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小説・クロスステッチ第2部 <完>
4.愛の前では ~ 6.噂


クロスステッチ 第二部 5.それぞれの想い 01

2010.08.18  *Edit 

「結婚式、どうだった?」
 連休明けの木曜日、久しぶりに会った理子に志水はそう言った。
志水の言葉を受けて、理子は少し照れくさそうな顔をした。
「無事、滞りなく済みました」
「何処でやったの?」
「横浜よ」
「横浜って言うと、神奈川県の県庁所在地だね。歴史的に
も色々とあった場所だ」
「そうね。文化的な建物も多いし、雰囲気のある街のせいか、
女の子には人気よね」
「理子はどうなの?やっぱり、横浜は好き?」
「大好きよ。高校生の時は友達とよく遊びに行ったし」
「じゃぁ、詳しいんだ」
「う~ん。詳しいと言う程でもないけど、まぁ、有名どころは
大体知ってるかな、って程度だと思う。案内してとか、言わないでね」
 理子の言葉に、志水は笑った。先に牽制されてしまった。
「言おうと思ってたんだけど、先に断られちゃって残念だね」
 先を続けようとしたら、愛理達がやってきた。
「理子、志水君、おはよう!理子、結婚式はどうだったの?」
 興味津々と言った顔をしている。
「うん。今志水君にも言ったんだけど、無事に問題なく終わりました」
「あら。そんな答えを求めてるんじゃないんだけどな。あ~、
私も参加したかった。理子の花嫁姿を見たかったもの。旦那さんも、
さぞカッコ良かったんでしょうね」
 両手を握りしめてうっとりしている。
「私も見たかったわ。写真、今度見せて貰えると嬉しいな」
 と、美香が言った。
「式は、何式だったの?」
「教会式」
「じゃぁ、ウエディングドレスだったんだ。いいなぁ~。旦那さんは
タキシードでしょ?さぞ、素敵だったんでしょうね」
「新婚旅行は?」
「夏休みに地中海方面へ行く予定なの」
「え~?地中海?素敵~。でも、何故地中海なの?」
「だって、歴史ドラマ満載の地じゃない。文明興亡の遺跡巡りをしたいの」
「歴史目的なの?日本史好きなのに世界史?」
「私、世界史も好きだから。それに、こういう時じゃなきゃ、
行けないじゃない」
「まぁ、確かにね。でも、凄いわよね。地中海なんて」
「地中海を選んだのは、君の希望なの?」
 志水が訊いた。
「そう。私の希望」
 理子は微かに頬を染めた。その様を見て、志水は胸がキュンと
するのを感じた。
「旦那さんの希望はどうだったの?」
 美香が訊く。
「彼は、特に無いって。私の行きたい所でいいって」
「きゃぁ~。素敵。優しい人なのね」
 愛理が言った。愛理はさっきから、ハイテンションな感じだ。
「結婚式の後、連休中はどうしてたの?プチ旅行みたいなのは
無かったの?」
 落ち着いた様子で、だが興味は尽きないと言った感じを露わに
して美香が訊く。
「なんか疲れちゃったから、家でのんびり過ごしてた。車の免許が
取れたから、家の車で練習したのと、あとは高校時代の友人達が
家へ遊びに来たんで、おもてなし」
「え~?いいなぁ。私達も遊びに行きたいな~。ねぇ?」
 と愛理が美香と志水に同意を求めた。それに二人は頷いた。
理子は戸惑っている。
「新婚さんだから、やっぱり迷惑なのかしら?」
 理子の戸惑いに、美香が遠慮勝ちにそう言った。愛理は図々しいが、
美香はまだ謙虚な部分があると志水は思った。
「ううん。そんな事は無いわよ。じゃぁ、昼休みに彼にメールしてみるね」
「ねーねー、今してみてよ」
 愛理の言葉に理子は頭を振った。
「今は多分、授業中だから」
 理子の言葉に、一呼吸の間を置いてから、
「そっか。先生だったんだっけ」と愛理が言った。悪い人間では無いが、
周囲や相手への気配りに欠けている。
「担任の先生だって言ってたわよね。凄く驚いちゃったわ」
「そうそう。あたしもびっくりした。あんなカッコいい先生だから、
学校じゃぁ凄い人気なんでしょう?よくゲットできたわね」
 愛理の言葉に、理子は苦笑いした。
「ゲットって言われても、なんかしっくりこないな。コンパで
先生方が言ってたけど、異性には関心を持たない人だし、
ましてや生徒相手じゃね。学校では超クール。多くの女子が
アプローチしてたけど、みんな無視されてたし」
「え~?そうなの?大学の時みたいに、面倒だから先着で
相手してたんじゃないの?」
 愛理の言葉に、さすがの志水も声を出して笑った。
「馬鹿じゃないの?そんな事、できるわけないじゃない、教師なのに」
 志水の態度と言葉に愛理はむっとした顔をした。
「何よ。ジョークに決まってるじゃない」
 真っ赤になっている愛理に、志水はそっぽを向いた。
「みんな無視されてたのに、理子だけ違ったって事?」
 美香が静かな声でそう訊いた。
「結果的には、そういう事になるんだろうけど、私は別にアプローチ
してないから。相手は先生だもん。最初はそんな気はまるで
無かったし・・・。だから、ゲットするとかしないとか、
