思う。
ただ、林君だったか、彼の方は多分、君に惚れてる」 
 理子は驚いて雅春を見た。
「君を見る目が眩しそうだった。あの彼の事だから、ただ思っている
だけで終わるんだろうと思うけどな」
「そうですか」
「それで君は、その富樫君の言葉にどう思ったんだ?」
「彼は、他に知らないんじゃ、その相手が本当にいいのかどうか、
比べる対象が無いからわからないだろうって言ったけど、
私はそれには共感しません」
「そうか」
「彼のセリフ。今わかったけど、母と同じ事を言ってました。
色んな男と付き合って、男ってもんをある程度知った上でいい男を
選ぶもんだよって」
「なるほどね。まぁ、一理あるな」
「同意するんですか?」
 理子は驚いて雅春の方を見た。驚いている理子に、雅春は笑った。
「一理ある、と言ったまでだ。全面同意じゃない。俺達は出会うのが
早過ぎたんだと思う。本来なら、まだ理子は高校生だったんだから、
色んな恋愛経験を積んで成長していくべきだったんだけど、俺と
出会ってしまったが為に、それができなかっただけだ」
「実は最近、学校で鬱陶しい程に男子が寄ってきて・・・」
「どういう意味だ?」
 雅春が厳しい顔をした。
「やたらに誘われるんです。お茶とか映画とか、デートとか」
 理子の言葉に雅春は溜息を吐いた。
「先生が女子に付き纏われてうんざりされる気持ち、少しわかるような
気がしました。私、なんだかイライラしちゃって。そしたら富樫君が
自意識過剰だって。みんなは軽い気持ちで誘ってるだけで、人妻の私と
本気で恋愛しようと思うようなヤツはいないんだから、もっと気軽に
相手してやればいいんだって」
「相手してやれだって?」
 雅春の眉間に軽く筋が立った。
「深い意味は無いですよ。適当に付き合ってこっちも楽しめば
いいだけだって。愛理を見習えって言われて」
 雅春は呆れた顔をして、「それで見習ったのか」と言った。
「見習ったわけじゃないですけど、この間、誘われてお茶しました」
 雅春の顔色が変わった。表情にも怒気が感じられる。
「それでどうした?」
 声がいつもよりも低い。
「それだけです。読書家なんで、読んだ本の話しをもっと色々したいと
言われて付き合ったんですけど、全然楽しく無かったです。
読書家の人とは話しが合うだろうと思ってたんですけど、見事に
合わなくて。無駄な時間を過ごしてしまったと思って、それから何だか、
先生に申し訳ないって気持ちが湧いてきて・・・」
 理子の言葉に溜息を吐いた後、
「君はこれからも、誘われたらそうやって付き合うつもりか?」
 と言った。
「先生はどう思われますか?しないで欲しいって思いますか?」
「俺は・・・」
 雅春は理子の問いに、言い澱んだ。
「君は、どうしたいんだ。それを聞かせてくれ」
「私は、わかりません。敢えて言うなら、自然体でいたいです。
付き合うか否かは相手次第、内容次第、気分次第。富樫君が言う通り、
あまり堅苦しく考える必要は無いのかなと思います」
「そうか。そうだよな。それが普通だよな。君だけ俺と結婚したせいで
普通の事ができないと言うのも、おかしな話だよな」
 理子は何だか雅春が不貞腐れて言っているように感じた。口では
そう言いながらも、明らかに納得できないでいる、そんな感情が
伝わって来るように思えた。こんな調子では、とても志水の事は
言えないな、と理子は思うのだった。
「先生。私達、もし在学中に結ばれていなかったとしたら、
今はどうしてたと思いますか?」
 理子は静かにそう訊いた。
「そうだな。まだ結婚はしてなかったかもな。本格的に交際を
スタートさせているところって感じか・・・」
「やっぱり、そうですよね」
「でも、逢う度に、君を抱いているに違いない。在学中にずっと
我慢してたものが爆発して、きっと土日は朝から晩まで、
俺は君を離さないだろう」
 その言葉に理子は赤くなって、
「じゃぁ、今とあまり変わらないんですね」
 と言った。
 雅春の腕が伸びて来て、理子を抱き寄せた。
「そんな事は無いだろ?今日だって出かけたし。それとも、
土日はたっぷり愛し合いたいのか?」
 理子は首を振った。雅春は「つれない女だ」と言って理子の
耳たぶを噛んだ。「痛い」と声を上げた理子にお構いなしに、
雅春は理子の耳たぶを何度も噛んではしゃぶりだした。
 耳に息を吹きかけた後で、「君が欲しいな」と甘くて低い声で囁いた。
理子は首を振る。
「どうして?俺との話しで気分を害したのか?」
 そう言いながら、理子の耳を舐めまわしている。理子は吐息が
荒くなってくる。
「そうじゃなくて・・・、帰ったばかりで埃っぽいし・・・」
 喘ぐのを堪えながら、理子はたどたどしく言った。
「それなら一緒にお風呂に入ろう」
 その言葉に、理子は再び首を振った。
「なんで。いいじゃないか」
「だって・・・」
 未だに恥ずかしいのだった。
「たまの休みならいいって、約束してくれただろ。あれから一度も
一緒に入って無い」
 雅春の舌が、理子の首筋を這いだした。理子はそんな雅春を
押し離そうとした。首なんて、一番埃っぽい所だから気になる。
「理子。今嫌がるなら、お風呂に一緒に入る事。お風呂に一緒に
入るのが嫌なら、今させる事。選択肢は二つだ。他は許さない」
「酷いわ、先生」
「酷くなんかない。選ぶのは君だ」
 理子は雅春の真剣で強引な眼差しを受けて観念した。理子は
真っ赤になって目を伏せると、「お風呂に入ります」と震える声で言った。
 理子の言葉に雅春は笑顔になると、そっと理子を離して風呂の
用意に立った。取りあえず解放されて理子はホッとする。
 ティーカップを片づけながら、何だか問題が有耶無耶になって
しまったと思った。これで良かったのだろうか?雅春は結局は
納得できたのか。私はこれから、自分の思うように行動しても良いのか。
 そんな理子の背後から、雅春が抱きついてきた。


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~ Comment ~

Re: なるほど熱い嵐だ>misia2009様 

misia2009さん♪

男女の間は、やってウヤムヤってよくある事ですよね~。
まぁ、この二人は、やたらと互いを追求したがる癖がありますが。

ネタバレになりますが、明日の回はどっぷりと熱いです。
そして、その次の回から一転にわかに……。
お見逃しなく^^

なるほど熱い嵐だ 

うーん…ヤルとうやむやになっちゃうんですよねえ…
BLは最初からソレ目当てなようなところありますが。
NLも、ものによってはそうでしょうが。
ここはそういうお話じゃないですからね~
どうなるのかな、明日も興味津々です。
志水くんのことは…黙ってると、なお良くないんでしょうね(ある意味、期待)
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