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小説・クロスステッチ第2部 <完>
4.愛の前では ~ 6.噂


クロスステッチ 第二部 6.噂 06

2010.09.02  *Edit 

「最上さんは来ないの?」
 と、村田が小泉に言った。
「そもそも、歴研の方は行かなくていいの?」
 と、磯田が言う。
 小泉は歴史研究会にも所属していて、そちらでも卒業の
打ち上げをやっていた。
「最上さんとは別れたんだ」
 小泉は何でも無いように、さらっとそう言った。その言葉に、
そこにいた全員がええーっ?と声を上げて驚いていた。牧田は、
小泉の彼女だと言う最上ゆきの事は知らない。彼が電気部の副顧問に
なってから、その女の子を部室で見た事が無い。
「何でだよ。受験中は距離を置くって言ってたのは知ってるけど、
そんなのは一時的な事だと思ってた。受験が終わったら、また
復活するんじゃなかったのかよ」
 村田が不機嫌そうな顔をして言った。
「そうだよ。ゆきちゃんが可哀そうじゃん」
 綾子も同調して、小泉を責める。
「二人の問題だから」
 小泉はそれしか言わない。
「あんな、可愛い子をふるなんて、酷い!」
 綾子は尚も小泉を責める。
「でも、しょうがないよ。小泉君にもそれなりの理由が
あったんだと思うよ」
 宮古が庇うようにそう言った。その宮古の言葉に、小泉が
嬉しそうな笑顔を見せた。
「宮古はゆきちゃんが可哀そうだって思わないの?」
「思うけど、しょうがないよ」
「だけど本当に、最上さん、可哀そうだなぁ」
 磯田がそう言い、後輩達もその言葉に頷いていた。
「その、最上さんとかゆきちゃんとかって、誰なの?」
 牧田が生徒達にそう言った。牧田の言葉に、全員が驚きの
表情を向けて来た。
「先生知らないんですか?」
 後輩の崎村が言った。
「知らないから訊いてるんじゃないか」
 小泉は、話したく無さそうな顔をしている。他の人間にも語って
欲しく無い雰囲気だ。だが、そんな小泉の様子に気付いているのか
いないのか、磯田が言った。
「俺達と同じ3年で、小泉の彼女だったんですよ。2年の秋頃から
付き合ってたかなぁ。細くてたおやかで、ちょっと強く抱きしめたら
壊れてしまうんじゃないかって思うような、頼りなげな感じの
可愛い女子ですよ。見てると守ってあげたくなる雰囲気で」
 そんな女子が小泉の彼女だったんだ、と牧田は驚いた。
「僕はここで会った事無いような気がするけど」
「そうですね。3年になってからは、ここへは来て無いかなぁ」
「どうして?」
 牧田の言葉に、村田が横目で小泉を見ながら言った。
「小泉が、受験の邪魔だって言って彼女を遠ざけたんですよ」
「村田。別に邪魔だなんて僕は言って無い。勝手な事を言わないでくれよ」
 小泉が、怒った顔をしてそう言った。
「でも、同じようなものじゃないか。受験の為に彼女の存在が
邪魔だったから、遠ざけたんだろう?」
「少し距離を置いただけだ。放課後一緒には帰ってたんだし」
 二人の間に不穏な空気が流れかけている。
「村田君って、もしかして最上さんが好きなんじゃないの?だから、
小泉君を責めるんでしょう。自分が最上さんと付き合えばいいのに」
富美子が突然、笑顔でそう言った。
 その言葉に、村田と小泉は驚き、不思議な顔をした。そして、
目をパチクリとさせた後、小泉が声を出して笑った。その笑う姿を
見て村田は何故か赤くなっている。
「何で笑うの?図星だったから?」
 富美子のその言葉に、小泉は一層大笑いした。
「だ、だってさ。可笑しくて。余りにも的外れな発言だからさ」
 と言って、腹を抱えて笑っている。女子達は、小泉の笑いと
発言が理解できない顔をしていた。
「ねぇ、どういう意味よ」
 綾子が唇を尖らせて訊いた。
「む、村田が好きなのはさ。最上さんじゃないよ」
「おい、小泉、やめてくれよ」
 村田が憮然とした顔でそう言った。
「やだよ。お前、さっき僕に酷い事を言ったじゃないか」
 小泉は挑むような顔をして言った。
「村田が好きなのは、理子だよ。吉住理子」
 小泉の言葉に、村田は顔を赤くした。
「ええー?」
 みんな驚いていた。その中でも、綾子は特に驚いている様子だった。
「村田君、理子が好きだったの?」
 と、綾子は確かめるように言った。
 牧田も驚いた。吉住理子なら知っている。職員室の常連だし、
朝霧でただ一人、東大を受験した学生である。
「なんで理子?同じクラスになった事ないでしょ?」
