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小説・クロスステッチ第2部 <完>
7.終 息 ~ 9.試 練


クロスステッチ 第二部 7.終 息 06

2010.09.10  *Edit 

 雅春は、理子から綾子との過去からの関係を聞いた。
 理子と綾子は、同じ幼稚園に通っていた。家は徒歩12,3分の
距離で、同時期に引っ越してきた。引っ越してきた当初は、まだ
人口もそれ程では無かった事もあって、幼稚園もその地域には一つ
しかなく、その辺に住んでいた子供は殆どがそこへ通っていた。
子供が少なかった事もあり、自然と親しくなり、家同士の交流も
生まれた。
 だが、理子が言うには、綾子の家庭と理子の家庭は明らかに
カラーが違っていて、どこか相入れ無いものが存在しているように、
小さい時から感じていたとの事だった。はっきり言ってしまえば、
お上品な理子の母とは対照的に、綾子の母はがらっぱちな感じだ、
と理子は言った。理子からそう言われた時、確かに理子と綾子も、
そういう感じがすると思った。
「結局のところ、肌が合わないのかもしれない」
 理子はそう言った。
 それなのに、二人はずっと友達できた。
 友達だった最大の理由は、二人とも内向的だったからだ。街には
次々と新しい住人が増え、子供の数も増えて行ったが、消極的な二人は、
元気で活発な同世代の子供達の中に積極的に馴染めない。新しくできる
友達と言えば、同じように、そういう集団に馴染めない者達ばかりで、
小集団だった。
 二人が友達でいる事をやめたら、孤立するのは目に見えている。
或る意味、利害が一致していたから付き合っていたとも言える。
 それでも、小学生のうちは、それなりに親しかったと言う。放課後も
よく一緒に遊んだ。だが、理子は彼女に不信感を抱いていた。最初は、
どこか合わない部分もあるけれど、誰だって嫌な所の一つや二つは
あるだろうから、友達には変わりないと思っていた。それが、ある
出来事をきっかけに、綾子に対して警戒の気持ちを抱くようになった。
 小学5年の時の事だ。綾子と理子の他に3人の友人がいて、いつも
5人で行動するようになる程の仲良しになった。或る日、いつもの
ように一緒に遊ぼうと友人達に電話をしたら、悉く「いない」と
家の人に言われた。不審に思って詳しく訊くと、綾子の家へ行って
いると言う。
 綾子の家へ電話をしたら、4人でマージャンをして遊んでいた。
理子だけ、仲間はずれにされていた。
 ジャラジャラとパイを転がす音を背後に聞きながら、
「だって、マージャンは4人だから」と、悪ぶれた様子もなく、
しゃぁしゃぁと言われて、理子は酷く傷ついた。
 その後も、何かと言うと、理子だけ誘われなかったりする。
他の友人達は、理子に済まなそうにするのだが、綾子だけは
平然としている。
 中学に入ってからは、同じクラスには一度もならなかった。
だから、小学生の時よりは距離ができた。それでも帰る方向が
同じなので、時々は一緒に帰るし、共通の友人を交えて遊ぶ事もあった。
 同じ朝霧に進学するとわかった時、「また理子と一緒ぉ~?」と
嫌そうに言われた。その癖、入学後は一緒に登校しようと誘ってきて、
一緒に登校していた。部活も同じ茶道部だ。だから帰りも
一緒になる事が多い。
 一緒にいると、何故か厭味な事ばかりを言う。何で綾子は、
こんなに憎たらしい事ばかりを言うのだろうと疑問に思っていた。
その癖、綾子には気の小さい所があって、誰それに傷つく事を言われたと、
ベソをかくこともあり、そんな時、理子はいつも励ましていた。
 嫌っているのなら付き合わなければいいのに、何故か寄って来る。
理子は、来る者拒まず去る者追わずタイプだから、寄って来られると
付き離せない。だから綾子とは、ずっと中途半端な関係が
続いていたと言える。
「綾子が、どうしてここまでするのか、私にはわからないけど、
私の事をずっと毛嫌いしていた事は納得した。ずっとそれは感じてたし」
 と、理子は暗い顔をして言ったのだった。
 雅春は、理子から聞いた話しを全部話した。
「じゃぁやっぱり、彼女でしたか」
 牧田が思った通りだったと言うような顔をして言った。
「本人には確認していませんから、多分そうだろうと言う域からは
出ていませんが」
「それにしても、幾ら理子が気に入らないからって、悪い噂を周囲に
吹聴して回るってのは、酷いな。恐ろしいよ」
 諸星の言葉に、熊田がニヒルな笑みを浮かべた。
「諸星先生は、ベテランの先生なのに、案外純粋ですね。女生徒なんて、
多かれ少なかれ、みんなそんなもんですよ。要は嫉妬でしょう。まぁ、
それは男にも言えてますけどね。相手が気に食わない。その原因の
多くは嫉妬ですよ」
「君は達観しているなぁ。そこまで冷めてるから、嫁の来てが
無いんじゃないか?」
 諸星の言葉に「余計なお世話です」と熊田は憮然と答えた。
「大丈夫ですよ。僕は熊田先生以上に冷めてたのに、ちゃんと嫁が
来ましたから」
 雅春は笑顔でそう言った。
「みなさん、誤解してませんか。僕は別に嫁が欲しいと思ってる