そういうのとはちょっと違うのよね」
 理子はそう言いながら視線を余所へと飛ばした。明確に答えられない
もどかしさのようなものが、その表情から窺えた。
 教師が入室してきたので、話しはそこで終わった。志水は少し
残念に思った。もう少し突っ込んだ事を訊きたかったからだ。
とは言っても、質問してくれるのは愛理や美香だから助かる。
彼女らが根掘り葉ほり訊く事を、そばで黙って聞いていられるのは楽だ。
 志水は初めて理子と会った時、不思議なインスピレーションを感じた。
これまで出会ってきた多くの異性達とは違うものを理子は感じさせる。
 志水は高校生の時に体験した有る出来事以来、異性には関心が
無くなった。不信感を抱いていると言っても過言ではない。
世の中や物事を射に視る癖みたいなものも付いてしまった。
だから志水にとって、近寄って来る女は鬱陶しい存在以外の
何ものでも無い。
 ただの関係者として接して来る人間ならまだいい。同じように、
ただの関係者として接するだけだ。だが、好意を持って、近づきに
なりたい意思が感じられる相手に対しては冷たく接するか、場合に
よっては無視している。
 大学へ入学して、多くの女子が自分に関心を示している事は
知っている。クラスメイトの女子も、半数以上がそれに該当する。
中でも愛理は目立つ。はっきりした性格だからだろう。だが、
愛理のような女は志水の最も好かないタイプだ。感情を剥き出しにし、
ストレートに押して来る人間は、女に限らず、男であっても嫌いだ。
 裏表が無い。正直者。わかりやすい。良く言えばそう言えるだろう。
だが、子供の世界ならそれでも構わないだろうが、もう大人だ。
感情的になれば、それがどんなに悪意の無い行為であったとしても、
相手を酷く傷つける事もある。言葉は、口に出してしまったら
取り返しが付かない場合も多い。
 大人の社会は仮面社会だ。仮面を被る事=悪とは限らない。
相手を傷つけない為に嘘を吐く場合もある。だから、嘘=悪では無い。
自分を弁え、相手を思いやる。その為にも仮面は必要だ。
 大学での授業が始まった初日。行く先々で理子と一緒になった。
翌日も同じだ。もしかしたらと思っていたら、理子も同じように
感じていたようで、理子の方から履修科目について訊いてきた。
二人で照らし合わせてみたら、全て同じで驚いた。そうして、
自然と一緒に教室を移動するようになり、近くの席へと座るように
なった。会話も自然と増えた。話す程に、彼女に惹かれていく
自分を感じる。
 女なんて、多少の違いはあっても根本の部分では皆同じだと
思っていた。その思いは今も変わっていない。それなのに、何故、
理子に惹かれるのだろうか。彼女の左手の薬指には、緑と紫の
宝石が付いたプラチナの指輪が光っていた。場所が場所だが、
マリッジリングだとは思わなかった。とても人妻とは思えないからだ。
 彼女はとてもピュアな雰囲気だ。話していても女臭さを
感じさせない。まだ、誰とも恋仲になった事が無いのではないかと
思わせる純粋さを感じる。おまけに、その高くて綺麗な声がピュアな
雰囲気に拍車をかけている。
綺麗な顔をしていても、声を聞くと幻滅する女は少なくない。
また、ベタっとした話し方にウンザリさせられる女もいる。
理子は高くて綺麗な声で、はっきりとした活舌で明瞭に話す。
それがとても耳に心地よい。
 容姿は特に優れていると言うわけではないが、目鼻立ちは
整っている。おっとりと大人しそうな雰囲気だが、その表情は
豊かで、その時々に魅力的な顔を見せる。勉強をしている時の
真剣な眼差しは知的な女史と言った雰囲気だし、歴史の事で
話している時には目を輝かせて頬を染め、とても生き生きと
していて綺麗だ。
 愉快な時に見せる笑顔は可愛いし、恥じらう顔には胸が
キュンとする。憂いを含んだような表情を見せられると、
ドキリとする。
 子供のような無邪気な顔をするかと思えば、捉えどころの無い
複雑な表情をしたり、男勝りのような負けん気な表情の時もある。
 大胆且つ繊細。強さと脆さの両方を持ち合わせているように感じた。
彼女と接していると、もっと自分を知って貰いたい、もっと彼女を
知りたいと言う欲求が高まって来る。そしてその清らかさで、
自分の中の汚れた物の全てを浄化してもらいたい衝動に駆られ、
彼女の清らかさを自分の手で永遠に守りたくなるのだった。
 だが、彼氏がいる。一体どんな彼氏なのだろうか。授業が終わると
急ぎ足で帰途に着く。誰からの誘いも断って、そそくさと帰って行く。
彼女が渋谷から田園都市線の電車に乗るのを目撃した時には、
明るい気持ちになった。同じ電車だ。どこで降りるのかは知らないが、
途中まででも一緒に帰れる可能性がある。そう思って誘ってみたら、
戸惑いながらも承知してくれた。
 そうして、毎日の長い時間を共に過ごせるようになったのだった。



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