 との綾子の言葉を聞いて、牧田も不思議に思った。
「もしかして、あの時?」
 と、磯田が言った。
「2年の夏休みの時だったかな。最上さんと吉住さんが二人でここへ
遊びに来た事があったんだ。小泉が誘ったから来たみたいだったけど。
あの時確か、村田は吉住さんと一緒にパソコンを作ってたよな」
 磯田の言葉を受けて小泉が言った。
「村田はあの時に、すっかり理子を気に入ったんだよ。理子はあれきり
来なかったから、しきりに僕に、何で来ないのかなぁって言ってたんだ」
「村田は奥手だからな」
 と、磯田がにやけ顔でそう言った。当の村田は顔を赤くしたまま
黙っている。
「それで、それからずっと、理子が好きだったってわけ?」
 呆れ顔で富美子が言った。
「村田君、物好き~」
 と、綾子が言った。
 その言葉に、小泉が「なんで?」と言った。
「だって。理子のどこがいいのかと思って。あたし、理子とは
幼馴染でさ。何故か腐れ縁でずっと一緒だから知ってるけど、
何の変哲も無い子じゃん。八方美人で優柔不断で。それに、
男好きだよね。理子の周囲っていつも誰かしら男子が一緒で。
今日の卒業式だって、男子と一緒で嬉しそうにしてたし。中学へ
入るまでは、あれで凄く消極的でウジウジしてた子だったんだよ。
中学へ入ってから、何故か先生とかに気に入られるようになって、
それからいい気になってるって感じ。先生や男子に気に入られる
コツとか知ってるんじゃないの?」
 そういう綾子の顔には、如何にも彼女が気に入らないといった
表情が浮かんでいた。
「綾子さんって、理子と仲いいんじゃなかったの?
確か同じ茶道部でしょ?」
 小泉の言葉に牧田は驚いた。綾子は茶道部員だったのか。
それなら、余計に、何故ここにいるのかがわからない。部員の誰かの
彼女と言う訳でもないのに。
「別に、特に仲がいい訳じゃないよ。単に腐れ縁ってだけ。はっきり
言って、卒業してやっと別れられると思うとせいせいする」
 綾子はそう言って笑った。
 綾子は彼女が嫌いなのだろうか?
 打ち上げが終わって、みんなで引き上げる時に綾子が言った。
「牧田先生―、春休みにみんなで遊びに行ってもいい~?」
 牧田の腕に腕を絡めてきたので、ドキリとした。校内である。
牧田は慌てて綾子の腕を外した。
「いいでしょう?卒業したんだし。ねぇ?」
 と、傍にいる富美子と宮古にも同意を求め、彼女らは
「行きた~い」と言った。
 牧田は、みんな一緒なら構わないだろうと思い、軽い気持ちで
了承したのだった。そして、卒業式の翌週の土曜日に、
鈴木三人娘は牧田の一人住まいのアパートへとやって来た。
「こんにちは~。来ちゃった~。お邪魔しまーす」
 綾子がそう言って、そそくさと靴を脱いで上がり、他の二人も
それに倣うように上がりこんで来た。そのドヤドヤとした雰囲気に、
牧田はたじろいだ。牧田は元々、のほほんとしていて大人しいタイプで、
どちらかと言うと受け身のタイプだ。女三人の勢いに、押された。
「やっぱり男の一人暮らしって、汚~い」
 そう言って笑うと、三人は部屋を片付け始め、その後で、玄関に
付いているキッチンとは呼べない小さなガス台の前に立つと、
お茶の支度をし始めた。牧田はそんな三人をただ茫然と
見ているだけだった。
「先生―、お茶入ったよー」
 いつの間にか部屋の真ん中に卓袱台が出されていて、そこに
お茶が4つ置いてあった。
 そしてしきりに三人娘はお喋りをして、数時間後に帰って行った。
 まるで嵐がやってきて去ったような感じだ。何が起きたのか
よくわからない。
 そして4月に入り、新学期が始まって間もなくしてから、綾子が
一人で牧田のアパートへやってきた。事前連絡も無く、いきなりの
事だったので牧田は驚いた。
「どうしたの?何かあったの?」
 玄関を開けて、そこに立っている綾子の姿を見て驚いた牧田は
そう言った。
「遊びに来ただけですけど」
 そう言って、驚いている牧田の横をすり抜けて、断りもなく
上がりこんだ。
「あ~あ~、相変わらずだらしない。もしかして万年床?」
 綾子はそう言うと、牧田の布団を片づけ出した。牧田は焦った。
「おいおい・・・」
「先生はいいから、そこにいて。邪魔だから」
 牧田は仕方なく、お茶の支度を始めた。ワンルームの狭い部屋だ。
その部屋に、男と女が二人きり。一体この女は男の一人住まいの部屋へ
一人きりで何しに来たのだろう。
 牧田が湯のみに茶を淹れて振り返ると、卓袱台が出されて、その前に
綾子が座っていた。部屋の中をキョロキョロと見まわしている。