わけじゃありませんよ。生徒達の噂を真に受けないで下さいよ。
縁ものですから。縁があればするし、無ければしない。どっちでも
いいんですよ、僕は」
「それじゃぁ、いつまで経っても結婚は無理だな」
 諸星が断言した。
 熊田は、しょうもないな、と言った顔をした。続けていても
不毛な会話だと思い、口を噤んだ。
「それよりも、皆さん、どうします。この件を」
 校長が言った。
「どうするもこうするも、放っておくしかないんじゃないですか?
卒業した彼女を呼び付けて、真相を糺す必要も無いでしょう。
そこまでの権利も無いように思えますし」
 と、熊田が言った。
「それじゃぁ、僕の噂はどうなるんです?」
 牧田が不安そうな顔をして言った。
「訊かれたら、否定するしかないだろう。強引に上がりこんで来たとは
言え、上がった事実は否定できない。まぁ、相手は卒業生だから。
卒業したら、ただの男と女だ。世間的に見たら痴情のもつれだ。
他人が口を挟む事では無い」
「諸星先生、痴情のもつれとは酷いです。痴情なんかじゃありませんよ」
「実際にはそうだが、世間的に見れば、と言う事だ。周囲から
責められたら、自分は責められるような事はしていないと、堂々と
突っぱねるしかない。なぁ?増山先生」
 諸星の言葉に、雅春は頷いた。
「後ろめたい事を何ひとつしていないのなら、毅然とした態度で臨むしか
ないですよ。弱気になっていたら、負けてしまいます」
 牧田は項垂れた。元々優柔不断な性格だ。それが災いしたとも
言えるのだが。
「牧田先生の事は、我々は信じてますから、心配要りません。
あなたの噂が広まるようでしたら、教職員の方から諌めるよう
指導します」
「ありがとうございます。ですが、彼女、この事でまた理子さんを
逆恨みするような事は無いでしょうか?」
 牧田の言葉に一同、顔を見合わせた。
「僕が彼女を突っぱねたら、『理子にならそんな事はしないんでしょ』
と言ったんです。僕はどうも、彼女が迫って来たのも理子さんへの
対抗意識からではないかと、その時に思ったんです。大人しそうな
顔をして、やってる事は違うとか、先生に気に入られるのが上手くて
贔屓されてるとか、しきりに言ってましたし」
「全く、しょうがないなぁ。まさに嫉妬だな。熊田先生の言う通りだ」
その時、校長室をノックする音が聞こえた。全員が一斉にドアの方へ
向くと、柳沢が入って来た。
「あの、お話し中、申し訳ないんですが、牧田先生に卒業生が訪ねて
きてるんですけど」
 その言葉に一同は驚いた。
「卒業生って・・・・」
「鈴木さんが三人・・・」
「なんだってぇ?」
 諸星が素っ頓狂な声を出した。
「その三人を、今すぐここへ連れて来てくれませんか」
 と、校長が言った。
 この場のただならぬ雰囲気に驚いた柳沢だったが、「わかりました」
と言って部屋を出て行った。
「何故、三人が?」
 諸星の言葉に、「きっと、僕を責めに来たんですよ」と牧田が言った。
綾子からあれこれと言われて他の二人が憤り、責めに来たに違いない、
と牧田は思った。
 間もなく、鈴木三人娘が神妙な面持ちで入室してきた。そして、
そこに牧田と校長以外の教師の存在に気付き、驚いていた。
 3人掛けのソファに腰かけていた、雅春、熊田、諸星は立ちあがって、
3人に座るように勧めた。そして、校長と牧田の後に立った。
 三人娘達は、5人もの教師達を目の前にして、縮こまっていた。
「どうだ。卒業後は。学校や職場で上手くいってるのか?」
 と、熊田が声を掛けた。
「はい・・・」
 と、三人は蚊の鳴くような小さな声で返事をした。
 校長は、ジッと綾子を観察していた。校長は、綾子を鈴木綾子と言う
生徒として認識して彼女を見るのはこれが初めてだ。校内で見かけた
事があるのかもしれないし、卒業証書は全員に手渡しているが、
彼女の事は全く覚えが無い。校長の彼女に抱いた印象は、
“少女らしくない”だった。
「今日は、牧田先生に用事があって来たそうですね」
 校長が優しく声を掛けた。
「はい・・・」
 矢張り、蚊の鳴くような小さな声だ。三人とも俯いて、
視線は膝の上だった。
「実は、折角遊びに来てくれたのに悪いんですが、ここへ
お呼びしたのは、あなた達に訊きたい事が有ったからなんですよ。
特に、鈴木綾子さんに」
 三人は顔を上げ、互いの顔を見合わせ、困惑した表情になった。
「綾子は何も悪くないです」
 と、富美子が突然言った。
「どういう事ですか?」
「綾子は牧田先生の事が好きなのに、牧田先生が綾子を傷つけたんです」
 必死な顔で、富美子がそう訴えた。綾子は視線を横へ逸らしていた。
「だから、周囲にその話しを吹聴したのかい」
 諸星が厳しい口調でそう言った。
「吹聴って・・・」
 富美子は困惑した。
「富美子と宮古が、綾子からどんな風に話しを聞いているのかは
知らないが、そういうプライベートの事を、親友以外の多くの者にも
言いふらすってのは、褒められた事じゃないな」
 熊田がそう言った。熊田の言葉に、富美子と宮古が綾子の方を見た。
「だって、牧田先生が悪いんじゃないですか。あたしは悪くありません!」
 綾子がいきなり強い口調でそう言った。

