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小説・クロスステッチ第2部 <完>
4.愛の前では ~ 6.噂


クロスステッチ 第二部 5.それぞれの想い 02

2010.08.19  *Edit 

 だが、新歓コンパの時、彼女が人妻である事を知り、ショックを
受けた。彼氏であるなら、自分の敵ではないと思っていた。毎日
一緒にいて、少しずつだが彼女も自分に惹かれつつあるのを感じて
いたからだ。二人は何処か深い部分で共鳴するものを持っている、
と日々のふれあいで感じる。だから惹かれあうのも当然だ。いずれ、
彼女は自分を愛するようになるのではないか、そんな思いが志水の
心を支配しだしていた。
 だが、結婚しているとなると、そう簡単にはいかないだろう。
 相手は、OBで高校の教師だと言う。女性には関心が無くて
冷たい男だと聞いて、自分と似ているなと思った。だが違う所は、
自分は理子の夫のように彼女を作ったりはしない所だ。その後、
本人を目にして、成る程と思った。確かに、いい男だ。目にした
女性はみんな目を輝かせてうっとりしている。女が放って
おかないような色男だ。
 理子が夫を見る目は、心からの信頼とときめきを湛えていた。
それを目にして志水は嫉妬心が湧きあがって来るのを感じた。
先月入籍したと言っていたから、既に一カ月少々を共に暮らして
いる筈だ。それにも拘(かかわ)らず、久しぶりに逢う恋人同士の
ような新鮮さと熱さを醸(かも)し出していた。
 理子が毎日、友人達の誘いを断って早く帰宅するのは主婦だった
からか。急いで帰って夕飯の支度をしなければならないのだろう。
他の家事にも追われているに違いない。
 少し離れた所から二人を観察していて、志水は思った。
 相手がこの男なら、自分にも多少なりとも勝算があるのではないかと。
 確かに、ルックスは良い。飛び抜けている。頭も良さそうだ。
教授達が将来を嘱望していた事からしても、それを裏付けている。
だが、苦労知らずの育ちの良さを感じさせる。そして、多くの女達と
付き合ってきていながら、本気で女と付き合った事が無い。初めて
愛した女が理子だと言う。そしてまた、理子も同じなのだろう。
 それを思うと、この結婚は早すぎると思えてきた。互いに、
他の相手を知らずに一緒になった。強く惹かれあったからなのだろうが、
志水からすると短慮的な判断としか思えない。二人の関係が濃密過ぎて、
やがてどちらかが息苦しくなってくるに違い無い。それを最初に
感じるようになるのは、理子なのではないかと志水は思う。
 夫の方は既に社会人だ。毎日仕事に追われている事だろう。
自分自身の生活の中に、理子が入ってきて満足しきっている筈だ。
だが理子はどうだろうか?大学生になって、これからだ。勉強する
時間はあるのだろうか?本当なら、放課後は友人達との付き合いで
楽しく充実した日々を始めていた事だろう。
 色んな人間と出会い、色んな経験をし、人間としても女としても
成長していく時期だ。それなのに、既に主婦だ。
 今はまだいい。新婚だから、夫との熱い毎日に満足しているだろう。
だが、それによって、学内で周囲との密な関係を育めないでいる。
このままで行ったら、気付いたらいつの間にか、他のクラスメイト達の
輪に入り込めなくなっていた、と言う事態になりかねない。
 そして、自分とは出会いが遅かっただけだと志水は思う。あの人より
先に自分と出会っていたならば、自分を愛したに違いない。既に
あの人と結婚しているにも関わらず、自分に惹かれているのが
何よりの証拠だ。
 授業が終わり、昼休みになった。二人で学食へ行くと、
クラスメイト達の多くが集まっていて、手を振って呼ばれた。
「理子、志水君、こっちー」
 と、愛理が大きな声で呼ぶ。そういう目立つ行為は志水は
嫌いなので苦笑する。