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~ Comment ~

Re: 村田哀れなり……>misia2009様 

misia2009さん♪

牧田先生は特に、なんでしょうね。理科系の先生って
こういう人多いですよ。自分に関係ある生徒の事ですら
知らないってお方が…。

重くなると言っても、多分、皆さんの予想とは方向が
違うんじゃないのかな、という気がします。
ただ、多少、この辺も関係はしてきますが。
あちこちに伏線を張ってはいるものの、気付かれないか
もろバレか、微妙な所ですね。^^

栗山高校の件ですが、これは私も当時少し迷ったんです。
あとは、ちょっと説明不足だった部分もあったりします。
自分だけが分かっている状態だったような気が。
栗山高校は理子の家から徒歩5分ほどの場所にあるのですが、
ちょっと目立たない、裏道みたいな場所にあるのと、
周辺に朝霧高校へ通っている生徒がいない事と、日曜日の高校は
閑散としていて、校門前は寂しいと言う事。
だから、案外誰にも見られていない…って、まぁ、作者の
ご都合主義ですね(^_^;)
毎週の事なら、ご近所の誰かに目撃されてたかもしれませんが、
逢う頻度は少なかった、と言う事もありますし。

と言う事で、栗山高校の件はスルーなのです^^;
どうもスミマセンv-356

噂の件は、一端、終息します。
トラブルは、別の方向から発生致します。
それからは、重たい連続となります。

村田哀れなり…… 

生徒について何も知らない牧田先生の天然ぶりもgood。先生ってこんなもんですわね。

綾子の理子評は、「うん女子から見るとそうであろう」という説得力ですね。
小泉の思いやりのない爆笑ぶりは「屈託のない若さゆえの残酷さ」がよく出ていてイタイです。大人になったら反省しろよ、小泉。

そうですか重くなりますか……

第一部では実は「栗山高校の前で待ち合わせ」を誰かに見られたというような話があっても良さそうだがスルーしてらっしゃるのかどーなのか、と思ってました……一気に追求していかれるのですね……
たいへん読み応えがあって読むほうも気合い入れとります。
押忍。

Re: 苦しい…YUKA様 

YUKAさん♪

こんにちは!毎日読んでくれてありがとう^^
なんか、切ないお話でごめんね。
この件の終息を迎えて暫く後は、重たい話の
連続になります…。
ホントにごめんねぇ~。。。
私も書いていて非常に重くて苦しくて。
でも、アンハッピーは嫌いなので、途中辛くても
安心してね。

YUKAさんも、ましゃのファンだったんですね。
とっても嬉しいです。
ペイペイなんて、そんなの関係ないよ。一緒に
ましゃを応援していこうね^^
私はあまり、ましゃの情報を載せてないので、逆に
申し訳ないのですが、読んで貰えて感謝です♡

苦しい… 

毎日読むのが切なくて…世の中人の噂も何とかっていうけど当事者にとっては凄く大変な時間ですよね
そしているんですよね~噂話の好きな人 ほっとけばいいのに首つっこんで尾ひれつけまくる人…
あ~いやいや
二人には何とかこの状況を乗り越えて絆を深めて欲しいです

話は変わりますが私もペイペイではありますがましゃのファンです blogでいろいろ情報を教えてもらって役立ててま~す またいろいろ教えてくださいね!
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