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小説・クロスステッチ第2部 <完>
7.終 息 ~ 9.試 練


クロスステッチ 第二部 7.終 息 05

2010.09.09  *Edit 

「何で綾子が牧田先生のアパートに?そもそも、君が赴任してきたのは
去年だから、今年の卒業生は君とは関わりが無いだろう。
そこからして理解できない」
 大きなクッキリした二重の目を更に大きくして、諸星がそう言った。
「僕は電気部の副顧問をしてるんです」
 電気部?雅春の心の何かに触れる。
「電気部と綾子が関係あるのか?」
「あるんです。電気部員の一人と彼女が親しくてですね。頻繁に、
電気部へ出入りしてたんです」
 電気部員?雅春は小泉が電気部に所属していた事を思い出した。
確か、二年の夏休みに、理子が最上ゆきと一緒に遊びに行ったと
言っていた。そこで理子は自作パソコンを作ったとか・・・。
「じゃぁ、それで君は綾子と親しくなったのか」
「違いますよ。親しくなんかしていません。接点だ、と言うだけです」
「接点ねぇ~。だけど君、その、部活の時に、相手に誤解を与える
ような言動を取っていたんじゃないのか?」
「取ってませんよ。先生方も僕の事はある程度お分かりになって
るんじゃないですか?」
 確かに、牧田は朴訥としていて、口数も少なく、とても女生徒と
親しげに話したりとかできるタイプではない。女性そのものにも
縁が薄いのではないか、と言った印象だ。
「まぁ、君が女性にモテるタイプだとは思って無いが。だけど、
それじゃぁ、何故なんだろうねぇ」
「何故なのかは、本人ではないからはっきりわからないので、
話しを先へ進めましょう」
 と、校長が言った。
「先があるのかい!まさか君、過ちでも犯したんじゃないだろうね?」
「諸星先生。やめて下さい。僕は、彼女に迷惑してたんですよ。
だけど、彼女は何故なのかは解りませんが、僕に何かを期待し
求めていたようです」
「どういう事だ?」
 牧田は、たどたどしい口ぶりで、事の顛末を話した。
「そんな事があったのか。そりゃぁ君、綾子は君が好きだったんだな。
でなけりゃぁ、そもそも男やもめのアパートに頻繁に訪ねて
来ないだろう。君は鈍い」
 諸星の言葉に、牧田は困惑した顔をした。
「僕は、未だによくわかりません。確かに僕は鈍い方だとは思いますが、
それでも、最初に彼女と出会ってからの月日を思い出して見ても、
彼女が僕を好いてるなんて、なんだか思えなくて・・・」
「それじゃぁ、何かい?綾子は大して好きでも無い男に、自分から
迫ったって事かい」
「だから、わかりません。女の子の事はからっきし駄目なんですよ」
 うーん・・・と、諸星は腕を組んで唸った。
「牧田先生。綾子と親しい電気部員と言うのは?」
 と、熊田が訊ねた。
「磯田孜です」
 その答えに、熊田は「なるほど」と言った。
「しかし、鈴木三人娘は強烈だよな」
 諸星の言葉に、全員が頷いた。
 一人一人はどうと言う事も無い。それぞれに地味だ。だが、
三人集まると、何故か強烈な個性を発揮するのだった。
「それでですね。彼女がどうやら、僕の仕打ちに恨みを持ったのか、
僕に弄ばれたと吹聴してるようでして」
牧田が申し訳なさそうに言った。
「それで、君のアパートに卒業した女生徒が出入りしているとかの
噂が立ってるわけだ」
 また噂だ。雅春は苦虫を潰したような顔になった。
しかも、綾子である。
「それで、この事と僕とで、どう関係が?」
 雅春が言った。
 雅春の言葉に、校長が牧田を促すように見た。
「実はですね。まだ憶測の域を出ないんですが、彼女がうちへ来る度に、
理子さんの悪口を言ってたんです」
「理子の?」
「はい。彼女と理子さんは幼馴染だとか。幼稚園の時からずっと一緒で、
腐れ縁で迷惑していると言っていました。かなり、理子さんの事が気に
食わないようで、昔からああだったとか、こうだったとか、こういう
人間なんだとか。最初に理子さんの悪口を聞いたのは、卒業の
打ち上げの時です。うちの部員の村田が理子さんを好きだったと聞いて、
不愉快そうに悪く言ってました。だけど、酷く罵るようになったのは、
増山先生の結婚相手が理子さんだとわかってからです。その罵りようが
凄くてですね。どうしてそこまで悪く取るのか不思議だったんです。
だけど、学校内でお二人の酷い噂が盛んになって、その内容が彼女が
僕に言っていた事とそっくり同じ内容ばかりであると言う事に気付いて、
僕は噂の根源は彼女なんじゃないかと思うようになりまして・・・」
