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小説・クロスステッチ第2部 <完>
4.愛の前では ~ 6.噂


クロスステッチ 第二部 5.それぞれの想い 06

2010.08.23  *Edit 

 ドラマが終わると同時に、愛理と美香は溜息を洩らした。
 その後すぐに、雅春は結婚式の模様を撮影したビデオを再生した。
いきなりの結婚式の場面にみんな驚く。理子は唖然とした顔をしていた。
 この人は見せたがり屋なのだろうか?
 白のタキシード姿の雅春の登場に、女子二人は「わぁ~」と
嬌声を上げた。貴公子然としたその姿は、志水から見てもイイ男だ。
そして、花嫁の登場。長いベールに包まれた理子の顔はよく見えないが、
エレガントなドレス姿がとても美しい。
 だがその後の二人の模様は、志水には胸が痛むばかりだった。
誓いのキスをする為に上げられたベールから出て来た理子は、
とても可憐で美しかった。雅春が思わず見惚れてキスを忘れたのも
よくわかる。そして、長いキスには辟易とした。もしかしたら
この男は、自分にこれを見せつけたかったから流したのかもしれない。
 初めて会って紹介された時も、そして今日も、その表情には
一切出さないが、この人は僕の理子への気持ちを知っている。
頭のいい男だと志水にはわかる。初対面の彼に対して、その妻を
呼び捨てにして憚(はばか)らない志水の事を愉快に思っている
わけがない。だが、そんな表情をおくびにも出さない。
 そうか。再現ドラマも、躊躇(ためら)っている理子を押し切って
見せたのは、僕に見せるのが目的だったのか。志水は悟った。
 二人の愛の軌跡を、深く愛し合っていく過程を見せつけて、
僕なんて出る幕は無いんだと言いたいが為だったに違いない。
 そう悟った途端、志水の心に余裕が生まれた。雅春の行為を
付き詰めて考えれば、それは即ち、志水の存在を危惧していると
言えるからだ。本当に出る幕なんて無いと思っているならば、
眼中にも入らない筈だ。志水が理子にどんなに想いを寄せようと、
痛くも痒くも無い筈である。志水の存在に不安を感じているからこそ、
二人の中を見せつけて、志水の戦意を殺(そ)いでしまおうという
魂胆なのだろう。
 それに、テストの採点で忙しい筈なのに、最初からずっと一緒に
いる。妻の友人が遊びに来たのだ。共通の友人ならいざ知らず、
自分とは関わり合いのない者達である。普通なら挨拶だけして、
自室で仕事をしているだろう。
 そう考えると、これは明らかに志水への牽制である。
 そして、理子。
 理子は何故、このドラマを見せるのを嫌がったのか。雅春の
言葉を聞いた限り、二次会での上映には抵抗を見せなかったようだ。
雅春が言った通り、再現ドラマはよく出来ていてわかりやすい。
ぐだぐだと言葉で説明されるよりも理解しやすい。自身が演じて
いるならば恥ずかしいと言う事もわかるが、他人が演じているのだ。
 愛理や美香に対して恥ずかしいと思う必要も無いだろう。
だとすると、やはり自分か。僕を意識しているからか、と志水は思った。
 思わず志水はニヤリとした。これは思わぬ収穫だ。この二人が、
それぞれに自分を意識していると知って、志水は嬉しくなった。
 そして改めて思うのだ。矢張り思った通りだったと。
 理子は、本格的な恋愛をするのは、この男が初めてだった。
こんなにイイ男で、しかも教師だ。惹かれて当たり前だろう。
雅春から求愛されていなかったら、理子はこれ程彼を好きになっては
いなかったに違いない。
 自分の立場を弁えずに、熱烈に理子を求め、理子の純潔を奪い、
彼女を一人占めして満足しきっているこの男を見ていると、
胸糞悪くなってくる。
 東大に合格したら結婚すると言う目標も、理子への責任転嫁としか
思えない。もし不合格だったら、どれだけ理子が傷つき思い
悩む事になるかは明白だ。そうして、彼女が東大へ合格する事を
強要する一方で、彼女の勉強の邪魔になるような事ばかりをしている。
 志水からすると、理子の夫は自分本位で自分の気持ちばかりを
優先しているようにしか見えないのだった。そんな男に理子は
ずっと振り回され続けてきたのだ。本人はそういう意識は
無いのだろうが。
 大学へ入学して以来、彼女は毎日、急いで帰宅する。自宅から
学校までは、そう遠くは無い。朝も帰りも時間的に余裕はある筈だ。
それなのに、彼女は毎日眠たそうにしている。時々休み時間に
寝ている事も有る。明らかに睡眠不足と窺える。
 何故なのか?
