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小説・クロスステッチ第2部 <完>
7.終 息 ~ 9.試 練


クロスステッチ 第二部 7.終 息 07

2010.09.11  *Edit 

「お前、独身の男の部屋へ上がりこむのは、悪い事だぞ。
恋人でもないのに」
 諸星は睨みつけるような顔を綾子に向けた。
「遊びに行っただけです」
「襲われたらどうするんだ?愛情なんか無くたってセックスは
できるんだぞ。連れ込まれたならまだしも、自分からのこのこと入って
行って、襲われたからって訴えても自分が恥をかくだけだ」
「それでも、悪いのは男でしょっ」
 綾子の態度はふてぶてしかった。
「確かに悪いのは男だ。だが、レイプされた女は、全く非が無くても
世間からは冷たい目で見られる。ましてや、自らチョンガーの男の
部屋へ上がりこんだときたら、自業自得だと思われるし、逆に
誘ったんだろうと言われるのがオチだ。裁判になっても不利な状況だな」
「牧田先生を庇うんですか?」
 綾子の言葉に、諸星は笑った。
「当たり前だろうが。牧田先生は優しいから、お前が押しかけてきても、
追い出せなかった。それに付け込んだのはお前だろう。あまりに
しつこいから、最後にははっきり言うしか無かった訳だ。放っておいたら、
それこそお前に襲われそうだからな」
「諸星先生、酷い!」
 と、富美子と宮古が声を揃えて言った。
「酷くなんか無いぞ。お前達は綾子の友達だから、綾子の言う事を
全て鵜呑みにしているんだろうが、事実はちょっと違うんだぞ」
 熊田が静かにそう言った。
「でも、綾子は毎週、先生の家に通って、部屋を片付けたりとか、
色々してあげてたんですよ?」
「頼んでもいないのにか?」
「でも先生は、喜んでたんでしょ?」
「喜んでなんかいないよ。迷惑だった」
 と、牧田が言った。牧田の言葉に富美子が目を剥いた。
「だったら、なんで断らなかったんですか」
「断ったよ。断ったから、こんな事になったんだろう?」
「でも、酷い事を言ったんでしょ?綾子に」
 その言葉に、牧田は口を噤んだ。あまりにもうんざりしていた
からだが、冷静に考えてみれば、傷つけるような事を言って
しまったとは思う。
「君達。これは牧田先生と綾子君の問題だろう。君達が横から
口を挟むことなのか?」
 それまで黙って様子を見ていた雅春が言った。
 雅春の刺すような視線を受けて、二人はたじろいだ。
「でも・・・、友達が傷ついてるのに・・・」
 と、宮古が呟くように言った。
「友達思いなのは解るが、牧田先生は綾子君の事を何とも思って
いないのだから、しょうが無いじゃないか。いくら彼女が強引だった
とは言え、きっぱり拒否できずに上げ続けていた事と、最後に
傷つけるような言葉を口にしてしまった事は、牧田先生に非が
あるだろう。だが、それ以上の非は無いぞ」
 雅春はそう言って、牧田の方を見た。牧田はその視線を受けて、
自分の非を認めた。
「増山先生がおっしゃる通り、最初にきっぱり断れなかった僕が
悪かった。それと、感情的になっていたとは言え、最後に酷い事を
言って済まなかった。ごめん」
 牧田は、綾子に向かって頭を下げた。
「どうだろう。綾子君。牧田先生を許してもらえませんか」
 校長が優しく綾子に声をかけた。
 綾子はそれを受けて、俯いたまま頷いた。
「じゃぁ、牧田先生の件はこれで終わりだ。だが、お前にはまだ
訊きたい事があるぞ」
 諸星の言葉に、三人は不思議そうな顔をした。
「あの、どういう事ですか?」
 宮古が訊ねた。
「綾子。お前、増山先生に言う事は無いのか?」
「なんであたしが増山先生に・・・」
 口ではそう言いながら、綾子の顔色は明らかに変わった。
「増山先生、理子と結婚したって本当なんですか?」
 富美子がそう言った。
「本当だ」
 雅春の言葉に、富美子と宮古が「やっぱり」と言う顔をして
互いに見合わせた。
「既に終息しつつありますが、増山先生と理子さんの事で、酷い内容の
噂が学校に充満しています。二人の立場から考えれば、あれこれと
言われるのは、仕方ない事と、本人達も学校側も思っていますが、
それにしては、噂の内容は酷いものでしてね。悪意があるとしか
思えない内容のものばかりで。ですから、そもそもの噂の元は
どこなのか、調べたんですよ。そうしたら、ある人間に辿り着きました」