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~ Comment ~

Re: 「それよりも、皆さん、どうします。この件を」>misia2009様 

misia2009さん♪

ありがとうございます。^^
諸星先生は、誰と絡んでも面白いですよねぇ。
実に個性的だし、正直者で。
熊田先生の結婚問題に関しては、一部でも何度か出てましたね。
親が住む土地の一角に自分の家を建て、あとはお嫁さんが
来るのを待つばかり、って噂が生徒たちの間でまことしやかに
流れていて、何かにつけそれをネタにからかわれるのです。

理子と先生の新居に来た時にも、理子に厭味だか皮肉めいた
言葉を浴びせられてましたしねぇwww。

山田洋二監督だなんて、そんな勿体なや……(^_^;)
でも、マンガに出て来そうな個性的なキャラは書く方からすると
面白くて楽しいですよね。
もうちょっと、おもしろおかしく使いたかったです。^^

「それよりも、皆さん、どうします。この件を」 

校長、ナイスつっこみw
諸星 vs. 熊田 が楽しかったです~
二人のやり取りを横で見ている校長と雅春の呆れ顔が目に浮かぶようですw

…どうも私は人が悪かったようで、この牧田氏をめぐる難局が非常に面白く、興味深く見守っております。
鈴木ガールズが、いつかは「やり込められるんだろう」という期待もあるのかもしれません。
山田洋二監督のような、コミカルな人情風刺劇を見ているようです。

それにしても5人の先生たち、校務とどこおって大変でしょうねえ…
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