 牧田が伏せ目がちにそう言った。
「君、それは君の憶測だろう?」
 諸星の言葉に牧田は頷いた。
「憶測です。ただ、自分との事を元電気部の仲間や友人、そして
後輩達に言いふらしている事を知って、なんだか偶然じゃないような
気がしてきたんです。自分の事もどうしたら良いのかわからなくて、
それで校長先生に相談しました」
「熊田先生はどう思われます。鈴木綾子はどんな生徒でしたか」
 校長が熊田に問いかけた。
「彼女は、ちょっと癖のある生徒ですね」
「癖ですか。それはどんな?」
「成績は中です。まさに真ん中。文系の方が若干良くて理系の方が
若干悪い。遅刻や欠席もなく、そう言う点ではこれと言った問題の
無い生徒です。見た目も地味だし、授業においても積極的に発言
するタイプじゃない。どちらかと言えば、大人しい方です。
交友関係においても、特定の人間の間では人気があるようですが、
自分とは合いそうも無い人間には近寄らない、関わらない。自分が
イニシアチブを取れるような相手には強い態度で臨み、そうでない
相手には大人しく合わせるか従う。そういうタイプでしたね」
「でも、牧田先生の話しを聞いてると、まるで生意気な態度じゃないか。
大人しいタイプとは思えんが」
 諸星の言葉に熊田は笑った。
「それは、牧田先生が舐められていたからですよ。最初から
毅然とした態度できっぱりと強く出ていたら、何度も訪ねて来る事は
無かったと思います」
 熊田の言葉に、牧田は赤くなった。
「なるほど。そう言えば俺に対しても、俺がズケズケとデカイ態度の
せいか、おずおずしてたもんな。理子は全く物怖じしなかったが」
諸星はそう言って雅春に笑顔を向けた。雅春は苦笑した。
「鈴木が3人もいたから、存在感がありましたが、みんなバラバラで
あったなら、全く存在感の無い生徒ですよ。ただ、僕は担任だから
或る程度はわかってるつもりですが、綾子はあけすけな性格で、
噂好きです。好意を持ってる相手には親切ですが、それ以外に対しては、
物事を大袈裟に言う傾向にあります。大袈裟に面白可笑しく言う事が、
また周囲の友人にウケるようで、本人はそれに気を良くして
増長していた感じですね」
「理子との仲はどうなんだ?」
 諸星は熊田と雅春の二人に交互に視線を飛ばした。二人は顔を
見合わせた。
「あの二人は、確か茶道部で一緒だったんじゃないですか?」
 と熊田が言った。
「ええ。茶道部で一緒でした」
 雅春は言い澱む。昨夜、理子から綾子の事について聞かされた
ばかりだった。
 今回の、二人に対する酷い噂話。
 雅春の相手が理子だと一番最初に知ったのは、二次会に招待した
メンバー達だ。そこから洩れるであろう事は、二人も最初からわかって
いたし、覚悟していた。あれこれ言われる事も予測済みだ。ただ、
ここまで酷い内容で、学校中で大騒ぎになるとまでは思っていなかった。
しかも、伝わる速度の速さに驚いた。
 それについて、理子の親友のゆきも同じように思ったようで、噂の
発信源を調べたのだった。調査には、枝本も手伝った。こんな噂を
広めるのは男子では無いだろうと思っていたが、矢張り男子は誰にも
話していなかった。彼らの殆どは理子贔屓だったからだ。
 茶道部員と合唱部員の女子達は、二人の事を親しい友人に話した
だけだった。話した内容は事実に即していて、中傷めいた内容では
無かった。では、一体、どこで誹謗中傷が発生したのか。
 ゆきは思い切って沙耶華にあたってみた。在学中、殆ど話す事の
無かったゆきからの連絡に驚いた沙耶華だったが、雅春と直接話した事で
二人の事を自分の中で決着付けた沙耶華は、事態が大きくなっている事に
驚き、噂の発信源探しに協力することにしたのだった。
 そして、あちこちをあたり、辿り辿って、どうやら綾子らしい
と言う事が判明した。勿論、本人からは何も聞いていない。
 ゆきはそれを知ってショックを受けた。同じ茶道部員であり、
理子とは幼馴染でもあるし、普段から明るくて気さくで、いい人だと
思っていた。理子の幼馴染である事と、同じ部活と言うこともあって
親しくしていた。
 綾子はゆきにとても好意的で、親切だった。病気で孤独な義務教育時代を
経験しているゆきにとっては、他人から好意的に接っしてもらう事が
何より嬉しい。
 ゆきからの報告に、理子もショックを受けていた。綾子が自分に
好意的でないと言う事は、早くから気付いていた。だが、それでも
友達だ。そんな事をするとは思っていなかった。


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