ChaoS

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit TB(-) | CO(-) 

小説・クロスステッチ第2部 <完>
4.愛の前では ~ 6.噂


クロスステッチ 第二部 6.噂 05

2010.09.01  *Edit 

 雅春は理子を強く抱きしめて言った。
「君が欲しい。君を抱きたい。・・・俺を癒してくれないか」
 そう言えば、ここ数日、二人は交わっていなかった。雅春の帰宅が
遅くなってきて時間が減った事と、疲れているのがその原因だと
思っていた。連休が明けてから、以前のように毎晩する事は無く
なっていた。休日は必ず交わっているが、平日は確実に減った。
 だが、これまでの雅春を思えば、こうして求めてくるのは
自然な事ではある。ただ、何故か今日はこれまでと違う感じがする。
『俺を癒してくれないか』との言葉が、それを暗示しているように思える。
 雅春は理子の返事を聞かぬまま、理子の服を脱がしにかかった。
その唐突な行為に理子は動揺した。
「先生?」
 思わず理子は軽く抵抗した。だが雅春は、そんな理子にはお構いなく、
半ば強引に理子を裸にした。
「先生、ちょっと待って。一体、どうしちゃったの?」
 理子は慌てた。雅春の性急な行動が理解できない。だが雅春は
無言で理子を抱きあげると、寝室へと入り、ベッドの上に理子を
下ろすと、素早く自分も裸になって理子の上に覆いかぶさった。
 本当に、どうしたというのか。理子の頭は混乱した。こんな事は
初めてだ。だが雅春は、そんな理子の混乱を余所に、いきなり
理子の中へと侵入してきたのだった。理子は何の前置きも無く、
いきなり貫かれた事にショックを受けた。
 どうして?
 その思いが強くなる。
 雅春の、過去の事が脳裏に浮かんだ。
 いつも自分からは誘わない男が、ストレスが溜まった時にだけ
誘って来る…。
 雅春は激しく腰を動かしている。何時にも増して激しい動きだ。
理子は、そこから突き上げて来るものを感じたが、頭も心も醒めていた。
 この人は、一体何をしているの?
 そんな思いが湧いてきた。
 やがて雅春は理子の上で声を上げると、果てた。
 理子を離して、その隣で荒い息を上げている。
 理子は天井を見つめた。心の中は悲しみで満たされていた。
こんな扱いを受けるとは思ってもいなかった。雅春に、何が
あったのかは知らない。でもきっと、何かがあったのには違いない。
そう思っても、悲しみを拭う事ができない。
 涙が湧いてきた。零れないように理子は必死に堪えた。泣くのが
悔しかった。理子は黙って身を起こすと、ベッドから出た。
「理子?」
 雅春に呼び止められたが、無視して部屋から出て、ソファの傍に
落ちている自分の衣服を拾った。雅春がすぐに追いかけて来た。
「理子、ごめん」
 雅春はそう言って、理子を背後から抱きしめた。理子は激しく抵抗した。
「離して!私に触らないで!」
 理子は激しくそう言うと、渾身の力を込めて雅春から離れたのだった。
そんな理子の激しい拒絶の態度に、雅春は茫然として立ちつくした。
「あなたが、こんな人だとは思わなかった」
 理子は一言そう言うと、自室へと駆けこんだ。ドアを閉め、
その前に座り込む。堪えていた涙がどっと溢れて来た。
 なんで?どうして?
 湧いてくるのはそれしかない。
 疲れて、ストレスが溜まっていたにせよ、あんなのは酷い。
相手を無視した一方的な行為だ。あんな事をする人だとは思って
いなかっただけに、尚更ショックだった。信頼を裏切られた
ような思いがする。
「理子・・・、ごめん。すまなかった。出て来てくれないか」
 ドアの外で声がした。切なげな声だ。そんな雅春を理子は無視した。
 暫くしたら携帯が鳴った。メールだ。雅春だった。

  “理子、本当にごめん。学校でトラブルがあって、
   毎日嫌な思いをしている。君に余計な心配をかけ
   たくなかったから言わないでいた。だが今日は
   特に酷かったから、つい自分を見失ってしまった
   んだ。とても後悔している。許してくれないか。
   許して欲しい。俺には君しかいないんだ”

