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小説・クロスステッチ第2部 <完>
7.終 息 ~ 9.試 練


クロスステッチ 第二部 8.嵐 01

2010.09.14  *Edit 

 五月の最後の日曜日、理子と雅春の二人は本郷キャンパス主体で
行われる五月祭に来ていた。好天の爽やかな五月晴れだった。
五月祭は、3,4年が学ぶ場所なので、催しも3,4年が中心だが、
1,2年もクラスで参加している所もある。勿論、サークル参加の
場合は学年は関係ない。理子はサークルに入っていないので、見る側だ。
 雅春は、ここへ来るのは卒業以来だった。就職してから、精神的に
余裕が無く、ここへ来る事に思いも及ばなかった。今年は理子が
東大へ通っていると言う事もあり、一緒に行こうと雅春の方から
誘ったのだった。
 理子は雅春と腕を組んだ。いつもは大抵、手を繋いでいるが、
腕を組むのも悪く無い。身長差があるので、手を繋ぐよりも楽だ。
それに、腕を組んでいる方が、体が密着してドキドキする。
 雅春の方も、腕を絡ませて体を寄せている理子を何時にも増して
愛おしいと感じるのだった。それに、理子の温もりが腕から伝わって
来る。柔らかい胸の感触もたまらない。
 雅春は後輩の安藤和明がいる研究室へ入った。
「あっ、増山先輩!」
 雅春の入室にすぐに気付いた安藤が、明るい顔で声を掛けて来た。
「久しぶりだな」
 雅春も機嫌良さそうに挨拶した。
「今日は奥さんも一緒ですか。と言うか、奥さんの付き添いなのかな」
 安藤の言葉に、理子は頬を染めた。
 そんな三人の周囲に、他の生徒達も集まって来る。
「増山先輩、お久しぶりです」
 キャンパスが本郷と駒場とに分かれている為、今の4年と雅春は
同時期に大学にいながら交流が殆ど無かったが、それでも雅春は
有名人だったので、多くの後輩達が彼を知っていた。
「こちらが噂の、増山夫人ですか」
 と、4年の一人が言い、一斉に理子に視線が集まった。
 雅春の相手と言う事で、誰もが興味津々と言った表情をしている。
「サークルは?どこかへ入ったの?」
 と質問され、いいえと理子は首を振った。
「何だ、勿体ない。歴史へ進学するなら歴史系に入りなよ」
 そう言われたが、理子はただ黙って笑うのみである。
「先輩は、彼女に勧めないんですか?」
「本人の自由だから。今のところ、入る意志は無いみたいだな」
「ところで、あれから田中はどう?」
 と、安藤が訊いてきた。
「はい。あれからは何も。用事のある時も事務的です」
「そうか。それは良かった。僕は結局、校舎が違うから目を光らせる事は
できないしね。時々用事で駒場へ行った時に、それとなく周囲から話しを
聞いたりして、問題無さそうな感じだったからそれ程心配はして
なかったけど、直接本人からそう訊いて安心したよ」
 あれから安藤が気にしていてくれたと聞いて、何だか済まない
気持ちになった。
「安藤、済まなかったな。気にかけてくれていて、助かるよ」
「いえ。大したお役には立てないのが残念です」
「でもお前は大学に残るんだろう?それならこれから理子も世話に
なるわけだし。今後もよろしくな」
「それはもう。出来る限りの事はさせてもらいますよ」
 安藤は目を輝かせてそう言った。どうやら安藤は、雅春にかなり
好意を持っているようだ。
 その後二人は、教授達の所へと挨拶に行った。結婚式以来になる。
「やぁ、よく来てくれた」
 二人は歓迎された。
「結婚式の時は、ありがとうございました」
 二人は揃って頭を下げた。
「いやいや。なかなか良かったよ。それに、君には驚いた。あの堅物の
君が、受け持ちの女生徒を口説き落とすとはね。今世紀最大の
事件じゃないのか?」
 教授はそう言って、高らかに笑った。
「理子君だったね。授業の方はどうかな?今はまだ語学が多いから、
面白味に欠けるだろう」
「いえ、そんな事はありません。語学は好きな方ですし、楽しいです」
「そうか。それは良かった。聞く所によると、なかなか勉強熱心で
優秀なようだね。これからが楽しみだ。期待してるよ」
「ありがとうございます」
 理子は赤くなった。教授から直接こんな風に言ってもらって恐縮した。
「君の奥さんは、真面目で優秀だと、担当教諭達は口を揃えて言って
いたよ。君が選んだ女性だけあるね」
 雅春は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「お褒めの言葉、ありがとうございます。おっしゃる通り、妻は
とても真面目で優秀です。今後とも、ご指導の程、宜しくお願いします」
 その後、雅春が在学中から続けている研究についての考察を語り合い、
二人はその場を辞したのだった。
「どうやら、君は俺の妻って事で、普段から教諭達の注目の的に
なってるようだな」
 歩きながら雅春が言った。
「そうみたいですね」
 考えてみれば当然だ。有名人の雅春だ。その結婚相手なのである。
しかも、まだ1年生だ。一体、どんな人物なのかと興味を持つのも