「ねぇねぇ、明後日の土曜日とかはどうかな?急過ぎる?」
 席に着いた理子に、愛理がそう言った。
「幾らなんでも、急なんじゃないの?」
 と美香が言う。
「美香は都合悪いの?」
「ううん。別に予定は入って無いけど」
「なら、いいじゃない。理子、どうかな?」
「うーん。まぁ、予定らしい予定は入ってないけどね。
今メールしてみるね」
 理子はそう言いながら、メールを打ち始めた。志水はその横顔を
何気なく見る。凛とした横顔だ。表情は特に無く感情が読めない。
「うちの高校、今日明日と中間テストなんだ」
 と、携帯を閉じて理子が言った。
「え~?ゴールデンウィーク明けに?」
「そうなの。しかも2日間だけだから、午後に渡ってやるの。
一日に受ける科目が多いでしょう?だから一夜漬けが難しいのよね」
「変わってるわねぇ」
「そういう訳で、土日はテストの採点で忙しくて、何処かへ
行くって事も無いと思うの」
「じゃぁ、大丈夫かな」
 愛理が嬉しそうな顔をした。普通なら、それでは逆にお邪魔しては
悪いのではないかと思わないものなのだろうか。
 理子の携帯音が鳴った。早い返信だ。携帯を開いてメールを見た理子は、
「OKだって」
 と言った。
「やったぁ!良かった。嬉しい!」
 と、愛理は狂喜している。何がそんなに嬉しいのだろう。
理子の夫狙いなのか。美香の方へ眼をやると、こちらも大層嬉しそうな
顔をしている。肝心な理子はと言えば、こちらは普通に笑っているだけだ。
感情が読めない。あれだけ熱い仲なのだから、折角の二人だけの休日に
友人達が押しかけて来る事を迷惑に思わないのだろうか。
 そんな志水の視線を感じたのか、理子が志水の方を見た。
「どうしたの?」
 と、優しい微笑みを湛えて言う理子に、志水の胸が高鳴った。
「うん。僕も行ってもいいのかな、と思って・・・」
 志水のその言葉に、理子は複雑な表情を浮かべた。
「あら。志水君も一緒でしょ。あたしは最初からそのつもりだったけど?」
 と愛理が言った。愛理の言葉に、美香が「どうして?」と言った。
「だって、友達じゃない。理子とだって仲いいんだし、当然じゃない」
 志水は愛理の言葉をこれ程嬉しく思った事は無い。いつもは
鬱陶しい愛理だが、この時ばかりは感謝する。
 愛理の言葉に理子は微笑んだ。
そして、「どうぞ、おいで下さい」と言った。
 その言葉に、志水は安堵した。女友達の中で自分だけ男だ。
受け入れられないのではないかとの心配があった。
「それで、理子の家って、どこだっけ?」
「田園都市線の青葉台なの。駅からはすぐ近くなんだけど・・・」
「田園都市線って、渋谷からだったかな?」
 との愛理の言葉に、志水は
「渋谷で待ち合わせればいいよ」
 と言った。
「でもそれだと、志水君は戻ることになるんじゃないの?」
 と理子が言うと、愛理が驚いた顔をした。
「なんで、理子はそんな事を知ってるの?」
「僕も同じ沿線なんだよ。だから途中まで一緒に帰ってるんだ」
 愛理の言葉に珍しく志水が返答した。その志水に愛理は
鋭い視線を浴びせた。
「志水君はどこなの?」
 その問いには、答えない。愛理は憮然とした。
 愛理は理子の方へ問いかけた。
「そうなの?いつも一緒に帰ってるの?」
 愛理の鋭い視線に、理子はたじろぎ、「うん・・・」と力無く答えた。
「毎日、朝からずっと一緒にいるのに、帰りまで一緒なんだ」
 言葉に刺が感じられる。
「だって、同じ沿線に住んでるんだから、そうなるのも自然でしょう」
 志水は冷静にそう言った。愛理は少し興奮している様子だ。
「わかったわ。あたしは新宿だし、美香は大学の近くだし、
渋谷で待ち合わせるのが妥当よね。そうしましょう」
 三人は、土曜の午後1時半頃に、理子の家へ行く事になったのだった。



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