 携帯を閉じた。心が揺れる。学校でトラブル。一体、
何があったのだろう?先生があんな風になるなんて、
余程の事に違いない。
 だがそう思っても、理子の傷は癒えない。どんな理由があるにしろ、
許される行為なのだろうか?愛し合っている夫婦の間で、あんな
セックスを課されるなんて。理子自身に原因があったのなら、
まだわかる。だがそうではない。雅春の心の問題だ。理子は、
雅春のストレス発散の対象にされたのだ。
 いきなり入ってきて、自分だけが気持ち良くなって終わったセックス。
そこには何の思いも無い。ただ吐き出したいが為の、欲望を
満たす為だけのセックスだった。
理子はもう一度携帯を開いて、雅春からのメールを見た。
何度も読み返した。
 学校で毎日嫌な思いをしている・・・・?毎日?いつから
なのだろう。連休明けから、疲れた顔をして帰って来るようになった。
トラブルって何?連休明けから10日になる。その間、ずっと
毎日嫌な思いをしてきたと言うのだろうか。
 今日は特に酷かった・・・。だから自分を見失った?それ程までの
トラブルとは何なのか。理子は急に不安になった。
 あまりの行為にショックを受けて興奮していたが、落ち着いて考えて
みると、今日の雅春は様子がおかしかった。その事を理子も
心配していた事を思い出した。
 一体、学校で何が。あの先生が、自分を見失う程の事って一体・・・。
 理子は考えて、ゆきにメールした。今学校で何かトラブルが
起こっているようで、先生が毎日疲れて帰ってきている。本人が何も
言ってくれないので心配で仕方が無い。茶道部の後輩に訊いて
みてくれないか。そんな内容のメールを送った。ゆきは茶道部の
部長だったので、後輩との繋がりは理子よりもある。
 ゆきからはすぐに、これから訊いてみるから待っててくれとの
返事が来た、それから20分後に、携帯の電話の着信が鳴った。
理子は慌てて出た。そして、ゆきからの報告に愕然としたのだった。


