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小説・クロスステッチ第2部 <完>
7.終 息 ~ 9.試 練


クロスステッチ 第二部 7.終 息 08

2010.09.12  *Edit 

 校長も、他の教師達も驚いていた。
「それで、酷い噂を流したのか」
「美智子は本当に先生の事を好きだったのに。本気だったのに。
自分が生徒だから先生は相手にしてくれないんだ、って。だから、
卒業して凄く喜んでたのに。それなのに、寄りにも寄って相手が
理子だなんて。酷いじゃないですか。理子なんかのどこが良くてって
思うのも当然でしょう?美智子はあれだけ先生の為に尽くしていたのに」
 綾子は目に涙を浮かべていた。
 雅春は溜息を吐く。
「松橋さんの担任は?」
 との校長の問いかけに「僕です」と、熊田が言った。綾子と美智子は
1年の時からずっと同じクラスだった。
「その、松橋さんの卒業後の進路は?」
「家事手伝いです」
 その答えに、教師達は全員、驚いた。
「進学も就職もしなかったと言う事か。浪人中って訳では無いのか?」
「彼女はその、元々精神的に不安定な所がありまして。浮き沈みが
激しいんです。ちょっと見ただけでは解らないのですが」
 そのせいで、家庭でも扱いに困っていて、何かとトラブルがあっては
担任に相談を持ちかけて来ていたのだった。進路に関しても、かなり
揉めた。基本的には真面目なので、勉強はそこそこ出来る。だから
高望みをしなければ、そこそこの大学へ入れた筈だ。
 本人も、最初のうちは保母さんになりたいと言っていた。だから、
推薦入学を勧めたのだが、結局、本人が行きたくないと言って、
受けなかった。
 だからと言って、就職も希望しなかった。何か他にやりたい事でも
あるのかと尋ねても、これと言って無いと言っていた。そして、
敢えて上げるなら、主婦になりたいと言ったのだった。あの時から、
卒業したら雅春の妻になろうと考えていたのだろうか?
 熊田の説明に、校長は複雑な顔をした。諸星も何て言ったら良いのか
わからない風情だった。
「松橋が生徒であろうと無かろうと、俺はあいつには興味が無い。
もし、理子がいなかったとしても、松橋を好きになる事は絶対にない」
 雅春が言った。
「どうしてそう言いきれるんですか」
「まず、人を好きになるのに、生徒だとか生徒でないとかは関係ない。
勿論、自分の教師としての立場を思えば、極力生徒は避けたいところ
だけどな。俺は理子の担任として赴任したが、理子の存在は最初は
俺の中には全く無かった。すぐにブラバンの顧問になったから、
練習熱心な松橋の方を俺は理子より先に知ったくらいだ。だが、結局、
俺の心の琴線に触れて来たのは理子だし、俺は松橋と部活で接して
いても何の感情も持たなかった。殊更親切にされたり、熱い視線を
浴びるのを鬱陶しく思っていたくらいだ」
「理子は、そういうのが上手いからよ。男の気持ちを掴むのが
上手いのよ。みんな理子にそうやって騙されてるのよ」
 綾子が憎々しげにそう言った。
「人の心ってのはな。他人には思うようにはならないものなんだ。
仮に、お前が言うように理子が男の気持ちを掴むのが上手いとしてだ。
だからどうだって言うんだ?騙される男が悪いんだろう。羨ましいと
思うなら、見習ってみたらどうだ?とんでも無いと思うなら、
批判する必要も無いだろう。どんなに強く想われようが、どんなに
親切にされようが、愛せないものは仕方ない。想われる度に、
親切にされる度に好きになってたんじゃ逆に困るじゃないか」
「だけど・・・」
「だけど、何だ。お前は昔から理子が嫌いなんだろう?もう別々の道に
進んだんだから、理子の事なんかを気にするよりも、自分の事をもっと
考えろ。牧田先生に言われた言葉をもっとよく考えた方がいい。
自分をもっと磨いて魅力的になって、理子を見返したらいいじゃないか」
「そうだな。その方がいい。それが一番だ」
 諸星がそう言った。
「綾子君。あなたが友達思いなのはよくわかりました。ですが、
だからと言って、人の噂に興じるのは好ましい行為とは思いませんよ。
折角新しい生活をスタートさせたのですから、しっかり仕事を覚え、
人として、女性として一人前になるように頑張って下さい」
 校長は優しくそう言った。
「じゃぁ、今回は、増山先生に謝罪してもらって、それで終わりと
しましょうか」
 と諸星が言った。それに対し、雅春は首を振った。
「いえ。僕は別に謝って貰わなくても構いません。生徒達には生徒達の
色々な思いがあるでしょうし」
「だけど、迷惑を被ったじゃないか。学校側だって、大ごとになって
対応が大変だったんだ。一応は謝ってもらわんとな」
「あの・・・、迷惑って言うのは・・・」
 と、宮古が遠慮がちに訊いてきた。
「噂が全校生徒の間で大騒ぎになる程広まって、生徒達はろくすっぽ
勉強もせずに噂に興じてた。増山先生の授業や補習クラスはもっと
酷かった。1,2年はともかく、3年は受験だからな。そんな事を
してる暇なんて、本来なら無いだろう。PTAの方からも苦情がきて、
増山先生は辞職か異動かって話しまで出たんだぞ」
 それを聞いて、富美子と宮古は驚いた顔をし、綾子を見た。
だが綾子は俯いたままだ。
「まぁまぁ、諸星先生。そう責めなくても。結局、噂を面白がって
いたのは生徒達なんですから。彼らも自業自得ですよ。それより、
今後再びこういう事をしないで欲しいですね。牧田先生も迷惑
してますし。それを約束してくれるなら、謝罪しなくてもいいと
言うことでどうでしょう?」
 雅春がそう言った。その言葉を受けて校長が言った。
「そうですね。本人にも色々な思いがあるでしょう。それより、
今後はこういう事はしないと約束してもらって終わりにしましょう。
どうですか?綾子君」
 校長に言われて、綾子は顔を上げると、
「わかりました。もう、しません」
 と言った。そして立ちあがると、一礼して出て行ったのだった。
後に残された富美子と宮古は驚いて、「すいませんでした。失礼します」
と言って綾子の後を追って出て行った。
 それを見送った一同は、一斉に大きな溜息を吐いた。
「まったく、やれやれだな。在学中はあんな娘だとは思わなかった」
諸星が呆れたように言った。
「理子さんの事を、裏表があるとか言ってましたが、
裏表があるのは彼女ですよ」
 牧田が吐き捨てるように言った。
「余程、理子が気に入らないのか。わからんヤツだ」
「あれで、いい所もあるんですけどね。何ていうか、あの雰囲気の
せいかな。公務員試験に落ちましてね。その後、学校からの紹介で
デパートを受けたんですが、落とされまして。無遅刻無欠席だと
言うのに」
熊田が言った。
「そうなんですか。それで、今はどこに?」
 校長の問いに熊田は「堂丸スーパーです」と答えた。
「デパートじゃ、あの子は無理だろう。見た目が駄目だ。器量良しじゃ
なきゃ駄目と言うわけでは無いが、あの清潔感の無い雰囲気じゃ、
面接官の心証は良くないだろうよ」
「そうだったんでしょうね。僕もデパートを受けさせて失敗したと
思いました。公務員も落ちてデパートも落ちて、本人もかなり
落ち込んでましたから。結局、本人が職安へ赴いて見つけて来たんですよ」
「自信の無さに拍車がかかって、その吐け口が理子に向いたと言うわけか?
自分はやっとスーパーに就職できたが、理子は東大に合格し、人気者の
先生の妻だもんなぁ。比較したら妬むのも無理はないか」
「自分は大した努力もしないで、人を妬むなんて嫌ですね」
 熊田がそう言った。
「僕もそう思います。理子さんの東大合格の事もけなしてましたが、
理子さんが毎日のように職員室へ通って頑張っていた時、彼女は
部員でも無いのに電気部に入り浸ってましたからね。最初から
取り組み方が違うんですよ。その結果、二人の間に大きな開きができた。
当然の結果ですよ。それを妬んで誹謗中傷するんですから、
とんでもないです」
 牧田が憤然と言った。
「まぁ、本人もこれから思い知っていくでしょう。社会はもっと
厳しいですからね」
 校長はそう言うと、これで終わりにした。
 職員室へ戻ると、熊田が雅春に言った。
「松橋の事、気になりますか?」
「わかりますか」
「ええ、何となく。あまりいい気分じゃないですよね。あんな話しを
聞かされたら」
 その通りだった。
「松橋は元々、そういう気(け)のある子だったんですよ。思いこみの
激しい所があって。それにむらっ気も強い。だけどそれは、本人の
問題です。先生が気にされる事じゃない」
「ええ、わかってます。ちょっとショックだっただけで・・・」
「情けは無用。増山先生の、普段からのキッパリとした態度で
良かったんですよ。牧田先生みたいだったら、それこそ大変です。
みんな誤解して、その気になっちゃうでしょうからね」
 雅春はその言葉に、「ありがとうございます」と言って笑った。
 本当に、熊田だけでなく、味方をしてくれた先生方にもお礼を
言って回りたいくらいだと思う雅春だった。