自然だろう。
「気が抜けないな」
 雅春はそう言うと、理子の方を見てからかうような表情で笑った。
 理子は、そうですねと言って微笑み返す。
 注目を浴びるのは仕方が無い。雅春を知っている人間からは、
これからも注目を浴び続けるのだろう。大体、今こうしているだけでも、
周囲の注目を集めている。背が高いと言うだけでも目立つのに、
このルックスだ。
 その雅春を一人占めしているのだと思うと、優越感が湧いてくる。
以前は恥ずかしいばかりだったが、最近少し違ってきた。どんなに
多くの女性から熱い視線を浴びせられても、彼が想う女は自分だけ。
そう思うと胸が熱くなってくるし、嬉しくてたまらない。
「ちょっと、トイレに行って来る」
 雅春がそう言って、校舎の中へ入っていったので、理子は周囲を
眺めながら待っていた。流石に人が多い。
「増山さんじゃない?」
 呼ばれて振り向くと、同じ委員の林だった。富樫と一緒だった。
「あら・・・」
「お前も来てたんだ」
 富樫が無愛想に言った。富樫は普段から表情豊かではない。
彼は二浪して入学してきたので、クラスメイト達よりも年上だ。
そのせいなのか、いつも上から目線のような物言いをする。
「なんか、珍しい取り合せのような気がするんだけど」
 理子は二人を交互に見た。普段この二人が仲良くしている場面を
見た覚えが無い。
「そうか?お前が気付かないだけだろ。俺達、互いに日本史志望だから
自然と話しが合うんだよ。よく話してるぜ。なぁ?」
 と、富樫が林に言った。その言葉に林は頷く。
 林は普段からあまり喋らない。口下手なのと、人付き合いが苦手な
ようだ。話しかけても返事をするだけで、話しが発展しない。ただ、
好きな古代史の話しとなると、喋り出す。無口な男ではあるが、
何故か暗さは無い。明るい顔立ちで、瞳はいつも輝いている。
その瞳を見ていると、とても純粋そうに見えるのだった。
「理子は、今日は?誰かと一緒なんだろ?」
「うん・・・」
 そこへ雅春が戻って来た。雅春は理子と一緒にいる2人を
不思議そうに見た。
「あ、こんにちは」
 富樫と林がそう言って頭を下げた。
「あの、同じクラスの富樫君と林君。偶然、会ったの」
「へぇ、そうなんだ。どうも。増山です」
 二人は「じゃぁ、行くわ」と言って、その場を立ち去った。
「君が男と一緒だから驚いたよ」
 去って行く二人の姿を見たまま、雅春はそう言った。
「まさか、また嫉妬ですか?」
「ははは。そこまではいかないけどね。ナンパされてるのかと思って、
追い払ってやろうと意気込んでたのさ。そしたら、何か雰囲気が
そういう感じじゃなかったんでね。クラスメイトで良かったよ」
「ナンパされたら、追い払ってくれるんですか?」
「当たり前だろ」
 と、雅春は理子の肩へ手を回した。
「なぁ、もう帰らないか?俺、早く帰りたくなってきた」
 理子の耳元に口を寄せ、甘い声でそんな事を言い出す。
「もう、先生ったら子供みたい」
 理子は真っ赤になってそう言った。体が熱くなってくるのを感じた。
 二人は本郷キャンパスを後にして、帰宅の途へ着いた。電車は
混んでいた。だから体を寄せ合っていても不自然ではない。
理子の目の前に、雅春の胸がある。顔を合わすには見上げるしかない。
「さっきのクラスメイトだけど」
 雅春が理子に顔を寄せて話しかけて来た。
「どうかしましたか?」
「うん。二人とも眼鏡だったな」
 雅春の言葉に理子は軽く溜息を吐いた。やっぱり、妬いてるじゃないか。
「妬いてるとか思ってるだろ」
 雅春の指摘に理子は笑った。
「あの、背が高くて色の黒い方。彼は大人っぽいな」
「富樫君ですね。彼は二浪してるんです」
「そうなのか。じゃぁ、年上か」
「彼が何か?」
「うん。・・・何て言うか、ちょっと独特の雰囲気があるな。
暗い感じがすると言うか、妙に大人っぽい、と言っても二浪
してるんじゃ、もう成人式は終えてるわけだな」
 挨拶をしただけなのに、相変わらず鋭いなと理子は思った。



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~ Comment ~

Re: 久しぶりのデートだ~>misia2009様 

misia2009さん♪

『嵐』と言う、物騒な章タイトルですが。
前半は、ラブラブですね^^

さすが、misia2009さん!ヤル気になってる、と、気付かれましたか^^
ベースケな先生、こんな所で求めてどうする!って
突っ込みたくなりますね。

富樫くんがお好きとは、なるほど。
独特キャラですが、別の作品にも登場されてる事に
お気づきでしょうか。うふふ(^m^)

後半から、荒れて来ます。
そして、その後は……。

久しぶりのデートだ~ 

『嵐』とは何事じゃ、と読み始めたら、うっかりニヤニヤしてしまいました。微笑まし~妬いてる~ヤル気になってる~(爆

じつは富樫くん、好きです。明日からも楽しみです。
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