 牧田吾朗は困惑していた。
 4月に入ってから、何故か頻繁に鈴木綾子が訊ねて来る。
 最初にやって来たのは、春休み中だった。その時は、友人の鈴木富美子、
鈴木宮古(みやこ)と一緒だった。三人は高校二年の時に同じクラスに
なって仲良くなったと言う。
 同じクラスに鈴木が三人。「鈴木さん」と呼んでも区別はつかないので、
自然とクラス内でも教師の方でも、下の名前で呼ぶようになった。
「綾子、富美子、宮古」と呼ばれている。それ以来、クラスが変わっても、
通称のように下の名前を呼び捨てにされていた。
 牧田は彼女達が三年の時に、朝霧高校へ新規採用で赴任してきた。
担当は物理だ。担任にも副担任にもならなかったから、三年生とは
縁が無い。物理は二年の必修科目だからだ。
 だが牧田は電気部の副顧問になった。その電気部の三年である
磯田孜(つとむ)と、綾子達三人は二年の時に同じクラスになり
親しくなっていた。そして、自然と電気部へ出入りするように
なったのだった。
 綾子はあけすけで、気さくな女生徒だった。初対面でも、まるで
旧知の友人のように親しげに話しかけて来る。しかもタメ口だ。
そんな綾子を、図々しい女と思って嫌う人間と、親しみやすいと好意を
持つ人間とに大体が別れる。電気部の部員達は後者の方だった。
彼らは彼女を、姉ご肌タイプだと思っている。
 彼女達は電気部員になるわけでもないのに、頻繁に電気部に出入り
していた。時々差し入れなども持って来る。他に部活には入って
いないようだった。三年生はどの部活でも活動が減って行くのに、
何故かよくやってくる。
 電気部の三年は、磯田、村田祐一、小泉徹の三人だけだった。
その中で小泉は国立を受験する事もあって、三年になってからは
部活への参加はめっきり減っていた。磯田と村田は文化祭まで頻繁に
参加し、それ以後も週に1度は出入りしていた。
 そして、彼らが来ている時に、綾子達もやってくる。三人の中では、
就職組の綾子が一番頻繁に出入りしていた。何故こうも頻繁にやって
くるのか、牧田は不思議に思っていた。
 綾子は磯田と特に仲が良かった。とても気が合うようで、毎朝早くに
登校しては、綾子の教室で磯田と二人、お喋りに興じていた。だが、
そこまで仲が良いのに、二人の仲が噂になるような事は無かった。
綾子が言うには、磯田は宮古に気があるとの事だった。
 牧田は、そんな彼らとは一定の距離を保ちながら関わっていた。
教師だし、新任と言う事もあって、生徒達とどう関わったら良いのか
わからなかったからだ。しかも、物理専攻と言う事からもわかるように、
他人とコミュニケーションをとるのが苦手でもある。
 彼らと特別に親しくしていたわけではない。関わるのは部活の
時だけだ。授業を担当した事も無いのに、卒業後に、何故こうも頻繁に
訪ねて来るのだろう。
 彼らは卒業後も定期的に会っているようだ。磯田は私立の工学部に、
村田は私立の電気大学に、小泉は国立の水産学部へ進学した。
鈴木の富美子と宮古は私立の女子大へ進学し、綾子だけが就職した。
 綾子は地方公務員試験を受けたのだが、不合格だった。その後、
職業安定所の勧めで大手スーパーの求人に応募し、卒業間際に
就職が決まった。
 卒業式の後、電気部では卒業祝いの為の打ち上げを、後輩達の
主催で行われた。その席に牧田も誘われ、勤務後に参加した。
牧田は3年の担当ではない為、謝恩会の準備と後片付けの担当だった。
肉体労働だったので、少々疲れた。普段から運動はあまりしないから
尚更だ。そんな牧田にとって、打ち上げの場所がいつもの電気部の
部室だったのは助かった。
 部室へ行くと、例の鈴木三人娘も来ていた。確かに電気部には
男子しかいないから、女子の存在は花を添えてくれるものだが、
部員では無い。
 牧田は思う。三人はいずれも美人でも無ければ、可愛くも無い。
明るくて愛嬌はあるが、顔立ちは個性的だ。もう少し可愛い子が
いたら良かったのに・・・。
 綾子は中肉中背である。色は白い方だが、眉毛が濃くて太めであり、
鼻が低い。唇の形もあまり良く無い。目は少し垂れ気味で、庶民的な
感じがする。髪は黒くて量が多く、時々脂が浮いている事がある。
 色が白いからか、近くでよく見ると顔のうぶ毛が目立つ。
剃った方が良いのでは無いかと牧田は時々思う。この、時々脂が
浮いている黒々とした髪と、目立つ顔のうぶ毛のせいなのか、
全体的にはデレっとした崩れたような印象だ。
 富美子は綾子よりも小柄で、太ってはいないがむっちりしていて、
下半身がどっしりしている。目がパッチリとしているが、
濃い印象である。目だけなら、可愛いのかもしれないが、ずんぐりと
した体型のせいか、魅力的とは言い難い。色白だが肌の肌理(きめ)は粗く、
脂性みたいだ。
 宮古は富美子より更に小柄で、こちらは細い。小顔だが、その中の
作りも全て小作りだ。色白でそばかすがあり、ヒヨコのような印象を
受ける。このヒヨコのような顔が、愛嬌があって可愛らしいのだが、
あくまでもヒヨコのような可愛らしさで、女の子としての
可愛らしさではない。
 磯田はこの宮古に気が有ると言う。牧田には理解できない。
体も小さくて細く、まるで子供のようだ。女性としての魅力を全く
感じない。そういう点では、綾子が一番、女臭い。
 だが。だからと言って、好みなわけでは全く無い。女生徒に対して
好みがどうのと言うのも不謹慎とは思うものの、どうせなら心が
浮き立って来るようなタイプの女の子が来てくれた方が嬉しい。
 だからなのかはわからないが、部員でも無い女の子達が、我が物顔で
出入りして、打ち上げにまで参加している事に抵抗を覚えるのだった。
しかも、送られる方としての参加である。


スポンサーサイト



*Edit TB(0) | CO(2)

~ Comment ~

Re: NoTitle>水聖様 

水聖さん♪

おっしゃる通り、男の方が子供なんですよね。
理子にとっては、先生は大人なんだけど、
先生自身は、まだまだ若い男性なわけなんです。
理子が思うよりも子供なので、だからこそ、これまでも
何度もぶつかってきわわけで。

人って、結局未完のまま人生を終えるものなので、
20代前半なんて、まだまだヒヨッコなんですよね。

色んな障害にぶつかりながらも、それを乗り越え
絆を深めていってもらいたいものです。

NoTitle 

なんかせつないですね。
先生の気持ちもわかる。でも、理子ちゃんは若いし、すごく潔癖だから、許せないという思いがあるのもわかる。
男女の関係って結婚してからのほうが難しいのかもしれませんね。
考えてみれば、先生だってまだ20代の前半、男の人のほうが精神的には幼いと私は思っているので、こうなってしまうのも理解できます。はやく仲直りできるといいのですが、心配。
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
 ◆Home  ◆Novel List  ◆All  ◆通常ブログ画面  ▲PageTop 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。