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小説・クロスステッチ第2部 <完>
4.愛の前では ~ 6.噂


クロスステッチ 第二部 5.それぞれの想い 10

2010.08.27  *Edit 

 月曜日の朝、隣の席に座った志水が言った。
「理子、この間はありがとう。楽しかったよ、色々と」
「どういたしまして。たまにはいいわよね、ああいうのも」
 理子は笑ってそう言った。
「ところで、あの後大丈夫だった?」
「大丈夫って何が?」
「うん。・・・その、ついうっかり、一緒に帰ってるって
言っちゃったけど」
 志水はそう言って、恐縮そうな顔をした。
「あら、そんな事。別に平気だったわよ?」
 理子は平然とそう言った。
「えっ?本当に?でも、あの人、ちょっと驚いていたように見えたけど」
 理子は、志水が雅春の事を『あの人』と言った事が気になった。
何故、そんな言い方をするのだろう。
 志水が帰り際に言った言葉。
 あれを聞いた時、理子はドキリとした。雅春には話していない
事だったからだ。だから、雅春の反応がとても気になった。
 みんなが帰った後、雅春は仕事の続きをする為に自室へ入って行った。
「食事の支度ができたら呼んで」
 との言葉を残して。
 素っ気ない態度だったから、尚更理子は気になった。だが、相手が
何も言わないのに、自分からあれこれ言うのも弁解がましい気がする。
 夕飯の支度ができて部屋へ呼びに行くと、雅春はいつもと変わらぬ
笑顔で出て来たのでホッとした。ホッとしたが矢張り気になった。
 食事が終わって、ソファで寛(くつろ)いでいる時に、雅春が言った。
「君、あの志水君と一緒に帰ってるんだ」
 唐突に言われて、理子は驚いた。いきなりの核心だ。
「同じ授業を受けてるから帰る時間も一緒でしょ?それで電車も
同じだったから、何か自然とそうなってしまって」
 理子の言葉に、雅春は「ふーん」と言った。
「だけど、何で話してくれなかったの?」
 雅春の言葉に、理子はどう答えたら良いのか悩んだ。そんな
理子の様子を雅春は横目で見ている。
「心配しなくても平気だよ。彼から言われた時には、ちょっと
驚いた。驚いたのは君から聞いていなかったからだ。君は俺が
また嫉妬するとか思ってたんだろ」
「先生。気を悪くされてる?」
 理子は心配そうに訊ねた。
「だから、心配しなくても大丈夫だって。気を悪くなんかしてないよ。
ただ単純に、どうして話してくれなかったのかなと思っているだけだ」
 確かに雅春は気を悪くしているようには見えなかった。だが、
だからと言って機嫌が良いようにも見えない。嫉妬や怒りと
言うよりは、どこか不安げな感じがする。
「これと言った理由はありません。自分でもわからないの。ただ、
毎日誰と帰ってるとかって、わざわざ話す程の事でも無いような
気がして。訊かれていれば、当然話すけど。トイレに誰と行ったとか、
お昼は誰と食べたとか、そういう類の事を毎日わざわざ報告
しませんよね。私にとっては、それと同類だから、言わないのが
自然と言うか・・・」
 理子はそう言ったが、内心では微妙に違うと思っていた。
相手が誰であっても、いちいちそんな事は言わないだろう。
それが普通だと思っている。だから、本当なら言った通りなのだが、
相手が志水であると言う事が、理子の心に微妙な後ろめたさを
生じさせているのだった。何故なのかはわからない。
「そうか。それはそうだな。君の言う通りだ。相手が男子なものだから、
つい気になった。二子玉って言ってたな。二子玉なら、
乗ってる時間も短いよな」
 雅春はそう言って笑った。その笑顔を見て、理子はホッとした。
「先生。今日はありがとう。明日は母の日でお祝いに出かけるから
今日は忙しいのに」
「大丈夫だよ。昨日の時点で大分、終わってるし。もう殆ど片が
付いてる。だけど君の友達、二人とも美人だね」
「あら」
 雅春の言葉に理子は驚いた。女性に対してそんな事を言うのを
聞くのは初めてだ。
「どうした?もしかして、妬いた?」
「いいえ。先生のそんな言葉、初めて聞くから驚いただけです」
「あの子たちも歴史に進学する予定なの?」
「ええ。そう聞いてます」
「へぇ~。全然、そんな感じはしなかったな。雰囲気からすると
国文とか英文って感じがするけどねぇ」
「そんな、人を雰囲気で判断しちゃいけませんよ」
「それはそうだ。俺なんか、雰囲気で判断したら大変な事になるもんな」
 全くその通りだ。これほど、雰囲気とのギャップのある人は
いないだろう。
 遊びに来た友人達の話しは、これで終わった。
「彼が驚いたのは、同じ沿線に住んでたって事なんじゃないのかな。
履修科目が全部同じってだけでも驚きなのに、沿線まで同じなのかって、
単純にそう思っただけよ」
 理子はにこやかにそう言った。
「ふーん。本当にそれだけなのかな」
 志水の言葉に、理子は眉をひそめる。彼は何が言いたいのだろう。
 連休も明け、いよいよ大学の勉強も本格的になってきて、
レポート提出の課題が増えて来た。その為に学生達は図書館へ