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~ Comment ~

Re: お疲れさまでした。 

ありがとうございます。

二人の結婚が知れれば、当然起こる現象ではあるので、
どう始末をつけるのか、私も少し心配しました。

私の場合、大体の粗筋を決めてはいるものの、その後の話の展開は、
実は当人たちに任せているのでございます。
だから、思いもよらない展開になったりする事もあります。
個性的なキャラが多いので、それぞれのキャラに、
勝手に自キャラを演じて貰っているので、この章の決着も、
彼らが自分達でつけた、とも言えるのです。

キャラが自ら動いてくれないと書けない、情けない作家なのでございます(^_^;)

そして、この先も、思わぬ展開の連続で、私自身は
第二部の終局に向かい、立ち止まっている状態でございます。
ここまで来て、君たち一体、どうするの?って感じで、
苦しんでおるのです。

はっきり言って、主役の二人は重くって、付き合っているのが
辛くなってきた作者なのです。アハハ……(@@)

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Re: NoTitle>OH林檎様 

OH林檎さん♪

> なんか、スッキリしない…。
そうですよねぇ。
こんなんで終わらせちゃって、いいわけぇ?って思いますよねぇ。

> みんな優しすぎますよ!!!
校長はまぁ、仕方ないでしょう。他の先生方は、
もう関わりたくなかったのかも。。。。

> いや、私が意地悪なだけか。
そんな事はありません。

> 私なら…泣かす(笑)
私でも、泣かします。
やっぱ、ギャフンと言わせたいですよねぇ。

ただちょっと、補足すると(補足なんて邪道なんですが)、
故意に悪意的な噂を綾子が流した事を、他の二人は知りません。
だから、事の成り行きに驚いて、後半は綾子の様子を
伺うばかりなのでした。
他の二人は、理子ともそれなりに親しくしていて、
彼女に対しては普通の友達としての感情しか持ち合わせていないのです。
綾子と仲良しだから、つるんでいるように一見すると
思えるのですが、その辺、微妙に違う事を匂わすように
描いたのですが、分かりにくかったかなぁ。。。。


NoTitle 

なんか、スッキリしない…。
みんな優しすぎますよ!!!
いや、私が意地悪なだけか。
私なら…泣かす(笑)
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