 校長はそう言って、綾子を見つめた。綾子は俯いている。校長の
その様子に、富美子と宮古も驚いて綾子を見ていた。
「二人の結婚式の二次会に参加した生徒達に、二人の事は言わない
ようにと口止めはしていませんから、増山先生の結婚相手が理子さんで
ある事は、遅かれ早かれわかる事だと思っていました。女生徒達の
多くはショックを受けるでしょう。口々に、増山先生を責めるかも
しれない。ですが、悪意のある噂を故意に流すと言うのは、
どうなんでしょうね」
 校長の言葉に、綾子が顔を上げて反論した。
「悪意じゃありません。本当の事を言っただけです」
 それを聞いた牧田は唖然とした顔で、
「あれのどこが本当なんだ。みんな君の憶測じゃないか。
君の決め付けだろう」
 と言った。綾子はそんな牧田を睨みつけた。
「教師と生徒が在学中から恋愛して肉体関係持つなんて、不潔だわっ」
 綾子は叫ぶようにそう言った。
「そうですよ。それを聞いて、あたし達どんなにショックだったか」
 富美子がそう言った。
「君達がどう思おうと、それは君達の自由だ。だが、例えば、理子が
俺を誘惑しただとか、校内で頻繁に密会していただとか、セックス三昧
だったとか、そういう嘘をどうして吹聴するのかな」
「本当の事でしょ」
 綾子がぶっきら棒に言った。
「何の根拠があって、本当の事だと言うんだ。全部嘘だ。誰かに
聞いたとでも言うのか」
「本当に決まってるじゃない。理子はそういう女よ。昔から
そうだったの。先生に気に入られるような態度や行動をするのよ。
だから先生だって、その気になったんでしょ」
 綾子の言葉に、雅春は驚いた。開き直るつもりなのか。
「じゃぁ、お前が周囲に言いふらしていた事は、認めるんだな」
 諸星が言った。
「あたしだけじゃないでしょ。他のみんなも同罪じゃない。みんな
面白がって広めたんじゃない。なのに、あたしだけ責めるなんて
お門違いだと思います」
「なんだとぉ?」
 諸星は怒りが湧いてきた。何てふてぶてしい女なんだ。
18の娘とは思えない。
「まぁまぁ」
 と、そんな諸星を雅春は制した。
「増山先生。松橋美智子を覚えてますか?」
 突然の質問に雅春は驚いた。何故、いきなり彼女の名前が出てくるのか。
「ああ。勿論だ」
 松橋美智子は、今年の卒業生で、元ブラスバンドの部員だった。
小柄で眼鏡を掛けているが、大人っぽい顔立ちと雰囲気を持った女生徒だ。
「彼女の気持ち、先生知ってるでしょ?」
 責めるような口調で言う。
 彼女からは、熱いアプローチを何度も受けていた。美智子は雅春が
赴任して来る前からブラバンに所属していた生徒で、練習熱心だった。
クラリネットを担当していたが、熱心なだけあって、上手かった。
 雅春に一目惚れしたようで、頻繁に手紙や贈り物を寄越してきた。
だが雅春は他の女子同様、相手にしなかった。ただ、美智子の気持ちが、
他の女生徒達とは少し違うと言う事に、次第に気付くようになっていた。
 スターを崇めるような他の女子達とは違って、真剣に思っている事が
伝わって来るのだった。自分を見る目が、他の女子よりも熱い。
ブラバンの練習の時にも、細かい所によく気付き、それとなく雅春が
やり易いように気配りしている。生徒間の調整も自分からやって、
雅春が練習しやすいようにしていたようだ。
 だが。そこまで想われても、雅春にとっては迷惑なだけだった。
どんなに思われても、どんなに親切にされても、恋愛感情を持つか
否かは別問題だ。好きになれないものは、どうしようもない。
「知ってたからって、どうだって言うんだ?俺を好きな女子は、
他にも大勢いたろう」
「その一人に過ぎなかったって言うんですか?」
「そうだ」
「美智子があんなに尽くしたのに?」
「俺は尽くしてくれと頼んだ覚えはないぞ。松橋が勝手にしてただけだ」
「先生は、本当に酷い人ですね。美智子は卒業して、やっとこれで
先生と堂々と付き合えるって思ってたのに、その矢先にブラバンの
後輩から先生が結婚した事を聞いて、凄くショックを受けたんですよ。
しかも、その後で、相手が理子と聞いて、更にショックを受けて、
今はうつ状態で家に引きこもってるんだから」
 綾子の言葉に流石の雅春も驚いた。自分が結婚した事で、女生徒の
一人が鬱になって引きこもるとは想像もしていなかった。

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