 家庭生活に問題がある事は明白だろう。この熱い男が、理子の
時間を拘束しているに違いない。再現ドラマの中では、東大で理子に
しっかり勉強して貰いたいと言っていた。だが実際はどうだ。言行
不一致ではないか。理子もきっと不満に思っているだろう。だが、
愛の為に目が曇っている。
 やはりこの結婚は間違っている。早すぎる選択だった。
ピュアな理子は、この男の情熱に抗(あらが)う事が出来なかったのだ。
もし自分が先に理子と出会っていたならば。この男の毒牙から
彼女を守り切ったのに。
「なんか、びっくり~。すっごい、熱々なんですね」
 ビデオが終わった時に、愛理がそう言った。愛理の言葉に
理子は顔を赤くした。
「相手は女子高校生で教え子だって言うのに、よく告白しましたね。
まさか理子が自分を好きだなんて思って無かったんですよね。
担任から愛の告白をされて、理子が困ると思わなかったんですか?」
 志水の問いかけに雅春は笑った。
「俺にはよく解らなかった。なんせ初めての経験だったんで。
ただ、告白をして終わるつもりではあったんだ。片思いだと
思ってたからね」
 愛理と美香は驚いた表情で互いに顔を見合わせていた。
この男が片思いなんて信じられないと言った顔をしている。
「何だか身勝手に思えるんですけどね」
「そうだね。身勝手だと思うよ。俺は自分の事を普段から
エゴイストだと思ってるし」
 雅春の言葉に志水は感心した。自己弁護するかと思っていたのに、
開き直っているのかもしれないが自分をエゴイストと言い切る所は
志水の好む所である。偽善者では無いようだ。志水はエゴイストが
好きな訳ではない。自身のエゴを認めない偽善者が嫌いなのだ。
「だから早々に理子を奪ったんですか?」
 言葉は過激だが、表情はどこまでも柔和だ。相変わらず、いつもの
謎の微笑を浮かべている。雅春も顔色一つ変えず、微笑んでいる。
「そうだね。年は食ってるが、俺もまだまだ子供なんだ。堪え性が
無くてね。早く自分のものにしてしまわない事には気が済まない
思いに駆られてね。だが、手に入れてもホッとしないんだ。
未だに追い求めてる」
「それは、いつまで経っても彼女が自分のものになりきらないから
ではないですか?」
「理子は、俺のものだよ。永遠にね」
 雅春は自信たっぷりに笑った。志水はそれを見て、その鼻を
へし折りたくなるのだった。
 理子の様子を窺うと、真っ赤になっていた。だが、口を挟んでくる
様子は無い。ただ、成り行きを黙って見守っている感じだ。
彼女は一体、何を感じているのだろう。
「随分、自信たっぷりに言うんですね」
「まぁね。ドラマには描ききれていない色々な事があったし、
互いに育んできたものがある。それに互いに信頼している。
俺だって、永遠に彼女のものだし」
 雅春はそう言うと、愛理と美香の方を向いて笑った。
 成る程。二人の目的も最初から察知していたと言う訳か。自分達
二人の間には、誰人も入り込む余地は無いのだと、無言で
訴えているのだろう。
 だが、志水はこんな事では怯まない。逆に闘争心が湧き立って来る。
 帰り際に志水は言った。
「理子、今度は僕の家へ遊びに来てよ。たまには途中下車して
寄って行ってくれたらいいのに」
「途中下車?」
 志水の言葉に、雅春が不審そうに言った。ずっと笑顔だった雅春が、
この日初めて見せた違う顔である。理子は困惑した顔をしていた。
「ええ。僕は二子玉に住んでるんですよ。だから理子とは
毎日一緒に帰ってるんです」
 その言葉を聞いて、雅春は顔色を変えた。思った通り、理子から
聞いてはいないようだ。志水は内心ほくそ笑む。理子には悪いと
思うが、いい気味だ。
「じゃぁ、また月曜日」
 志水は愛理達を促して、にこやかにその場から立ち去った。

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~ Comment ~

Re: な、な、な、なっっっ!!!>OH林檎様 

OH林檎さん♪

志水くん、大胆ですねぇ。
二人のやりとり、私は書かされながら笑ってました。
嫉妬の塊の先生が、余裕見せながら対峙してて、
それに対する、不遜で挑戦的な志水くんの突っ込み。

理子に同情です^^

な、な、な、なっっっ!!! 

なんちゅう事を志水さんよぉーーーー!!!
先生の言いたがり、見せたがりにも驚いたけど
志水くんの自信満々さにもビックリ!
さぁ、どうする?理子ちゃん!
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