通うようになった。理子も同じだ。志水も当然のように理子と
行動を共にする。愛理と美香が一緒の時もあるし、同じ委員の
林が一緒の時もあった。
 放課後、渋谷の喫茶店でみんなとあれこれ話す機会も次第に
増えていった。
 渋谷の街をみんなで歩いていて、愛理がしょっちゅう声を
掛けられるのに遭遇した。ナンパ然り、スカウト然り。愛理は
背が高いこともあって目立つ。モデルのようにスタイルは良いし、
顔立ちも目を惹く。だが愛理は、それら全てを冷たくあしらった。
 本人は興味が無いと言う。モデルの仕事はもうやるつもりは
無いらしい。将来何か他にやりたい事が有る訳では無いようだ。
ただ今は、大学へ入ったばかりだから他の事はやりたくないのだと言う。
クラスメイトの女子達は、みんな「勿体ない」と言っていた。
愛理のルックスは彼女達にとっては羨望と嫉妬の対象だった。
「理子って、どうして愛理や美香と仲良くしてるの?」
 ある時、同じクラスの女子からそう言われた。
「どうしてって、気が合うからだけど・・・」
 理子はそんな事を言われて不思議に思った。
「あの子たちと気が合うなんて驚き。あなたわかってないでしょ。
あの子たち、理子の事を自分達の引き立て役としか思って無いわよ」
 そんな風に言われて心外だった。そばでそれを聞いていた
志水がクスリと笑った。
「どうして笑うの?」
 志水が笑った事に気付いた女子が、怪訝そうに訊ねた。
「いやだって。女の嫉妬って面白いなと思って」
 志水にそう言われて相手は真っ赤になった。
「嫉妬なんかじゃないわよ。本当の事よ」
「でも君達、理子にも嫉妬してるでしょ。加藤さんと上村さんが
人気あるのはまだしも、何故理子もって思ってるんじゃないの?
その原因の一つは、あの二人と仲良しだからだ、とか思ってるんじゃ
ないのかなぁ。あの二人と離れれば、地味な理子は目立たなく
なるって。自分らと同じ場所まで引きずりおろしたいって
魂胆が見え見えだよ」
「な、何言ってるのよ。理子は人妻じゃない。その人妻に、
いっつも腰ぎんちゃくのように引っついてる志水君こそ、
どうかしてるわよ。理子は既に男子にとっては対象外なんだから、
そもそも張り合う対象じゃないし」
 真っ赤になって、噛みつかんばかりの勢いでそう言う女子を、
志水は変わらぬ謎の微笑で見つめていた。
「理子は既に人妻で、男子にとっては対象外である筈なのに、
何故か人気がある。それが許せないんじゃない?」
「馬鹿な事、言わないで。あなたってサイテー!」
 彼女は吐き捨てるようにそう言って、去って行った。
 そんな二人のやり取りに理子は仰天していた。
 どちらの言う事にも、ただ驚くばかりだった。
「気にする事ないよ」
 志水が静かにそう言った。優しい微笑みを浮かべている。
「なんか、私には理解できない」
「君が理解する必要なんて無いよ。全く持って低レベルな話しだからね。
これだから女は嫌いなんだ」
 理子はその言葉に驚いて志水を見た。
「志水君って、女嫌いなの?」
「そんな、不思議な生き物を見るような顔をしないでよ」
「そんな顔をしているつもりはないけど」
「僕は、基本的には女嫌いだけど、中には嫌いで無い女性もいる。
だから、同性愛者とか、そう言うのじゃないから安心して」
「安心してって・・・・」
 どういう意味なのだろう。彼が同性愛者で無いと知って、
どうして安心しなければならいのか。
 そんな理子の心の中を見透かすような笑みを志水は浮かべた。
「君は、同性愛者であったとしても、そんな事は気にしない人だと
言う事はわかってるよ。でも、僕がもしそうであったとしたら、
がっかりするでしょ?」
「どうして私が?私には直接的には関係ないのに」
 理子の言葉に、志水は目を瞬(しばたた)かせた。そして、
フッと笑った。
「そうだよね。君の言う通りだ」
 理子は何だか、釈然としなかった。だが、志水に対し、
何か得体の知れないものを感じるのだった。


    5.それぞれの想い 了  6.噂 へつづく。。



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~ Comment ~

Re: ふぅ>OH林檎様 

OH林檎さん♪

心配して下さり、ありがとうございます。
だけど、少々妄想し過ぎ……(^_^;)
まぁ、これまでの先生からすると、十分あり得る話ですが。
次の章から、波乱続きになってきます。
覚悟してねー^^

ふぅ 

理子ちゃんと志水くんのやりとり、ハラハラさせられますねぇv-356
なんだか最近、志水くんをギャフンと言わせたいって気がムクムクと…。
2人の間に割り込まないで!
波風を立てないで!
とか、ちょっと志水くんを疎ましく感じちゃったりしてます。
理子に近づく→先生嫉妬→征服欲を掻き立てられ理子を(ベッドの中で)責め立てる…と結局理子ちゃんがしんどい思いをするのでは?
非現実の話に本気で心配中です(笑)

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